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剣乱武闘編
黒蛇
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「……う、くぅっ……」
「がはっ……」
凄まじい衝撃波に直撃したレノとアルトは、それぞれ反対方向に吹き飛ばされ、レノは地面に倒れ込み、アルトは噴水の中に身体が浸かる。
ザバァッ……
「げほっ……!!けほっ……レノォッ……!!」
「……まだ、やる気か?」
噴水から身体を起き上げ、アルトは全身を水浸しにしなりながらも武器を振りかざそうとするが、既にその手にデュランダルは存在せず、先ほどの衝撃で随分と離れた場所に落としている。
レノの方もカラドボルグは存在せず、何時の間にか紋様の中に引っ込んでしまったらしい。最も、既に魔力も尽き果ているため、これ以上の使用は出来ないが。
「くっ……」
「……ふうっ」
噴水から乗り出し、アルトが地面に降り立つが、先ほどのデュランダルの乱発で体力を既に使い果たしてしており、ふらふらと足取りが怪しい。レノの方は十分に動けるが、魔力切れで白髪と化しており、これ以上の魔法は使えない。
アルトは虚ろな瞳で手元から離れたデュランダルの位置を確認し、回収に向かおうとするが、その前にレノがゆっくりと歩み寄る。
バラァッ……
「……きっついなぁ……」
左腕の役割をしている黒衣が解除し、中身の銀の鎖と聖爪も落ちてしまう。魔力切れを起こしたため、もう黒衣や鎖で左腕を形成できない。だが、アルトはデュランダルを使用する可能性がある以上、先に動かなければならない。
今の彼は普通ではなく、明らかにレノに対して「殺意」を抱いている。一体、アルトに何が起きたのかは分からないが、今は何としても先に仕留めなければならない。
(……懐かしいな)
こんな状況だが、レノは魔力切れの感覚に苦笑いを浮かべる。地下迷宮にいた頃はよくカラドボルグの影響で魔力枯渇の状態になっており、何度も死にかけた思い出がある。
この世界の魔力とは言わば生物の「生命エネルギー」その物であり、普通の人間ならば魔力の消耗で白髪化する前に死亡しても可笑しくはない。だが、何度も死線を乗り越えたことにより、レノはこの状態でも動く事は出来る。
「……終わらせよう、アルト」
「……まだだ……まだっ……!!」
ドスンッ……
デュランダルの元まで3メートルにまで迫ったが、アルトはその場に跪いて倒れ込んでしまう。
「ぐっ……ううっ……!!」
それでも尚、彼は這いつくばって地面に転がったデュランダルの元に近寄り、必死に手を伸ばすが、
ガァンッ!!
「……ここまでだ」
「あっ……」
――アルトの右手が到達する前、デュランダルの刃にレノの右足が踏みつけ、彼を見下ろす。
「ぐっ……ううっ……!!」
「……そろそろ、こっちも限界……勝った方がメダルを貰うんだったな」
「まだだ……まだ、負けて……!!」
「……そう」
必死に立ち上がろうとアルトは両腕を地面に押し付けるが、既に下半身はぴくりともせず、誰がどう見てもこれ以上の戦闘は不可能だった。闘う意思はあったとしても、もう肉体は限界を迎えている。
レノは彼に対して色々と思う所はあったが、ゆっくりと右拳を握りしめ、最後の力を振り絞り、
「……じゃあな」
ドゴォンッ!!
「がぁっ……!?」
そのまま自分の身体が地面に倒れこむようにアルトの頭部に拳を叩き込み、完全に気絶させる。レノはそんな彼の上に倒れこむ形になり、深い溜息を吐く。
ここまで疲労したのは甲冑の騎士との戦闘以来であり、こんな所を誰かに襲われたら抵抗する事も出来ない。しかし、まだ予選は続いており、彼から何としてもメダルを回収して闘技場に移動しなければならない。
「……つうっ……」
何とか身体を起き上げ、アルトの身体を仰向けにさせると、彼の懐からメダルを取りだす。先ほどの衝撃波でも砕けていないところを見ると特殊な金属で形成されているのは間違いない。
「さて……と」
魔力が回復してない以上は転移魔方陣も使用できず、闘技場に移動する事は出来ない。また、このまま様子のおかしいアルトを放って置くのも心配であり、その場に座り込む。
「……ん?」
不意に隣で気絶しているアルトの首筋が視線が入り、すぐに違和感を覚える。戦闘中は気付かなかったが、首の後ろ側に黒蛇のような紋様が浮かんでおり、まるでバルの舌にある怨痕と似ている。疑問を抱き、レノはアルトの首に右手を回そうとした時、
――シャアァアアアアアッ!!
突如、アルトの首筋の蛇の紋様が鳴き声を上げ、まるで生き物のように動き始め、そのまま彼の身体から離れれるように「実体化」して飛びかかってくる。
「……やっぱりな」
――だが、直感でレノは飛びかかってくる蛇を交わし、すぐに鞄の中に右手を回すと、以前にセンリから受け取った「聖石」を掴んで掲げる。
カッ!!
レノの右手に握り締められた聖石が日光に晒された瞬間、激しく聖石が光り輝き、アルトの首筋から出てきた黒蛇に放たれる。
シャアァアアアアアアアッ……!?
悲鳴のような鳴き声を上げ、恐らくは以前に聖導教会に教皇に憑りついていた「黒色のスライム」と同類と思われる魔物はそのまま塵と化して浄化される。
「……呆気ないなっ」
聖石を鞄に戻すと、この石で黒蛇を浄化できる確信など無かったが、上手く行ったことに一安心する。
「あ~……疲れた」
バタンッ……
そのままアルトの横に倒れ込み、レノは今度こそ、安堵の溜息を吐いた。
「がはっ……」
凄まじい衝撃波に直撃したレノとアルトは、それぞれ反対方向に吹き飛ばされ、レノは地面に倒れ込み、アルトは噴水の中に身体が浸かる。
ザバァッ……
「げほっ……!!けほっ……レノォッ……!!」
「……まだ、やる気か?」
噴水から身体を起き上げ、アルトは全身を水浸しにしなりながらも武器を振りかざそうとするが、既にその手にデュランダルは存在せず、先ほどの衝撃で随分と離れた場所に落としている。
レノの方もカラドボルグは存在せず、何時の間にか紋様の中に引っ込んでしまったらしい。最も、既に魔力も尽き果ているため、これ以上の使用は出来ないが。
「くっ……」
「……ふうっ」
噴水から乗り出し、アルトが地面に降り立つが、先ほどのデュランダルの乱発で体力を既に使い果たしてしており、ふらふらと足取りが怪しい。レノの方は十分に動けるが、魔力切れで白髪と化しており、これ以上の魔法は使えない。
アルトは虚ろな瞳で手元から離れたデュランダルの位置を確認し、回収に向かおうとするが、その前にレノがゆっくりと歩み寄る。
バラァッ……
「……きっついなぁ……」
左腕の役割をしている黒衣が解除し、中身の銀の鎖と聖爪も落ちてしまう。魔力切れを起こしたため、もう黒衣や鎖で左腕を形成できない。だが、アルトはデュランダルを使用する可能性がある以上、先に動かなければならない。
今の彼は普通ではなく、明らかにレノに対して「殺意」を抱いている。一体、アルトに何が起きたのかは分からないが、今は何としても先に仕留めなければならない。
(……懐かしいな)
こんな状況だが、レノは魔力切れの感覚に苦笑いを浮かべる。地下迷宮にいた頃はよくカラドボルグの影響で魔力枯渇の状態になっており、何度も死にかけた思い出がある。
この世界の魔力とは言わば生物の「生命エネルギー」その物であり、普通の人間ならば魔力の消耗で白髪化する前に死亡しても可笑しくはない。だが、何度も死線を乗り越えたことにより、レノはこの状態でも動く事は出来る。
「……終わらせよう、アルト」
「……まだだ……まだっ……!!」
ドスンッ……
デュランダルの元まで3メートルにまで迫ったが、アルトはその場に跪いて倒れ込んでしまう。
「ぐっ……ううっ……!!」
それでも尚、彼は這いつくばって地面に転がったデュランダルの元に近寄り、必死に手を伸ばすが、
ガァンッ!!
「……ここまでだ」
「あっ……」
――アルトの右手が到達する前、デュランダルの刃にレノの右足が踏みつけ、彼を見下ろす。
「ぐっ……ううっ……!!」
「……そろそろ、こっちも限界……勝った方がメダルを貰うんだったな」
「まだだ……まだ、負けて……!!」
「……そう」
必死に立ち上がろうとアルトは両腕を地面に押し付けるが、既に下半身はぴくりともせず、誰がどう見てもこれ以上の戦闘は不可能だった。闘う意思はあったとしても、もう肉体は限界を迎えている。
レノは彼に対して色々と思う所はあったが、ゆっくりと右拳を握りしめ、最後の力を振り絞り、
「……じゃあな」
ドゴォンッ!!
「がぁっ……!?」
そのまま自分の身体が地面に倒れこむようにアルトの頭部に拳を叩き込み、完全に気絶させる。レノはそんな彼の上に倒れこむ形になり、深い溜息を吐く。
ここまで疲労したのは甲冑の騎士との戦闘以来であり、こんな所を誰かに襲われたら抵抗する事も出来ない。しかし、まだ予選は続いており、彼から何としてもメダルを回収して闘技場に移動しなければならない。
「……つうっ……」
何とか身体を起き上げ、アルトの身体を仰向けにさせると、彼の懐からメダルを取りだす。先ほどの衝撃波でも砕けていないところを見ると特殊な金属で形成されているのは間違いない。
「さて……と」
魔力が回復してない以上は転移魔方陣も使用できず、闘技場に移動する事は出来ない。また、このまま様子のおかしいアルトを放って置くのも心配であり、その場に座り込む。
「……ん?」
不意に隣で気絶しているアルトの首筋が視線が入り、すぐに違和感を覚える。戦闘中は気付かなかったが、首の後ろ側に黒蛇のような紋様が浮かんでおり、まるでバルの舌にある怨痕と似ている。疑問を抱き、レノはアルトの首に右手を回そうとした時、
――シャアァアアアアアッ!!
突如、アルトの首筋の蛇の紋様が鳴き声を上げ、まるで生き物のように動き始め、そのまま彼の身体から離れれるように「実体化」して飛びかかってくる。
「……やっぱりな」
――だが、直感でレノは飛びかかってくる蛇を交わし、すぐに鞄の中に右手を回すと、以前にセンリから受け取った「聖石」を掴んで掲げる。
カッ!!
レノの右手に握り締められた聖石が日光に晒された瞬間、激しく聖石が光り輝き、アルトの首筋から出てきた黒蛇に放たれる。
シャアァアアアアアアアッ……!?
悲鳴のような鳴き声を上げ、恐らくは以前に聖導教会に教皇に憑りついていた「黒色のスライム」と同類と思われる魔物はそのまま塵と化して浄化される。
「……呆気ないなっ」
聖石を鞄に戻すと、この石で黒蛇を浄化できる確信など無かったが、上手く行ったことに一安心する。
「あ~……疲れた」
バタンッ……
そのままアルトの横に倒れ込み、レノは今度こそ、安堵の溜息を吐いた。
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