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剣乱武闘編
雷の銛
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ドォォオオオンッ……!!
「な、何だ!?何が起きている!?」
「……今度は東側からか」
「くそっ……何を考えてるんだ大会側の連中は!!」
レノは方向的に東の方角から聞こえてくる轟音に対して冷静に考える。北部山岳や地下迷宮で様々な魔物と出会ってきたが、サンドフィッシュなどという魔物は見たことも聞いたことも無い。
だが、名前の響きから砂漠に関わる魔物であり、だいたいの想像は着く。このまま何時までも待機している訳にもいかず、レノは動き出そうとした時、
「待て!!どこへ行く気だ!!」
「逃がさんぞ!!」
「指図される謂れはない。別に仲間同士でもないだろ」
「ぐっ……!!」
先ほど選手同士の争いは「規則」で禁じられているにも関わらず、エルフ達はレノに向けて武器を構える。意地でもここで彼を逃すまいと考えているようだが、彼等とて大会に優勝するために参加したのだ。下手に彼に攻撃すれば失格となり、それだけは避けねばならない。
今回の大会は種族間の力関係に大きく影響するため、1人でも多く予選の突破を成し遂げなければならない。そのため、年長者らしき髭を生やしたエルフの戦士が溜息を吐き、
「……仕方ない、一時休戦だ。我々に従うがいい」
「運の良い奴め……足を引っ張るなよ」
彼らとしては最大限の譲歩をしたつもりだろうが、その口調からはっきりとレノの事を見下している。
「やだよ」
「何!?」
「貴様……ハーフエルフの分際で!!」
「うるさいな……」
レノは彼等に背中を向け、音の発生源である「東門」に向けて歩き出し、エルフ達は憤慨した表情を浮かべるが、ここで後ろから彼を弓で射抜けば失格となる。
「くそっ……あのガキ」
「放って置け!!我々だけでも……」
「お、おい!!あれを見ろ!!」
ズザザザッ……!!
北門に向けて何かが砂煙を上げて突進し、よく観察すると刃物を想像させる背ビレが砂の中から姿を現し、真っ直ぐにレノの方角に向かって突進してくる。
「あれか!!」
「はっ……1人で格好つけるからだ」
「待て!!聖剣を使うかもしれん……その隙に仕留めるぞ」
年長者のエルフが懐から「吹き矢」を取り出し、痺れ薬が塗りつけられた「針」を込める。これは彼の森に代々伝わる薬であり、掠っただけでも毒耐性が存在するエルフであろうと身体が痺れてしまう。
大会側が禁止したのは選手同士の争いだが、この吹き矢ならば大会側の監視を潜り抜けて毒針を仕込める可能性もある。狙うとしたらサンドフィッシュが彼に襲い掛かった瞬間であり、針を打ち込んで彼の身体を麻痺させ、そのままサメの餌食にする算段を立てる。
「……出来る事なら正々堂々と打ち倒したいが……仕方ない」
「よし……タイミングを間違えるなよ」
エルフ達も移動を始め、レノの後方に接近する。その間にもサンドフィッシュは砂中を進み、遂にはその巨体を露わにする。
ズドォオオオオンッ!!
『シャアァアアアアアアアッ!!』
「「「おおっ!!」」」
今まで一番の跳躍を行い、サンドフィッシュの巨大な肉体が空中に浮かび上がり、レノに向けて鼻先を向けてくる。背ビレ同様にまるで刃物のように先端部が尖っており、全体重を乗せて突撃してくる。
これならば「吹き矢」を使用せずともレノを一撃で倒せそうだが、エルフ達は彼が避けた時の事を想定して用意を行う。20人のエルフ達の中から3人だけが吹き矢を握り締め、レノの出方を伺う。
「ふむっ……」
だが、当のレノは自分に向かってくるサメの巨体に対し、地下迷宮の「ゴーレム級」の厄介な相手だと判断し、
「久しぶりに……雷槍」
バチィイイイイッ!!
「なっ……!?」
「い、雷だと!?」
「こんな場所で……しかも無詠唱!?」
レノの右腕に電撃が迸り、エルフ達に衝撃が走る。エルフの殆どは生まれながらに風属性だけを得意とするため、レノのような雷属性を操れる者など滅多に存在しない。
また、一瞬で右腕全体に雷属性の魔力を迸らせるなど、一流の森人族の戦士でも十数年の鍛錬を必要とし、まだ15歳でありながらここまでの境地に辿り着いたレノに対して動揺が走る。
その間にも、レノは空手で言う「貫手」の形に変え、電流を「槍」の形に変えると、両足を肉体強化(アクセル)で強化させ、
「瞬脚!!」
ズダァアアンッ!!
「「うわぁっ!?」」
その場から勢いよく飛び上がり、まるで爆風が起きたように砂煙が舞い散る。その煙によって森人族は視界を奪われ、エルフ達も吹き矢で狙い打ち出来ない。
「せえ……のっ!!」
『シャッ……!?』
一方でレノは空中に浮かび上がったサンドフィッシュに向けて「雷槍」を振りかぶり、まるで漁師の銛のようにサメの腹部を貫く。
ズドォオオオンッ!!
『シャギャアァアアアアアアアッ!?』
「……硬いな」
だが、予想に反してサンドフィッシュの鮫肌が硬く、弾かれはしなかったが槍の先端部が少しめり込んだだけであり、完全な貫通までは出来なかった。
ズボォオオオッ!!
「っと!!」
ドォンッ!!ドォンッ!!
レノは右腕を引き抜き、瞬脚で空中を移動する。この技はグリフォンを相手に作り出した技であり、空中でも使用可能であり、こんな場面では大きく役立つ。
『シャアァアアアアアッ……!!』
ズダァアアアアアアンッ!!
サンドフィッシュが砂漠の上に着地し、そのまま横倒れになって動かない。雷槍の貫通は免れたとしても、肉体の内部に電流が流し込まれ事に変わりはなく、戦闘不能に追い込む事に成功した。
「な、何だ!?何が起きている!?」
「……今度は東側からか」
「くそっ……何を考えてるんだ大会側の連中は!!」
レノは方向的に東の方角から聞こえてくる轟音に対して冷静に考える。北部山岳や地下迷宮で様々な魔物と出会ってきたが、サンドフィッシュなどという魔物は見たことも聞いたことも無い。
だが、名前の響きから砂漠に関わる魔物であり、だいたいの想像は着く。このまま何時までも待機している訳にもいかず、レノは動き出そうとした時、
「待て!!どこへ行く気だ!!」
「逃がさんぞ!!」
「指図される謂れはない。別に仲間同士でもないだろ」
「ぐっ……!!」
先ほど選手同士の争いは「規則」で禁じられているにも関わらず、エルフ達はレノに向けて武器を構える。意地でもここで彼を逃すまいと考えているようだが、彼等とて大会に優勝するために参加したのだ。下手に彼に攻撃すれば失格となり、それだけは避けねばならない。
今回の大会は種族間の力関係に大きく影響するため、1人でも多く予選の突破を成し遂げなければならない。そのため、年長者らしき髭を生やしたエルフの戦士が溜息を吐き、
「……仕方ない、一時休戦だ。我々に従うがいい」
「運の良い奴め……足を引っ張るなよ」
彼らとしては最大限の譲歩をしたつもりだろうが、その口調からはっきりとレノの事を見下している。
「やだよ」
「何!?」
「貴様……ハーフエルフの分際で!!」
「うるさいな……」
レノは彼等に背中を向け、音の発生源である「東門」に向けて歩き出し、エルフ達は憤慨した表情を浮かべるが、ここで後ろから彼を弓で射抜けば失格となる。
「くそっ……あのガキ」
「放って置け!!我々だけでも……」
「お、おい!!あれを見ろ!!」
ズザザザッ……!!
北門に向けて何かが砂煙を上げて突進し、よく観察すると刃物を想像させる背ビレが砂の中から姿を現し、真っ直ぐにレノの方角に向かって突進してくる。
「あれか!!」
「はっ……1人で格好つけるからだ」
「待て!!聖剣を使うかもしれん……その隙に仕留めるぞ」
年長者のエルフが懐から「吹き矢」を取り出し、痺れ薬が塗りつけられた「針」を込める。これは彼の森に代々伝わる薬であり、掠っただけでも毒耐性が存在するエルフであろうと身体が痺れてしまう。
大会側が禁止したのは選手同士の争いだが、この吹き矢ならば大会側の監視を潜り抜けて毒針を仕込める可能性もある。狙うとしたらサンドフィッシュが彼に襲い掛かった瞬間であり、針を打ち込んで彼の身体を麻痺させ、そのままサメの餌食にする算段を立てる。
「……出来る事なら正々堂々と打ち倒したいが……仕方ない」
「よし……タイミングを間違えるなよ」
エルフ達も移動を始め、レノの後方に接近する。その間にもサンドフィッシュは砂中を進み、遂にはその巨体を露わにする。
ズドォオオオオンッ!!
『シャアァアアアアアアアッ!!』
「「「おおっ!!」」」
今まで一番の跳躍を行い、サンドフィッシュの巨大な肉体が空中に浮かび上がり、レノに向けて鼻先を向けてくる。背ビレ同様にまるで刃物のように先端部が尖っており、全体重を乗せて突撃してくる。
これならば「吹き矢」を使用せずともレノを一撃で倒せそうだが、エルフ達は彼が避けた時の事を想定して用意を行う。20人のエルフ達の中から3人だけが吹き矢を握り締め、レノの出方を伺う。
「ふむっ……」
だが、当のレノは自分に向かってくるサメの巨体に対し、地下迷宮の「ゴーレム級」の厄介な相手だと判断し、
「久しぶりに……雷槍」
バチィイイイイッ!!
「なっ……!?」
「い、雷だと!?」
「こんな場所で……しかも無詠唱!?」
レノの右腕に電撃が迸り、エルフ達に衝撃が走る。エルフの殆どは生まれながらに風属性だけを得意とするため、レノのような雷属性を操れる者など滅多に存在しない。
また、一瞬で右腕全体に雷属性の魔力を迸らせるなど、一流の森人族の戦士でも十数年の鍛錬を必要とし、まだ15歳でありながらここまでの境地に辿り着いたレノに対して動揺が走る。
その間にも、レノは空手で言う「貫手」の形に変え、電流を「槍」の形に変えると、両足を肉体強化(アクセル)で強化させ、
「瞬脚!!」
ズダァアアンッ!!
「「うわぁっ!?」」
その場から勢いよく飛び上がり、まるで爆風が起きたように砂煙が舞い散る。その煙によって森人族は視界を奪われ、エルフ達も吹き矢で狙い打ち出来ない。
「せえ……のっ!!」
『シャッ……!?』
一方でレノは空中に浮かび上がったサンドフィッシュに向けて「雷槍」を振りかぶり、まるで漁師の銛のようにサメの腹部を貫く。
ズドォオオオンッ!!
『シャギャアァアアアアアアアッ!?』
「……硬いな」
だが、予想に反してサンドフィッシュの鮫肌が硬く、弾かれはしなかったが槍の先端部が少しめり込んだだけであり、完全な貫通までは出来なかった。
ズボォオオオッ!!
「っと!!」
ドォンッ!!ドォンッ!!
レノは右腕を引き抜き、瞬脚で空中を移動する。この技はグリフォンを相手に作り出した技であり、空中でも使用可能であり、こんな場面では大きく役立つ。
『シャアァアアアアアッ……!!』
ズダァアアアアアアンッ!!
サンドフィッシュが砂漠の上に着地し、そのまま横倒れになって動かない。雷槍の貫通は免れたとしても、肉体の内部に電流が流し込まれ事に変わりはなく、戦闘不能に追い込む事に成功した。
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