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テンペスト騎士団編
深淵の森の罠
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「嵌められた……って、どういう事だい?」
「言葉通りさ。僕達はこの結界内に誘導され、閉じこめられた」
「まさか……私達がここに入り込むのを読まれていたと言うんですか!?」
ホノカの発言に全員が驚愕し、すぐにバルが首を振って否定する。
「いくら何でもそれは考えすきじゃないかい?この場所に入るには、本来なら結界を解除する必要があるんだろう?さっき入ることが出来たのは、レノが聖剣を使ったお蔭で……」
「それが罠だとしたら?最初からレノ君自身もこの結界内におびき寄せ、バジリスクと共に封じ込める手筈だとしたら」
「そんな馬鹿な!?この場所にレノが入り込む確証なんて……」
「よく考えてくれ。最初にこの結界内に封じ込めようとしたのは誰だ?」
言われて全員が思い出す。森人族の結界にバジリスクをおびき寄せようと提案したのは「レノ」だ。
「彼がこの結界内に封じ込めようとしたのを提案したのは、この中で一番深淵の森の結界の内部に詳しいからだろう。幼い頃とはいえ、この結界の中で暮らしていた彼だからこそ、無意識にこの作戦を思い浮かべる事が出来たかもしれない」
「……それを読んで、相手が罠を仕掛けたというのですか?」
「可能性はある。元々、あの魔物を封印していたのはこの森に住む森人族(エルフ)だろう?ならば今まで何の対策も立てていないとは思えない」
「最初からこの場所を囮にレノとバジリスクの両方を封印するつもりだとでも言うきかい?」
「一石二鳥という奴だね」
「いや、いくら何でもそれは……けど」
ホノカの予測に全員が顔を見合わせ、どうにも信じがたいが、その可能性がある事は否定は出来ない。不審な点も幾つか存在し、この「深淵の森」に入る寸前に空間の「歪み」を発見できたにも関わらず、結界内部に突入してからは空間の「歪み」が確認できない。
「どちらにしろ、僕たちがあの化物と共にこの結界に閉じ込められたのは間違いない。結界の歪みを見つけて脱出しようにも、ここまで隠蔽されていたら正確な位置が掴めない」
「わぅっ……あの、さっき結界を壊した場所に引き返すことは出来ないんですか?」
「それは無理だろうね。後ろの奴を何とかしない限りは」
――シャアァアアアアアッ……!!
飛行船の後方からバジリスクが怒りの咆哮を上げながら追跡してくる。先ほど侵入した場所を引き戻すにしろ、あの化け物を素通りする事などできない。
「な、なら……あの蛇に襲われない位置にまで上昇して移動したら……」
「そうしたいところだが……結界が上空にまで展開されていた場合、下手に硬度を上げて結界に飛衝突したら墜落してしまう可能性が高いね」
「八方塞がりじゃないか……」
ホノカの言葉に全員が顔を暗くし、どうするべきか考え込む。結界の正確な位置さえ分かれば、レノから事前に教えて貰った情報で脱出する方法はあるのだが、
「……あの~」
全員が頭を悩ませる中、ヨウカがおずおずと手を上げ、彼女に視線が注がれると、
「結界って……もしかして、あの緑色に光っているあれの事?」
「「は?」」
ヨウカは飛行船の左方向を指さし、すぐに他の者たちは視線を向けるが、そこには何も見えない。延々と続く巨大な樹木と、雲一つない不自然な青空が広がっているだけだが、
「ほら、あそこの部分……少しだけ緑色だよ~」
「……何処だい?」
「何処って……あそこだってばもう!」
頬を膨らませながらヨウカはある方向を指さすが、全員の目には特に彼女が告げている物は見当たらない。この中にはヨウカよりも視力が優れた者が多く存在するが、彼女が言う「緑色」の光は確認できない。しかし、レミアだけは何か思い至ったように頷き、慌てて問い質す。
「もしかして……巫女姫様、あなたの年齢は?」
「え?えっと……17才だけど」
「やはり……あの、もしかしたら「魔力眼」が目覚めたのでは……」
「……そうか!!おめでとうヨウカ!!」
「「?」」
レミアの魔力眼という単語にホノカは納得したよう頷くが、他の者たちは一体何の話をしているのかを理解できずに首を傾げる。だが、ポチ子だけは何か心当たりがあるのか、犬耳と尻尾を立てる。
「……魔力眼……わぅんっ!!思い出しました!ミキさんが前に言ってました。一人前の巫女姫様は「魔力」の流れを刺客で捉えることが出来るって!!」
「魔力の流れ……そう言う事か!!」
「え?え?」
ポチ子の説明に何人かが納得し、当のヨウカは騒ぎ出した皆に困惑した表情を浮かべるが、
「魔力眼……普通の人間では捉えることが出来ない微弱の魔力を「色」で正確に識別できる能力です。成人を迎えた巫女姫様だけが習得できる能力と聞いています」
「言葉通りさ。僕達はこの結界内に誘導され、閉じこめられた」
「まさか……私達がここに入り込むのを読まれていたと言うんですか!?」
ホノカの発言に全員が驚愕し、すぐにバルが首を振って否定する。
「いくら何でもそれは考えすきじゃないかい?この場所に入るには、本来なら結界を解除する必要があるんだろう?さっき入ることが出来たのは、レノが聖剣を使ったお蔭で……」
「それが罠だとしたら?最初からレノ君自身もこの結界内におびき寄せ、バジリスクと共に封じ込める手筈だとしたら」
「そんな馬鹿な!?この場所にレノが入り込む確証なんて……」
「よく考えてくれ。最初にこの結界内に封じ込めようとしたのは誰だ?」
言われて全員が思い出す。森人族の結界にバジリスクをおびき寄せようと提案したのは「レノ」だ。
「彼がこの結界内に封じ込めようとしたのを提案したのは、この中で一番深淵の森の結界の内部に詳しいからだろう。幼い頃とはいえ、この結界の中で暮らしていた彼だからこそ、無意識にこの作戦を思い浮かべる事が出来たかもしれない」
「……それを読んで、相手が罠を仕掛けたというのですか?」
「可能性はある。元々、あの魔物を封印していたのはこの森に住む森人族(エルフ)だろう?ならば今まで何の対策も立てていないとは思えない」
「最初からこの場所を囮にレノとバジリスクの両方を封印するつもりだとでも言うきかい?」
「一石二鳥という奴だね」
「いや、いくら何でもそれは……けど」
ホノカの予測に全員が顔を見合わせ、どうにも信じがたいが、その可能性がある事は否定は出来ない。不審な点も幾つか存在し、この「深淵の森」に入る寸前に空間の「歪み」を発見できたにも関わらず、結界内部に突入してからは空間の「歪み」が確認できない。
「どちらにしろ、僕たちがあの化物と共にこの結界に閉じ込められたのは間違いない。結界の歪みを見つけて脱出しようにも、ここまで隠蔽されていたら正確な位置が掴めない」
「わぅっ……あの、さっき結界を壊した場所に引き返すことは出来ないんですか?」
「それは無理だろうね。後ろの奴を何とかしない限りは」
――シャアァアアアアアッ……!!
飛行船の後方からバジリスクが怒りの咆哮を上げながら追跡してくる。先ほど侵入した場所を引き戻すにしろ、あの化け物を素通りする事などできない。
「な、なら……あの蛇に襲われない位置にまで上昇して移動したら……」
「そうしたいところだが……結界が上空にまで展開されていた場合、下手に硬度を上げて結界に飛衝突したら墜落してしまう可能性が高いね」
「八方塞がりじゃないか……」
ホノカの言葉に全員が顔を暗くし、どうするべきか考え込む。結界の正確な位置さえ分かれば、レノから事前に教えて貰った情報で脱出する方法はあるのだが、
「……あの~」
全員が頭を悩ませる中、ヨウカがおずおずと手を上げ、彼女に視線が注がれると、
「結界って……もしかして、あの緑色に光っているあれの事?」
「「は?」」
ヨウカは飛行船の左方向を指さし、すぐに他の者たちは視線を向けるが、そこには何も見えない。延々と続く巨大な樹木と、雲一つない不自然な青空が広がっているだけだが、
「ほら、あそこの部分……少しだけ緑色だよ~」
「……何処だい?」
「何処って……あそこだってばもう!」
頬を膨らませながらヨウカはある方向を指さすが、全員の目には特に彼女が告げている物は見当たらない。この中にはヨウカよりも視力が優れた者が多く存在するが、彼女が言う「緑色」の光は確認できない。しかし、レミアだけは何か思い至ったように頷き、慌てて問い質す。
「もしかして……巫女姫様、あなたの年齢は?」
「え?えっと……17才だけど」
「やはり……あの、もしかしたら「魔力眼」が目覚めたのでは……」
「……そうか!!おめでとうヨウカ!!」
「「?」」
レミアの魔力眼という単語にホノカは納得したよう頷くが、他の者たちは一体何の話をしているのかを理解できずに首を傾げる。だが、ポチ子だけは何か心当たりがあるのか、犬耳と尻尾を立てる。
「……魔力眼……わぅんっ!!思い出しました!ミキさんが前に言ってました。一人前の巫女姫様は「魔力」の流れを刺客で捉えることが出来るって!!」
「魔力の流れ……そう言う事か!!」
「え?え?」
ポチ子の説明に何人かが納得し、当のヨウカは騒ぎ出した皆に困惑した表情を浮かべるが、
「魔力眼……普通の人間では捉えることが出来ない微弱の魔力を「色」で正確に識別できる能力です。成人を迎えた巫女姫様だけが習得できる能力と聞いています」
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