種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

文字の大きさ
上 下
482 / 1,095
剣乱武闘編

魔力補給

しおりを挟む
レミアとジャンヌに連れられ、レノは無事に闘技場に到着し、出入口の門に一歩踏み入れた瞬間、3人のメダルに異変が起きる。


「おっ……」
「これは……」
「……どうやら合格のようですね」


何時の間にか3人の所持していたメダルの表面が変化し、レノは「大木」ジャンヌとレミアは「剣」の紋様が新しく浮き上がり、最初に手に入れた参加証のメダルと酷似している。


「はいは~いっ、お疲れ様でした~」
「あっ、実況の……」
「皆の「あいどる」のラビットですよ~」
「何処で覚えたその言葉……」


出入口には実況と審判役を務める「ラビット」が待機しており、彼女は両耳を揺れ動かしながら、その手には救急箱を思わせる道具を抱えていた。さらに彼女の後ろには無数の兵士が待機しており、恐らくは大会側の兵士と思われる。

彼等は王国側の兵士ではなく、冒険者ギルドから雇われた傭兵部隊であり、金銭を受け取ればどのような依頼でも受け付ける。その実力は聖導教会のワルキューレ騎士団やバルトロス王国最強のストームナイツ騎士団にも匹敵し、名前は「グリフォン部隊」という。

北部山岳ではレノが乗り物扱いしていた魔獣の名前から取っているが、彼等の戦法は非常に効率重視であり、任務のためならどんな手でも使用してくる。


「怪我人がいるなら治療してあげますよ?」
「あの……放送の方は良いんですか?」
「ああ、大丈夫ですよ。私の今日の分の仕事は終りましたし、それに一応は回復魔法も使えますからね……こんなに働いているのに給料低いなんてやってられないですよ」
「はあ……ですが、私達は」
「私とジャンヌは問題ありません。ですが、こちらは魔力切れを起こしている連れもいるのですが……」


単純な魔力の消耗による「魔力枯渇」の場合は、身体を休息させる以外に魔力を回復させる方法はほぼ存在せず、以前にレノがやったような魔力供給を行わない限りは早急な回復は見込めない。

一応は魔力を回復させる魔道具(マジック・アイテム)も存在するが、魔力を回復させる薬は非常に高価であり、簡単には入手できない。少し前にハーフエルフの奴隷を使用して奴隷商人が大量の魔力水を量産して問題になったこともある。


「ふむ……魔力切れですか、ならマナ・ポーションでも差し上げましょうか?」
「……いいのですか?」
「一応は合格者の方々だけは丁重に扱うように義務付けられてますからね、ほらさっさと出してください」
「はっ……しかし」
「いいからちゃっちゃっと出しなさい」


一瞬、彼女の傍の兵士がハーフエルフのレノの姿を確認して顔を顰めたが、ラビットに睨み付けられ、慌てて救急箱から青い液体が入った小瓶を手渡す。


「ほら、貴重品ですから間違っても落とさないで下さいよ?」
「ども」


素直に受け取り、レノは小瓶の蓋を開けて臭いを嗅ぐ。外見はジュースのようだが、よく確認すると液体が蠢いており、まるでスライムを想像させる奇妙な薬だった。


「ほら、ぐいっといってくださいよ」
「……覚悟して置いた方がいいですよ」
「一気に飲み込めば問題ありません……多分」
「不安になるような発言はやめろ……うわ、顔にかかったっ」


覚悟を決めて小瓶の液体を一気に飲み込み、口の中に何とも言えない感覚が広がる。ゼリー状ではあるが、生き物のようにうねうねと動いており、すぐに喉の奥に飲み干す。

軽く咳こみながら、レノはすぐに身体の違和感に気が付き、確かに魔力が大幅に回復する。だが、せいぜい10分の1程度の回復量であり、周囲の者達が驚いた声を上げる。


「ちょっ……全部飲んだんですか!?」
「普通は一口だけで十分ですが……」
「だ、大丈夫ですか?吐き気や眩暈は……!!」
「……平気だよ。むしろ、おかわりが欲しい」


周囲の人間の驚きようから、どうやらこのマナ・ポーションとやらは普通の人間ならば一口で十分に魔力を回復できるらしいが、レノの場合は魔力量が常人とは桁違いに大きいため、この程度の量では全回復にまで至らなない。

それでも動けるまでに回復し、髪の毛の色も元に戻り、ゆっくりと起き上がる。先ほどの戦闘で疲労はあるが、明日ゆっくりと休めば十分に明後日の本戦には参加できそうだ。


「あ~あ……金貨10枚相当の高級品だったんですけどね……まあ、いいです。どうせ私のじゃありませんし」


ラビットはレノが回復したのを確認すると、すぐに出入口の傍にある受付席らしき椅子と机に座り込み、他の兵士たちは彼女に付き従うように待機する。


「あ、そこに残られると邪魔なんで、さっさと移動してください。メダルに関しましては各自ちゃんと大切に管理してくださいよ~?明後日の試合前に必要ですからね」
「明後日の試合か……ちなみに時間帯は教えてないの?」
「いや、事前に開会式の時に説明したじゃないですか?面倒だからって、どうせ参加してなかったんでしょ?まあ、別に教えるのはいいですけど……大会開始時刻は朝の9時からです。選手の皆さんは地下施設の自室か観客席で待機していればおっけいです。時間になったら係員が迎えに行きますからね」
「へえ……」
「レノ、そろそろ行きしょうか」
「ええ、貴方には色々と問いただしたいことがありますからね……」
「え~……」


ナナに強制的に引きずられながら、レノ達はその場を移動し、そんな3人の後姿をラビットは見送りながら、



「……にしても、案外ばれないもんですねぇ」



自分の「左手」を確認し、先ほどまでは存在しなかった「紋様」が浮かび上がり、口元に笑みを浮かべた――
しおりを挟む
1 / 4

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

転生チートは家族のために~ユニークスキルで、快適な異世界生活を送りたい!~

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:23,475pt お気に入り:3,269

間違い転生!!〜神様の加護をたくさん貰っても それでものんびり自由に生きたい〜

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:4,998pt お気に入り:3,825

異世界転生令嬢、出奔する

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:9,542pt お気に入り:13,936

処理中です...