種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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ヒナ編

森の中の遺跡

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「遺跡って、これの事なのか?」
「遺跡と言うか……何これ?」
「……四角?」


フレイの案内の元、ヒナ達は森の中に聳え立つ奇妙な建物の前まで案内され、その形状に全員が呆気に取られる。



――彼女達の目の前には「ルービックキューブ」を想像させる四角形の黒色の巨大な建物が建っており、その全長は縦横均等に10メートルの立方体であり、周囲には異様なまでに発達した巨大な樹木が建物を覆い囲んでいる(何処となくだが王国の「転移の門」の建物と酷似している事が気にかかる)。



恐らくはここが1000年前に製造されたという遺跡である事は間違いないだろうが、ヒナの記憶の限りではこれは旧世界の建築技術で生み出された建物に思える。もしかしたら、アイリィ達が存在した魔族侵攻大戦が行われた歴史は想像以上の科学力を有していたかもしれない。

建物には出入口らしき扉は見当たらず、触れた感じは金属である事は確かなのだが、相当な硬度であり、破壊は不可能だろう。仮にカラドボルグが存在したとしても破壊出来るかは分からない。


「……入口が見当たらない」
「つうか……これ、本当に建物なんすか?」
「何か黒くて不気味だな……」
「もしかして、てっぺんに出入口があるんじゃないのか?」


目的地に着いたという達成感が芽生えたのか、先ほどまでと違って冒険者三人組も見たことも無い建物に興味津津であり、率先して建物の様子を伺う。

ヒナ達も彼に倣って建物を調べ回って見るが、事前にフレイが調べた際は四方が完全に漆黒の壁で塞がっており、出入口の類は見当たらなかったという。一応は建物の上部も確認してみたらしいが生憎と中に入る扉のような開閉口は無かった。


「う~ん……何処から入るんだろう」
「俺とヒナが、壊してみるか?」
「いや、それは無理だと思う……やたらと頑丈だし、もう少し探せば入口も見つかるかも」
「と言っても……どうするんだい?もうすぐ日が暮れるよ?」


既に時刻は夕方を迎えており、あと少しで完全に辺りも暗くなる。一応は今回は転移結晶を用意しているため、キャンプのある場所まで一瞬で戻る事は出来る。とは言え、ここで一度転移した場合はまたこの場所に辿り着くまで時間が掛かってしまうが。

レノの状態ならばこの場所に転移魔方陣を刻み込んで何時でも戻ってくる事も出来るのだが、今のヒナにはそれは出来ない。転移結晶は片道だけの転移魔法であり、こういう所では不便である。

愚痴を言っている暇も無いので、出来れば建物の出入口だけでも発見して置きたい所だが、ヒナ達はもう一度建物の周囲を観察していると、ウルが何かに反応するように鳴き声を上げる。


「ウォンッ!!」
「ん?どうした?トイレ?」


ザッ……ザッ……!!


唐突に建物の傍でウルが穴を掘り始め、トイレでもしたいのかと思ったが、ウルは首を振り、


「ウォンッ!!」
「ここを掘れ……と言っている気がします」
「本当に?」


ポチ子の言葉にヒナは穴を熱心に掘り続けるウルに視線をやり、彼女もそれに近づく。残されたメンバーは顔を見合わせ、冒険者三人組を除いて全員が続き、シャベルの類は存在しないが、肉体強化で両手を硬化させればウルのように穴を掘り進む。


「ちょ、ちょっとちょっと……」
「本気か?」
「出入口が見当たらないからって……幾ら何でもそれは……」


地面を無心に掘るヒナ達に冒険者たちは呆れるが、彼等を無視して地面を掘り続ける。左右に土の山を形成しながら、だいたい2メートルほどの深さまで掘り進めると、


ガキィンッ!!


「ガウッ!?」
「金属音?」
「大丈夫?」


壁際を掘り進んでいたウルの爪に何か硬い物が衝突し、ヒナはすぐに抱きかかえると、そこには「鍵穴」らしき物が浮き出ており、慌ててさらに鍵穴の周囲を掘り進めると色違いの壁が露わになり、正確には赤色の色塗りがされた扉が露出した。


「おおっ!!」
「やりました!!」
「本当に地面に埋まっていたのか……」
「……でも開かない」
「鍵穴がある所……ここが出入口だと思うけど」
「え、本当に扉を見つけたのかよ!!」
「嘘だろ……!?」
「信じられねえ……」


穴の中で歓声を上げるヒナ達に慌てて冒険者三人組も駆け寄り、信じられないという表情で穴の上から見下ろす。鍵穴の大きさは相当な物であり、巨人族が造ったのではないかと思われるほど巨大な扉だった。

あくまでもヒナの予想だが、この出入口の位置から考えるに1000年が経った間にこの島の地形が大きく変化したのかもしれない。大きな地震でも勃発したのか、それとも魔王(リーリス)に島ごと浮揚された際の拍子で建物全体が埋まってしまったのかもしれない。


「どうする?鍵が無いと開けられないよ?」
「アイリィから何も聞いてないの?」
「全然……こいつを連れて行けば便利だけとしか聞いてないよ」
「ウォンッ……」


ガリガリと扉に爪を立てるウルに全員が苦笑いを浮かべる中、ヒナだけは扉の部分が白狼の爪で少しずつだか削り取られている事に気が付き、すぐにもう一度扉を触れてみる。建物を構成している漆黒の壁は途轍もない硬度だが、この扉だけは素材が違うらしく、ウルの爪でも削り取れる事からそれほど硬い金属ではないのかもしれない。

1000年以上の年月で扉自体が老朽化している可能性もあり、これならば破壊も可能と判断し、ヒナは残りの魔力を注いででも何としても建物の中まで侵入する事に決める。


「……エクスカリバーを使う」
「……大丈夫?」
「多分……皆下がってて」
「無茶は、駄目だぞ?」
「うん」
「え、ちょっ……エクスカリバーって……ええっ!?」


事情を知らないフレイは唐突に聖剣を取りだすヒナに驚愕するが、すぐにもゴンゾウが穴の中から皆を外に出し、剣の柄の部分だけを握りしめた彼女だけが残ると、


「はぁあああっ……!!」


ギュオォオオオオッ……!!


握りしめている聖剣の柄に魔力を送り込み、瞬時に「光の剣」が形成され、


「せいっ!!」


ジュワァアアアアッ……!!


光の剣を振り被り、鍵穴に貫く。そのまま扉を剣の高熱でゆっくりと溶解させな、徐々に人間一人が通れるほどの大きさの円形の穴を切り開き、エクスカリバーを解除する。


ガコンッ……!!


「……よし!!」


扉の中心部に円形型の大きな穴が開かれ、ヒナはその場にへ垂れこむ。今の聖剣の使用で大部分の魔力を消費し、これ以上の戦闘は不可能だが目的は達成できた。


「ひ、ヒナさん!?」
「無事か!?」
「……助ける」
「あ~……平気平気」


穴の中を覗き込んでいた全員が飛び込もうとしたが、皆を制してヒナは何とか聖剣を鞘に戻し、ゆっくりと前方の扉に形成された穴を確認する。

扉は想像以上に薄かったようだが、内部には灯りの様な物は確認できず、下手に覗き込むことは躊躇されるが間もなく夜を迎えるため、何としても建物の内部を調べ上げねばならない。

アイリィから聞いているのは魔物の文献が保管された遺跡という事だけであり、特に危険があるのかは聞いていなかったが、ヒナは上の者達から探索用のランタンを受け取ろうとすると、


ギチギチギチ……!!


「え」


不意に扉からヒナが視線を外した途端、奇妙な音が聞こえ、彼女は振り向こうとした時、



――ドスゥッ!!



「ぐあっ……!?」
「「「ヒッ……!?」」」


唐突に扉の穴から何かが飛び出し、彼女の黒衣の左肩に突き刺さり、ヒナは視線を向けるとそれは漆黒の槍を想像させる突起物が突き刺さっていた。さらには何時の間にか身体に「糸」の様な物が取り付けられているのを確認すると、


ズズズズッ……!!


「うぁあああっ……!?」
「ヒナぁあああああああっ!!」


肩に突き刺さった突起物ごと引き込まれ、ヒナの身体が扉に形成された穴に吸い込まれていき、咄嗟に一番の巨体のゴンゾウが掌を伸ばして彼女も掴もうとするが、間に合わずにそのままヒナは建物の内部に入り込んだ――
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