483 / 1,095
剣乱武闘編
処遇
しおりを挟む
――1時間後、遂に剣乱武闘の「第二次予選」が終了し、レノ達は黒猫酒場で予選突破の祝勝会を行うことにした。参加者にはレミアとジャンヌ、さらにはレグも参加しており、酒場を貸切にした賑やかな宴が始まった。
「さあ!!遠慮せずに飲みな!!今日は無礼講だよ!!」
「いよ、姉御の太っ腹!!」
「あの、私あまりお酒は……」
「なに辛気臭い事言ってんすか!!ほらほら、遠慮しないで!!」
「騒ぐのは嫌いじゃないが……出来れば休ませてほしんだが……」
既に出来上がったバルが酒樽を抱え、カリナたちも便乗して店中の酒を飲みつくす勢いだが、大会に参加したレノ達は予選の疲労が影響し、とてもではないが彼女達のテンションに着いては行けない。
「しっかし、あのガキんちょがまさかここまで成長するとはなぁ……何だか感慨深いねぇ」
「あいたたっ……もっと優しく撫でろ」
ぐしゃぐしゃと頭を撫でまわすバルから避難し、レノはガツガツと机の上の料理を食すゴンゾウとポチ子に視線を向ける。
「わむっ……試合の後のドックフードは格別です!!」
「肉が、美味い!!」
「全く……相変わらずだな2人とも」
ガツガツとドックフードと骨付き肉を頬張る2人にリノンは笑みを浮かべ、そんな彼女の机の上には無数の殻の酒瓶が並んでいる。意外と酒豪らしく、次々と新しい酒を飲み干す。そんな3人の隣には、机を通して向かい合うレミアとジャンヌが向かい合っており、
「ジャンヌさん……!!どうか腐敗竜殺しのお話を!!」
「は、はあ……と、申しましても……」
英雄マニアであるレミアに言い詰められ、ジャンヌは助けを求めるように視線を向けてくるが、レノは適当にウインクでも返すと、何故か頬を赤く染めて視線を反らす。
その隣の机にはヨウカとホノカが並んでおり、レノが作り出した木の実チャーハンを食していた。ヨウカはともかく、意外なことにホノカも夢中にチャーハンを頬張っていた。
「これは……美味いな、癖になる味わいだ」
「レノたんはいいお嫁さんになるねっ」
「いや、ある意味その言い方でも間違っては無いと思うが……お婿さんの間違いだぞ?」
「兄貴って何気に料理美味いんすよね~……やたらたと野菜が入ってるけど」
「それはまあ、仕方ないね。彼も森人族の血が流れてるから」
「それはそうなんすけどね、兄貴の肉料理ってかなり大雑把すよ?どんな高級品のお肉も、適当に焼いて調味料をぶっかけるだけっすから。それでも美味いのが不思議ですけど……」
2人の前におかわりを運んできたカリナが現れ、そのまま雑談を始める。意外とこの3人は仲が良いらしく、話が弾んでいる。そんな彼女が余計な事まで話さないか聞き耳を立てながら、レノはリノンの元に近寄り、
「そういえば……アルトとカノンさんはどうなった?」
「ん……ああ、その事だが」
――リノンによれば、カノンは既にゴンゾウが王国側の兵士に彼女を預け、聖導教会に送り込まれる。どういう原理なのかは不明だが、死人と思われたはずのカノンの身体は「生前」の状態を保っており、完全には死人とは化していなかった。
普通ならば死人の肉体は既に死体のため、大抵は腐敗した状態である。死霊使いが仕込んだ「魔道具」によって腐敗化を遅行させることも可能だが、それでもカノンの身体は異常なまでに生前の状態を保っていた。
まず、彼女の胸元に仕込まれた魔道具は未だに残っており、レノの攻撃で一時的に機能を失った状態ではあるが、時間が経てばまた元の状態に戻るとの事。すぐに心臓部の魔道具を摘出する準備が行われ、時間は掛かるがカノンが正気を取り戻す可能性は十分に高いという。
――聖導教会の専門家曰く、もしかしたら何らかの手段で彼女は仮死状態に追い込まれ、そのまま死霊使いの「死霊術」で操られているという可能性が高いらしい。
あまりにもカノンの肉体が生前の状態と変わらず、さらにはレノ達との戦闘で意識が僅かに残っていたように見えた事から、シャドウは何らかの聖痕の力を利用して彼女を操っていたと思われる。
とはいえ、現在の彼女は嘗ての記憶を失っており、良好の関係を築いていたリノン達にも全く反応していなかった。また、迂闊に魔道具を抜き取れば彼女が死亡してしまう危険性も高く、長期の入院が必要との事。
その一方で、アルトに関してはカノンよりも大きな問題があり、彼は独断で剣乱武闘で「最強の聖剣」の所持者であるレノを打ち倒し、自分の力を見せつける計画を立てていたらしい。
事前に王国側の大臣と交渉し、さらには父親であるバルトロス国王に内密に剣乱武闘の大会側と交渉し、自身が今までに得た金銭を使い果たし、ほんの一時の間だけ撮影用のミラークリスタルを操作する権利を得た。
彼が所持している木札は撮影用のミラークリスタルを手動操作する事が可能だったらしく、彼はメダルを回収する事で地道にレノを探していた。この方法ではレノが先にメダルを入手し、予選を突破する可能性もあったが、その時は5日目の本戦の1回戦で自分の実力を知らしめるつもりだったらしい。
既に大会側にはレノとアルトの戦闘に関しては王国側承認の名目で交渉しており、カラドボルグとデュランダルという伝説級の聖剣同士が衝突するとなれば視聴率も跳ね上がり、大勢の観客が押し寄せるのは間違いないため、大会側も黙認した。
しかし、結果は第二次予選でレノと出会ったアルトは彼に力を見せつけるどころか、周囲の建物の被害も考えずにデュランダルの力を乱発し、さらにはカラドボルグの使い方を掴んだレノに敗れた姿が世界中に映し出され、王国側も流石に今回のアルトの暴走をこれ以上は見過ごせなかった。
「さあ!!遠慮せずに飲みな!!今日は無礼講だよ!!」
「いよ、姉御の太っ腹!!」
「あの、私あまりお酒は……」
「なに辛気臭い事言ってんすか!!ほらほら、遠慮しないで!!」
「騒ぐのは嫌いじゃないが……出来れば休ませてほしんだが……」
既に出来上がったバルが酒樽を抱え、カリナたちも便乗して店中の酒を飲みつくす勢いだが、大会に参加したレノ達は予選の疲労が影響し、とてもではないが彼女達のテンションに着いては行けない。
「しっかし、あのガキんちょがまさかここまで成長するとはなぁ……何だか感慨深いねぇ」
「あいたたっ……もっと優しく撫でろ」
ぐしゃぐしゃと頭を撫でまわすバルから避難し、レノはガツガツと机の上の料理を食すゴンゾウとポチ子に視線を向ける。
「わむっ……試合の後のドックフードは格別です!!」
「肉が、美味い!!」
「全く……相変わらずだな2人とも」
ガツガツとドックフードと骨付き肉を頬張る2人にリノンは笑みを浮かべ、そんな彼女の机の上には無数の殻の酒瓶が並んでいる。意外と酒豪らしく、次々と新しい酒を飲み干す。そんな3人の隣には、机を通して向かい合うレミアとジャンヌが向かい合っており、
「ジャンヌさん……!!どうか腐敗竜殺しのお話を!!」
「は、はあ……と、申しましても……」
英雄マニアであるレミアに言い詰められ、ジャンヌは助けを求めるように視線を向けてくるが、レノは適当にウインクでも返すと、何故か頬を赤く染めて視線を反らす。
その隣の机にはヨウカとホノカが並んでおり、レノが作り出した木の実チャーハンを食していた。ヨウカはともかく、意外なことにホノカも夢中にチャーハンを頬張っていた。
「これは……美味いな、癖になる味わいだ」
「レノたんはいいお嫁さんになるねっ」
「いや、ある意味その言い方でも間違っては無いと思うが……お婿さんの間違いだぞ?」
「兄貴って何気に料理美味いんすよね~……やたらたと野菜が入ってるけど」
「それはまあ、仕方ないね。彼も森人族の血が流れてるから」
「それはそうなんすけどね、兄貴の肉料理ってかなり大雑把すよ?どんな高級品のお肉も、適当に焼いて調味料をぶっかけるだけっすから。それでも美味いのが不思議ですけど……」
2人の前におかわりを運んできたカリナが現れ、そのまま雑談を始める。意外とこの3人は仲が良いらしく、話が弾んでいる。そんな彼女が余計な事まで話さないか聞き耳を立てながら、レノはリノンの元に近寄り、
「そういえば……アルトとカノンさんはどうなった?」
「ん……ああ、その事だが」
――リノンによれば、カノンは既にゴンゾウが王国側の兵士に彼女を預け、聖導教会に送り込まれる。どういう原理なのかは不明だが、死人と思われたはずのカノンの身体は「生前」の状態を保っており、完全には死人とは化していなかった。
普通ならば死人の肉体は既に死体のため、大抵は腐敗した状態である。死霊使いが仕込んだ「魔道具」によって腐敗化を遅行させることも可能だが、それでもカノンの身体は異常なまでに生前の状態を保っていた。
まず、彼女の胸元に仕込まれた魔道具は未だに残っており、レノの攻撃で一時的に機能を失った状態ではあるが、時間が経てばまた元の状態に戻るとの事。すぐに心臓部の魔道具を摘出する準備が行われ、時間は掛かるがカノンが正気を取り戻す可能性は十分に高いという。
――聖導教会の専門家曰く、もしかしたら何らかの手段で彼女は仮死状態に追い込まれ、そのまま死霊使いの「死霊術」で操られているという可能性が高いらしい。
あまりにもカノンの肉体が生前の状態と変わらず、さらにはレノ達との戦闘で意識が僅かに残っていたように見えた事から、シャドウは何らかの聖痕の力を利用して彼女を操っていたと思われる。
とはいえ、現在の彼女は嘗ての記憶を失っており、良好の関係を築いていたリノン達にも全く反応していなかった。また、迂闊に魔道具を抜き取れば彼女が死亡してしまう危険性も高く、長期の入院が必要との事。
その一方で、アルトに関してはカノンよりも大きな問題があり、彼は独断で剣乱武闘で「最強の聖剣」の所持者であるレノを打ち倒し、自分の力を見せつける計画を立てていたらしい。
事前に王国側の大臣と交渉し、さらには父親であるバルトロス国王に内密に剣乱武闘の大会側と交渉し、自身が今までに得た金銭を使い果たし、ほんの一時の間だけ撮影用のミラークリスタルを操作する権利を得た。
彼が所持している木札は撮影用のミラークリスタルを手動操作する事が可能だったらしく、彼はメダルを回収する事で地道にレノを探していた。この方法ではレノが先にメダルを入手し、予選を突破する可能性もあったが、その時は5日目の本戦の1回戦で自分の実力を知らしめるつもりだったらしい。
既に大会側にはレノとアルトの戦闘に関しては王国側承認の名目で交渉しており、カラドボルグとデュランダルという伝説級の聖剣同士が衝突するとなれば視聴率も跳ね上がり、大勢の観客が押し寄せるのは間違いないため、大会側も黙認した。
しかし、結果は第二次予選でレノと出会ったアルトは彼に力を見せつけるどころか、周囲の建物の被害も考えずにデュランダルの力を乱発し、さらにはカラドボルグの使い方を掴んだレノに敗れた姿が世界中に映し出され、王国側も流石に今回のアルトの暴走をこれ以上は見過ごせなかった。
0
お気に入りに追加
486
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
冷淡だった義兄に溺愛されて結婚するまでのお話
水瀬 立乃
恋愛
陽和(ひより)が16歳の時、シングルマザーの母親が玉の輿結婚をした。
相手の男性には陽和よりも6歳年上の兄・慶一(けいいち)と、3歳年下の妹・礼奈(れいな)がいた。
義理の兄妹との関係は良好だったが、事故で母親が他界すると2人に冷たく当たられるようになってしまう。
陽和は秘かに恋心を抱いていた慶一と関係を持つことになるが、彼は陽和に愛情がない様子で、彼女は叶わない初恋だと諦めていた。
しかしある日を境に素っ気なかった慶一の態度に変化が現れ始める。
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
異世界メイドに就職しました!!
ウツ。
ファンタジー
本日、九ノ葉楓(ここのはかえで)は就職試験に臨んでいた。
普通に仕事をして、普通に生きていく。
そう決めた彼女を突如眩暈が襲う。
意識を失い、次に目を覚ますと、楓はスピカというメイドになっていた。
王国?!魔法?!
「ここって異世界…?!」
見たことのない世界に驚きながらも、彼女はメイドとして働き始める。
なぜ彼女は異世界へ召喚されたのか。
彼女に与えられた使命とは。
バトルあり、恋愛ありの異世界ファンタジー。
漫画版も連載中です。そちらもよろしくお願いします。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる