497 / 1,095
剣乱武闘編
ロプス
しおりを挟む
3人はサイクロプスを引き連れ、集落の戻るとハイ・ゴブリン達が驚愕し、慌てて武器を身構えるが、ソフィアが事情を説明する。
「えっと……皆に紹介するね。この子はロプス。俺の……姉弟みたいなものかな」
「キュロロロッ……!!」
「ギギッ!?」
「ギギギッ……!!」
「うわぁ~……大きいね」
「……強そう」
ヨウカとコトミも驚いてはいるが、ハイ・ゴブリン達と違って特に警戒心は無い。2人とも何気に相当な修羅場を潜り抜けており、今更サイクロプス程度では驚きもしない。
「お前も落ち着けって……これから一緒に暮らすならな」
「キュロロッ?」
「ギギ……?」
「ソフィア……その、本気なのか?」
「サイクロプスは、家族以外は群れない」
「知ってるよ。けど、こいつは別」
ソフィアもサイクロプスの生態はよく知っているが、このロプスは元々はビルドが森の中から見つけ出したサイクロプスであり、このような場所にまで彷徨っている事を考えても親兄弟はいない可能性が高い。
このロプスは孤児院が存在した森の中で発見されたが、野生のサイクロプスだった可能性は低い。サイクロプスという生物は非常に「家族愛」が強く、仮にロプスに親兄弟がいた場合、例えビルドが誘拐したとしても他の親族が必ず奪還するために探し出しているだろう。
だが、ロプスを捕まえてから3年以上の時を過ぎても、孤児院には彼を取り戻そうとする大人のサイクロプスは姿を現さない。この事からビルドが発見した時点からロプスは何らかの理由で天涯孤独だったらしく、彼の親兄弟は最初からいなかったのだ。
孤児院の中ではソフィア以外には恐れられ、近寄りがたい存在だったため、唯一接してくれたソフィアにだけはロプスもよく懐いた。
「お前もここに来たのは、この森が居心地良かったからだろ?」
「キュロロ……」
「ほら、挨拶して」
サイクロプスは頭を撫でられ、ハイ・ゴブリン達に視線を向けると、怯える彼らを見て、
「キュロロッ……」
「ギギ……?」
ゆっくりと頭を下げ、体勢を低くすることでハイ・ゴブリン達と視線を合わせて近付く。
「ギギ……」
「ギギギッ!」
振るえていたハイ・ゴブリン達も顔を見合わせ、中にはロプスに興味津津のゴブリン達が接近し、話しかける。
「キュロロッ……」
「ギギッ……」
「ギィッ」
小さなゴブリンがムミョウの育成している果樹園から果物を1つ拝借し、ロプスに手渡すと嬉しそうに彼はそれを受け取って口に含む。
「キュロロッ♪」
「ギギッ♪」
「ギギギッ!!」
美味しそうに果物を食すロプスにゴブリン達も笑みを浮かべ、そのまま子供のゴブリンはロプスの身体に抱き付き、頭の上や肩に乗っかる。ロプスもゴブリン達に群がれる事は嫌ではないのか、くすぐったそうな声を上げてゴブリン達を抱きかかえ、嬉しそうに鳴き声を上げる。まるで子供同士の戯れであり、どうやら争う心配はなさそうだ。
「おおっ……」
「何だか感動的だね……」
「……良かった」
「信じられない光景だな……まさか、サイクロプスとゴブリンがああも仲良くなれるなんて……」
「うむっ」
「ははっ……良かったな」
ソフィアはロプスが無事にゴブリン達に受け入れられたことに安堵し、その場に座り込むとすぐにレノの姿に戻る。
「ふうっ……疲れた」
「……よしよし」
「おおうっ……」
コトミから後ろから抱き付かれ、彼女の豊満すぎる乳房が後頭部に押し付けられ、頭まで撫でられる。
「しかし、サイクロプス……ロプス君と言ったか?が、何故この森に……」
「レノを、追ってきた?」
「それは有り得ないんじゃ……」
「……マザーが言ってた。家族を世界で一番に大事にするのはサイクロプスだって……ロプス君、レノを家族だと思ってる」
その理論で行くと、ロプスは孤児院でレノと別れてからずっと彼を探していたことになるが、実際の所は定かではない。
「まあ、長老が帰ってきたら説明しないと……」
「……聖導教会にも」
「そうだな……報告しとかないと、討伐されかねないし」
この森に訪れているのはレノ達以外にも、センリが率いる教会側の人間も存在し、森の外れには教会側の兵士が見張り役として監視している。彼等にも伝えておかないとロプスに向けて討伐部隊が送られかねない。
レノはコトミの胸に埋もれながら、彼女に身を任せ、ロプスとゴブリン達の仲睦まじい姿を観察していると、
「中々に有意義な休暇を味わってますね~」
――唐突にレノ達の背後から声を掛けられ、その場にいる全員が振り返ると、そこには兎型の獣人の少女が立っており、レノがつい先ほどまで夢の中で会話していた相手だ。
だが、事情を知らない他の面々は驚愕して目を見開き、リノンとゴンゾウに至ってはすぐに身構える。2人も知らない顔ではないが、直接対面したことは一度も無い。
「ラビット……さん?」
「何故ここに……」
「どもども~」
そこには剣乱武闘の実況と審判役を務める「ラビット」の姿があり、彼女は右手に果物が入った籠と、左手には昨日も所持していた緊急箱を所持しており、
「患者がいると聞いて治療に来ましたよ~……ね、レノさん?」
「……ああ、そうだったな」
わざとらしくウインクするアイリィに対し、レノは深いため息を吐いた。
「えっと……皆に紹介するね。この子はロプス。俺の……姉弟みたいなものかな」
「キュロロロッ……!!」
「ギギッ!?」
「ギギギッ……!!」
「うわぁ~……大きいね」
「……強そう」
ヨウカとコトミも驚いてはいるが、ハイ・ゴブリン達と違って特に警戒心は無い。2人とも何気に相当な修羅場を潜り抜けており、今更サイクロプス程度では驚きもしない。
「お前も落ち着けって……これから一緒に暮らすならな」
「キュロロッ?」
「ギギ……?」
「ソフィア……その、本気なのか?」
「サイクロプスは、家族以外は群れない」
「知ってるよ。けど、こいつは別」
ソフィアもサイクロプスの生態はよく知っているが、このロプスは元々はビルドが森の中から見つけ出したサイクロプスであり、このような場所にまで彷徨っている事を考えても親兄弟はいない可能性が高い。
このロプスは孤児院が存在した森の中で発見されたが、野生のサイクロプスだった可能性は低い。サイクロプスという生物は非常に「家族愛」が強く、仮にロプスに親兄弟がいた場合、例えビルドが誘拐したとしても他の親族が必ず奪還するために探し出しているだろう。
だが、ロプスを捕まえてから3年以上の時を過ぎても、孤児院には彼を取り戻そうとする大人のサイクロプスは姿を現さない。この事からビルドが発見した時点からロプスは何らかの理由で天涯孤独だったらしく、彼の親兄弟は最初からいなかったのだ。
孤児院の中ではソフィア以外には恐れられ、近寄りがたい存在だったため、唯一接してくれたソフィアにだけはロプスもよく懐いた。
「お前もここに来たのは、この森が居心地良かったからだろ?」
「キュロロ……」
「ほら、挨拶して」
サイクロプスは頭を撫でられ、ハイ・ゴブリン達に視線を向けると、怯える彼らを見て、
「キュロロッ……」
「ギギ……?」
ゆっくりと頭を下げ、体勢を低くすることでハイ・ゴブリン達と視線を合わせて近付く。
「ギギ……」
「ギギギッ!」
振るえていたハイ・ゴブリン達も顔を見合わせ、中にはロプスに興味津津のゴブリン達が接近し、話しかける。
「キュロロッ……」
「ギギッ……」
「ギィッ」
小さなゴブリンがムミョウの育成している果樹園から果物を1つ拝借し、ロプスに手渡すと嬉しそうに彼はそれを受け取って口に含む。
「キュロロッ♪」
「ギギッ♪」
「ギギギッ!!」
美味しそうに果物を食すロプスにゴブリン達も笑みを浮かべ、そのまま子供のゴブリンはロプスの身体に抱き付き、頭の上や肩に乗っかる。ロプスもゴブリン達に群がれる事は嫌ではないのか、くすぐったそうな声を上げてゴブリン達を抱きかかえ、嬉しそうに鳴き声を上げる。まるで子供同士の戯れであり、どうやら争う心配はなさそうだ。
「おおっ……」
「何だか感動的だね……」
「……良かった」
「信じられない光景だな……まさか、サイクロプスとゴブリンがああも仲良くなれるなんて……」
「うむっ」
「ははっ……良かったな」
ソフィアはロプスが無事にゴブリン達に受け入れられたことに安堵し、その場に座り込むとすぐにレノの姿に戻る。
「ふうっ……疲れた」
「……よしよし」
「おおうっ……」
コトミから後ろから抱き付かれ、彼女の豊満すぎる乳房が後頭部に押し付けられ、頭まで撫でられる。
「しかし、サイクロプス……ロプス君と言ったか?が、何故この森に……」
「レノを、追ってきた?」
「それは有り得ないんじゃ……」
「……マザーが言ってた。家族を世界で一番に大事にするのはサイクロプスだって……ロプス君、レノを家族だと思ってる」
その理論で行くと、ロプスは孤児院でレノと別れてからずっと彼を探していたことになるが、実際の所は定かではない。
「まあ、長老が帰ってきたら説明しないと……」
「……聖導教会にも」
「そうだな……報告しとかないと、討伐されかねないし」
この森に訪れているのはレノ達以外にも、センリが率いる教会側の人間も存在し、森の外れには教会側の兵士が見張り役として監視している。彼等にも伝えておかないとロプスに向けて討伐部隊が送られかねない。
レノはコトミの胸に埋もれながら、彼女に身を任せ、ロプスとゴブリン達の仲睦まじい姿を観察していると、
「中々に有意義な休暇を味わってますね~」
――唐突にレノ達の背後から声を掛けられ、その場にいる全員が振り返ると、そこには兎型の獣人の少女が立っており、レノがつい先ほどまで夢の中で会話していた相手だ。
だが、事情を知らない他の面々は驚愕して目を見開き、リノンとゴンゾウに至ってはすぐに身構える。2人も知らない顔ではないが、直接対面したことは一度も無い。
「ラビット……さん?」
「何故ここに……」
「どもども~」
そこには剣乱武闘の実況と審判役を務める「ラビット」の姿があり、彼女は右手に果物が入った籠と、左手には昨日も所持していた緊急箱を所持しており、
「患者がいると聞いて治療に来ましたよ~……ね、レノさん?」
「……ああ、そうだったな」
わざとらしくウインクするアイリィに対し、レノは深いため息を吐いた。
0
お気に入りに追加
485
あなたにおすすめの小説
なりゆきで、君の体を調教中
星野しずく
恋愛
教師を目指す真が、ひょんなことからメイド喫茶で働く現役女子高生の優菜の特異体質を治す羽目に。毎夜行われるマッサージに悶える優菜と、自分の理性と戦う真面目な真の葛藤の日々が続く。やがて二人の心境には、徐々に変化が訪れ…。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
【完結】辺境伯令嬢は新聞で婚約破棄を知った
五色ひわ
恋愛
辺境伯令嬢としてのんびり領地で暮らしてきたアメリアは、カフェで見せられた新聞で自身の婚約破棄を知った。真実を確かめるため、アメリアは3年ぶりに王都へと旅立った。
※本編34話、番外編『皇太子殿下の苦悩』31+1話、おまけ4話
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
結婚して5年、初めて口を利きました
宮野 楓
恋愛
―――出会って、結婚して5年。一度も口を聞いたことがない。
ミリエルと旦那様であるロイスの政略結婚が他と違う点を挙げよ、と言えばこれに尽きるだろう。
その二人が5年の月日を経て邂逅するとき
ボロ雑巾な伯爵夫人、やっと『家族』を手に入れました。~旦那様から棄てられて、ギブ&テイクでハートフルな共同生活を始めます2~
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
第二夫人に最愛の旦那様も息子も奪われ、挙句の果てに家から追い出された伯爵夫人・フィーリアは、なけなしの餞別だけを持って大雨の中を歩き続けていたところ、とある男の子たちに出会う。
言葉汚く直情的で、だけど決してフィーリアを無視したりはしない、ディーダ。
喋り方こそ柔らかいが、その実どこか冷めた毒舌家である、ノイン。
12、3歳ほどに見える彼らとひょんな事から共同生活を始めた彼女は、人々の優しさに触れて少しずつ自身の居場所を確立していく。
====
●本作は「ボロ雑巾な伯爵夫人、旦那様から棄てられて、ギブ&テイクでハートフルな共同生活を始めます。」からの続き作品です。
前作では、二人との出会い~同居を描いています。
順番に読んでくださる方は、目次下にリンクを張っておりますので、そちらからお入りください。
※アプリで閲覧くださっている方は、タイトルで検索いただけますと表示されます。
大好きな母と縁を切りました。
むう子
ファンタジー
7歳までは家族円満愛情たっぷりの幸せな家庭で育ったナーシャ。
領地争いで父が戦死。
それを聞いたお母様は寝込み支えてくれたカルノス・シャンドラに親子共々心を開き再婚。
けれど妹が生まれて義父からの虐待を受けることに。
毎日母を想い部屋に閉じこもるナーシャに2年後の政略結婚が決定した。
けれどこの婚約はとても酷いものだった。
そんな時、ナーシャの生まれる前に亡くなった父方のおばあさまと契約していた精霊と出会う。
そこで今までずっと近くに居てくれたメイドの裏切りを知り……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる