種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

文字の大きさ
上 下
442 / 1,095
剣乱武闘編

水属性

しおりを挟む
『ウオォオオオオンッ!!』
「おっと!!」


サンド・ゴーレムの肉体から次々と無数の「腕」が生成され、レノに向けて伸びてくる。どうやら先端の拳の部分の砂だけを「凝固」させているようであり、直撃すれば砂とは言え、ただでは済まないだろう。


ドンッ!!ドォンッ!!


次々と向かってくる無数の「砂の拳」に対し、レノは肉体強化(アクセル)で身体能力を上昇させて避け続ける。だが、砂の上で動くのは予想以上に体力を消費させ、さらには異様な暑さがより疲労感を増加させる。


『ウオオッ!!』
「っと!!」


ドォンッ!!


左頬に砂の拳が通り抜け、もう少しで頭を撃ち抜かれるところだった。単純な戦闘力ならばロック・ゴーレムの方が上だろうが、何度攻撃しても即座に再生するという点ではサンド・ゴーレムの方が厄介だった。


「乱刃!!」


ズバァアアアアッ!!


右腕を向け、三日月状の嵐の刃を放ち、サンド・ゴーレムの身体に衝突させて左右真っ二つに裂けるが、


ズザザザッ……!!


『ウオォオオオッ……!!』
「ダメか……」


左右に別れたはずの砂の肉体が再生を始め、単純な砲撃魔法では致命傷を与えられない。やはり、体内の何処かに存在する「核」を破壊しない限りは倒す事は出来ないのだろう。


『オォオオオッ……!!』
「うおおっ!?」
「くそっ!!この、このっ!!」


後方のエルフ達の方を確認すると、四方がサンド・ゴーレムに取り囲まれており、必死に剣や弓矢を突き立てるが、砂の肉体は彼等の攻撃は通用しない。風属性の魔法を使用して吹き飛ばす程度の事は出来ても、すぐにゴーレム達は周囲の砂漠の砂を吸収して再生してしまう。


「あっちも大変そうだな……」
『ウオオッ……』
「おっと」


ビュンッ!


不規則に変化した砂の拳が襲い掛かり、レノは「瞬脚」でその場を避ける。流石に体力的に限界が近く、着地をした途端に膝を着く。


「……射程距離は5メートルか」
『ウオオッ……』


しかし、レノも逃げ続けていたばかりではなく、サンド・ゴーレムの「砂の拳」の射程距離を測っていた。相手は何度でも再生できるらしいが、肉体を形成する砂の量には限界があるのは間違いなく、それが狙い目だった。

レノは10メートルほど距離を離れると、息を整える。まず雷属性の魔法は頼りに出来ず、砂の肉体では電撃を流し込んだところで効果は薄い。恐らくはロック・ゴーレムを破壊した「雷撃」も通用せず、嵐属性の魔法でも致命傷は与えられない。


(魔鎧(フラム)を使えば何とかなるかも知れないけど……人目が多いな)


このサンド・ゴーレムがロック・ゴーレムと同じく、どこかに存在するはずの「核」と呼ばれる魔石で肉体を形成して動いていたとしたら、恐らくは魔石の魔力であろうと内側から掻き消す「魔鎧」ならば通用するはず。ゴーレムの核は魔石と同じ原料であり、彼らは言ってみれば魔石の魔力で自らの身体を形成しているのだ。

だが、この予選で修得で来たばかりの魔鎧を使う事は出来れば避けたい。ここで「奥の手」を見せると、本戦にも響いてしまう。


「試してみるか……」


レノはある考えが思い浮かび、右手を「ピストル」の形に変えると、


「水弾(みずだま)」


ドォンッ!!


指先から野球ボールほどの「水球」が誕生し、そのままサンド・ゴーレムの頭部に衝突する。


『ウオオッ……!?』


水の弾丸が命中した場所の砂地が変色し、サンド・ゴーレムに初めて動揺したような態度を取る。その隙を逃さず、レノは間髪入れずに移動し、


「らあっ!!」


ドゴォンッ!!


肉体強化だけを行った右腕を振り抜き、変色した頭部の部分に叩き込む。先ほどのエルフ達の攻撃はすり抜けたが、水によって砂が練り固まっており、攻撃が通じた。最も、相手は痛覚が無いため、怯みはするが損傷(ダメージ)は与えられない。だが、レノは瞬時に右手の部分に「水属性」の液体を形成し、


「とりゃっ!!」


ズゥンッ!!


『オオッ……!?』


続けて腹部に拳を叩き込み、水分を吸収して凝固したサンド・ゴーレムに衝撃が走る。どうやら水属性の攻撃は通じるらしく、全身を変色した砂の部分は崩れ落ちる。


ズザザザッ……!!


(……再生しない?)


水分によって固められた肉体の部分が崩れさり、先ほどの攻撃では瞬時に再生したが、今度は全体の砂の面積が明らかに減少しており、肉体が縮んでいる。原理は不明だが、水属性によって練り固まれた「砂」の肉体は再生不可能なようであり、周囲の砂を吸収して再生する事も出来ないらしい。


「けど、時間かかるなぁっ!!」
『ウオオッ……!?』


ズゥンッ!!


今現在のレノが発現できる水属性の水量は掌の部分を覆う程度の量だけであり、これ以上は生成出来ない。先ほどの水弾も1発が限界であり、一気にサンド・ゴーレムの肉体を固めることは不可能。


「おららぁっ!!」
『ウオオオッ……!?』
「「おおっ!!」」


右拳を何度も叩き込み、その光景を見て観客達も湧き上がる。エルフの魔術師が肉弾戦を挑む姿など滅多に見られず、徐々にサンド・ゴーレムの身体が縮小していき、


「これか!!」


バシィッ!!


『オオ……ンッ!?』


遂にサンド・ゴーレムの「核」らしき異物を体内から発見し、レノはそれを掴み上げて砂の肉体から引っ張り上げる。予想通り、レノの掌には赤く輝くビー玉を想像させる鉱石が握られており、容赦なく握りつぶす。


バキィンッ!!


『ウォオオオオオオッ……!!』


ズザァアアアアアッ……!!


核を破壊した瞬間、サンド・ゴーレムの体が崩れ去り、今度こそ消滅したようだ。レノは砕け散った核を確認すると、力を失ったように色が失われていた。


「あ~疲れた……」


肩を振り回し、まさかゴーレムを相手に肉弾戦をする事になるなど考えもしていなかったため、随分と体力を消費した。


「くっそぉ!!こんな、試合があるかぁっ!!」
「うわぁっ!!た、隊長……!!」
「くそっ……砂如きに……!!」


一方でエルフ達は4体のサンド・ゴーレムに取り囲まれ、既に数人ほど飲み込まれており、巨大化したゴーレムも存在した。どうやら、1体だけは偶然にも体内の核を破壊して倒せたらしいが、明らかに劣勢に陥っている。

別に森人族を助ける義理などないが、このまま見捨てるのも哀れに思える。だが、これは大会の予選であり、いずれ彼等とは敵同士となる相手だ。第一に彼らが後ろから不意打ち(毒針)を仕掛けようとしていたのも事実なので、一応は援護が必要かだけを問い質してみる。


「援護しようか~?」
「貴様ぁっ!!」
「ハーフエルフなんぞの力は借りん!!」
「うおぉおおおおおおおおっ!!」


レノの言葉に奮起し、劣勢に立たされながらも森人族たちは戦闘を続行した。
しおりを挟む
1 / 4

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

転生チートは家族のために~ユニークスキルで、快適な異世界生活を送りたい!~

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:21,321pt お気に入り:3,267

間違い転生!!〜神様の加護をたくさん貰っても それでものんびり自由に生きたい〜

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:4,884pt お気に入り:3,825

異世界転生令嬢、出奔する

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:9,592pt お気に入り:13,936

処理中です...