種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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ヒナ編

城塞都市

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――バルトロス王国の首都である「城塞都市」別名は「バルカン」とも呼ばれており、都市の周囲はその名の通り凄まじい高度の外壁で覆われており、中心部にはバルトロス王国の王城「ホワイト・ベル」が存在する。


王城の外見は上空から確認すれば「六角形」の形で六の塔が建っており、それぞれの塔の頂点には巨大な魔水晶が取り付けられている。嘗て、バルバロス帝国として健在だった時代はこの塔の魔水晶から凄まじい砲撃魔法を繰り出し、侵攻してくる敵軍を薙ぎ払ったというが、既に数百年の時を経ている現在では魔水晶は効力を失っており、その機能はもう失われている(ちなみに帝国時代はここは首都ではなく、領土の重要時点として扱われていた)。


現在の城塞都市はロスト・ナンバーズを警戒して最高警戒態勢を敷いており、都市に存在する全ての城門は封鎖中であり、実質的に「戦争状態」と変わらぬ警戒状態だった。

そんな中、ジャンヌ率いるテンペスト騎士団の団長・副団長並びに4人の部隊長と幹部クラスの者達はこの王城に呼び寄せられ、当然ながらヒナの姿もあった。



――ちなみに一応は彼女が「禁忌」を犯したハーフエルフである事は王国側も承知しているが、彼女の正体を知っている者はあくまでも王国の最重要人だけであり、リノン達を除けば国王である「バルトロス13世」さらにはテンペスト騎士団の隠密部隊のカゲマルだけであり、他の面子には彼女を将来有望な幹部として第4部隊に入団した女性団員だと紹介している。



ヒナ達は待合室に待機し、アルトとジャンヌ、さらにはリノンだけが先に呼び出され、中に残されたのはポチ子とゴンゾウ、そして他の3人の隊長だけであり、全員が緊張した様子で呼び出されるのを待っていた。


「そうでござるか……拙者が治療中の間にそのような事が」
「わうっ……大変だったです」
「しかし、2人とも無事でよかった」
「まあね」


ヒナ達は椅子に座り込み、再会したカゲマルにこれまでの経緯を説明する。噴水広場でムメイと出会った時は不在だったため、一応は説明をして置いた(彼女にはヒナの正体は事前に伝えている)。


「……おい、お前ら……ここは王城何だぞ、もう少し緊張感をだな……」
「うるさいでござるよ。第一次予選も勝ち進めなかったお主が、偉そうに指図する権利は無いでござる」
「うぐぅっ!?」


久しぶりに顔を合わせた第二部隊長である「ゴルス(30代男)」はカゲマルの言葉に膝を着き、その隣には第一部隊長である猫の獣人の「キティ」が「にゃはははっ」と笑い声を上げ、


「公衆の面前で派手にやられちゃったのはまずいにゃ~、幸い、唯の一般冒険者として認識されていたから良かったものの、下手をしたらテンペスト騎士団の名を汚していたにゃ~」
「ぐぐぐっ……!!」


ゴルスも剣乱武闘に出場し、自分の実力を世間に知らしめると豪語していたが、第一次予選で呆気なく敗退し、危うく騎士団の第二部隊長の座を追われかけたという(予選中にライオネルと遭遇したのが運の尽きだった)。

一応はロスト・ナンバーズが闘人都市を襲撃した際、暴走した冒険者を鎮圧に協力したことを認められ、首の皮一枚だけ繋がった状態である。ちなみに第二部隊長であるキティはそもそも大会には参加せず、訓練場からミラー・クリスタルで観戦していたとの事。


「そ、それはともかく……そこの女は誰だ?さっき紹介はあったが、第一部隊長の俺に話も通さずにただの一団員をこの城に居れるのは……」
「ジャンヌ団長とリノン副団長からも許可を取っているでござるよ。だいたい、この方もレノ殿と同じく「S級冒険者」でござる」
「何!?」


ゴルスが驚愕したように立ち上がり、ヒナに視線を向けると彼女は面倒気に以前に王国かた渡された「S級冒険者」の証である王国の紋章が刻まれたペンダントを見せつけ、彼は動揺したように後退り、


「ば、馬鹿な……こんな小娘が、S級だと……!?」
「あ、ヒナ殿はこのような外見でも100年以上の時を過ごしている(大嘘)ので、実力は確かでござるよ」
「へえ……そんなに年齢を重ねているとは思えないけどにゃあ」


キティは疑わしげに見つめてくるが、当のヒナは涼しげにその視線を受け流し、カゲマルに視線を向け、


「私の事はともかく……今回は何で呼び出されたの?」
「前にも言った通り、今回の案件はロスト・ナンバーズ対策として呼び出されたでござる。もちろん、こっちもやられっぱなしはいかないでござるからな」
「というと?」
「討伐部隊を結成すると聞いているでござる!!」
「討伐部隊?」


相手の情報をほとんど掴んでいない状態で討伐部隊を組んだとしても無駄なように思えるが、


「拙者たち隠密部隊を舐めないでほしいでござる!!ロスト・ナンバーズに関する有力な情報は既に掴んでいるでござるよ」
「実は闘技場の地下に眠る聖遺物を奴等が狙っている事?」
「何故それを知っているでござるか!?」


先に言われたことにカゲマルは驚愕するが、彼女以外には既に出回っている情報のため、今更感が半端ない。


「い、一応は情報はそれだけではないでござるよ?他にも、奴等が今までの調査から魔力容量が高い者を中心に誘拐をしている事や、闘技場に出現したロスト・ナンバーズのメンバーの情報を纏めたりしたでござる」
「へえ……それはすごいね」


カゲマルは何処からか羊皮紙を取り出し、ヒナに手渡す。後ろからゴンゾウとポチ子に覗き込まれながらも中身を確認すると、ヒナが知る限りのメンバーの特徴が細かく書かれていた。中には「マドカ」や「ツイン」さらには「ゴーテン」と呼ばれる名前が判明した者も書かれており、地味に役立つ。


「このゴーテンって人が、あのダンゾウさんを倒したって言う?」
「むうっ……こいつが!!」
「お、落ち着いて下さい!?ゴンさん!!」


羊皮紙を睨み付けるゴンゾウに対し、カゲマルは頷き、


「まさか2人の種族代表を打ち倒す者が現れるとは信じがたいでござるが……出来ればこの者に関しては生け捕りにしたいとの事でござる」
「どうして?」


2人の種族代表を危うく殺しかけた相手に対し、何故「生け捕り」などという面倒な手段を取らなければならないのかと視線を向けると、


「この者は……ダンゾウ殿の弟であるレイゾウ殿の忘れ形見、出来れば殺さずに生かして捕獲し、巨人族の手で始末を付けたいとの要請でござる」
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