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剣乱武闘編
転移召喚
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「大丈夫かゴンちゃん?」
「……気に、するな……先に行ってくれ!!」
「二人とも!!早く来い!!」
「み、見えてきましたぁ!!」
螺旋階段を登り切り、地上の光を確認すると、すぐにレノ達は外に飛び出す。だが、まだ地上の闘技場内であり、予選開始までにこの建物内から外に出なければならない。
――ピンポンパンポン
『え~……予選開始まで30秒切りました。まだ、闘技場内に残っている人はすぐに出てってくださいね~』
投げやり気味なラビットの報告が闘技場内に響き渡り、レノは周囲を見渡すと出入口(現在居るのは一般人用の通路)を確認し、自分たちは走れば十分に間に合うが、ゴンゾウはまだ螺旋階段から出ていない。
「レノ!!私達だけでも……何をしている!?」
「いいから、先に行ってて」
「わ、わぅ……」
レノは地面に跪き、階段の前にある細工を行うと、すぐにリノン達の後を追う。そして通路を抜けて出入口の扉を押し開き、
「間に合った!!」
「ぎ、ぎりぎりでした……」
「ああ……って、休んでいる場合じゃない」
闘技場の外に広がる街並みを確認し、リノン達はその場に跪くが、レノだけはすぐに準備を行う。
「さあ……上手く行けよ」
ジャラララッ……!!
銀の鎖を動かし、地面にいつもとは異なる転移魔方陣を刻み込むと、レノはその場で座り込み、魔方陣に右手を通して魔力を送り込む。
「これは……まさか!?」
「新しい魔法ですか!?」
「……来た!!」
――レノは地面に刻み込んだ魔方陣の模様が変化したことを確認し、即座に転移魔法を発動させる。但し、今回は自分自身を転移させるのではなく、螺旋階段に事前に書き込んだ魔方陣の上に立つ物体を転移させた。
ブゥンッ――!!
魔方陣が唐突に光り輝き、すぐに巨大な人影が現れ、魔方陣の上に移動する。
「うおおっ!?」
「うわっ!?」
「ゴンさん!?」
ドスンッ!!
螺旋階段で分かれたはずのカノンを抱えたゴンゾウが唐突に出現し、そのまま魔方陣の上に尻もちをつく形になる。唐突に現れたゴンゾウにリノン達は目を丸くするが、レノだけは安堵の吐息を吐き、
――ピンポンパンポンッ!
『はいは~いっ、予選開始で~す。それでは皆さん、頑張って下さいね~』
直後に闘技場の方からラビットの声が流れ、時間ぎりぎりだが全員が闘技場から抜け出す事に成功した。
『皆さんの木札に自分のP(ポイント)と、この街の地図が浮かんでいるはずですから、よく確認して行動してくださいね。それでは、ほどほどに頑張ってくださいね~』
そこでラビットの声が途切れ、全員が木札を確認する。何時の間にか木札の表面の鏡に変化が起きており、この街の地図が映しだされ、まるで現実世界のタブレットのように指で操作できる。
木札の右上には時刻が刻まれており、現在は「9:00」と表示され、左上の方には恐らくは現在の所有している「P」と思われる数字が刻まれていた。
「……私は3だ」
「わうっ……1です」
「俺は……2か」
「4」
リノンを筆頭に自分の木札のPを告げ、どうやら参加者に最初に支給されるPはランダムの可能性が高い。
「ポチ子は1か……わんわん言ってるからかな」
「わぅん?」
「それは関係ないと思う……多分。それよりこれからどうする?」
「一緒に、行動するのか?」
「そうだな……一緒に行動するなら、最低でも30P分の木札が必要になるのか」
この場では一番Pが多いレノでも、最悪の場合は「6人」の参加者を倒さない限りは合格できない。また、Pを集めたとしても審判員を見つけ出し、木札と本戦参加の証であるメダルを交換してこの闘技場に戻らないといけない。
ラビットの説明ではPを集めたらこの闘技場に戻る必要があり、レノは自分の木札を確認して地図を確認するが、操作が慣れるのに時間が掛かりそうである。
「さて……ここから何処へ行くか」
「運が悪いと、30人と戦わないといけないのか……」
「大丈夫です!!私達なら、誰が相手だろうと負けません!!」
「うむっ!!」
「けど……その人はどうするの?」
「「「……あっ」」」
レノは動かないカノンを指差し、リノン達が思い出したように硬直する。このまま予選に参加するにしても、死人の疑いがある彼女を放置するわけには行かない。だが、このまま連れて行く訳にはいかない。
警備兵に預けるのが一番なのだろうが、周囲を見渡しても兵士どころか住民の姿さえ見えず、どうやら今回の予選のために既に街の一般人を避難させたという話は事実らしい。
闘技場には巡回中の兵士ぐらいはいるだろうが、予選中に闘技場内に戻れば失格となる。今回の剣乱武闘は種族間のパワーバランスに影響が出るほどの重要な大会であり、このような形で棄権する事はバルトロス王国が不利となる可能性も出てくる。
「仕方ない……その人はゴンちゃんが担いでて」
「レノ?」
「適当に参加者を狩って、さっさと終らせよう」
「あの……さっきのようにレノさんが転移で何処か安全な場所に遅れないんですか?」
「そうだ!!というより、何時の間にあれほどの「高位転移」を覚えたんだ!?」
リノン達がレノに詰め寄るが、彼は面倒気に黒衣の左腕に右手を突っ込み、ある物を取りだす。それはカトレアから受け取った十字架鍵であり、以前よりも光沢が増している。
「これのお蔭だよ。センリに少し強化してもらった」
「これは……まさか、聖具か!?」
――先ほどの「転移魔方陣」はこの十字架を利用して生み出した魔法であり、今までの転移魔方陣は転移する際に術者のレノも同行していなければ転移不可能だったが、この十字架を使えば遠方の魔方陣から魔方陣の上に物体を転移をさせる事が可能になった。
「……気に、するな……先に行ってくれ!!」
「二人とも!!早く来い!!」
「み、見えてきましたぁ!!」
螺旋階段を登り切り、地上の光を確認すると、すぐにレノ達は外に飛び出す。だが、まだ地上の闘技場内であり、予選開始までにこの建物内から外に出なければならない。
――ピンポンパンポン
『え~……予選開始まで30秒切りました。まだ、闘技場内に残っている人はすぐに出てってくださいね~』
投げやり気味なラビットの報告が闘技場内に響き渡り、レノは周囲を見渡すと出入口(現在居るのは一般人用の通路)を確認し、自分たちは走れば十分に間に合うが、ゴンゾウはまだ螺旋階段から出ていない。
「レノ!!私達だけでも……何をしている!?」
「いいから、先に行ってて」
「わ、わぅ……」
レノは地面に跪き、階段の前にある細工を行うと、すぐにリノン達の後を追う。そして通路を抜けて出入口の扉を押し開き、
「間に合った!!」
「ぎ、ぎりぎりでした……」
「ああ……って、休んでいる場合じゃない」
闘技場の外に広がる街並みを確認し、リノン達はその場に跪くが、レノだけはすぐに準備を行う。
「さあ……上手く行けよ」
ジャラララッ……!!
銀の鎖を動かし、地面にいつもとは異なる転移魔方陣を刻み込むと、レノはその場で座り込み、魔方陣に右手を通して魔力を送り込む。
「これは……まさか!?」
「新しい魔法ですか!?」
「……来た!!」
――レノは地面に刻み込んだ魔方陣の模様が変化したことを確認し、即座に転移魔法を発動させる。但し、今回は自分自身を転移させるのではなく、螺旋階段に事前に書き込んだ魔方陣の上に立つ物体を転移させた。
ブゥンッ――!!
魔方陣が唐突に光り輝き、すぐに巨大な人影が現れ、魔方陣の上に移動する。
「うおおっ!?」
「うわっ!?」
「ゴンさん!?」
ドスンッ!!
螺旋階段で分かれたはずのカノンを抱えたゴンゾウが唐突に出現し、そのまま魔方陣の上に尻もちをつく形になる。唐突に現れたゴンゾウにリノン達は目を丸くするが、レノだけは安堵の吐息を吐き、
――ピンポンパンポンッ!
『はいは~いっ、予選開始で~す。それでは皆さん、頑張って下さいね~』
直後に闘技場の方からラビットの声が流れ、時間ぎりぎりだが全員が闘技場から抜け出す事に成功した。
『皆さんの木札に自分のP(ポイント)と、この街の地図が浮かんでいるはずですから、よく確認して行動してくださいね。それでは、ほどほどに頑張ってくださいね~』
そこでラビットの声が途切れ、全員が木札を確認する。何時の間にか木札の表面の鏡に変化が起きており、この街の地図が映しだされ、まるで現実世界のタブレットのように指で操作できる。
木札の右上には時刻が刻まれており、現在は「9:00」と表示され、左上の方には恐らくは現在の所有している「P」と思われる数字が刻まれていた。
「……私は3だ」
「わうっ……1です」
「俺は……2か」
「4」
リノンを筆頭に自分の木札のPを告げ、どうやら参加者に最初に支給されるPはランダムの可能性が高い。
「ポチ子は1か……わんわん言ってるからかな」
「わぅん?」
「それは関係ないと思う……多分。それよりこれからどうする?」
「一緒に、行動するのか?」
「そうだな……一緒に行動するなら、最低でも30P分の木札が必要になるのか」
この場では一番Pが多いレノでも、最悪の場合は「6人」の参加者を倒さない限りは合格できない。また、Pを集めたとしても審判員を見つけ出し、木札と本戦参加の証であるメダルを交換してこの闘技場に戻らないといけない。
ラビットの説明ではPを集めたらこの闘技場に戻る必要があり、レノは自分の木札を確認して地図を確認するが、操作が慣れるのに時間が掛かりそうである。
「さて……ここから何処へ行くか」
「運が悪いと、30人と戦わないといけないのか……」
「大丈夫です!!私達なら、誰が相手だろうと負けません!!」
「うむっ!!」
「けど……その人はどうするの?」
「「「……あっ」」」
レノは動かないカノンを指差し、リノン達が思い出したように硬直する。このまま予選に参加するにしても、死人の疑いがある彼女を放置するわけには行かない。だが、このまま連れて行く訳にはいかない。
警備兵に預けるのが一番なのだろうが、周囲を見渡しても兵士どころか住民の姿さえ見えず、どうやら今回の予選のために既に街の一般人を避難させたという話は事実らしい。
闘技場には巡回中の兵士ぐらいはいるだろうが、予選中に闘技場内に戻れば失格となる。今回の剣乱武闘は種族間のパワーバランスに影響が出るほどの重要な大会であり、このような形で棄権する事はバルトロス王国が不利となる可能性も出てくる。
「仕方ない……その人はゴンちゃんが担いでて」
「レノ?」
「適当に参加者を狩って、さっさと終らせよう」
「あの……さっきのようにレノさんが転移で何処か安全な場所に遅れないんですか?」
「そうだ!!というより、何時の間にあれほどの「高位転移」を覚えたんだ!?」
リノン達がレノに詰め寄るが、彼は面倒気に黒衣の左腕に右手を突っ込み、ある物を取りだす。それはカトレアから受け取った十字架鍵であり、以前よりも光沢が増している。
「これのお蔭だよ。センリに少し強化してもらった」
「これは……まさか、聖具か!?」
――先ほどの「転移魔方陣」はこの十字架を利用して生み出した魔法であり、今までの転移魔方陣は転移する際に術者のレノも同行していなければ転移不可能だったが、この十字架を使えば遠方の魔方陣から魔方陣の上に物体を転移をさせる事が可能になった。
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