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剣乱武闘編
壊れた玩具
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ドゴォオオオンッ……!!
「うわっ……何だ?」
地下通路を移動中、地上に繋がる螺旋階段を登りきったレノは、まるで闘技場全体が揺れ動いた轟音を耳にする。
(ゴンちゃんか……派手にやってるな)
すぐに轟音の正体がゴンゾウの一撃だと推理し、相当な手練れと組み合わせが当たったのかと予想しながら急いで観客席の方向に向かう。
「もう終わってないだろうな……」
ゴンゾウの強さはよく知っているため、彼が負けるとは思えないが、何故か先ほどから嫌な胸騒ぎする。以前にも覚えがある嫌な感覚であり、レノは観客席に繋がる通路を抜け出した時、
「――えっ……」
試合場のリングが視界に入った瞬間、レノの目が大きく見開かれ、
「ぐはっ……!!」
「……ふうっ」
そこには、ゴンゾウの胸元に右手を突き刺したあのダークエルフの姿があり、右手が完全に体内に入り込んでいた。
「い、いやぁああああっ!?」
「やっ……殺りやがった……」
「ゴッ……ゴンゾォオオオオオオオオオッ!!」
「お、落ち着け!!」
「ドウシタ……!?」
観客たちが悲鳴を上げ、巨人族の代表であるダンゾウが立ち上がり、すぐにも闘技場に降り立とうとしたが慌てて他の代表や護衛兵が引き止める。まだ試合は続行されており、例え種族代表であろうと試合場に乱入する事は許されない。
「ぐふっ……!!」
「まだ息があるのか?生命力だけはたいしたものだな」
「がはぁああああっ!?」
ズブブッ……!
ホムラの右腕がゴンゾウの中に入り込み、体内で彼の身体を弄んでいる。普通ならば即死だろうが、一際生命力が強い彼だからこそ生き残れているが、明らかに限界が近い。
「これを握りつぶせば……どうなる?」
「ぐぐっ……!!」
「ふんっ」
ズボォオオオッ!!
「がはぁああああっ……!!」
ゴンゾウの胸元から右手が引き抜かれ、彼はそのまま跪き、胸に空いた穴から大出血を起こす。すぐに右手で胸元を抑えるが、意識は既に朦朧としている。
「ぐふっ……げはっ!」
「中々しぶといな」
「まだ……終わっていない」
この試合は相手が気絶か降参するまで続行され、ゴンゾウが降参の意思を見せない限りは試合は終わらない。
何とか立ち上がろうとしたが、ゴンゾウの身体は既に感覚が薄れて行き、動くことも出来ない。それでもここで諦めるわけには行かず、この目の前の女を最終日の決勝戦に出場させる訳にはいかない。
(……この女は……俺達とは違う生物だ)
先ほどから感じる違和感、そして目の前でこちらを見つめるホムラの目は、
(……壊れた玩具を、見る目だ……)
「ゴンッ……!?」
――ゆっくりと彼の身体が倒れ込み、誰かがゴンゾウの名前を叫んだが、彼の意識は途切れて倒れこむ。
『……それまでです!!勝者、ホムラ選手!!』
闘技場にラビットの声が響き渡るが、観客の誰もが歓声を上げられず、そんな観衆に対してホムラは見渡してある方向に視線を向けると、
「……ふふっ」
無意識に笑い声をあげ、ゆっくりと試合場から離れていく。それを確認するとラビットはすぐにゴンゾウの救護班を向かわせる指示を送る。
『さっさと救護班を用意してください!!まだ助かりますよ!!』
『私が行くよ~』
『俺も行く……!!』
ラビットの声に反応して慌てて東門から救護班の大会の審判員たちが駆け寄るが、人魚族の姫であるアクアが金魚鉢をふよふよと浮揚させながら移動し、ダンゾウがその巨体から想像できない素早さで試合場に降り立ち、ゴンゾウの元に向かう。
すぐに彼女は倒れ込んだ彼に接近し、ダンゾウが心配そうに顔を寄せるが、気にせずに彼女は鼻歌交じりで彼の肉体に手をやり、
「よっと」
「ぐふっ……」
「お、おい!?」
ゴロンッ……
いとも簡単に外見からは想像出来ない腕力でゴンゾウの体勢を仰向けに変え、ほっかりと空いた胸元の傷口に視線を向け、
「う~ん……これ、もう手遅れかもね」
「そ、そんな……何とかならんのか!!」
「あわわ~……ちょ、揺らさないでよ」
金魚鉢を掴み、激しく揺れ動かすダンゾウにアクアは目を回し、すぐに逃げるように空中に浮揚すると、
「落ち着きなって……やれるだけやってみるからさ」
「頼むっ……!!」
「それと、気が散るからどっか行ってくれない?」
「す、すまん……」
アクアの指示に従い、ダンゾウは下がると彼女は両手をゴンゾウ胸元に向け、誰もがその光景に息を飲む。
「……ホーリー・ウォーター」
ボウッ……!!
彼女の露出した背中に「水滴」を想像させる紋様が浮かび上がり、観客席で観察していたレノの右手が反応する。
(あれが水の……いや、それより……)
アクアは両手を合わせ、彼女の量の掌から白く光り輝く「水球」が形成され、その大きさはバスケットボールほどに変化すると、彼女はゴンゾウの胸元に押し込む。
「うぐっ……!!」
「ゴンゾウ!!」
「うるさいな~」
胸元に液体を浸した瞬間、ゴンゾウの傷口に吸収される様に消えていき、どんどんと皮膚が再生され、血の跡もさえも残っていない状態に変化する。恐らくは「水属性」と「聖属性」を掛け合わせた魔法だろうが、10秒足らずで傷口が完全に消える辺り、彼女の魔法が聖痕で強化されているのは間違いない。
「うわっ……何だ?」
地下通路を移動中、地上に繋がる螺旋階段を登りきったレノは、まるで闘技場全体が揺れ動いた轟音を耳にする。
(ゴンちゃんか……派手にやってるな)
すぐに轟音の正体がゴンゾウの一撃だと推理し、相当な手練れと組み合わせが当たったのかと予想しながら急いで観客席の方向に向かう。
「もう終わってないだろうな……」
ゴンゾウの強さはよく知っているため、彼が負けるとは思えないが、何故か先ほどから嫌な胸騒ぎする。以前にも覚えがある嫌な感覚であり、レノは観客席に繋がる通路を抜け出した時、
「――えっ……」
試合場のリングが視界に入った瞬間、レノの目が大きく見開かれ、
「ぐはっ……!!」
「……ふうっ」
そこには、ゴンゾウの胸元に右手を突き刺したあのダークエルフの姿があり、右手が完全に体内に入り込んでいた。
「い、いやぁああああっ!?」
「やっ……殺りやがった……」
「ゴッ……ゴンゾォオオオオオオオオオッ!!」
「お、落ち着け!!」
「ドウシタ……!?」
観客たちが悲鳴を上げ、巨人族の代表であるダンゾウが立ち上がり、すぐにも闘技場に降り立とうとしたが慌てて他の代表や護衛兵が引き止める。まだ試合は続行されており、例え種族代表であろうと試合場に乱入する事は許されない。
「ぐふっ……!!」
「まだ息があるのか?生命力だけはたいしたものだな」
「がはぁああああっ!?」
ズブブッ……!
ホムラの右腕がゴンゾウの中に入り込み、体内で彼の身体を弄んでいる。普通ならば即死だろうが、一際生命力が強い彼だからこそ生き残れているが、明らかに限界が近い。
「これを握りつぶせば……どうなる?」
「ぐぐっ……!!」
「ふんっ」
ズボォオオオッ!!
「がはぁああああっ……!!」
ゴンゾウの胸元から右手が引き抜かれ、彼はそのまま跪き、胸に空いた穴から大出血を起こす。すぐに右手で胸元を抑えるが、意識は既に朦朧としている。
「ぐふっ……げはっ!」
「中々しぶといな」
「まだ……終わっていない」
この試合は相手が気絶か降参するまで続行され、ゴンゾウが降参の意思を見せない限りは試合は終わらない。
何とか立ち上がろうとしたが、ゴンゾウの身体は既に感覚が薄れて行き、動くことも出来ない。それでもここで諦めるわけには行かず、この目の前の女を最終日の決勝戦に出場させる訳にはいかない。
(……この女は……俺達とは違う生物だ)
先ほどから感じる違和感、そして目の前でこちらを見つめるホムラの目は、
(……壊れた玩具を、見る目だ……)
「ゴンッ……!?」
――ゆっくりと彼の身体が倒れ込み、誰かがゴンゾウの名前を叫んだが、彼の意識は途切れて倒れこむ。
『……それまでです!!勝者、ホムラ選手!!』
闘技場にラビットの声が響き渡るが、観客の誰もが歓声を上げられず、そんな観衆に対してホムラは見渡してある方向に視線を向けると、
「……ふふっ」
無意識に笑い声をあげ、ゆっくりと試合場から離れていく。それを確認するとラビットはすぐにゴンゾウの救護班を向かわせる指示を送る。
『さっさと救護班を用意してください!!まだ助かりますよ!!』
『私が行くよ~』
『俺も行く……!!』
ラビットの声に反応して慌てて東門から救護班の大会の審判員たちが駆け寄るが、人魚族の姫であるアクアが金魚鉢をふよふよと浮揚させながら移動し、ダンゾウがその巨体から想像できない素早さで試合場に降り立ち、ゴンゾウの元に向かう。
すぐに彼女は倒れ込んだ彼に接近し、ダンゾウが心配そうに顔を寄せるが、気にせずに彼女は鼻歌交じりで彼の肉体に手をやり、
「よっと」
「ぐふっ……」
「お、おい!?」
ゴロンッ……
いとも簡単に外見からは想像出来ない腕力でゴンゾウの体勢を仰向けに変え、ほっかりと空いた胸元の傷口に視線を向け、
「う~ん……これ、もう手遅れかもね」
「そ、そんな……何とかならんのか!!」
「あわわ~……ちょ、揺らさないでよ」
金魚鉢を掴み、激しく揺れ動かすダンゾウにアクアは目を回し、すぐに逃げるように空中に浮揚すると、
「落ち着きなって……やれるだけやってみるからさ」
「頼むっ……!!」
「それと、気が散るからどっか行ってくれない?」
「す、すまん……」
アクアの指示に従い、ダンゾウは下がると彼女は両手をゴンゾウ胸元に向け、誰もがその光景に息を飲む。
「……ホーリー・ウォーター」
ボウッ……!!
彼女の露出した背中に「水滴」を想像させる紋様が浮かび上がり、観客席で観察していたレノの右手が反応する。
(あれが水の……いや、それより……)
アクアは両手を合わせ、彼女の量の掌から白く光り輝く「水球」が形成され、その大きさはバスケットボールほどに変化すると、彼女はゴンゾウの胸元に押し込む。
「うぐっ……!!」
「ゴンゾウ!!」
「うるさいな~」
胸元に液体を浸した瞬間、ゴンゾウの傷口に吸収される様に消えていき、どんどんと皮膚が再生され、血の跡もさえも残っていない状態に変化する。恐らくは「水属性」と「聖属性」を掛け合わせた魔法だろうが、10秒足らずで傷口が完全に消える辺り、彼女の魔法が聖痕で強化されているのは間違いない。
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