種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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第四部隊編

それぞれの訓練

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闘人都市でレノが魔闘術の習得に苦労している間、第4部隊の団員であるゴンゾウとポチ子もそれぞれが大会に向けて独自の鍛錬方法を実行しており、ゴンゾウは炭鉱の仕事を休んで闘人都市の近くに存在する山岳地帯で山籠もりを開始する。

ポチ子は闘人都市に残り、バルの獣人の知り合いの剣士を紹介され、彼の下で修業を開始。彼女の補佐としてリノンから送られたカゲマルも共に行動しており、定期的に報告を行っている。



――その一方で二人の親友であるリノンは城塞都市から離れた草原に存在するテンペスト騎士団の訓練場に入り浸り、大将軍であるレミアが憑依させた「銀の英雄(ナナ)」と訓練を行っていた。



「はぁあああああっ!!」
「甘いっ!!」


ガキィイインッ!!


リノンは自身の長剣にお得意の「火炎剣」に変化させ、ナナは愛剣の「飛燕」と「氷華」で彼女の燃え盛る刃を受け止め、2人は激しい剣戟を繰り返す。


「脇が甘い!!」
「ぐふっ!?」


ドンッ!


ナナはリノンの脇腹に蹴りを放ち、彼女は苦悶の表情を浮かべて後方に下がる。ここ数日の間、リノンはナナに挑み続けており、確実に剣術の腕を上げている。ナナもそんなリノンの剣技に手ごたえを感じ始め、お互いの剣技を磨くために組手を行う。


(才能は私の記憶する者たちの中でも、5本指に入りますね……鍛えがいがあります)
(流石は本物の英雄……隙が無い)


リノンはナナの魔剣・氷華によって火炎剣の炎が消化された事に気が付き、すぐに自分の魔力を集中させる。


「火炎剣……!!」


ボウッ!!


無詠唱でリノンは長剣の刀身に再び炎を走らせ、ナナは笑みを浮かべる。この数日の間、リノンは刃に火炎を纏わせる速度が上昇しており、火力も日に日に増している。

この調子ならば火属性の魔法からさらに上の段階の「炎属性」の形態に進化するのも時間の問題であり、上手く行けばレノの嵐属性に対抗できる力を身に着ける事が出来るかもしれない。ナナは自分も負けていられないとばかりに二振りの魔剣を振るい、あと少しで全盛期の頃の自分の力が引き出せそうな事に気付く。



――現在のレミアは全盛期の時代の「ナナ」を呼び戻す事は可能でも、彼女の力を完全に扱う事は出来ない。今のレミアの憑依術では全盛期のナナの力の半分も発揮できず、仮に全盛期の頃の彼女の力を無理矢理引き出した場合、レミアには途轍もない負担が掛かってしまうからだ。



だが、先日の勇者達の戦闘で失態を見せたナナはこのままでは主人(レミア)の身が危ないと感じ、ある程度の加減を覚える事で、どれくらいの力ならばレミアに負担を掛からずに敵と相対できるかを把握するため、連日リノンと訓練を行う。


「……むっ、ここで休憩しましょう」
「いや、私はまだ……」
「貴女ではなく、我が主人が限界です」
「そ、そうですか……」


ゴォオオオオッ……!!


ナナの発言にリノンは慌てて刀身の炎を消し去る。それを確認するとナナの身体全身が発光し、瞬時にレミアの姿に変化する。


「ふうっ……どうでしたか?」
「あ、はい……良い訓練になりました」
「それは良かった!!では、例の件を忘れずに……」
「……はあ、分かりました……?」


汗だくのリノンに対し、レミアは少し疲れただけの様子であり、銀の英雄(ナナ)に憑依されている間の疲労は共有されるが、彼女が負った怪我に関してはレミアに影響は出ない。但し、傷を負った場合はそれ削王の魔力を彼女が消費するが。

仮にナナの姿で敵に殺された場合はナナの魂だけが完全に天上に召され、もう二度と憑依術でも彼女を召喚できない。その半面でレミアの方も無事では済まず、身体に致命傷は負わないが途轍もない魔力を消費してしまい、精神が崩壊してしまう可能性が高い。

そのため、レミアは憑依術を頼り過ぎない様に自分でも真面目に鍛錬を行っているが、単純な実力では将軍たちのなかでも上の中の部類のため、王国内でも指折りの剣士であるリノンとの訓練の際はナナを憑依させて戦っている。


「それでは今日の訓練はこれで……あ、あと……約束はお願いしますね」
「……あ、はい……」
「約束ですよ!!」
「わ、分かりましたから」



――レミアがリノンの訓練に付き合う事の条件は、今度レノと共に闘人都市を「2人きり」で観光する事であり、リノンは勝手にレノの許可も貰わずに約束してしまった。



彼女がレノに対して積極的な行動を取る事に対し、昔は彼の姉貴分を自称していたリノンにとっては色々と複雑な思いを抱くが、今は大会のために仕方がないと判断し、了承する(レノにとっては良い迷惑だが)。


「私は王国に戻りますが、リノンさんはどうしますか?」
「私は……少しアルトの方に行ってみます」
「そうですか……その、彼は」
「分かっています……私が何とかします」



ここ最近、様々な外交を終えて疲れ切った姿のアルトを思いだし、彼は王子であるため別に剣乱武闘に参加する必要はないのだが、レノが参加すると聞いてからどうにも様子がおかしく、毎日のように激しい訓練を行っている。

彼がどうして「レノ」に対してそこまで執着心を持つのかはリノンには分からないが、幼馴染として不安を抱かずにはいられない。



――自分自身がアルトが最も無理をする「原因」とも知らずに。
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