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テンペスト騎士団編
聖石
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「これは……?」
「我々が聖石と呼ぶ魔石です。どうか、お受け取り下さい」
「あれ?これって……」
「巫女姫様の杖と同じ物……?」
レノは黒い木箱を受け取り、中身を確認するとそこには白く光り輝く「水晶玉」を想像させる魔石が収納されており、ヨウカが現在持っている「ミキの杖」の先端に付いている物とよく似ていた(但し、圧倒的に杖先の水晶玉の方が大きい)。
――この「聖石」とは全ての聖剣に使用されている「聖光石」と呼ばれる特殊な魔水晶の加工される前の段階の魔石であり、装備しているだけで「聖属性」の魔法の効能を高める効果がある。
だが、これを受け取ったとしてもレノには聖属性の魔法は使えないため、あまり意味はない気gする。しかし、聖導教会の贈り物であり、貴重品であることには間違いないので素直に受け取る事にした。
「ありがとうございます……それで、話というのは?」
「……今回の一件で起きた出来事を全て話たいと思います」
センリはすぐ傍の椅子に座るように促し、レノはヨウカとリノンに挟まれる形で座り込む。センリも三人の前の席に座り込み、これまでの経緯を話し始める。
――全ての話を聞き終え、教皇が豹変したのがあの地下の宝物庫であり、そしてジャンヌに変装したカトレアが転移魔法を行って逃げ出した事を聞き終え、レノ達は深く考え込む。
「……なるほど。それで、教皇……さんは?」
「意識不明のまま、目覚める様子はありません。調べたところ、肉体に根強い呪詛が残っており、下手に手を出すと命は無い状況です」
「そんな……」
「あの黒色のスライムのせいか……」
「断定はできませんが……最早、彼を救う手段は光の精霊に奇跡を願うしかありません」
「……そうですか」
現在、教皇は彼の部屋で眠っており、万が一の場合も考えて24時間体制で見張りの兵士を配備させている。だが、既に呪詛は彼の肉体の奥深くまで蝕んでおり、魔法や薬の類では救い出せない程に悪化しているという。
センリだけがどうして助かったのはふめいだが、あの教皇の体内から出現したスライムに身体を乗っ取られいた時間が短ったからか、もしくはコトミとヨウカの聖属性の魔法を身体の中に送り込まれた事が原因のなのかは分からない。
「……教皇様は……立派なお方でした。確かに手段は選ばないところはありますが、それでもこの教会のために尽くしてくれたお方です」
「手段を選ばないね……それでヨウカを放置していたのか?」
「……え?」
「レノ!!」
「……その通りです」
レノの無礼とも取れる言葉にセンリは頷き、悲し気な表情を浮かべながらステンドグラスを見上げる。
「ヨウカ様が巫女姫様に相応しくない……とまでは言いませんでしたが、確かに教皇様は新たな巫女姫様の選抜も行っていました。ですが、結局は新たな巫女姫の器の人間は見つからず、巫女姫様の不在で聖導教会の各種族の信頼が揺らいでいたことに頭を悩ませていました」
「ええっ!?そ、そうなの!?」
「いや、当たり前でしょ……教会のトップが何時までも人前に現れないんだからさ」
聖導教会の最高権力者は間違いなく「巫女姫」であるヨウカであり、彼女は教会の象徴といっても過言ではない。本来ならば彼女が遠く離れた「アマラ砂漠」の盗賊王(ホノカ)に預けるなど、とんでもない話しである。
教皇としては巫女姫であるヨウカがいない間に新たな「巫女姫」を選抜するつもりだったのだろうが、巫女姫の証である「白角」が生えていなければ巫女姫とは認められない。
――この「白角」というのは巫女姫の証であり、仮に先代の巫女姫が死んだ場合、彼女の死期とほぼ同時期に誕生する赤ん坊に「白の角」が生えると言われている。その赤ん坊こそ新たな巫女姫である。
巫女姫の子孫が必ず次の巫女姫に選ばれる「白角」が生えてくるとは限らず、実際に今までにも何度か巫女姫の血筋には関係ない聖導教会の人間が先代の巫女姫の死亡と同時に白角が生えたという事例も存在した。だからこそ、教皇は盗賊王と悪名高いホノカの元にヨウカを送り込み、彼女が気分を害してヨウカを殺害する事で次の巫女姫が選抜されると考えていた。
――だが、予想に反して何時まで経っても新たな「巫女姫」が誕生せず、次第に彼は焦燥感を抱く。他の重鎮たちからはどうして何時までも他国に教会にとって大切な存在の巫女姫を預けたのかと責められ、民衆からも不信感を抱かれていたようである。
「ひっどい話だな……ヨウカを何だと思ってるんだ」
「その通りです……私も、先ほど教皇様の私室に残っていた日記を見てあの方の考えに気付きました……」
「……聖導教会の闇か」
「……う~ん……別に私は気にしていないよ?ホノカちゃんと一緒に仲良く暮らしてたし、それにこうして戻ってこれたのはレノたん達のお蔭だし……」
「巫女姫様……!!」
自分が殺される事を望まれていたにも関わらず、ヨウカは特に帰した様子もなく、そんな彼女の態度にセンリは自分達がどれほどの過ちを犯そうとしていたのかと後悔する。
「我々が聖石と呼ぶ魔石です。どうか、お受け取り下さい」
「あれ?これって……」
「巫女姫様の杖と同じ物……?」
レノは黒い木箱を受け取り、中身を確認するとそこには白く光り輝く「水晶玉」を想像させる魔石が収納されており、ヨウカが現在持っている「ミキの杖」の先端に付いている物とよく似ていた(但し、圧倒的に杖先の水晶玉の方が大きい)。
――この「聖石」とは全ての聖剣に使用されている「聖光石」と呼ばれる特殊な魔水晶の加工される前の段階の魔石であり、装備しているだけで「聖属性」の魔法の効能を高める効果がある。
だが、これを受け取ったとしてもレノには聖属性の魔法は使えないため、あまり意味はない気gする。しかし、聖導教会の贈り物であり、貴重品であることには間違いないので素直に受け取る事にした。
「ありがとうございます……それで、話というのは?」
「……今回の一件で起きた出来事を全て話たいと思います」
センリはすぐ傍の椅子に座るように促し、レノはヨウカとリノンに挟まれる形で座り込む。センリも三人の前の席に座り込み、これまでの経緯を話し始める。
――全ての話を聞き終え、教皇が豹変したのがあの地下の宝物庫であり、そしてジャンヌに変装したカトレアが転移魔法を行って逃げ出した事を聞き終え、レノ達は深く考え込む。
「……なるほど。それで、教皇……さんは?」
「意識不明のまま、目覚める様子はありません。調べたところ、肉体に根強い呪詛が残っており、下手に手を出すと命は無い状況です」
「そんな……」
「あの黒色のスライムのせいか……」
「断定はできませんが……最早、彼を救う手段は光の精霊に奇跡を願うしかありません」
「……そうですか」
現在、教皇は彼の部屋で眠っており、万が一の場合も考えて24時間体制で見張りの兵士を配備させている。だが、既に呪詛は彼の肉体の奥深くまで蝕んでおり、魔法や薬の類では救い出せない程に悪化しているという。
センリだけがどうして助かったのはふめいだが、あの教皇の体内から出現したスライムに身体を乗っ取られいた時間が短ったからか、もしくはコトミとヨウカの聖属性の魔法を身体の中に送り込まれた事が原因のなのかは分からない。
「……教皇様は……立派なお方でした。確かに手段は選ばないところはありますが、それでもこの教会のために尽くしてくれたお方です」
「手段を選ばないね……それでヨウカを放置していたのか?」
「……え?」
「レノ!!」
「……その通りです」
レノの無礼とも取れる言葉にセンリは頷き、悲し気な表情を浮かべながらステンドグラスを見上げる。
「ヨウカ様が巫女姫様に相応しくない……とまでは言いませんでしたが、確かに教皇様は新たな巫女姫様の選抜も行っていました。ですが、結局は新たな巫女姫の器の人間は見つからず、巫女姫様の不在で聖導教会の各種族の信頼が揺らいでいたことに頭を悩ませていました」
「ええっ!?そ、そうなの!?」
「いや、当たり前でしょ……教会のトップが何時までも人前に現れないんだからさ」
聖導教会の最高権力者は間違いなく「巫女姫」であるヨウカであり、彼女は教会の象徴といっても過言ではない。本来ならば彼女が遠く離れた「アマラ砂漠」の盗賊王(ホノカ)に預けるなど、とんでもない話しである。
教皇としては巫女姫であるヨウカがいない間に新たな「巫女姫」を選抜するつもりだったのだろうが、巫女姫の証である「白角」が生えていなければ巫女姫とは認められない。
――この「白角」というのは巫女姫の証であり、仮に先代の巫女姫が死んだ場合、彼女の死期とほぼ同時期に誕生する赤ん坊に「白の角」が生えると言われている。その赤ん坊こそ新たな巫女姫である。
巫女姫の子孫が必ず次の巫女姫に選ばれる「白角」が生えてくるとは限らず、実際に今までにも何度か巫女姫の血筋には関係ない聖導教会の人間が先代の巫女姫の死亡と同時に白角が生えたという事例も存在した。だからこそ、教皇は盗賊王と悪名高いホノカの元にヨウカを送り込み、彼女が気分を害してヨウカを殺害する事で次の巫女姫が選抜されると考えていた。
――だが、予想に反して何時まで経っても新たな「巫女姫」が誕生せず、次第に彼は焦燥感を抱く。他の重鎮たちからはどうして何時までも他国に教会にとって大切な存在の巫女姫を預けたのかと責められ、民衆からも不信感を抱かれていたようである。
「ひっどい話だな……ヨウカを何だと思ってるんだ」
「その通りです……私も、先ほど教皇様の私室に残っていた日記を見てあの方の考えに気付きました……」
「……聖導教会の闇か」
「……う~ん……別に私は気にしていないよ?ホノカちゃんと一緒に仲良く暮らしてたし、それにこうして戻ってこれたのはレノたん達のお蔭だし……」
「巫女姫様……!!」
自分が殺される事を望まれていたにも関わらず、ヨウカは特に帰した様子もなく、そんな彼女の態度にセンリは自分達がどれほどの過ちを犯そうとしていたのかと後悔する。
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