種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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闘人都市崩壊編

ゲイ・ボルグ

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「――ふむっ」


クサナギを手にしたホノカは、刀身から吹き溢れる竜巻が彼女の周囲に風の防護壁を生み出し、彼女を中心に半径3メートルほどの嵐の目が形成されている。竜巻はホノカが動く度に移動を行い、彼女はゆっくりと闘人都市の外壁部分に向かって移動していた。



ゴォオオオオオオオッ――!!



ホノカの生み出した竜巻は周囲に存在する建物の瓦礫を飲み込み、天高く吹き飛ばす。普通ならば例え大型の魔獣でもこの竜巻に飲み込まれた時点で肉塊と化すのは間違いないが、現在彼女が相手をしているのはマドカでもツインでもなく、恐らくはホノカの人生の中でも最も強大な力を持つ相手だ。


「やれやれ……あの時に躊躇せず、宮殿ごと吹き飛ばすべきだったかな」


前回、彼女が収める交易都市の宮殿にホムラは姿を現し、彼女にある男の情報を問いただした。だが、ホノカがそれを知らない事を告げると立ち去ろうとし、彼女の所持していた名工に造られたと思われる薙刀が気になったホノカが交戦し、その際にクサナギで派手に吹き飛ばした。

だが、宮殿を破壊させるほどの威力を引き出したにも関わらず、ホムラは五体満足で大会に堂々と出場し、そして自分の元に現れた。こんな事ならばカラドボルグの所持者であるレノに護衛でも頼むべきだったかと考え込むが、今は一刻も早く闘人都市の外に向かわなければならない。



――クサナギの弱点、というよりホノカの弱点は出力の操作に問題があり、クサナギの完全な操作を行えない。カラドボルグのレノとは違い、正式な所有者であるホノカだが、クサナギはそのあまりの威力の高さから滅多に使用せず、アイギス同様に宝物庫に保管している。



現在、彼女が使用できるのは自分の身を守る竜巻を生み出す事だけであり、周囲を取り囲む竜巻が攻撃と同時に防御の役割を持つのだが、状況はホノカの不利だった。


「噂には聞いていたが、まさか実在するとはな。魔槍(ゲイ・ボルグ)……」


盗賊王の異名を持つ彼女の脳には世界中の「聖遺物」の情報を入れており、当然ながらに魔王が使用していた「魔槍(ゲイ・ボルグ)」の事も知っている。



――その出自は全くの不明であり、どのような能力を持っているのかも分からない。だが世界規模でその名前だけが知られており、武具系の聖遺物の中でも異様な存在だ。



実際、ホノカは魔槍の力を既に目の当たりにしており、周囲の状況を考えずにこのような大規模の竜巻を形成し、ヨウカたちの元を離れて移動を行っている。クサナギではホムラのゲイ・ボルグに対抗できず、だからと言って逃げるわけには行かない。ここで引けば、間違いなくホムラは見せしめとしてヨウカ達を狙うだろう。



ビュオォオオオオオッ……!!



不意に前方の「竜巻」に異変が生じ、彼女を中心に渦を巻く嵐に乱れが生じ、ホノカの前方の障壁が徐々に「削り」取られる。


「……鬼ごっこはお終いか?」


暴風を左右に斬り裂きながら、魔槍を握りしめたホムラが現れ、彼女は竜巻の障壁を通り越してくる。その姿にホノカは溜息を吐き、どれほどの出力の竜巻を作り出そうと、彼女が持つゲイ・ボルグが打ち消してしまう。



――この世界に置ける魔槍「ゲイ・ボルグ」の能力は、先端の「刃」があらゆる物体を「削りとる」正確に言うならば刃に触れた部分が「消滅」させる事が出来る。



ゲイ・ボルグに消滅できない物体は存在せず、それは空気で形成された竜巻も例外ではなく、ホノカが造りだした竜巻の障壁を削り取りながらホムラは現れた。



「全く……嫌になるね、何だいその馬鹿げた槍は」
「こっちも手に入れるのに苦労したからな……さて、そろそろいいだろう」


ボフゥッ……!!


槍を肩に置きながら、ホムラは周囲に形成されていた竜巻が消散したことを確認すると、


「ここまで来ればもういいだろう。お前も遠慮せずにその力を引きだせばいい」
「……どういう意味だい?」
「気付かないと思っていたのか?その刀は、まだ出力を上げられるはずだ」


ホムラの言う通り、周囲の「被害」さえ考えなければ更なる竜巻を形成する事も可能だが、クサナギの真の力を解放すれば冗談抜きでこの都市が崩壊してしまう。

だからこそ、ホノカは徐々に移動を続け、一番被害が少ない外壁の部分にまで移動した。だが、まだこの場所でもクサナギの全力は扱えない。出来れば闘人都市の外側にまで誘導したかったが、企みを見抜かれたようだ。


「さあ、どうする?ここで死ぬか、それとも都市を巻き込んでその刀の力を解放するか」


ゲイ・ボルグを構えながら、自分に対して刃を向けるホムラに対し、ホノカは冷や汗を流す。ここまで自分自身が追い詰められる状況など初めてであり、相手は間違いなく世界最強の聖遺物であり、恐らくはレノのカラドボルグに匹敵するか、それ以上の武具だ。


「仕方ない……本当なら彼に対抗するために見つけ出したんだがな……」
「……彼?」



ブゥンッ――!



手元から「転移魔方陣」を生み出し、彼女の右手に漆黒の魔水晶が落ちてくる。ホムラの記憶の限り見たことも無い種類の魔水晶であり、少なくとも聖遺物の類ではないだろうが、呪具のような歪な空気もと纏っていない。

ホノカはその魔水晶を握りしめた瞬間、彼女の体内に魔水晶が入り込み、その直後に彼女の掌に存在する「転移の聖痕」が強く輝き、2人の地面に巨大な転移魔方陣が一瞬で形成される。



「何?」
「さあ、行こうか」



――カッ!!



次の瞬間、魔方陣が発光し、2人の姿が光の奔流に飲み込まれ、光が収まった時には既にホノカとホムラの姿が消えていた。
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