種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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剣乱武闘編

原初の英雄

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「私の本名は「アイル」学園都市に通っていた時に歴史の授業でよく聞いたことはありませんか?」
「ごめん……歴史の授業は単位が低いから取ってない。クズキも別に無理して学ぶ必要ないって言ってたから……」
「ちょっと!?名前ぐらいは聞いたことあるでしょうが!?」


言われてみてレノは記憶を掘り起こし、放浪島を最初に脱出した際に訪れたトウキョウという街で、巫女姫(ヨウカ)の教育のために聖導教会にいた頃に「ミキ」から2人の英雄の話を聞いたことを思い出す。

ハーフエルフが世界的に差別を受ける事になった原因であり、原初の英雄とさえ言われている姉妹の物語であり、どちらも優れた才能と技術を有し、妹の「アイル」は複数の「聖遺物」の製作を行っている事も聞いていた。



――だが、歴史によれば彼女は戦争で敵側に付いた姉のフォルムを打ち倒すため、妹のアイルは召喚魔法で自分自身に「悪魔」と呼ばれる存在を憑依させ、圧倒的な力で姉を殺した後は「魔人族」を従えて「魔王」という存在へと変貌したと聞いている。



その後、魔王は魔人族の中から「センチュリオン」と呼ばれる存在を生み出し、彼等を行使して世界征服を成し遂げ、彼女の死後に魔人族は内部分裂を起こし、各種族も独立して支配から逃れたという。


「……お前がその英雄なら、何でセンチュリオンと対立してんの?あれって、お前が作り出した存在だろ」
「違いますよ。あの人たちは「センチュリオン」の名前を語ってますけど、過去に出てきた「センチュリオン」とは全くの別の存在です。言うなれば、今の時代の「センチュリオン」ですかね」
「今の時代のセンチュリオン?前にも聞いたことがある様な……」
「今は私の話に戻りますよ。まず、私はお姉さま……フォルムと一緒に魔人族の保護から離れて旅をしていた頃から話しましょうかね」



――アイリィによると、2人の英雄姉妹は歴史の教科書通り、非常に仲が睦まじく、お互い「剣士」と「魔術師」として優れた能力の持ち主だった。彼女達は長い時を共に過ごして大陸中を旅をし、妹のアイルは「魔術教会(後の聖導教会)」姉のフォルムは「バルバロス帝国(バルトロス王国の基となった大国)」に仕えた。



まだアイルとして彼女が過ごしていた頃、魔術協会の費用を利用して好き勝手に様々な分野の研究を行い、他の研究者の先輩たちを差し置いて様々な開発を行う。一方で姉の方は功績を地道に積んで帝国の将軍の地位まで上り詰め、周囲との信頼関係を築いていた。

この時代にアイルが開発した聖遺物の一つがカラドボルグであり、後に製造される「エクスカリバー」の基となる。また、カラドボルグ以外にも複数の聖遺物も製造したが、その殆どは世界中に流れてしまう。

フォルムが着実に周囲から信頼を得る中、アイルはあまりにも優れた能力を晒してしまい、逆に周囲から妬まれてしまう。最も、本人はその事に関しては全く気にしておらず、魔術教会よりも自分の研究意欲を満たすために開発を続けていた。



――しかし、徐々に「魔術教会」と「バルバロス帝国」の関係が歪み始め、遂にはこの2つの巨大組織はお互いに敵対し、戦争にまで勃発する。



当時は大陸の中でも最大戦力を誇ったバルバロス帝国に対し、魔術教会が圧倒的に不利な状況だと思われたが、あろう事か教会側はアイルが製造した聖遺物を戦争に持ち込む。


「……まさか、私の作り出した対魔物用の兵器が、人間を相手に使われるとは思いもしませんでしたよ。そのせいで、お姉さまとの関係が可笑しくなったんですからね……あんな物、作るべきじゃなかった」
「……お前らしくないな」
「あの時の私は正真正銘「子供」だったんですよ。周りを出し抜くことを考えて、無我夢中に研究に没頭してましたからね……」


珍しく落ち込んだ表情を浮かべるアイリィに、レノはどう声を掛けていいのか分からない。彼女としても魔物の討伐に開発した聖遺物が戦争に使用される事は予想外であり、それが原因で大切な姉との関係が狂ってしまった。


「まあ……その後はテンプレ通り、お姉さまとの関係が悪化し、私達は仲違いしたまま戦場で何度も出会いました。お互いに引くに引けない状況でしたから、出会って早々に殺し合いになりましたよ」
「……でも、その時は聖遺物を幾つも持ってたんだろ?楽勝だったんじゃないの?」
「いや、私もたいがいですけど、お姉さまも相当な実力者ですよ?聖遺物なんか必要としないほどの能力持ちですからね。カラドボルグを使用しても互角に戦うのがやっとでしたよ」
「どんな化物だ」


その気になればゴーレム・キングを一撃で撃破できるカラドボルグを操るアイリィに対し、何の聖遺物も所持せずに互角に戦うなど姉野方も途轍もない化物である。少なくとも、レノが出会った相手の中ではダークエルフと同格の存在なのかもしれない。


「教会と帝国の戦争が1年目に突入したころ、お姉さまから連絡があったんです。これ以上の犠牲を避けるため、お互いが代表として闘い、勝利した側が全てを得るという奴です」
「王道的展開だな」
「まあ、私としても無駄に戦いを長引かせるのは避けたかったんですけどね。適当なところでわざと負けて、お姉さまに従おうと思ったんですけど……予想外の事態に巻き込まれました」


アイリィは目つきを鋭くさせ、初めて見せる「怒り」の表情を浮かべ、



「――魔術教会が独断で、私の研究を利用してある「召喚魔法」を開発を行いました。その時に生まれた腐れ外道が、私の身体を乗り移ったんです」
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