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聖導教会総本部編
黒翼の天使
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「ああっ……ぁああっ!?」
「……もう、限界が来たみたい」
「くっ……」
自分の妹の両腕が崩れたことにジャンヌは激しく動揺し、反対にカトレアは自分の命の終焉を悟ったように涙を流していた。レノは何とか自分の残された魔力を振り絞って彼女に魔力供給を行うが、限界を迎えようとしているのは彼も同じである。
「そんな……嘘、嘘です……!!」
「……お姉ちゃん……もういいよ、無理に殺さないで」
「カトレア……!!」
「……でも、せめて抱きしめたまま逝きたいなぁ」
ぎゅっ……
既に両腕の大部分が砕け散ったにもかかわらず、残った個所でカトレアはジャンヌを抱きしめる。だが、その力はあまりにも弱弱しく、ジャンヌは大粒の涙を流しながら彼女を抱き抱える。
「少し、痛いよ……お姉ちゃん……」
「……貴女は痛い事が大好きでしょう?」
「あはははっ……そうだったね」
既に視界が無いのか、カトレアは天上を見上げ、
「あ~あ……まさか、この場所で死ぬなんてね……」
「……そうですね、あの頃はこんな事態になるなど思いもしませんでした」
「あははっ……よく、お婆ちゃんに怒られていたね」
過去にこの聖導教会総本部で当時はまだ聖天魔導士であったミキに2人は「女騎士」と「魔術師」として育てられた。辛い思い出も、楽しい思い出も、この場所が2人の原点と言っても過言ではない。
「……何故、貴女は私の元から去ったんですか?」
「え~……何でだっけ……忘れちゃった」
「……貴女という人は……」
「ごめんね~……あははぁっ……」
徐々にカトレアの声が小さくなり、間もなく彼女の命は尽き果てるのが分かる。恐らく、今更どのような治療を施しても手遅れだろう。
「ふふっ……そうだ……忘れてた……君にも、お礼を……」
ジャラララッ……!!
カトレアは自分の足元に巻き付いたブラック・チェーンを動かし、鎖の先端部をレノの前に差し出す。戦闘の際は気付かなかったが、何やら十字架を想像させる短剣が鎖に繋がれており、レノは視線を向けると、
「……私がまだ、この教会にいた頃にミキ様から頂いた……宝物、だから……大切に……して……」
「……ああ」
ガキンッ……
レノは彼女の背中から手を離しして十字架の短剣を手にした瞬間、ブラック・チェーンの鎖から簡単に外れる。既にカトレアの身体は徐々に罅割れ、もうレノの魔力供給すらも受け付けず、ゆっくりと崩れて去るのを待つばかりだった。
「ああ……気持ちいいな……」
「……カトレア……」
「お願い……せめて、最期はお姉ちゃんの手で……私を逝かせて……」
もう視力が見えないにも関わらず、真っ直ぐにカトレアはジャンヌの瞳を見つめると、彼女は地面に涙を落としながら、
「……分かり、ました」
ボウッ!!
腰に構えた「レーヴァティン」の剣の柄を握り締め、引き抜いた瞬間、刀身に真紅の炎が灯される。ジャンヌはゆっくりとカトレアから離れると、両手で柄を握りしめ、涙を流しながら最愛の妹に視線を向け、
「――聖剣よ……彼女を、私の妹を……天上の世界へ……誘いたまえ!!」
カッ!!
刀身を天に掲げた瞬間、刃が通路を覆い尽くすほどの赤い光を発し、
ズバァアアアアアッ!!
ジャンヌが自分を見上げるカトレアに向けて剣を振り落す音が響いた――
「……もう、限界が来たみたい」
「くっ……」
自分の妹の両腕が崩れたことにジャンヌは激しく動揺し、反対にカトレアは自分の命の終焉を悟ったように涙を流していた。レノは何とか自分の残された魔力を振り絞って彼女に魔力供給を行うが、限界を迎えようとしているのは彼も同じである。
「そんな……嘘、嘘です……!!」
「……お姉ちゃん……もういいよ、無理に殺さないで」
「カトレア……!!」
「……でも、せめて抱きしめたまま逝きたいなぁ」
ぎゅっ……
既に両腕の大部分が砕け散ったにもかかわらず、残った個所でカトレアはジャンヌを抱きしめる。だが、その力はあまりにも弱弱しく、ジャンヌは大粒の涙を流しながら彼女を抱き抱える。
「少し、痛いよ……お姉ちゃん……」
「……貴女は痛い事が大好きでしょう?」
「あはははっ……そうだったね」
既に視界が無いのか、カトレアは天上を見上げ、
「あ~あ……まさか、この場所で死ぬなんてね……」
「……そうですね、あの頃はこんな事態になるなど思いもしませんでした」
「あははっ……よく、お婆ちゃんに怒られていたね」
過去にこの聖導教会総本部で当時はまだ聖天魔導士であったミキに2人は「女騎士」と「魔術師」として育てられた。辛い思い出も、楽しい思い出も、この場所が2人の原点と言っても過言ではない。
「……何故、貴女は私の元から去ったんですか?」
「え~……何でだっけ……忘れちゃった」
「……貴女という人は……」
「ごめんね~……あははぁっ……」
徐々にカトレアの声が小さくなり、間もなく彼女の命は尽き果てるのが分かる。恐らく、今更どのような治療を施しても手遅れだろう。
「ふふっ……そうだ……忘れてた……君にも、お礼を……」
ジャラララッ……!!
カトレアは自分の足元に巻き付いたブラック・チェーンを動かし、鎖の先端部をレノの前に差し出す。戦闘の際は気付かなかったが、何やら十字架を想像させる短剣が鎖に繋がれており、レノは視線を向けると、
「……私がまだ、この教会にいた頃にミキ様から頂いた……宝物、だから……大切に……して……」
「……ああ」
ガキンッ……
レノは彼女の背中から手を離しして十字架の短剣を手にした瞬間、ブラック・チェーンの鎖から簡単に外れる。既にカトレアの身体は徐々に罅割れ、もうレノの魔力供給すらも受け付けず、ゆっくりと崩れて去るのを待つばかりだった。
「ああ……気持ちいいな……」
「……カトレア……」
「お願い……せめて、最期はお姉ちゃんの手で……私を逝かせて……」
もう視力が見えないにも関わらず、真っ直ぐにカトレアはジャンヌの瞳を見つめると、彼女は地面に涙を落としながら、
「……分かり、ました」
ボウッ!!
腰に構えた「レーヴァティン」の剣の柄を握り締め、引き抜いた瞬間、刀身に真紅の炎が灯される。ジャンヌはゆっくりとカトレアから離れると、両手で柄を握りしめ、涙を流しながら最愛の妹に視線を向け、
「――聖剣よ……彼女を、私の妹を……天上の世界へ……誘いたまえ!!」
カッ!!
刀身を天に掲げた瞬間、刃が通路を覆い尽くすほどの赤い光を発し、
ズバァアアアアアッ!!
ジャンヌが自分を見上げるカトレアに向けて剣を振り落す音が響いた――
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