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テンペスト騎士団編
水の膜
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「むぐっ……うぐぅううっ!?」
「センリさん!!」
慌ててテンが彼女を救い出そうと動き出すが、既に時は遅く、センリの口内に入り込んだ物体は喉を通り過ぎ、そのまま彼女の体内奥深くに入り込む。
「げほっ!!ごほっ!!」
「げぼぉっ!!」
教皇とセンリが同時に激しく咽せるが、教皇の方は徐々に生気が失われていくように肌の色が青白く変化し、逆にセンリは一瞬だけ身体中の血管が浮き上がり、すぐに元に戻る。一体、眼の前で何が起きているのかはレノ達も把握できないが、教皇の異変は先ほどセンリの口の中に入り込んだ「物体」が関係しているの間違いなく、今のセンリには不用意に近づけない事だけは分かる。
「……全員下がれ!!」
バチィイ!!
レノが前に出ると、まずは動きが止まったセンリに向けて右手を振り上げ、肉体強化(アクセル)で身体能力を上昇させて加速し、そのまま首元に電流を送り込んで気絶させようと「雷」の魔力を帯びた掌を向けるが、
ガシィッ!!
「なっ!?」
「馬鹿な!?」
「わふっ!?」
立ち尽くしたセンリはレノに顔すら向けず、彼の伸ばした掌を左手で鷲掴み、そのまま電流が流れ込むが、
「くくくっ……あはははっ!!」
全身に電流を流しこまれているにも関わらず、センリは笑い声を上げる。全員がその姿に畏怖し、間違いなく今の彼女には数十万ボルトの電気が身体に駆け巡っているにも関わらず、笑い声をあげるなど明らかに異常である。
「無駄無駄ぁっ!!」
ビキィイイッ!!
「うぐっ……!!」
レノの掌にセンリの指が食い込み、老婆とは思えぬほどの握力に血が滲み出す。すぐに力ずくで彼女の手を振り払うと、電流から解放されたセンリは杖を掲げる。
「死ねおらぁっ!!」
「っ!!」
ボウッ!!
口調が明らかに先ほどの彼女からは想像できない程に乱暴的に変化し、センリの周囲に再び青色の光を放つ光球が生み出される。恐らく、彼女の魔法は大気中の水分を媒介にして生み出されているのだろう。
すぐにも出現した光球は「光の鏃」へと変化し、レノに向けて放たれる。近距離にまで接近していたのが仇となり、防ぐ間もなく幾つかの鏃がレノの肉体に突き刺さり、そのまま壁際まで吹き飛ばされる。
チュドドドッ!!
「ぐあっ!?」
「レノ!?」
「だらぁああああああっ!!」
「うおぉおおおおおおっ!!」
テンが大剣を振り上げ、ゴンゾウもそれに続いて棍棒をセンリに向けて放つ。巨体2人の攻撃に対し、センリは余裕の笑みを絶やさぬまま、杖を振るいあげ、
「アクア・カーテン」
ドパァアアアンッ……!!
「「なぁっ!?」」
2人の武器に予想外の衝撃が走り、同時に室内にも関わらずに水飛沫のような音が反響する。全員が視線を向けると、そこにはセンリの周囲に青白い光を放つ液体の「膜」が形成されており、彼女をテンとゴンゾウの武器から身を守っていた。
液体にも関わらず、2人の攻撃に耐えたのはどういう原理なのかは不明だが、実際にこの中では腕力に特化した2人の攻撃を防いだ事は事実であり、センリは挑発するように指先を向ける。
「くそっ!!」
「おぉおおおおっ!!」
ドパンッ!!バシャァアンッ!!
テンとゴンゾウが2人がかりで何度も武器を振り上げるが、彼女の全身を囲む「水の膜」が防ぎ、表面の部分が揺れ動くだけで膜を突破できる気配は無い。
「くっ……火炎剣!!」
「犬牙流……!!」
すぐにリノンが火を纏わせた刀身を振るいあげ、ポチ子も短剣を構えるが、
バシャンッ!!ドバァッ!!
「ひゃはははははっ!!」
2人の攻撃も無意味であり、やはり表面の液体に弾かれて中に存在するセンリには届かない。リノンに至っては刀身の炎までも掻き消されてしまい、ポチ子は両手が痺れてしまう。
「こ、この感覚……!?」
「ちぃ……!!高速に水を動かして衝撃を殺されてるね!!」
「ご名答!!」
レノは目を凝らすと、どうやら水の膜は分かりにくいが常に液体が流動しているようであり、外部からの攻撃を高速回転で弾いていたのだ。これでは武器の類が膜を貫く前に別の方向に勢いが誘導されてしまい、攻撃が彼女には届かない。
「――アクア・ニードル」
ドパァアアアアアアンッ!!
「「うあぁああああああっ!?」」
さらにセンリが魔法名を告げると同時に彼女を覆っていた水の膜が破裂し、無数の飛沫が周囲一帯に飛び散る。それは接近していたリノン達だけではなく、呆然と傍観していたワルキューレの女騎士や兵士たちの身体の元まで降りかかる。
レノは位置的に水飛沫の直撃は避けたが、どうやら先ほどの「光の鏃」ほどの威力は無く、少なくとも至近距離にいたリノン達も致命傷は避けられたらしいが、
「ぐっ……こ、これは……」
「ち、力が……抜けます……」
「こいつは……くそっ……魔力を……!?」
全員がそのまま床に倒れ込み、力を失ったように動けない。まるで魔力を大幅に消費した時のレノと酷似した状態であり、センリは笑みを浮かべながら全員を見下ろし、
「こいつを混ぜたんだよ……どんな気分だ?」
センリはだらしなく舌をさらけ出すと、舌の先端から黒い雫が垂れる。どうやら、先ほどの水の膜に何らかの細工を施していたらしい。
「センリさん!!」
慌ててテンが彼女を救い出そうと動き出すが、既に時は遅く、センリの口内に入り込んだ物体は喉を通り過ぎ、そのまま彼女の体内奥深くに入り込む。
「げほっ!!ごほっ!!」
「げぼぉっ!!」
教皇とセンリが同時に激しく咽せるが、教皇の方は徐々に生気が失われていくように肌の色が青白く変化し、逆にセンリは一瞬だけ身体中の血管が浮き上がり、すぐに元に戻る。一体、眼の前で何が起きているのかはレノ達も把握できないが、教皇の異変は先ほどセンリの口の中に入り込んだ「物体」が関係しているの間違いなく、今のセンリには不用意に近づけない事だけは分かる。
「……全員下がれ!!」
バチィイ!!
レノが前に出ると、まずは動きが止まったセンリに向けて右手を振り上げ、肉体強化(アクセル)で身体能力を上昇させて加速し、そのまま首元に電流を送り込んで気絶させようと「雷」の魔力を帯びた掌を向けるが、
ガシィッ!!
「なっ!?」
「馬鹿な!?」
「わふっ!?」
立ち尽くしたセンリはレノに顔すら向けず、彼の伸ばした掌を左手で鷲掴み、そのまま電流が流れ込むが、
「くくくっ……あはははっ!!」
全身に電流を流しこまれているにも関わらず、センリは笑い声を上げる。全員がその姿に畏怖し、間違いなく今の彼女には数十万ボルトの電気が身体に駆け巡っているにも関わらず、笑い声をあげるなど明らかに異常である。
「無駄無駄ぁっ!!」
ビキィイイッ!!
「うぐっ……!!」
レノの掌にセンリの指が食い込み、老婆とは思えぬほどの握力に血が滲み出す。すぐに力ずくで彼女の手を振り払うと、電流から解放されたセンリは杖を掲げる。
「死ねおらぁっ!!」
「っ!!」
ボウッ!!
口調が明らかに先ほどの彼女からは想像できない程に乱暴的に変化し、センリの周囲に再び青色の光を放つ光球が生み出される。恐らく、彼女の魔法は大気中の水分を媒介にして生み出されているのだろう。
すぐにも出現した光球は「光の鏃」へと変化し、レノに向けて放たれる。近距離にまで接近していたのが仇となり、防ぐ間もなく幾つかの鏃がレノの肉体に突き刺さり、そのまま壁際まで吹き飛ばされる。
チュドドドッ!!
「ぐあっ!?」
「レノ!?」
「だらぁああああああっ!!」
「うおぉおおおおおおっ!!」
テンが大剣を振り上げ、ゴンゾウもそれに続いて棍棒をセンリに向けて放つ。巨体2人の攻撃に対し、センリは余裕の笑みを絶やさぬまま、杖を振るいあげ、
「アクア・カーテン」
ドパァアアアンッ……!!
「「なぁっ!?」」
2人の武器に予想外の衝撃が走り、同時に室内にも関わらずに水飛沫のような音が反響する。全員が視線を向けると、そこにはセンリの周囲に青白い光を放つ液体の「膜」が形成されており、彼女をテンとゴンゾウの武器から身を守っていた。
液体にも関わらず、2人の攻撃に耐えたのはどういう原理なのかは不明だが、実際にこの中では腕力に特化した2人の攻撃を防いだ事は事実であり、センリは挑発するように指先を向ける。
「くそっ!!」
「おぉおおおおっ!!」
ドパンッ!!バシャァアンッ!!
テンとゴンゾウが2人がかりで何度も武器を振り上げるが、彼女の全身を囲む「水の膜」が防ぎ、表面の部分が揺れ動くだけで膜を突破できる気配は無い。
「くっ……火炎剣!!」
「犬牙流……!!」
すぐにリノンが火を纏わせた刀身を振るいあげ、ポチ子も短剣を構えるが、
バシャンッ!!ドバァッ!!
「ひゃはははははっ!!」
2人の攻撃も無意味であり、やはり表面の液体に弾かれて中に存在するセンリには届かない。リノンに至っては刀身の炎までも掻き消されてしまい、ポチ子は両手が痺れてしまう。
「こ、この感覚……!?」
「ちぃ……!!高速に水を動かして衝撃を殺されてるね!!」
「ご名答!!」
レノは目を凝らすと、どうやら水の膜は分かりにくいが常に液体が流動しているようであり、外部からの攻撃を高速回転で弾いていたのだ。これでは武器の類が膜を貫く前に別の方向に勢いが誘導されてしまい、攻撃が彼女には届かない。
「――アクア・ニードル」
ドパァアアアアアアンッ!!
「「うあぁああああああっ!?」」
さらにセンリが魔法名を告げると同時に彼女を覆っていた水の膜が破裂し、無数の飛沫が周囲一帯に飛び散る。それは接近していたリノン達だけではなく、呆然と傍観していたワルキューレの女騎士や兵士たちの身体の元まで降りかかる。
レノは位置的に水飛沫の直撃は避けたが、どうやら先ほどの「光の鏃」ほどの威力は無く、少なくとも至近距離にいたリノン達も致命傷は避けられたらしいが、
「ぐっ……こ、これは……」
「ち、力が……抜けます……」
「こいつは……くそっ……魔力を……!?」
全員がそのまま床に倒れ込み、力を失ったように動けない。まるで魔力を大幅に消費した時のレノと酷似した状態であり、センリは笑みを浮かべながら全員を見下ろし、
「こいつを混ぜたんだよ……どんな気分だ?」
センリはだらしなく舌をさらけ出すと、舌の先端から黒い雫が垂れる。どうやら、先ほどの水の膜に何らかの細工を施していたらしい。
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