種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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聖導教会総本部編

真紅の英雄

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「グォオオオオオッ!!」
「「きゃあぁあああああああっ!!」」
「「ひぃいいいいいいいいっ!!」」


護衛役のワルキューレ騎士団の女騎士達が一掃されたことにより、オーガと成り果てた加藤は訪問者達に向けてを襲い掛かろうとした時、


「鞭よ!!」
「ウガッ!?」


ガシィイイイッ!!


後方から無数の「光の鞭」が放たれ、加藤の身体を拘束する。彼は首の部分だけ振り返ると、そこには息切れしたセンリが杖先を向けており、彼女の周囲に漂う光球が鞭と化して彼を捕縛する事に成功した。

だが、加藤は全身を光の鞭で縛りつけられながらも、力ずくで抜け出そうと踏ん張り、その隙にワルキューレ騎士団の護衛が無くなった人々は逃げ出していく。


「も、もうこんな場所は嫌だ!!出してくれ!!」
「いやぁああああああっ!!」
「くそっ、どけぇえええええっ!!」
「お、おい!!落ち着け!!」


完全に恐怖でパニックを引き起こしてしまい、我先にと300人近くの人間達が聖堂の出入口へと走り出す。だが、崩壊した瓦礫で埋まった扉を前に立ち止まり、彼らの多くは魔法も武芸も扱える者達ばかりであり、どうしようもできない。


「くっ……他の奴等は何してるんだ!!昼寝でもしているのかい!?」


これだけ騒いでいるにも関わらず、聖堂の外の兵士や魔術師、もしくはワルキューレ騎士団の待機中の女騎士達が未だに現れる様子が無い事にテンは苛立ちの声を上げる。普通ならば騒ぎを察知して聖堂の異変に気付いていても可笑しくはないはずだが、未だに誰一人として応援に駆け付ける気配はない。


「ウギィイイイイイイイイイッ!!」


ブチィイイイッ!!


「くっ……!!」


加藤は力ずくでセンリの拘束を振り解き、センリも短時間で魔法の連続使用によって疲労しており、老体の彼女では今の加藤を抑えつけるのは荷が重い。


「グガァァアアアアアッ!!」
「センリさん!!くそっ!!」
「行かせん!!」


激怒した加藤は彼女に向かって突進し、すぐにダンゾウとテンが動き出すが、


ドォンッ!!


「飛んだ!?」


加藤はその場で大きく跳躍し、センリが跪く場所に向けて上空から両足を突き出し、そのまま踏みつぶそうとした時、



――ジャララララッ!!



「ガァアッ!?」


突如として現れた銀色の鎖が空中の彼の身体に纏わり付き、そのまま体勢を崩した巨体は地上に落下する。


ドスゥウウンッ!!


「グギギッ……!?」


ギチギチィッ……!!


先ほどの光の鞭より拘束する力が強い鎖に加藤は苦悶の表情を浮かべ、唐突に出現した鎖に皆が視線を向けると、すぐにリノン達は表情を明るくし、



「「「レノ(さん・たん)」!!」」



――そこには瓦礫で塞がれていたはずの扉を潜り抜け、左腕の黒衣から銀の鎖を射出するレノの姿があり、彼の後方には粉砕された瓦礫と水晶壁の扉の残骸が広がっていた。


「たくっ……どういう状況だ」
「グガァアアアアアアアッ!!」



ビキビキィッ……!!



オーガは筋肉を膨張させ、力ずくで抜け出そうとするが、銀の鎖は外れる様子は無い。


「流石にこれ以上は無理か……」


出来れば鎖に電流を流し込んで抑えたいところだが、先の勇者2人とカトレアとの戦闘でレノに残された魔力も少なく、精々出来る事は銀の鎖を操作して加藤を拘束する程度だが、彼の目的はあくまでも時間稼ぎだった。


「後は頼む」
「……分かりました」


彼の後ろから現れた人物に、全員が目を見開き、特にセンリは驚きを隠せない。



「ジャンヌ……!?」
「何故……ここに」



聖導教会から裏切り者として疑われている「ジャンヌ」の登場に全員が驚愕を隠せず、彼女は拘束されている加藤に近づき、その右手には抜身の「レーヴァティン」が握り締められ、



ゴォオオオオオオオッ……!!



刀身には今までに無いほどの熱気を纏わせる「炎」を灯らせ、彼女は加藤に向けて歩み寄り、一歩ごとに炎の強さが増していく。



「ウウゥッ……!!ァアアアアッ!?」



それを見た瞬間、加藤は両目から涙を流し続け、何かを訴えるように叫ぶが、周囲の者達にはただ暴れ狂っているようにしか見えない。


「……苦しいのですね」


しかし、ジャンヌは彼が何を伝えたいのかを理解し、この場で彼を救えるのはセンリでも、ましてやレノでもなく、自分だけだと確信する。


「今、その苦しみから解放します……」
「ウオオッ……」
「大丈夫です……この剣は、それだけの力があります」


異形の者へと化した加藤はジャンヌの言葉に頷くが、彼の意思と反するように肉体は膨張していき、


「ァァアアアアアアアッ!?」



ガキィイイイインッ!!



苦しみと悲しみが混ざり合った咆哮を上げ、鎖に全身を拘束されながらも加藤は涙を流しながらジャンヌに飛びかかり、



「――浄化せよ」



同時にジャンヌは両手で「レーヴァティン」を握り締め、刀身の炎を一瞬で消失させ、刃に真紅の光が覆い尽くされる。



「ヒノタチ」



――ズバァァアアアアアアアッ!!



真正面から加藤の身体を斬り裂いた瞬間、切口から真紅の炎が発火し、彼の身体が徐々に炎に覆われていき、



「……アリ、ガ……ウ……」



最後に彼は後姿のジャンヌにそう告げると、ゆっくりと加藤の身体が灰と化し、地面に崩れ去った――
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