種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

文字の大きさ
上 下
477 / 1,095
剣乱武闘編

衝撃波

しおりを挟む
「さて、と……」


ジャラララッ……!!


左腕の黒衣から聖爪を取り出し、指先にリングを装備させると、ゆっくりと肩を振り回しながらアルトに向けて歩き出す。そんなレノの態度に彼は苛立ちながらも、鼻で笑う。


「舐められた物だね……そんな聖剣の紛い物で、僕のデュランダルと渡り合う気かい?それとも、やはり君はカラドボルグを扱えないのかい?」
「奥の手を簡単に出すわけないだろ」
「どうだか……本当に選ばれた者なら、そんな悠長なことは言えないはず。前々から疑問に思っていたが、君は本当にカラドボルグに選ばれた者なのかい?」
「…………」


レノが紋様に宿している「カラドボルグ」の正当な所有者は「アイリィ」であり、彼女が一時的に所有権をレノに貸し与えているだけなので、完全にその力を使いこなせるわけではない。

だが、使い方を間違えなければ今の状態でも十分に大きな戦力となるため、どんな強敵と遭遇しようと聖剣の力で屠ってきた。例え、今回の相手がデュランダルを装備しているアルトであろうと、使い方を間違えなければ勝機はある。


「まあいい……そんな聖剣の欠片から作られたもので、僕のデュランダルに挑むことを後悔するといい」
「本当に変わったな……そんなにリノンの事が好きなのか?」
「っ……!?お前に何が分かる!!」


どうやら彼の怒りに触れたらしく、アルトはデュランダルを振り上げ、距離があるにもかかわらずに地面に叩き付ける。


「地走り!!」



ドガァアアアアアッ!!



地面が盛り上がり、真っ直ぐにレノに向けて衝撃波が放たれる。流石に防御する事は不可能と悟り、その場を瞬脚で避ける。


ダァンッ!!


「くっ……!!」



――ドゴォオオオオンッ……!!



そのまま衝撃波は後方の建物に放たれ、凄まじい轟音と共に砕け散る。瓦礫が周囲に散乱し、10階建てのビルほどの大きさがあった建物が半壊する。あまりの威力にレノは冷や汗を流し、真面に喰らえば間違いなく重傷どころでは済まない。


「危なっ……たいした威力だな」
「まだだ!!」


ズガァンッ……!!


地面に刃がめり込んだ大剣を引き抜き、そのまま大きく振り上げると今度は横薙ぎに振り払い、


「裂空斬!!」


ブォンッ!!


刀身から再び「衝撃波」が発生し、今度はレノの乱刃と似た三日月状の斬撃が放たれる。だが、規模が桁違いであり、空中以外に回避する手段は無い。


「少しは周りの被害考えろっ……!!」


ダァンッ!!


もう一度、瞬脚で上空に回避した途端、アルトの放った衝撃波が周囲の建物群に広がる。



ズガァアアアアアンッ――!!



建物に亀裂が走り、次々と瓦礫と化して崩壊していく。今回の予選は闘人都市の街並みを故意に破壊する事は厳禁のはずだが、アルトは全く気にせずにデュランダルの力を発揮させる。


「甘いっ!!」
「っ!!」



ブォンッ――!!



空中に浮揚したレノに対し、アルトは笑みを浮かべて大剣を振りかぶり、どうやら衝撃波で撃ち落とすつもりだろうが、


「甘いのはお前だ!!」


ジャラララッ!!


左腕から銀の鎖を射出し、鎖の先端部のリングを地面にめり込ませ、そのまま鎖を引き寄せて着地する。


「……流石だな、相変わらず厄介な鎖だ」
「そっちもたいした威力だよ。疲れないの?」
「これぐらいはたいしたことは無い。君と一緒にしないでくれ」
「耳が痛い……」


先ほどからデュランダルを相当な出力で発揮しているにも関わらず、アルトに疲労の様子は見えない。この調子では周辺の建物が崩壊し兼ねないが、今は気にしている暇は無い。全ての責任はアルトにある。


「こっちもそろそろ本気で行くぞ」
「っ……ご自由に」


レノが右手の紋様を向けた途端、警戒するようにアルトが大剣を構え、カラドボルグを恐れているのは間違いないのだろうが、


「手始めに……乱刃」


ズドォンッ!!


三日月状の嵐の刃を形成してアルトに放つと、


「舐めるな!!」


ズバァアアッ!!


いとも容易く刃でレノの乱刃を斬り裂き、やはり普通の魔法ではデュランダルにかすり傷1つ負わせれらない。だが、レノの狙いは大剣ではなくアルト自身であり、


「地雷」


ドォオオオンッ!!


地面に右手を押し当て、電撃を流し込む。下からの放電ならばデュランダルでも防げないと判断したのだが、


「ふんっ!!」


ドォンッ!!


電撃が届く前にアルトは大剣を持ち上げて跳躍し、そのまま下方からの電撃を避ける。相当な重量のはずだが、軽快な動きで避けるところ、デュランダルに選ばれたという言葉は嘘ではないらしい。

攻撃の際に重量を増加させ、移動する際は逆に軽減し、まるで地下迷宮(ロスト・ラビリンス)で出会った重力の聖痕を所持していた甲冑の騎士を想像させる。

戦闘方法は大きく違うが、重量を操るという点では同じであり、レノは笑みを浮かべる。一度でも経験している分、有利に進められ、そんな彼の態度にアルトは目つきを鋭くさせる。


「あくまでもカラドボルグを使わない気か……なら、もう終わらせるぞ!!」


ドォンッ!!


大きく踏み出し、そのままレノに向かって突進してきた。





※重量を操るという点では「重力の聖痕」と「デュランダル」は同じ能力であり、クサナギが風の聖痕と相性が悪いように、重力の聖痕はデュランダルの攻撃を無効化出来ます。

ちなみに雷の聖痕はカラドボルグ、そして聖の聖痕はエクスカリバーを無効化可能。他の聖痕も同様に同じ能力を持つ聖遺物の武具を無効化できます。

但し、アイギスなどの防御に特化した聖遺物に関しては相性に関係なく、あらゆる攻撃を防ぎます。また、ジャンヌが聖の聖痕を所有したままエクスカリバーを使用した場合、その効果は通常よりも倍増します。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

なりゆきで、君の体を調教中

星野しずく
恋愛
教師を目指す真が、ひょんなことからメイド喫茶で働く現役女子高生の優菜の特異体質を治す羽目に。毎夜行われるマッサージに悶える優菜と、自分の理性と戦う真面目な真の葛藤の日々が続く。やがて二人の心境には、徐々に変化が訪れ…。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

【完結】辺境伯令嬢は新聞で婚約破棄を知った

五色ひわ
恋愛
 辺境伯令嬢としてのんびり領地で暮らしてきたアメリアは、カフェで見せられた新聞で自身の婚約破棄を知った。真実を確かめるため、アメリアは3年ぶりに王都へと旅立った。 ※本編34話、番外編『皇太子殿下の苦悩』31+1話、おまけ4話

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

私は何人とヤれば解放されるんですか?

ヘロディア
恋愛
初恋の人を探して貴族に仕えることを選んだ主人公。しかし、彼女に与えられた仕事とは、貴族たちの夜中の相手だった…

結婚して5年、初めて口を利きました

宮野 楓
恋愛
―――出会って、結婚して5年。一度も口を聞いたことがない。 ミリエルと旦那様であるロイスの政略結婚が他と違う点を挙げよ、と言えばこれに尽きるだろう。 その二人が5年の月日を経て邂逅するとき

ボロ雑巾な伯爵夫人、やっと『家族』を手に入れました。~旦那様から棄てられて、ギブ&テイクでハートフルな共同生活を始めます2~

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
 第二夫人に最愛の旦那様も息子も奪われ、挙句の果てに家から追い出された伯爵夫人・フィーリアは、なけなしの餞別だけを持って大雨の中を歩き続けていたところ、とある男の子たちに出会う。  言葉汚く直情的で、だけど決してフィーリアを無視したりはしない、ディーダ。  喋り方こそ柔らかいが、その実どこか冷めた毒舌家である、ノイン。    12、3歳ほどに見える彼らとひょんな事から共同生活を始めた彼女は、人々の優しさに触れて少しずつ自身の居場所を確立していく。 ==== ●本作は「ボロ雑巾な伯爵夫人、旦那様から棄てられて、ギブ&テイクでハートフルな共同生活を始めます。」からの続き作品です。  前作では、二人との出会い~同居を描いています。  順番に読んでくださる方は、目次下にリンクを張っておりますので、そちらからお入りください。  ※アプリで閲覧くださっている方は、タイトルで検索いただけますと表示されます。

大好きな母と縁を切りました。

むう子
ファンタジー
7歳までは家族円満愛情たっぷりの幸せな家庭で育ったナーシャ。 領地争いで父が戦死。 それを聞いたお母様は寝込み支えてくれたカルノス・シャンドラに親子共々心を開き再婚。 けれど妹が生まれて義父からの虐待を受けることに。 毎日母を想い部屋に閉じこもるナーシャに2年後の政略結婚が決定した。 けれどこの婚約はとても酷いものだった。 そんな時、ナーシャの生まれる前に亡くなった父方のおばあさまと契約していた精霊と出会う。 そこで今までずっと近くに居てくれたメイドの裏切りを知り……

処理中です...