種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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剣乱武闘編

ロプス

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3人はサイクロプスを引き連れ、集落の戻るとハイ・ゴブリン達が驚愕し、慌てて武器を身構えるが、ソフィアが事情を説明する。


「えっと……皆に紹介するね。この子はロプス。俺の……姉弟みたいなものかな」
「キュロロロッ……!!」
「ギギッ!?」
「ギギギッ……!!」
「うわぁ~……大きいね」
「……強そう」


ヨウカとコトミも驚いてはいるが、ハイ・ゴブリン達と違って特に警戒心は無い。2人とも何気に相当な修羅場を潜り抜けており、今更サイクロプス程度では驚きもしない。


「お前も落ち着けって……これから一緒に暮らすならな」
「キュロロッ?」
「ギギ……?」
「ソフィア……その、本気なのか?」
「サイクロプスは、家族以外は群れない」
「知ってるよ。けど、こいつは別」


ソフィアもサイクロプスの生態はよく知っているが、このロプスは元々はビルドが森の中から見つけ出したサイクロプスであり、このような場所にまで彷徨っている事を考えても親兄弟はいない可能性が高い。

このロプスは孤児院が存在した森の中で発見されたが、野生のサイクロプスだった可能性は低い。サイクロプスという生物は非常に「家族愛」が強く、仮にロプスに親兄弟がいた場合、例えビルドが誘拐したとしても他の親族が必ず奪還するために探し出しているだろう。

だが、ロプスを捕まえてから3年以上の時を過ぎても、孤児院には彼を取り戻そうとする大人のサイクロプスは姿を現さない。この事からビルドが発見した時点からロプスは何らかの理由で天涯孤独だったらしく、彼の親兄弟は最初からいなかったのだ。

孤児院の中ではソフィア以外には恐れられ、近寄りがたい存在だったため、唯一接してくれたソフィアにだけはロプスもよく懐いた。


「お前もここに来たのは、この森が居心地良かったからだろ?」
「キュロロ……」
「ほら、挨拶して」


サイクロプスは頭を撫でられ、ハイ・ゴブリン達に視線を向けると、怯える彼らを見て、


「キュロロッ……」
「ギギ……?」


ゆっくりと頭を下げ、体勢を低くすることでハイ・ゴブリン達と視線を合わせて近付く。


「ギギ……」
「ギギギッ!」


振るえていたハイ・ゴブリン達も顔を見合わせ、中にはロプスに興味津津のゴブリン達が接近し、話しかける。


「キュロロッ……」
「ギギッ……」
「ギィッ」


小さなゴブリンがムミョウの育成している果樹園から果物を1つ拝借し、ロプスに手渡すと嬉しそうに彼はそれを受け取って口に含む。


「キュロロッ♪」
「ギギッ♪」
「ギギギッ!!」


美味しそうに果物を食すロプスにゴブリン達も笑みを浮かべ、そのまま子供のゴブリンはロプスの身体に抱き付き、頭の上や肩に乗っかる。ロプスもゴブリン達に群がれる事は嫌ではないのか、くすぐったそうな声を上げてゴブリン達を抱きかかえ、嬉しそうに鳴き声を上げる。まるで子供同士の戯れであり、どうやら争う心配はなさそうだ。


「おおっ……」
「何だか感動的だね……」
「……良かった」
「信じられない光景だな……まさか、サイクロプスとゴブリンがああも仲良くなれるなんて……」
「うむっ」
「ははっ……良かったな」


ソフィアはロプスが無事にゴブリン達に受け入れられたことに安堵し、その場に座り込むとすぐにレノの姿に戻る。


「ふうっ……疲れた」
「……よしよし」
「おおうっ……」


コトミから後ろから抱き付かれ、彼女の豊満すぎる乳房が後頭部に押し付けられ、頭まで撫でられる。


「しかし、サイクロプス……ロプス君と言ったか?が、何故この森に……」
「レノを、追ってきた?」
「それは有り得ないんじゃ……」
「……マザーが言ってた。家族を世界で一番に大事にするのはサイクロプスだって……ロプス君、レノを家族だと思ってる」


その理論で行くと、ロプスは孤児院でレノと別れてからずっと彼を探していたことになるが、実際の所は定かではない。


「まあ、長老が帰ってきたら説明しないと……」
「……聖導教会にも」
「そうだな……報告しとかないと、討伐されかねないし」


この森に訪れているのはレノ達以外にも、センリが率いる教会側の人間も存在し、森の外れには教会側の兵士が見張り役として監視している。彼等にも伝えておかないとロプスに向けて討伐部隊が送られかねない。

レノはコトミの胸に埋もれながら、彼女に身を任せ、ロプスとゴブリン達の仲睦まじい姿を観察していると、



「中々に有意義な休暇を味わってますね~」



――唐突にレノ達の背後から声を掛けられ、その場にいる全員が振り返ると、そこには兎型の獣人の少女が立っており、レノがつい先ほどまで夢の中で会話していた相手だ。



だが、事情を知らない他の面々は驚愕して目を見開き、リノンとゴンゾウに至ってはすぐに身構える。2人も知らない顔ではないが、直接対面したことは一度も無い。


「ラビット……さん?」
「何故ここに……」
「どもども~」


そこには剣乱武闘の実況と審判役を務める「ラビット」の姿があり、彼女は右手に果物が入った籠と、左手には昨日も所持していた緊急箱を所持しており、


「患者がいると聞いて治療に来ましたよ~……ね、レノさん?」
「……ああ、そうだったな」


わざとらしくウインクするアイリィに対し、レノは深いため息を吐いた。
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