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聖導教会総本部編
助太刀
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「くそっ!!」
アルトは向い来る無数の魔弾に剣で防御する暇も無く、そのまま身体に直撃する。
ドドドドドッ!!
「ぐああっ!!」
「アルト……!?」
身体全体に拳程の大きさの魔弾が次々と叩き込まれ、一つ一つが鉄球並の重さと硬さを誇る。咄嗟に肉体強化を発動させたが、耐え切れずに倒れこむ。
「ぐぅっ……!!」
「アルト!!」
ナナは倒れ込んだ彼を抱きかかえ、すぐに後方を振り返り、笹崎と更に倒したはずのもう1人の勇者が起き上がり、こちらに歩み寄ってくる。
「ウウッ……」
「グハッ……!!」
笹崎はともかく、片方の男は腹部を強烈に叩き込んだ影響は残っているのか、口元に血が流れている。それでも二人の勇者は真っ直ぐにナナとアルトに顔を向け、
「コロス……!!」
「……ジャマヲスルナ!!」
再び、笹崎の右腕に新たな「魔弾」が装填され、もう片方も掌に新たな「魔力剣」を形成する。ナナはすぐに迎撃のために飛燕を構えるが、先ほどの不意打ちの影響で身体が痺れている。アルトは既に意識は途切れており、地面で荒い息を立てながら横たわっている。彼の助勢は期待できず、かと言って自分だけではどうしようもない。
(このままでは主人の身体も……)
ナナは幾ら身体が傷つこうが、正確に言えば損傷を受けるのは本体である「レミア」の肉体だけである。これ以上の無理な戦闘を行えば肉体の方が持たず、かと言ってこのまま退散しようにも、倒れ込んだアルトを放って逃げられるはずがない。しかし、この状況を打破する魔石も魔道具も装備しておらず、痺れた身体では「飛燕」や「氷華」も扱うのも難しい。
「……万事休す、という奴ですか」
「マジック・アロー!!」
「火炎斬!!」
チュドドドドッ!!
ドヒュンッ!!
笹崎の弓矢から弾丸ほどの大きさの魔弾が数十発も放たれ、その隣で魔力剣に炎の刃を纏わせた男が近づいてくる。
「くっ……!!」
すぐにナナは倒れ込んだアルトを守るように剣を構えた時、
――ドォオオンッ!!
彼女の後方から凄まじい突風が放たれると思うと、同時にナナの真横から三日月状に形成された「嵐」の刃が通過し、そのまま無数の魔弾を掻き消して相性が悪いはずの火属性の刃を纏った男を吹き飛ばす。
「えっ……!?」
「ヌゥッ!?」
「ウァアッ!?」
そのまま三日月状の嵐の刃は笹崎の方にも向かい、2人の勇者は吹き飛ばされ、嵐の刃はさらに数メートルほど離れたところで消散する。
「どういう状況だ……これ」
「……貴方は」
後方から聞き慣れた音が聞こえ、振り返るとそこには右の掌を向けたレノの姿があり、先ほどの嵐の刃で2人の勇者を吹き飛ばしたのだ。
(……何という魔力……)
2人の勇者の攻撃を正面から吹き飛ばすほどの威力の魔法を放ちながら、レノに特に変わった様子は無い。どれほどの鍛錬を行えば、ここまでの膨大な魔力を得られるのかと感心する。レノの魔力は並のハーフエルフとは比べ物にならず、さらに言えばアイリィの紋様によって魔法を強化も出来る。だが、今の攻撃は紋様を使用せず勇者達を吹き飛ばした。
「……ミカが貴方を呼んだのですか?」
「いや、うるさいから来た」
「……ああ、そうですか」
この場所は偶然にもレノが休んでいた部屋からそれほど離れておらず、睡眠中に外が随分と騒がしい事に気付いてここまでやって着たら、偶然にもアルトとナナが勇者達に攻撃されている姿を発見した。運よくハーフエルフの優れた聴覚が役に立ったと言える。
「クッ……」
「コロシテヤル……!!」
「……何あれ?死人?」
「いえ……魅惑(チャーム)に掛かっているようですね」
「……カトレアか?」
先ほど紋様が反応したのは、どうやら先ほどまでこの近くにカトレアがいた事に間違いない。だが、今は彼女を追う前に目の前の勇者2人を先にどうにかしなければならない。
「肉体強化(アクセル)……」
ビキビキィッ……!!
肉体に魔力を流し込み、レノの身体の血管が浮き上がる。身体能力をある程度まで上昇させると、レノは右腕に嵐属性の魔力を纏わせ、
ドォオオンッ!!
「ナッ……!?」
距離的に近い魔力剣を構える勇者に対して「瞬脚」で一瞬で接近すると、レノは右腕を振り上げ、足の裏、足首、膝、股関節、腹部、胸、肩、肘、腕、拳の順で身体を回転、及び加速させ、勢いを乗せた拳を振り被る。
相手も魔力剣で防ごうとするが、レノの拳には小規模の竜巻が纏われており、加速した拳が剣に触れた途端、
「嵐撃!!」
ズガァァアアアアアッ!!
「グァアアアアアアアアッ!?」
「エッ……ウァアアッ!?」
勇者の身体に拡散した嵐の衝撃波が広がり、そのまま後方に立っていた笹崎も巻き込みながら、勇者2人はそのまま通路の遥か後方まで吹き飛ばされた。
アルトは向い来る無数の魔弾に剣で防御する暇も無く、そのまま身体に直撃する。
ドドドドドッ!!
「ぐああっ!!」
「アルト……!?」
身体全体に拳程の大きさの魔弾が次々と叩き込まれ、一つ一つが鉄球並の重さと硬さを誇る。咄嗟に肉体強化を発動させたが、耐え切れずに倒れこむ。
「ぐぅっ……!!」
「アルト!!」
ナナは倒れ込んだ彼を抱きかかえ、すぐに後方を振り返り、笹崎と更に倒したはずのもう1人の勇者が起き上がり、こちらに歩み寄ってくる。
「ウウッ……」
「グハッ……!!」
笹崎はともかく、片方の男は腹部を強烈に叩き込んだ影響は残っているのか、口元に血が流れている。それでも二人の勇者は真っ直ぐにナナとアルトに顔を向け、
「コロス……!!」
「……ジャマヲスルナ!!」
再び、笹崎の右腕に新たな「魔弾」が装填され、もう片方も掌に新たな「魔力剣」を形成する。ナナはすぐに迎撃のために飛燕を構えるが、先ほどの不意打ちの影響で身体が痺れている。アルトは既に意識は途切れており、地面で荒い息を立てながら横たわっている。彼の助勢は期待できず、かと言って自分だけではどうしようもない。
(このままでは主人の身体も……)
ナナは幾ら身体が傷つこうが、正確に言えば損傷を受けるのは本体である「レミア」の肉体だけである。これ以上の無理な戦闘を行えば肉体の方が持たず、かと言ってこのまま退散しようにも、倒れ込んだアルトを放って逃げられるはずがない。しかし、この状況を打破する魔石も魔道具も装備しておらず、痺れた身体では「飛燕」や「氷華」も扱うのも難しい。
「……万事休す、という奴ですか」
「マジック・アロー!!」
「火炎斬!!」
チュドドドドッ!!
ドヒュンッ!!
笹崎の弓矢から弾丸ほどの大きさの魔弾が数十発も放たれ、その隣で魔力剣に炎の刃を纏わせた男が近づいてくる。
「くっ……!!」
すぐにナナは倒れ込んだアルトを守るように剣を構えた時、
――ドォオオンッ!!
彼女の後方から凄まじい突風が放たれると思うと、同時にナナの真横から三日月状に形成された「嵐」の刃が通過し、そのまま無数の魔弾を掻き消して相性が悪いはずの火属性の刃を纏った男を吹き飛ばす。
「えっ……!?」
「ヌゥッ!?」
「ウァアッ!?」
そのまま三日月状の嵐の刃は笹崎の方にも向かい、2人の勇者は吹き飛ばされ、嵐の刃はさらに数メートルほど離れたところで消散する。
「どういう状況だ……これ」
「……貴方は」
後方から聞き慣れた音が聞こえ、振り返るとそこには右の掌を向けたレノの姿があり、先ほどの嵐の刃で2人の勇者を吹き飛ばしたのだ。
(……何という魔力……)
2人の勇者の攻撃を正面から吹き飛ばすほどの威力の魔法を放ちながら、レノに特に変わった様子は無い。どれほどの鍛錬を行えば、ここまでの膨大な魔力を得られるのかと感心する。レノの魔力は並のハーフエルフとは比べ物にならず、さらに言えばアイリィの紋様によって魔法を強化も出来る。だが、今の攻撃は紋様を使用せず勇者達を吹き飛ばした。
「……ミカが貴方を呼んだのですか?」
「いや、うるさいから来た」
「……ああ、そうですか」
この場所は偶然にもレノが休んでいた部屋からそれほど離れておらず、睡眠中に外が随分と騒がしい事に気付いてここまでやって着たら、偶然にもアルトとナナが勇者達に攻撃されている姿を発見した。運よくハーフエルフの優れた聴覚が役に立ったと言える。
「クッ……」
「コロシテヤル……!!」
「……何あれ?死人?」
「いえ……魅惑(チャーム)に掛かっているようですね」
「……カトレアか?」
先ほど紋様が反応したのは、どうやら先ほどまでこの近くにカトレアがいた事に間違いない。だが、今は彼女を追う前に目の前の勇者2人を先にどうにかしなければならない。
「肉体強化(アクセル)……」
ビキビキィッ……!!
肉体に魔力を流し込み、レノの身体の血管が浮き上がる。身体能力をある程度まで上昇させると、レノは右腕に嵐属性の魔力を纏わせ、
ドォオオンッ!!
「ナッ……!?」
距離的に近い魔力剣を構える勇者に対して「瞬脚」で一瞬で接近すると、レノは右腕を振り上げ、足の裏、足首、膝、股関節、腹部、胸、肩、肘、腕、拳の順で身体を回転、及び加速させ、勢いを乗せた拳を振り被る。
相手も魔力剣で防ごうとするが、レノの拳には小規模の竜巻が纏われており、加速した拳が剣に触れた途端、
「嵐撃!!」
ズガァァアアアアアッ!!
「グァアアアアアアアアッ!?」
「エッ……ウァアアッ!?」
勇者の身体に拡散した嵐の衝撃波が広がり、そのまま後方に立っていた笹崎も巻き込みながら、勇者2人はそのまま通路の遥か後方まで吹き飛ばされた。
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