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剣乱武闘編
デュラハン
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「今まで出会ってきた冒険者たちは第一次予選に参加した者達で間違いないな……もしかしたら、予選の活躍具合によってPの増減が決まっているのかもしれない」
「でも、予選に参加しなかったリノン達もPが一定じゃないね」
「それはそうだが……」
「まあ、今はPを集める事に集中しよう。あと半分か……」
レノ達が集めた十数枚の木札を確認し、今はそれぞれに分配して所持している。出来れば「P」が多い木札を回収したいのだが、どの参加者が高い数字のPを所持しているのかは分からない以上、どうしようもない。
現在、既に40分近くが経過しており、警告音の数から間違いなく16名のメダル所持者が現れている。彼らの何人が既に予選突破しているのかは不明だが、最低でも残りの合格者の枠は「48名」であり、この調子では案外早く終わるかも知れない。
「審判員を見つけられれば私達の木札も交換できるんだが……」
「交換するとしても、木札を集め終えてからの方がいいな……まあ、誰か1人先に合格させる手もあるけど」
「そんな……皆一緒に合格したいです!!」
「けど、カノンさんの事も在るしな……先に誰か一人合格させて、こいつを運んでもらう方が安全だと思うけど……」
「確かに……まあ、まずは審判員と他の参加者を探し出すのが先決だが」
先の戦闘から5分以上経っているが、最初の頃と比べて他の参加者と遭遇せず、街の各地で参加者同士の戦闘が行われているのだろう。実際、遠方の方から魔法による爆音や衝撃音がyく聞こえてくる。
レノ達の現在の場所は闘技場の南側であり、東側に向けて移動している形になっている。取りあえずは円を描く様に移動を行い、木札を所持した参加者と審判員の捜索を行う。
「結構歩いてるけど、遭遇しないもんだな……ポチ子、臭いで分からないの?」
「すんすん……だめです。色々な臭いが風に乗って、分かりません」
「さっきから爆音が絶えないからな……それに獣人族対策として臭い消しを常備する者も居るだろうし……」
「八方塞がりか……」
狭い街路を移動しながら4人は周囲に警戒を怠らず、特に前方を歩いているレノは北部山岳や地下迷宮で鍛えられた五感を駆使し、奇襲に備えていた。
参加者の中には幼少の頃にレノが扱っていた隠密の魔法を習得している者もいると考えた方が妥当であり、不意打ちを食らわない様に慎重に行動しなければならない。特に先に見失ったシャドウの件もあり、レノ達は最大限に警戒していた。
(……ん?)
ガサッ……!
不意にレノは頭上から不審な音が聞こえ、顔を向けるとそこには異様な光景が広がっていた。
「……何だあれ?」
「どうし……あれは!?」
「えっ!?」
「……魔人族か?」
――前方の建物の屋根に視線を向けると、そこには黒い甲冑で覆われた騎士が立ち尽くしており、その騎士には「頭」が存在せず、右腕に頭部に付けると思われる「兜」を所持していた。
「……デュラハンか」
「確か……首なしの騎士の亡霊だっけ?」
こちらの世界のデュラハンは魔人族であり、その恐ろしい外見から恐れられ、滅多に人前には出てこない。元々は「人間」の亡霊が鎧に憑依(レミアの憑依召喚とは少し違うらしい)した存在であり、知能は非常に高い。
ちなみに魔人族の現代表である「魔人王」も同種であり、彼の場合は数百年の時を過ごしていると噂されている。
「あの人も参加者?」
「だろうが……こっちを見ているな」
「……というより、レノを見ている」
「俺?」
レノが屋根の上に仁王立ちする「デュラハン」に視線を注ぐと、彼(もしくは彼女)はゆっくりと動き出し、そのまま建物を跳躍してくる。
ドスゥウウンッ!!
「わぅんっ!?」
「おわっ!?」
「何て重量……!!」
「凄いな……」
デュラハンが地面に降り立つのと同時に地面が振動し、落下の衝撃で足元にクレーターまで生まれる。だが、デュラハン自体はそのまま何事も無くレノ達に向けて歩き寄る。距離が10メートルにまで縮まり、全員が身構えるとデュラハンの動きが止まり、
『……待て、戦う気は無い』
「え?」
「あ、頭の中に声が……!?」
「念話か?」
突然、レノ達の頭にまだ年若い「女性」の声が響き渡り、どうやら目の前のデュラハンが直接脳内に語り掛けているらしい。この自分の思念を相手に送り込む事を念話と呼ばれており、この世界では一部の種族しか扱えない。
ちなみにホノカが所持している魔導電話もこれと同じ類であり、特殊な術式と魔石で範囲を広げている。
『我が用があるのは、そこにいるハーフエルフだけだ』
「レノ……?」
『そうだ。まずは武器を下げろ、話をしたい』
「だって」
「……戦う気は無いようだな」
確かに眼の前のデュラハンから殺気や敵意を感じない。しかし、だからと言って簡単に信用は出来ない。だが、本当に話し合いが目的なら邪険に扱うのは後味が悪い。
「話し合いか……2人きりが希望?」
『出来れば……』
「それはダメだ。私達がいては都合が悪い話をする気なのか?」
『……分かった。だが、他言無用で頼む』
「内容による」
『……我を相手に、よくそこまで堂々としていられるな。大抵の者は怯えるのだが……』
「そうは言われてもねぇ……」
レノとしては既にデュラハンの同族と思われる地下迷宮の第二階層に居た「甲冑の騎士」と遭遇しており、今回は話が通じるので解く怖がる必要もない。
『まあいい……ここでは何だ、少し移動しよう』
「でも、予選に参加しなかったリノン達もPが一定じゃないね」
「それはそうだが……」
「まあ、今はPを集める事に集中しよう。あと半分か……」
レノ達が集めた十数枚の木札を確認し、今はそれぞれに分配して所持している。出来れば「P」が多い木札を回収したいのだが、どの参加者が高い数字のPを所持しているのかは分からない以上、どうしようもない。
現在、既に40分近くが経過しており、警告音の数から間違いなく16名のメダル所持者が現れている。彼らの何人が既に予選突破しているのかは不明だが、最低でも残りの合格者の枠は「48名」であり、この調子では案外早く終わるかも知れない。
「審判員を見つけられれば私達の木札も交換できるんだが……」
「交換するとしても、木札を集め終えてからの方がいいな……まあ、誰か1人先に合格させる手もあるけど」
「そんな……皆一緒に合格したいです!!」
「けど、カノンさんの事も在るしな……先に誰か一人合格させて、こいつを運んでもらう方が安全だと思うけど……」
「確かに……まあ、まずは審判員と他の参加者を探し出すのが先決だが」
先の戦闘から5分以上経っているが、最初の頃と比べて他の参加者と遭遇せず、街の各地で参加者同士の戦闘が行われているのだろう。実際、遠方の方から魔法による爆音や衝撃音がyく聞こえてくる。
レノ達の現在の場所は闘技場の南側であり、東側に向けて移動している形になっている。取りあえずは円を描く様に移動を行い、木札を所持した参加者と審判員の捜索を行う。
「結構歩いてるけど、遭遇しないもんだな……ポチ子、臭いで分からないの?」
「すんすん……だめです。色々な臭いが風に乗って、分かりません」
「さっきから爆音が絶えないからな……それに獣人族対策として臭い消しを常備する者も居るだろうし……」
「八方塞がりか……」
狭い街路を移動しながら4人は周囲に警戒を怠らず、特に前方を歩いているレノは北部山岳や地下迷宮で鍛えられた五感を駆使し、奇襲に備えていた。
参加者の中には幼少の頃にレノが扱っていた隠密の魔法を習得している者もいると考えた方が妥当であり、不意打ちを食らわない様に慎重に行動しなければならない。特に先に見失ったシャドウの件もあり、レノ達は最大限に警戒していた。
(……ん?)
ガサッ……!
不意にレノは頭上から不審な音が聞こえ、顔を向けるとそこには異様な光景が広がっていた。
「……何だあれ?」
「どうし……あれは!?」
「えっ!?」
「……魔人族か?」
――前方の建物の屋根に視線を向けると、そこには黒い甲冑で覆われた騎士が立ち尽くしており、その騎士には「頭」が存在せず、右腕に頭部に付けると思われる「兜」を所持していた。
「……デュラハンか」
「確か……首なしの騎士の亡霊だっけ?」
こちらの世界のデュラハンは魔人族であり、その恐ろしい外見から恐れられ、滅多に人前には出てこない。元々は「人間」の亡霊が鎧に憑依(レミアの憑依召喚とは少し違うらしい)した存在であり、知能は非常に高い。
ちなみに魔人族の現代表である「魔人王」も同種であり、彼の場合は数百年の時を過ごしていると噂されている。
「あの人も参加者?」
「だろうが……こっちを見ているな」
「……というより、レノを見ている」
「俺?」
レノが屋根の上に仁王立ちする「デュラハン」に視線を注ぐと、彼(もしくは彼女)はゆっくりと動き出し、そのまま建物を跳躍してくる。
ドスゥウウンッ!!
「わぅんっ!?」
「おわっ!?」
「何て重量……!!」
「凄いな……」
デュラハンが地面に降り立つのと同時に地面が振動し、落下の衝撃で足元にクレーターまで生まれる。だが、デュラハン自体はそのまま何事も無くレノ達に向けて歩き寄る。距離が10メートルにまで縮まり、全員が身構えるとデュラハンの動きが止まり、
『……待て、戦う気は無い』
「え?」
「あ、頭の中に声が……!?」
「念話か?」
突然、レノ達の頭にまだ年若い「女性」の声が響き渡り、どうやら目の前のデュラハンが直接脳内に語り掛けているらしい。この自分の思念を相手に送り込む事を念話と呼ばれており、この世界では一部の種族しか扱えない。
ちなみにホノカが所持している魔導電話もこれと同じ類であり、特殊な術式と魔石で範囲を広げている。
『我が用があるのは、そこにいるハーフエルフだけだ』
「レノ……?」
『そうだ。まずは武器を下げろ、話をしたい』
「だって」
「……戦う気は無いようだな」
確かに眼の前のデュラハンから殺気や敵意を感じない。しかし、だからと言って簡単に信用は出来ない。だが、本当に話し合いが目的なら邪険に扱うのは後味が悪い。
「話し合いか……2人きりが希望?」
『出来れば……』
「それはダメだ。私達がいては都合が悪い話をする気なのか?」
『……分かった。だが、他言無用で頼む』
「内容による」
『……我を相手に、よくそこまで堂々としていられるな。大抵の者は怯えるのだが……』
「そうは言われてもねぇ……」
レノとしては既にデュラハンの同族と思われる地下迷宮の第二階層に居た「甲冑の騎士」と遭遇しており、今回は話が通じるので解く怖がる必要もない。
『まあいい……ここでは何だ、少し移動しよう』
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