475 / 1,095
剣乱武闘編
デュランダル
しおりを挟む
「な、何でNPC如きがその剣を……!?」
「そのNPCという言葉、今なら分かる……貴方が、いやお前たちが僕たちを「架空の存在」だと思い込んでいるのか?」
「なっ……!?」
アルトの言葉に勇者と思われる青年は絶句し、少しずつ後退する。だが、アルトの言葉に驚いたのはレノも同じであり、アルトが「NPC」という単語の意味を理解している事に疑問を抱く。確かに先日のパーティーや聖導教会の件で勇者達に不信を抱き、彼らが口にする「NPC」という単語に疑問を抱く者は多いが、ここまではっきりと理解している人間は誰一人いないはず。
青年は何度もアルトの装備する「デュランダル」に視線を向け、全身から汗を流す。それなりに高級な装備を整えているが、彼が持つ剣は王国から支給された剣であり、デュランダルには遠く及ばない。
「さて……メダルを渡してもらう」
「ふ、ふざけんな!!エアリアル・スラッシュ!!」
ズバァアアアアッ!!
刀身から無数の三日月状の風の刃が放たれ、レノの乱刃と酷似しているが、数が多い。至近距離で詠唱も無しに放たれた斬撃に対し、アルトはデュランダルの刃を盾代わりに防ぎきる。
ガキィインッ!!
「ふむっ……腐っても勇者か」
「舐めんなガキがぁっ!!」
青年、名前は「悟」と言い、数年前にバルトロス王国で召喚された勇者だ。彼は召喚されて以来、外見的な特徴は変化していないが、実年齢は20歳を超える。そんな彼から見ればアルトなど生意気な事を口走る青年にしか思えず、頭に血が上って無策で突進してしまう。
「おらっ!!」
「……何だそれは?」
キィンッ!!ガキィッ!!
悟の攻撃はとても剣士とは思えず、剣術の基本にもなっていない素人同然の攻撃だった。数年以上も戦いに明け暮れているにもかかわらず、お粗末な剣技にアルトは顔を顰め、
「ふんっ!!」
「ぐはっ!?」
ドスッ!!
隙を突いて腹部に膝蹴りを放ち、そのまま突き飛ばす。悟は大袈裟なまでに腹部を抑え、何とか立ち上がって剣を構え直す。だが、その構え方も「ゲーム」の登場人物の物を真似ただけであり、彼は一切剣術の類は習得していない。
悟は今までの戦闘を勇者の加護によって得た「魔法(スキル)」のみで生き残り、彼自身の技術はお粗末な物だった。
そんな彼が何故この剣乱武闘に参加できたのかというと、実は王国側の推薦ではなく、一般参加にから出場して何とか予選を勝ち抜いてここまで来たのだが、苦労して入手したメダルで闘技場に戻らず、欲張って他の参加者のメダルを狙ったのが運が悪かった。
――このメダルは予選を勝ち残るために必要な物であり、同時に他の参加者たちも喉から手が出るほどに欲しい代物だ。今回の剣乱武闘の大会に出場するため、参加証を購入する際にここまで貯めた路銀を使い果たしてしまい、この予選で他の選手と取引を行って多少の金銭を取り戻す算段だったが、彼のメダルを狙ったアルトに追い込まれる形になる。
彼は隠密と結界の魔法(スキル)を習得しており、仮に無数の参加者に襲われても逃げ切る自信はあった。自分の身の安全を確保しつつ、メダルを高値で売却し、そのまま予選を突破するつもりだったが、まさかのデュランダルを所持したアルトの登場に動揺を隠せない。
「もう一度だけ言おう。メダルを渡せば危害は加えない」
「くそっ……舐めやがって!!」
悟はすぐに魔法を扱おうとするが、その前にアルトが動き出す。大剣を背負っているにもかかわらず、相当な速度で接近する。
「ふんっ!!」
ガキィンッ!!
「うあっ!?」
即座に悟の長剣を弾き飛ばし、アルトは彼に向けて容赦なく大剣を振り落とす。その速度は尋常ではなく、真面に喰らえば勇者と言えど死亡する。別に悟に対して恩や情があるわけではないが、このままアルトが彼を殺害するのは避けるため、右手を向け、指先をピストルのような形に変えて先ほどのリノンの要領で嵐属性の弾丸を放つ。
「嵐弾」
ズドォンッ!!
乱刃ではなく、嵐弾で規模を小さくすることで密度を強め、速度をより早くさせる。風の魔弾は真っ直ぐにアルトの方角に向い、
「くっ!?」
ドヒュンッ!!
枯葉咄嗟に回避し、魔弾はそのまま頬を掠る。回避しなければ顔面に衝突して気絶させていただろうが、すぐにアルトはレノがいる建物の方向に視線を向け、笑みを浮かべる。
「レノか……丁度いい、君との因縁も決着を着けよう!!」
特にレノはアルトに対して何の恨みも感情も抱いていないが、彼は違うようであり、アルトは腰を抜かした悟を一瞥し、
「……メダルを」
「ひっ……!?」
「早くしろ」
「あ、ああ……」
流石に敗北を認めたのか、悟は懐からメダルを取り出してアルトに手渡す。彼がそれを受け取るとすぐに悟は這い蹲って逃げ出す。メダルを確認しながら本物だと判断すると、アルトはレノに振り向き、声を掛ける。
「……君に1つ提案がある」
「提案?」
「このメダルと、そしてお互いの「聖剣」を掛けて勝負をしようじゃないか?」
「はっ?」
アルトの唐突な提案にレノは顔を向け、
「君のカラドボルグと……僕のデュランダル、どちらが強いか決めようじゃないか?」
「そのNPCという言葉、今なら分かる……貴方が、いやお前たちが僕たちを「架空の存在」だと思い込んでいるのか?」
「なっ……!?」
アルトの言葉に勇者と思われる青年は絶句し、少しずつ後退する。だが、アルトの言葉に驚いたのはレノも同じであり、アルトが「NPC」という単語の意味を理解している事に疑問を抱く。確かに先日のパーティーや聖導教会の件で勇者達に不信を抱き、彼らが口にする「NPC」という単語に疑問を抱く者は多いが、ここまではっきりと理解している人間は誰一人いないはず。
青年は何度もアルトの装備する「デュランダル」に視線を向け、全身から汗を流す。それなりに高級な装備を整えているが、彼が持つ剣は王国から支給された剣であり、デュランダルには遠く及ばない。
「さて……メダルを渡してもらう」
「ふ、ふざけんな!!エアリアル・スラッシュ!!」
ズバァアアアアッ!!
刀身から無数の三日月状の風の刃が放たれ、レノの乱刃と酷似しているが、数が多い。至近距離で詠唱も無しに放たれた斬撃に対し、アルトはデュランダルの刃を盾代わりに防ぎきる。
ガキィインッ!!
「ふむっ……腐っても勇者か」
「舐めんなガキがぁっ!!」
青年、名前は「悟」と言い、数年前にバルトロス王国で召喚された勇者だ。彼は召喚されて以来、外見的な特徴は変化していないが、実年齢は20歳を超える。そんな彼から見ればアルトなど生意気な事を口走る青年にしか思えず、頭に血が上って無策で突進してしまう。
「おらっ!!」
「……何だそれは?」
キィンッ!!ガキィッ!!
悟の攻撃はとても剣士とは思えず、剣術の基本にもなっていない素人同然の攻撃だった。数年以上も戦いに明け暮れているにもかかわらず、お粗末な剣技にアルトは顔を顰め、
「ふんっ!!」
「ぐはっ!?」
ドスッ!!
隙を突いて腹部に膝蹴りを放ち、そのまま突き飛ばす。悟は大袈裟なまでに腹部を抑え、何とか立ち上がって剣を構え直す。だが、その構え方も「ゲーム」の登場人物の物を真似ただけであり、彼は一切剣術の類は習得していない。
悟は今までの戦闘を勇者の加護によって得た「魔法(スキル)」のみで生き残り、彼自身の技術はお粗末な物だった。
そんな彼が何故この剣乱武闘に参加できたのかというと、実は王国側の推薦ではなく、一般参加にから出場して何とか予選を勝ち抜いてここまで来たのだが、苦労して入手したメダルで闘技場に戻らず、欲張って他の参加者のメダルを狙ったのが運が悪かった。
――このメダルは予選を勝ち残るために必要な物であり、同時に他の参加者たちも喉から手が出るほどに欲しい代物だ。今回の剣乱武闘の大会に出場するため、参加証を購入する際にここまで貯めた路銀を使い果たしてしまい、この予選で他の選手と取引を行って多少の金銭を取り戻す算段だったが、彼のメダルを狙ったアルトに追い込まれる形になる。
彼は隠密と結界の魔法(スキル)を習得しており、仮に無数の参加者に襲われても逃げ切る自信はあった。自分の身の安全を確保しつつ、メダルを高値で売却し、そのまま予選を突破するつもりだったが、まさかのデュランダルを所持したアルトの登場に動揺を隠せない。
「もう一度だけ言おう。メダルを渡せば危害は加えない」
「くそっ……舐めやがって!!」
悟はすぐに魔法を扱おうとするが、その前にアルトが動き出す。大剣を背負っているにもかかわらず、相当な速度で接近する。
「ふんっ!!」
ガキィンッ!!
「うあっ!?」
即座に悟の長剣を弾き飛ばし、アルトは彼に向けて容赦なく大剣を振り落とす。その速度は尋常ではなく、真面に喰らえば勇者と言えど死亡する。別に悟に対して恩や情があるわけではないが、このままアルトが彼を殺害するのは避けるため、右手を向け、指先をピストルのような形に変えて先ほどのリノンの要領で嵐属性の弾丸を放つ。
「嵐弾」
ズドォンッ!!
乱刃ではなく、嵐弾で規模を小さくすることで密度を強め、速度をより早くさせる。風の魔弾は真っ直ぐにアルトの方角に向い、
「くっ!?」
ドヒュンッ!!
枯葉咄嗟に回避し、魔弾はそのまま頬を掠る。回避しなければ顔面に衝突して気絶させていただろうが、すぐにアルトはレノがいる建物の方向に視線を向け、笑みを浮かべる。
「レノか……丁度いい、君との因縁も決着を着けよう!!」
特にレノはアルトに対して何の恨みも感情も抱いていないが、彼は違うようであり、アルトは腰を抜かした悟を一瞥し、
「……メダルを」
「ひっ……!?」
「早くしろ」
「あ、ああ……」
流石に敗北を認めたのか、悟は懐からメダルを取り出してアルトに手渡す。彼がそれを受け取るとすぐに悟は這い蹲って逃げ出す。メダルを確認しながら本物だと判断すると、アルトはレノに振り向き、声を掛ける。
「……君に1つ提案がある」
「提案?」
「このメダルと、そしてお互いの「聖剣」を掛けて勝負をしようじゃないか?」
「はっ?」
アルトの唐突な提案にレノは顔を向け、
「君のカラドボルグと……僕のデュランダル、どちらが強いか決めようじゃないか?」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
481
1 / 4
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる