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闘人都市崩壊編
闘技場では
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ドゴォオオオオオオオンッ……!!
「……むっ……?」
「……コレハ」
闘技場内の中心部、つまり剣乱武闘の舞台である試合場の石畳の上には、1人の少女と黒甲冑の騎士が立っており、ロスト・ナンバーズの頂点に立つ「リーリス」と魔人族の代表である「魔人王」は闘技場の外から聞こえる轟音に目を向け、すぐに天に向けて登る「金色の火柱」を確認する。
2人は火柱の正体が「聖剣」の力で生み出された物だと悟り、魔人王はその場を離れようとしたが、リーリスは首を振る。
「必要ない。お前は傍にいろ」
「ハッ……」
リーリスに指示され、魔人王は深く跪き、その後は微動だにしない。彼は彼女に頭を下げながらも、不意に自分の甲冑に取りつけられた紫の「魔水晶(クリスタル)」が点滅していることに気が付き、準備が整ったことを悟る。
「……リーリスサマ、ドウヤラミナ、テッタイヲオエタヨウデス」
「そうか……ならばお前も先に避難しろ」
「オコトバデスガ、リーリスサマハ……」
「私はまだ最後の仕上げが残っている」
彼女は闘技場の上空に浮かぶ魔法陣を確認し、さらに上空には巨大隕石が浮揚している。既に巨大隕石の外殻全体に亀裂が走っており、罅割れから赤い光が零れていた。
――この隕石はリーリスの肉体に宿る「磁力の聖痕」によって地球外から引き寄せた隕石であり、既に内部はロスト・ナンバーズが仕込んだ火属性の魔水晶が破裂寸前であり、仮に隕石が爆発した場合は間違いなく、この闘人都市は「消滅」する。
今回のリーリスの目的は、剣乱武闘の開催地である闘人都市の闘技場、つまりは2人が立っている試合場の地下深くに眠っているの「聖遺物」を入手するために訪れたが、予想以上に警備が厳重であり、内密には掘り起こせなかった。
また、この「聖遺物」の封印を解く鍵となる3つの聖遺物が必要であり、ロスト・ナンバーズであろうと流石に聖遺物の調達は困難であり、闘技場の地下に眠っている事は確かなのだが、正確な封印地点を特定出来ていない。
そのため、リーリスはわざわざ自分の人魚族の姫という身分を捨て、その正体を表して部下達に闘技場の護衛を行わせ、この闘人都市を巨大隕石の爆破によって更地に変え、ゆっくりと時間を掛けて「聖遺物」の封印の場所を探す手筈だった。
――彼女はまず、自分の聖痕を利用して闘技場で待機していた剣乱武闘の参加者達に自分の「分身」を植え付け、彼等を意のままに操作する。
その後、磁力の聖痕で「巨大隕石」を呼び寄せ、敢えて隕石の一部を都市全体に送り込み、混乱を生じさせる。青年に託した魔の聖痕の力で墜落した隕石群を無数のゴーレムへと変化させ、さり気なく闘技場に接近を試みる者達を撃退させるように配置させる。
ロスト・ナンバーズの配下はそれぞれが行動し、闘技場に接近を試みる者、もしくは聖遺物を所持している者を標的として各自が独自に動き、残されたリーリスと魔人王はここで待機の形となる。
だが、予想に反して散らばったロスト・ナンバーズがレノ達と交戦し、さらにはホムラの乱入によって一番の標的であるホノカが離脱してしまい、他にも闘技場の外部で宿泊していたライオネルやダイアなどの有力選手達がレノ達と協力して反撃され、殆どが撤退を余儀なくされた。
そのため、リーリスは一気に彼等を殲滅させるために巨大隕石の爆発を速めようと試みたが、先ほどの火柱を確認し、前回のように失敗する可能性も考慮しなければならない。
「今回は退くぞ」
「ハッ」
ボウッ……!!
リーリスは右手を上げると、隕石全体の亀裂から一層に赤く発光し、もう間もなく、都市全体を飲み込むほどの大爆発を引き起こす。時間はリーリス自体も把握できないが、それほど残されてはいない。
「リーリスサマ、オテヲ……」
「いらん」
魔人王が転移結晶を取り出し、リーリスに手を差し出すが、彼女はそれを振り払い、
「お前だけ先に帰れ」
「シカシ……」
「二度言わせるな」
「ハッ!!」
カッ!!
彼女が視線を向けただけで魔人王は深く跪き、すぐに転移結晶を掲げ、青白い光が彼を覆う。数秒後には黒甲冑の姿が消えてなくなり、リーリスは徐々に発光が強まっていく隕石を確認しながら、
「さて……見物と行こうか」
不敵な笑みを浮かべ、その場を後にする――
「……むっ……?」
「……コレハ」
闘技場内の中心部、つまり剣乱武闘の舞台である試合場の石畳の上には、1人の少女と黒甲冑の騎士が立っており、ロスト・ナンバーズの頂点に立つ「リーリス」と魔人族の代表である「魔人王」は闘技場の外から聞こえる轟音に目を向け、すぐに天に向けて登る「金色の火柱」を確認する。
2人は火柱の正体が「聖剣」の力で生み出された物だと悟り、魔人王はその場を離れようとしたが、リーリスは首を振る。
「必要ない。お前は傍にいろ」
「ハッ……」
リーリスに指示され、魔人王は深く跪き、その後は微動だにしない。彼は彼女に頭を下げながらも、不意に自分の甲冑に取りつけられた紫の「魔水晶(クリスタル)」が点滅していることに気が付き、準備が整ったことを悟る。
「……リーリスサマ、ドウヤラミナ、テッタイヲオエタヨウデス」
「そうか……ならばお前も先に避難しろ」
「オコトバデスガ、リーリスサマハ……」
「私はまだ最後の仕上げが残っている」
彼女は闘技場の上空に浮かぶ魔法陣を確認し、さらに上空には巨大隕石が浮揚している。既に巨大隕石の外殻全体に亀裂が走っており、罅割れから赤い光が零れていた。
――この隕石はリーリスの肉体に宿る「磁力の聖痕」によって地球外から引き寄せた隕石であり、既に内部はロスト・ナンバーズが仕込んだ火属性の魔水晶が破裂寸前であり、仮に隕石が爆発した場合は間違いなく、この闘人都市は「消滅」する。
今回のリーリスの目的は、剣乱武闘の開催地である闘人都市の闘技場、つまりは2人が立っている試合場の地下深くに眠っているの「聖遺物」を入手するために訪れたが、予想以上に警備が厳重であり、内密には掘り起こせなかった。
また、この「聖遺物」の封印を解く鍵となる3つの聖遺物が必要であり、ロスト・ナンバーズであろうと流石に聖遺物の調達は困難であり、闘技場の地下に眠っている事は確かなのだが、正確な封印地点を特定出来ていない。
そのため、リーリスはわざわざ自分の人魚族の姫という身分を捨て、その正体を表して部下達に闘技場の護衛を行わせ、この闘人都市を巨大隕石の爆破によって更地に変え、ゆっくりと時間を掛けて「聖遺物」の封印の場所を探す手筈だった。
――彼女はまず、自分の聖痕を利用して闘技場で待機していた剣乱武闘の参加者達に自分の「分身」を植え付け、彼等を意のままに操作する。
その後、磁力の聖痕で「巨大隕石」を呼び寄せ、敢えて隕石の一部を都市全体に送り込み、混乱を生じさせる。青年に託した魔の聖痕の力で墜落した隕石群を無数のゴーレムへと変化させ、さり気なく闘技場に接近を試みる者達を撃退させるように配置させる。
ロスト・ナンバーズの配下はそれぞれが行動し、闘技場に接近を試みる者、もしくは聖遺物を所持している者を標的として各自が独自に動き、残されたリーリスと魔人王はここで待機の形となる。
だが、予想に反して散らばったロスト・ナンバーズがレノ達と交戦し、さらにはホムラの乱入によって一番の標的であるホノカが離脱してしまい、他にも闘技場の外部で宿泊していたライオネルやダイアなどの有力選手達がレノ達と協力して反撃され、殆どが撤退を余儀なくされた。
そのため、リーリスは一気に彼等を殲滅させるために巨大隕石の爆発を速めようと試みたが、先ほどの火柱を確認し、前回のように失敗する可能性も考慮しなければならない。
「今回は退くぞ」
「ハッ」
ボウッ……!!
リーリスは右手を上げると、隕石全体の亀裂から一層に赤く発光し、もう間もなく、都市全体を飲み込むほどの大爆発を引き起こす。時間はリーリス自体も把握できないが、それほど残されてはいない。
「リーリスサマ、オテヲ……」
「いらん」
魔人王が転移結晶を取り出し、リーリスに手を差し出すが、彼女はそれを振り払い、
「お前だけ先に帰れ」
「シカシ……」
「二度言わせるな」
「ハッ!!」
カッ!!
彼女が視線を向けただけで魔人王は深く跪き、すぐに転移結晶を掲げ、青白い光が彼を覆う。数秒後には黒甲冑の姿が消えてなくなり、リーリスは徐々に発光が強まっていく隕石を確認しながら、
「さて……見物と行こうか」
不敵な笑みを浮かべ、その場を後にする――
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