種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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闘人都市崩壊編

都市の罠

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――レノがコトミ達と合流した頃、リノン達の方にも異変が起きていた。彼女達は逃走する青年を追跡するため、宿屋から大きく離れた街路を疾走していた。


「くそっ!!これ無理ゲーだろ!?」
「待ちなさい!!逃がしませんよ!!」
「逃がしませんっ!!臭いは覚えました!!」


リノンとポチ子に追われながら、魔の聖痕を宿す青年は街路を疾走する。テンペスト騎士団の副団長と幹部である2人に追跡されながらも、一定の距離を保ったまま逃走する。

肉体強化を行うリノンと、獣人族であるポチ子を相手に逃走する辺りは流石は「ロスト・ナンバーズ」のメンバーと褒めるべきだろうが、それにしては人間にしては速すぎる。恐らく、彼も「肉体強化」以外の何らかの方法で身体能力を上昇させている可能性も高い。

バルトロス国王達が宿泊している宿から随分と離れてしまい、ナナは国王の護衛のために残り、リノンとポチ子だけが彼の追跡を行う。青年はまるで陸上選手のような見事なフォームで走り込み、その両脚には鳥類の羽根の様な物が取り付けられており、リノンにも見覚えがある「魔道具」だ。


「あれは……ハーピィの羽根飾りか!!」
「確か、移動速度を上げる魔道具ですか!?」
「くっ……」


ポチ子だけならば彼に追いつくことも可能だが、それでは彼女だけに負担が掛かってしまう。相手は曲がりなりにも聖痕所持者であり、単独で交戦するのは危険である。

距離が大きく開いているため、リノンの火属性の魔法も届かず、レノがいれば砲撃魔法で撃墜できるだろうが、彼女達には彼と同じ芸当は出来ない。こういう事態ではレノが羨ましく思えるが、泣き言を言っている暇は無い。


「ポチ子!!魔石はあるか?」
「す、すいません……レノさんがいると魔法を使う機会が全然ないので、目眩まし用の物しか持っていません!!」
「そうか……!!」


普通ならば魔術師は複数の魔石を所持するのが当たり前だが、レノは媒介無しでしかも無詠唱魔法で戦い続けているため、同じ団員のポチ子たちが魔石を使用する機会が少なく、彼の部下であるポチ子も自然と必要最低限の魔石しか所持していない。

基本的に魔法が必要な場面に陥ればレノが先に動き出しているため、ポチ子が魔石を使用する事はほぼ無い。それに魔石に頼り過ぎて戦うのは危険であり、いざという時に魔石が使用できない場面に陥った場合のため、ポチ子は支給された魔石は殆ど換金して家族に仕送りを行っていた。

王国からの支給品を勝手に換金するのはどうかと思われるかもしれないが、魔石にも使用期限があるため、どうせ使わないらなば早めに換金して金銭に変化しておくのも悪くは無い。


「すんすん……前の方からまたゴーレムの臭いです!!」
「何!?」


またもや前方を走る「青年」が聖痕の力を使用したのかと思ったが、今まで観察していた限りは聖痕を使用する様子は無く、恐らくはリノン達と遭遇する前から街中にゴーレムを作りだし、ここまで2人を引き寄せたのだろう。


ゴォオオオオッ……!!


周囲の建物の影から細見ではあるがゴーレムの集団が出現し、青年は立ち止まり、全身を汗だくにしながらも笑みを浮かべ、


「ぜえっ……はあっ……こ、ここまで来ればこっちのもんだ……さあ、やれ!!」
「ゴォオオオッ!!」
「ウォオオッ……!!」


ドォンッ!!


「くっ……」
「う、後ろからも現れました!!」


リノンとポチ子を取り囲むように約10体の「ゴーレム」が出現し、先ほど同様に隕石から作り出されたゴーレムであり、レミアがいない今の状況では分が悪い。


「さあ!!やれ!!」
「「ゴォオオオオッ……!!」」


青年の指示にゴーレムたちが同時に動き出し、動きは遅いが腕力は巨人族に匹敵するのは間違いなく、リノンとポチ子は背中合わせに武器を構える。


「火炎陣!!」
「犬牙流……乱切り!!」


ズガァンッ!!


「「ゴォオオオッ……!?」」


リノンの刀身が一体のゴーレムに突き刺さり、そのまま発熱すると同時に内側から爆発を起こして隣にいたゴーレムも巻き込んで撃破する。その一方でポチ子は空中に舞い上がり、双剣を振るいあげ、ゴーレムたちに斬撃を放つ。


ガガガガッ……!!


的確にゴーレムたちの関節の部分に刃を走らせ、腕や脚の一部を切り落とす。地下迷宮のゴーレムとは違い、外殻の硬度は低く、これならば勝てるのではと2人が同時に期待を抱いた時、


「「アガァッ……!!」」
「なっ!?」
「わうっ!?」


周囲を取り囲むゴーレムたちが大きく口内を開け、赤い光が放たれる。すぐに2人の脳裏に地下迷宮のゴーレム・キングの「熱線」を思いだし、このゴーレムたちも同様の能力を持っている事に感付く。2人は肉体強化で建物の上に避難しようとしたが、既にゴーレムたちの口内は光り輝き、目が眩む。



――ズガァアアアアンッ!!



次の瞬間、激しい爆裂音が街中に響き渡り、爆煙が舞う。
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