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闘人都市崩壊編
天属性
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「どららぁっ!!」
「ゴォオオオッ……!?」
ズガァアアンッ!!
レノは闘技場の前に立っていたゴーレムに向けて撃雷を放ち、最後の一体を倒した事を確認する。彼の周りには無数のゴーレムと思わしき残骸が散乱しており、他にも死人や冒険者が死屍累々(殺してはいないが)と倒れている。
既にジャンヌ達とは別れており、彼女達は少しでも多くの住民を安全に避難させるために引き返し、レノだけが闘技場に突入した。当然、最初の内はヨウカとコトミも彼一人で行動する事は反対したが、いざという時は転移魔方陣で逃走する事を約束し、2人とも渋々と了承した。
「ふうっ……あと少し」
闘技場の出入口の門を前にすると、レノは肉体強化で身体能力を上昇させ、巨大な門に向けて掌を押し付ける。普通ならば巨人族クラスの腕力でなければ開くことは無いのだろうが、急成長のお蔭でレノの肉体は依然と比べ物にならないほどに運動能力を誇る。
ギギィイイッ……!!
「ふんぬっ……!!」
徐々に扉が開かれていき、人一人が入れるほどの大きさまで押し開けると、すぐに入り込む。
ガタァンッ……!!
扉が完全に閉ざされ、レノは周囲を確認すると、だ昼間だというのに異様なまでに通路は薄暗く、壁に取り付けられた照明が1つも灯っていない。恐らく、影の聖痕を利用するために通路内の灯りを事前に消していたのだ。
影の聖痕の真価を発揮するのは「暗闇」であり、原理は分からないが影を闘技場全体に伸ばして地下に宿泊していた参加者達の影に乗り移り、リーリスの分身とやらを送り込んだのだろう。
「……試合場の道は……仕方ない」
ここから試合場に移動するには地下を通って門から向かうか、もしくは観客席に移動して直接試合場に降りるしかない。だが、どちらも移動するには時間が掛かり、間に合わない可能性もある。
「仕方ない……近道するか」
レノは右手を差し出し、掌から金色に光り輝く魔方陣が展開され、
ドォオオオオンッ……!!
室内にも関わらず、まるで落雷音を想像させる轟音が響き渡り、魔方陣から「刀身」が出現する。そして、柄の部分まで出てきたところで手を伸ばし、雷を纏わせる長剣が露わになる。
「カラド……ボルグ!!」
金色の雷を迸らせ、レノは前方を確認してこの出入口を真っ直ぐに突き進む事が出来れば試合場に最短で到達できる。少し手荒だが、カラドボルグを勢いよく振り被り、
「貫け!!」
――ズドォオオオオンッ!!
通路内に金色の光が灯り、刀身から放たれた雷光が真正面に向かい、特殊な合金で造られた壁が崩壊する。そのまま雷光は闘技場の反対側にまで到達したところで掻き消える。
長剣から光が掻き消え、レノは前方を確認すると、見事に壁を貫通しており、一本の「道」が生まれた。
「くっ……」
ドスッ……!
レノはその場に片膝を着き、ここに来るまでに相当な魔力を消費している。だが、まだまだ髪の毛は黒色のままであり、あと一度くらいは残存の魔力だけでも使用出来る。それに肝心巨大隕石の破壊用の魔力は紋様に蓄積されており、完全に魔力枯渇を起こしていなければ問題ない。レノはカラドボルグを発現させたまま、真正面に出来た焼け焦げた道を移動する。
靴の裏からでも発熱した地面を感じ取り、それが逆に今のレノの意識をはっきりとさせ、すぐに走り出す。
「……見えた……!!」
破壊した壁を潜り抜け、遂にレノは試合場に辿り着く。
ビュオォオオオオッ――!!
上空を確認すると、そこには今までに見たことが無いほどの広大な魔方陣と巨大隕石が浮揚しており、既に地上からでも感じ取れるほどの熱気が感じ取れる。以前に「第一次予選」の際に試合場全体が砂漠に変えられたこともあったが、あの時以上に温度が高まっている。
「……これを破壊するのか……足りるか?」
レノは右手の紋様を確認し、この1年で蓄積させた魔力を感じ取る。これを使用すればあのホムラに対抗する手段が無くなると言っても過言ではないが、迷う暇はない。
「……もう二度と、誰も死なせない」
――この都市にはバルやカリナの黒猫盗賊団や、今は避難活動を行っているヨウカ、コトミ、ジャンヌ、センリ、テンの聖導教会の皆、他にもポチ子、リノン、レミア等のバルトロス王国の人間達。他にも最近知り合ったばかりだが、種族間の対立に関係なく、人々を守るために協力してくれたライオネルやダイア達もいる。ここで巨大隕石の爆発を阻止しなければ、レノが知る全員が確実に死んでしまう。
守れるのはカラドボルグの所有者のレノだけであり、他に頼れる者はいない。自分の復讐と、大切な人々を天秤に掛けるならば、レノは迷わずに彼らのために聖剣を使う。
ボウッ……!!
右手の紋様が光り輝き、レノはカラドボルグを握りしめながら、ゆっくりと一言だけ呟く。
「ソフィア……」
ゴォオオオオッ……!!
レノの姿が青く光り輝き、髪の毛の色が青白く変化し、肉体が女性的に変化すると同時に自分の体内の魔力が活性化していく事が分かり、この身体ならば多少の無理は出来る。
「さて……」
ソフィアはカラドボルグを強く握りしめ、右手の紋様の封印を解く。想像するのは右手に取り付けたタンクを解放する要領で、蛇口を捻ったように放出する魔力を刃に送り込む。
ギュオォオオオオオッ……!!
刀身に金色の雷が迸り、刀身に魔力が送り込む度に電流が走り、やがては刃全体が金色に光り輝く。
ジュワァアアアッ……!!
「うくぅっ……!?」
剣の柄が発熱してソフィアは顔を顰めるが、決して握力を弱めない。ここで手放せば全てが台無しであり、まだ「力」が足りない。
「もっと……もっと!!」
この状態では肉体強化以外に魔力を扱う事は難しいが、右手の紋様に蓄積された魔力は別であり、ソフィアは刀身に魔力を走らせる。
「あと……少し」
ゴォオオオオオオオッ……!!
カラドボルグの刀身から風圧が発生し、恐らく雷属性から「天属性」に変化しているのだ。天属性とはレノが使用する「雷属性」の進化形態であり、学園都市に通っていたときに「クズキ」に教わったことを思い出す。
『いいですか?天属性とは他の属性と違い、最も攻撃力に特化した魔法です。単純なようですが、破壊力という点では他の属性など足元にも及びません。また、相性が悪い風属性であろうと、真に極めたものならば天属性で突破出来ます。最も、扱える者など滅多に存在しませんがね。私ですか?私も無理ですよ?天属性とは英雄と呼ばれるほどの逸材で無ければ極められませんからねぇ』
やたらと饒舌に説明されたが、1つだけ分かったのは「天属性」とは全ての魔法の中でも「威力」という点では頂点に立つ属性であり、このカラドボルグが最強の聖剣と言われる由縁が分かった気がした。
ビキィイイイイッ――!!
上空から何か罅割れた音が響き渡り、ソフィアは上空を見上げると、魔方陣に亀裂が走っており、どんどんと広がっていく。恐らく、魔方陣が崩壊した途端に隕石が地面に衝突し、大爆発を引き起こす寸前なのだろう。
ここまで巨大な隕石を一瞬で破壊する事は難しく、第一に爆発を誘爆させる結果になる可能性もある。だが、今ここで何もしなければ待つのは確実な「死」だけだ。
「ふうっ……」
狙いは送り込めるだけの魔力を限界まで放出し、ソフィアはカラドボルグを大きく振りかぶり、
ギュォオオオオオッ……!!
刀身から凄まじい勢いで電流が走り、周囲の地面に火花が走る。そして、無意識に居合の構えを取っており、ソフィアは上空を確認して狙うのは魔方陣が崩壊した時である。
「はあっ……はあっ……!」
疲労と緊張感が一気に押し寄せ、ソフィアは眩暈を起こす。だが、すぐに頭を振り、意識をはっきりとさせ、好機を待つ。
バリィイイイインッ……!!
遂に天空に展開された魔方陣が崩壊し、巨大隕石が落下を始めた瞬間、ソフィアは全力でカラドボルグを振り抜く。
「消えろぉおおおおおおおおっ!!」
――ドゴォオオオオオオオオオオオオオンッ!!
刀身から「金色」の熱線が放たれ、その規模は今までとは桁違いであり、光の奔流が地上から放たれ、巨大な隕石を徐々に飲み込んでいく。
ゴゴゴゴゴッ――!!
「く、うぅううううっ……!!」
カラドボルグの刀身から「雷光」を放ちながら、徐々に隕石に押し込まれていき、ソフィアは苦悶の表情を浮かべながらも、熱線の放出を止めない。
「うっ……ぁあああああああああっ!!」
ズガァアアアアアアアンッ……!!
刃から放出する熱線の規模をより一層に強め、隕石に放たれた光の奔流が全体に広がり、あと少しで完全に覆いつくそうとした時、
ズズゥウウウンッ……!!
「なっ……!?」
唐突に隕石の落下が加速し、どんどんとソフィアに向けて接近してくる。だが、既にカラドボルグの雷撃は全体を飲み込んでおり、徐々に隕石の規模が縮まっていく。
隕石の外殻を金色の雷光で覆う事で爆発を内側から抑え込み、ソフィアは地面に衝突する前に隕石を完全に消し去るためにありったけの魔力を送り込む。
「行けぇえええええええっ!!」
ズドォオオオオオンッ……!!
刀身から放たれる「熱線」が倍増し、落下してくる隕石を徐々に削り取り、同時にソフィアの髪の毛が白色化していく。既に右手の紋様の魔力は尽き、残されたのは僅かな自分の魔力だけだ。この姿では魔力操作は難しいが、今は泣き言は許されない。体内に残された魔力を全て注ぎ込み、カラドボルグの力を引き出す。
「がぁああああああああっ!!」
――ズドォオオオオオオオンッ!!
隕石が雷光によって削り取られ、規模が縮小していき、遂には地面に到達する寸前に完全に削り取られ、
――ドォオオオオオオオンッ!!
闘技場の中心から一筋の雷が天を貫き、数秒後にはカラドボルグの熱線が掻き消える。
「やっ、た……?」
ソフィアは上空を確認し、完全に隕石が消えてなくなったことを確認すると、そのまま倒れこむ。その直後、魔方陣が出現してカラドボルグを飲み込んで消え去る。
「……終わった、のか……?」
天空を確認し、完全に隕石が消えてなくなったことを確認すると、ソフィアは爆発する前に破壊する事に成功したことを確信し、
「……疲れた……」
指一本動けない状態とはこの事であり、完全に魔力切れを起こしたが、隕石の破壊に成功したことに笑みを浮かべ、
「……寝るか」
そのまま意識が途切れ、ソフィアはゆっくりと瞼を閉じた――
「ゴォオオオッ……!?」
ズガァアアンッ!!
レノは闘技場の前に立っていたゴーレムに向けて撃雷を放ち、最後の一体を倒した事を確認する。彼の周りには無数のゴーレムと思わしき残骸が散乱しており、他にも死人や冒険者が死屍累々(殺してはいないが)と倒れている。
既にジャンヌ達とは別れており、彼女達は少しでも多くの住民を安全に避難させるために引き返し、レノだけが闘技場に突入した。当然、最初の内はヨウカとコトミも彼一人で行動する事は反対したが、いざという時は転移魔方陣で逃走する事を約束し、2人とも渋々と了承した。
「ふうっ……あと少し」
闘技場の出入口の門を前にすると、レノは肉体強化で身体能力を上昇させ、巨大な門に向けて掌を押し付ける。普通ならば巨人族クラスの腕力でなければ開くことは無いのだろうが、急成長のお蔭でレノの肉体は依然と比べ物にならないほどに運動能力を誇る。
ギギィイイッ……!!
「ふんぬっ……!!」
徐々に扉が開かれていき、人一人が入れるほどの大きさまで押し開けると、すぐに入り込む。
ガタァンッ……!!
扉が完全に閉ざされ、レノは周囲を確認すると、だ昼間だというのに異様なまでに通路は薄暗く、壁に取り付けられた照明が1つも灯っていない。恐らく、影の聖痕を利用するために通路内の灯りを事前に消していたのだ。
影の聖痕の真価を発揮するのは「暗闇」であり、原理は分からないが影を闘技場全体に伸ばして地下に宿泊していた参加者達の影に乗り移り、リーリスの分身とやらを送り込んだのだろう。
「……試合場の道は……仕方ない」
ここから試合場に移動するには地下を通って門から向かうか、もしくは観客席に移動して直接試合場に降りるしかない。だが、どちらも移動するには時間が掛かり、間に合わない可能性もある。
「仕方ない……近道するか」
レノは右手を差し出し、掌から金色に光り輝く魔方陣が展開され、
ドォオオオオンッ……!!
室内にも関わらず、まるで落雷音を想像させる轟音が響き渡り、魔方陣から「刀身」が出現する。そして、柄の部分まで出てきたところで手を伸ばし、雷を纏わせる長剣が露わになる。
「カラド……ボルグ!!」
金色の雷を迸らせ、レノは前方を確認してこの出入口を真っ直ぐに突き進む事が出来れば試合場に最短で到達できる。少し手荒だが、カラドボルグを勢いよく振り被り、
「貫け!!」
――ズドォオオオオンッ!!
通路内に金色の光が灯り、刀身から放たれた雷光が真正面に向かい、特殊な合金で造られた壁が崩壊する。そのまま雷光は闘技場の反対側にまで到達したところで掻き消える。
長剣から光が掻き消え、レノは前方を確認すると、見事に壁を貫通しており、一本の「道」が生まれた。
「くっ……」
ドスッ……!
レノはその場に片膝を着き、ここに来るまでに相当な魔力を消費している。だが、まだまだ髪の毛は黒色のままであり、あと一度くらいは残存の魔力だけでも使用出来る。それに肝心巨大隕石の破壊用の魔力は紋様に蓄積されており、完全に魔力枯渇を起こしていなければ問題ない。レノはカラドボルグを発現させたまま、真正面に出来た焼け焦げた道を移動する。
靴の裏からでも発熱した地面を感じ取り、それが逆に今のレノの意識をはっきりとさせ、すぐに走り出す。
「……見えた……!!」
破壊した壁を潜り抜け、遂にレノは試合場に辿り着く。
ビュオォオオオオッ――!!
上空を確認すると、そこには今までに見たことが無いほどの広大な魔方陣と巨大隕石が浮揚しており、既に地上からでも感じ取れるほどの熱気が感じ取れる。以前に「第一次予選」の際に試合場全体が砂漠に変えられたこともあったが、あの時以上に温度が高まっている。
「……これを破壊するのか……足りるか?」
レノは右手の紋様を確認し、この1年で蓄積させた魔力を感じ取る。これを使用すればあのホムラに対抗する手段が無くなると言っても過言ではないが、迷う暇はない。
「……もう二度と、誰も死なせない」
――この都市にはバルやカリナの黒猫盗賊団や、今は避難活動を行っているヨウカ、コトミ、ジャンヌ、センリ、テンの聖導教会の皆、他にもポチ子、リノン、レミア等のバルトロス王国の人間達。他にも最近知り合ったばかりだが、種族間の対立に関係なく、人々を守るために協力してくれたライオネルやダイア達もいる。ここで巨大隕石の爆発を阻止しなければ、レノが知る全員が確実に死んでしまう。
守れるのはカラドボルグの所有者のレノだけであり、他に頼れる者はいない。自分の復讐と、大切な人々を天秤に掛けるならば、レノは迷わずに彼らのために聖剣を使う。
ボウッ……!!
右手の紋様が光り輝き、レノはカラドボルグを握りしめながら、ゆっくりと一言だけ呟く。
「ソフィア……」
ゴォオオオオッ……!!
レノの姿が青く光り輝き、髪の毛の色が青白く変化し、肉体が女性的に変化すると同時に自分の体内の魔力が活性化していく事が分かり、この身体ならば多少の無理は出来る。
「さて……」
ソフィアはカラドボルグを強く握りしめ、右手の紋様の封印を解く。想像するのは右手に取り付けたタンクを解放する要領で、蛇口を捻ったように放出する魔力を刃に送り込む。
ギュオォオオオオオッ……!!
刀身に金色の雷が迸り、刀身に魔力が送り込む度に電流が走り、やがては刃全体が金色に光り輝く。
ジュワァアアアッ……!!
「うくぅっ……!?」
剣の柄が発熱してソフィアは顔を顰めるが、決して握力を弱めない。ここで手放せば全てが台無しであり、まだ「力」が足りない。
「もっと……もっと!!」
この状態では肉体強化以外に魔力を扱う事は難しいが、右手の紋様に蓄積された魔力は別であり、ソフィアは刀身に魔力を走らせる。
「あと……少し」
ゴォオオオオオオオッ……!!
カラドボルグの刀身から風圧が発生し、恐らく雷属性から「天属性」に変化しているのだ。天属性とはレノが使用する「雷属性」の進化形態であり、学園都市に通っていたときに「クズキ」に教わったことを思い出す。
『いいですか?天属性とは他の属性と違い、最も攻撃力に特化した魔法です。単純なようですが、破壊力という点では他の属性など足元にも及びません。また、相性が悪い風属性であろうと、真に極めたものならば天属性で突破出来ます。最も、扱える者など滅多に存在しませんがね。私ですか?私も無理ですよ?天属性とは英雄と呼ばれるほどの逸材で無ければ極められませんからねぇ』
やたらと饒舌に説明されたが、1つだけ分かったのは「天属性」とは全ての魔法の中でも「威力」という点では頂点に立つ属性であり、このカラドボルグが最強の聖剣と言われる由縁が分かった気がした。
ビキィイイイイッ――!!
上空から何か罅割れた音が響き渡り、ソフィアは上空を見上げると、魔方陣に亀裂が走っており、どんどんと広がっていく。恐らく、魔方陣が崩壊した途端に隕石が地面に衝突し、大爆発を引き起こす寸前なのだろう。
ここまで巨大な隕石を一瞬で破壊する事は難しく、第一に爆発を誘爆させる結果になる可能性もある。だが、今ここで何もしなければ待つのは確実な「死」だけだ。
「ふうっ……」
狙いは送り込めるだけの魔力を限界まで放出し、ソフィアはカラドボルグを大きく振りかぶり、
ギュォオオオオオッ……!!
刀身から凄まじい勢いで電流が走り、周囲の地面に火花が走る。そして、無意識に居合の構えを取っており、ソフィアは上空を確認して狙うのは魔方陣が崩壊した時である。
「はあっ……はあっ……!」
疲労と緊張感が一気に押し寄せ、ソフィアは眩暈を起こす。だが、すぐに頭を振り、意識をはっきりとさせ、好機を待つ。
バリィイイイインッ……!!
遂に天空に展開された魔方陣が崩壊し、巨大隕石が落下を始めた瞬間、ソフィアは全力でカラドボルグを振り抜く。
「消えろぉおおおおおおおおっ!!」
――ドゴォオオオオオオオオオオオオオンッ!!
刀身から「金色」の熱線が放たれ、その規模は今までとは桁違いであり、光の奔流が地上から放たれ、巨大な隕石を徐々に飲み込んでいく。
ゴゴゴゴゴッ――!!
「く、うぅううううっ……!!」
カラドボルグの刀身から「雷光」を放ちながら、徐々に隕石に押し込まれていき、ソフィアは苦悶の表情を浮かべながらも、熱線の放出を止めない。
「うっ……ぁあああああああああっ!!」
ズガァアアアアアアアンッ……!!
刃から放出する熱線の規模をより一層に強め、隕石に放たれた光の奔流が全体に広がり、あと少しで完全に覆いつくそうとした時、
ズズゥウウウンッ……!!
「なっ……!?」
唐突に隕石の落下が加速し、どんどんとソフィアに向けて接近してくる。だが、既にカラドボルグの雷撃は全体を飲み込んでおり、徐々に隕石の規模が縮まっていく。
隕石の外殻を金色の雷光で覆う事で爆発を内側から抑え込み、ソフィアは地面に衝突する前に隕石を完全に消し去るためにありったけの魔力を送り込む。
「行けぇえええええええっ!!」
ズドォオオオオオンッ……!!
刀身から放たれる「熱線」が倍増し、落下してくる隕石を徐々に削り取り、同時にソフィアの髪の毛が白色化していく。既に右手の紋様の魔力は尽き、残されたのは僅かな自分の魔力だけだ。この姿では魔力操作は難しいが、今は泣き言は許されない。体内に残された魔力を全て注ぎ込み、カラドボルグの力を引き出す。
「がぁああああああああっ!!」
――ズドォオオオオオオオンッ!!
隕石が雷光によって削り取られ、規模が縮小していき、遂には地面に到達する寸前に完全に削り取られ、
――ドォオオオオオオオンッ!!
闘技場の中心から一筋の雷が天を貫き、数秒後にはカラドボルグの熱線が掻き消える。
「やっ、た……?」
ソフィアは上空を確認し、完全に隕石が消えてなくなったことを確認すると、そのまま倒れこむ。その直後、魔方陣が出現してカラドボルグを飲み込んで消え去る。
「……終わった、のか……?」
天空を確認し、完全に隕石が消えてなくなったことを確認すると、ソフィアは爆発する前に破壊する事に成功したことを確信し、
「……疲れた……」
指一本動けない状態とはこの事であり、完全に魔力切れを起こしたが、隕石の破壊に成功したことに笑みを浮かべ、
「……寝るか」
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