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第四部隊編
活性化の影響
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「本当に作物が育つの?」
「まだ畑を作り始めたばかりですので分かりませんが……この森に住むエルフの御仁は問題ないとのことです」
「エルフの御仁……?」
「はい。以前にも話しましたが、私に言葉を教えてくれた方です!!まさか、このような場所で再会出来るとは思っていませんでしたが……」
「それってもしかして……」
レノの脳裏に年老いた男性のエルフが浮かび上がり、もしも「彼」ならば再会したいところだが、カイは首を振り、
「ですが……我々に種を分けて、すぐに立ち去ってしまいました……何でも母親を探しているとかで」
「母親……?」
「そう言えば立ち去る前に、レノ様によろしくとだけ伝えてくれと言ってましたが……お知り合いだったのですか?」
「……そっか」
「……レノ?」
どうやら間違いなく、つい最近までこの森に深淵の森の「長老」が住んでいた事は確かなようだ。だが、既に立ち去った後であり、カイに具体的に彼がこの森を去った日時を尋ねるが、ゴブリン達には日付という感覚は無いらしく、とにかく「少し前」の出来事らしい。
「去り際にたくさんの物を置いて行きました。その中に使い道が良く分からない物があるのですが……」
「ギギッ!!」
すぐに周囲に居たゴブリン達が茶色の袋(掌サイズ)を持ち込み、レノに手渡してくる。すぐに紐をほどいて中身を確認すると、
「これは……」
「凄いでござる!!」
「……綺麗」
袋の中には青く光り輝く翡翠型の結晶が存在し、以前にリノンに連れられて尋ねたテンペスト騎士団の倉庫にも同じものを見かけた。中に入っていたのは「ブルー・クリスタル」と呼ばれる魔水晶であり、水属性の魔法を強める能力を持っている。
センリが愛用している杖にも同様の魔水晶が取り付けられており、相当な希少価値の高い魔石のはずだが、どうしてエルフであるはずの彼が所有していたのかが気になる。
「私は火属性の魔石は扱えるのですが……この魔水晶は使えません」
「カイじゃ無理かな……」
魔石と違い、魔水晶は主にセンリのような上位魔導士にしか扱えず、普通の魔導士ではその効能を発揮できない。森人族の血が流れているレノならば使用できる可能性もあるが、生憎とレノが得意とするのは嵐属性と雷属性であり、水属性とは相性が悪い。折角の希少品だが、今のレノ達には宝の持ち腐れである。
「そうだ。コトミは水属性の魔法が出来たよね?」
「……無理、まだ魔水晶を操れるれべるじゃない」
「だよね……期待はしてないけどカゲマルは?」
「拙者も魔水晶はあまり……というか、期待していないというのは酷いではござらんか!?」
「どうしようかな……センリに渡すか」
「あの……実はこの事は教会の方にも伝えたのですが、レノ様方に判断を任せるとの事で……」
カイによると、聖導教会の方もこの「ブルー・クリスタル」の扱いに困っており、センリにも話が伝わっている。だが、彼女はこの魔水晶は長老から直接受け取ったゴブリン達に所有権があると主張し、受け取るのを拒否した。
「我々では扱えませんので……どうかお受け取り下さい」
「まあ、そう言う事なら……」
レノはブルー・クリスタルの魔水晶を受け取り、取りあえずは荷物の中に締まっていたカトレアから受け取った十字架鍵と同じように仕舞い込む。もう一度周囲を見渡し、森の異変を突き止めるために調査する事にした。
――その夜は枯葉の森を歩き渡り、この森を監視する聖導教会の人間からも話を聞き終え、どうやら完全に枯渇した土地と思われた枯葉の森だが、どのような理由なのか不明だが少しずつ蘇り始めているらしい。
殆どの樹木に新芽が確認され、数年前なら生物が一匹も確認できなかったはずだが、小さな昆虫などは既に森の中に生息している。さらに川には小魚も確認され、徐々に生き物が再び集まりだしている兆候があった。
少し前にも完全に資源が掘り尽くされたはずのアグネス廃坑から魔石が発掘されたり、他にも世界各地で微妙に異変が起きているという。
――レノの予想は間違っておらず、学園都市の研究家によれば数年ほど前から「活性化現象」と呼ばれる惑星規模で自然や生物が異常な速度成長したり、枯渇した土地が蘇るなどの減少が確認されており、この活性化現象によって魔物が異常増殖しているとも言われている。
この現象によって魔物が増殖する反面、枯葉の森やアグネス廃坑のような枯渇した土地にも影響が起きており、新しい鉱石や自然が復活している。このような世界規模で起きている「異変」は実は過去にも起きており、今から1000年前の魔族侵攻大戦にも同じ減少が発生しており、世界中で異様な量の農作物と魔石や魔水晶の発掘がされていた。
学園都市の研究家の予想では、恐らく「1000年」単位でこの星そのものが「活性化減少」を起こしており、この時期に魔物も大幅に増殖し、農作物や新しい鉱石などが大量に発見されている。
原理は解明されていないが、1000年前の「活性化現象」の際は魔王が死亡したのと同時期に収まった事もあり、もしかしたら今回の活性化現象も「魔王」と呼ばれる存在が生まれようとしているのではないかとも疑われている――
「まだ畑を作り始めたばかりですので分かりませんが……この森に住むエルフの御仁は問題ないとのことです」
「エルフの御仁……?」
「はい。以前にも話しましたが、私に言葉を教えてくれた方です!!まさか、このような場所で再会出来るとは思っていませんでしたが……」
「それってもしかして……」
レノの脳裏に年老いた男性のエルフが浮かび上がり、もしも「彼」ならば再会したいところだが、カイは首を振り、
「ですが……我々に種を分けて、すぐに立ち去ってしまいました……何でも母親を探しているとかで」
「母親……?」
「そう言えば立ち去る前に、レノ様によろしくとだけ伝えてくれと言ってましたが……お知り合いだったのですか?」
「……そっか」
「……レノ?」
どうやら間違いなく、つい最近までこの森に深淵の森の「長老」が住んでいた事は確かなようだ。だが、既に立ち去った後であり、カイに具体的に彼がこの森を去った日時を尋ねるが、ゴブリン達には日付という感覚は無いらしく、とにかく「少し前」の出来事らしい。
「去り際にたくさんの物を置いて行きました。その中に使い道が良く分からない物があるのですが……」
「ギギッ!!」
すぐに周囲に居たゴブリン達が茶色の袋(掌サイズ)を持ち込み、レノに手渡してくる。すぐに紐をほどいて中身を確認すると、
「これは……」
「凄いでござる!!」
「……綺麗」
袋の中には青く光り輝く翡翠型の結晶が存在し、以前にリノンに連れられて尋ねたテンペスト騎士団の倉庫にも同じものを見かけた。中に入っていたのは「ブルー・クリスタル」と呼ばれる魔水晶であり、水属性の魔法を強める能力を持っている。
センリが愛用している杖にも同様の魔水晶が取り付けられており、相当な希少価値の高い魔石のはずだが、どうしてエルフであるはずの彼が所有していたのかが気になる。
「私は火属性の魔石は扱えるのですが……この魔水晶は使えません」
「カイじゃ無理かな……」
魔石と違い、魔水晶は主にセンリのような上位魔導士にしか扱えず、普通の魔導士ではその効能を発揮できない。森人族の血が流れているレノならば使用できる可能性もあるが、生憎とレノが得意とするのは嵐属性と雷属性であり、水属性とは相性が悪い。折角の希少品だが、今のレノ達には宝の持ち腐れである。
「そうだ。コトミは水属性の魔法が出来たよね?」
「……無理、まだ魔水晶を操れるれべるじゃない」
「だよね……期待はしてないけどカゲマルは?」
「拙者も魔水晶はあまり……というか、期待していないというのは酷いではござらんか!?」
「どうしようかな……センリに渡すか」
「あの……実はこの事は教会の方にも伝えたのですが、レノ様方に判断を任せるとの事で……」
カイによると、聖導教会の方もこの「ブルー・クリスタル」の扱いに困っており、センリにも話が伝わっている。だが、彼女はこの魔水晶は長老から直接受け取ったゴブリン達に所有権があると主張し、受け取るのを拒否した。
「我々では扱えませんので……どうかお受け取り下さい」
「まあ、そう言う事なら……」
レノはブルー・クリスタルの魔水晶を受け取り、取りあえずは荷物の中に締まっていたカトレアから受け取った十字架鍵と同じように仕舞い込む。もう一度周囲を見渡し、森の異変を突き止めるために調査する事にした。
――その夜は枯葉の森を歩き渡り、この森を監視する聖導教会の人間からも話を聞き終え、どうやら完全に枯渇した土地と思われた枯葉の森だが、どのような理由なのか不明だが少しずつ蘇り始めているらしい。
殆どの樹木に新芽が確認され、数年前なら生物が一匹も確認できなかったはずだが、小さな昆虫などは既に森の中に生息している。さらに川には小魚も確認され、徐々に生き物が再び集まりだしている兆候があった。
少し前にも完全に資源が掘り尽くされたはずのアグネス廃坑から魔石が発掘されたり、他にも世界各地で微妙に異変が起きているという。
――レノの予想は間違っておらず、学園都市の研究家によれば数年ほど前から「活性化現象」と呼ばれる惑星規模で自然や生物が異常な速度成長したり、枯渇した土地が蘇るなどの減少が確認されており、この活性化現象によって魔物が異常増殖しているとも言われている。
この現象によって魔物が増殖する反面、枯葉の森やアグネス廃坑のような枯渇した土地にも影響が起きており、新しい鉱石や自然が復活している。このような世界規模で起きている「異変」は実は過去にも起きており、今から1000年前の魔族侵攻大戦にも同じ減少が発生しており、世界中で異様な量の農作物と魔石や魔水晶の発掘がされていた。
学園都市の研究家の予想では、恐らく「1000年」単位でこの星そのものが「活性化減少」を起こしており、この時期に魔物も大幅に増殖し、農作物や新しい鉱石などが大量に発見されている。
原理は解明されていないが、1000年前の「活性化現象」の際は魔王が死亡したのと同時期に収まった事もあり、もしかしたら今回の活性化現象も「魔王」と呼ばれる存在が生まれようとしているのではないかとも疑われている――
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