301 / 1,095
テンペスト騎士団編
どうでもいい
しおりを挟む
闇ギルドから引き返したソフィアとコトミは拘束したエルフを引き連れ、黒猫酒場に戻る。既に東門に向かったリノンたちも帰還しており、彼等が連れてきた2人の客人にソフィアは驚愕した。ヨウカとの久しぶり再会を喜び合い、改めて挨拶を行うホノカに警戒しながらも、ソフィアは捕まえたエルフから聞き出した話を全員に伝えると、
「……なんなんすかそれ!!」
「そんな……」
「くそがっ……!!」
「わざわざ殺すために、育てていたというでござるか!!」
「わぅんっ!!ひどすぎますよ!!」
「許せん!!」
「これが……エルフのする事か!!」
「……私が守る」
「こんなのって……レノたんが可哀想だよ」
「ふむっ……流石の僕も、このやり方は気に喰わないな」
酒場内の者たちが全員激怒し、すぐに拘束したエルフ達に視線を向けるが、カゲマルの痺れ薬とコトミの洗脳魔法が強すぎたのか、未だに意識が戻っていない。今の状態の彼等を責めても仕方がないが、それでも怒りを抑えることはできない。あまりにもソフィアの生まれ、そしてムメイのやり方が酷過ぎる。
「それにしてもレノ殿が封印の一族とは……しかし、少しだけ納得したでござる」
「……何か知っているのかい?」
「拙者の里にも似たような家系の物が居るでござる……というか、拙者もその1人でござるよ」
「何だって!?まさか、そのござる口調に何か大きな秘密が……」
「拙者のはただの口癖でござる!!」
「口癖なんだ……」
「そんな事より、これからどうするかが問題だろ?」
「そんな事って……レノたん……あ、今はソフィアちゃんは怒っていないの?」
ヨウカの発言にソフィアは考え込み、確かに色々と思う所はあるが、
「別にどうでもいい」
「「「はっ!?」」」
「生まれなんかどうでもいい……本当に」
――前世の自分の事を思い出し、現実世界でも「同じ境遇」だった。だからこそ、今更自分がどういう存在か知った所でどうでもいい。
(……あの世界と比べたら、こっちの方が自由だしな)
現実世界では常に監視され、スケジュール通りの行動を行う毎日だった。娯楽だけは事欠かないが、あの世界で自由などなかった。この世界でも辛い事や痛い事はあったが、それでも現実世界には無い自由だけは常にあった。それだけで、この世界に生まれ変わった意味はある。
「生まれ何てどうてもいい。ただ、このまま生贄にされる気は無い」
「当たり前だ!!そんな事、私達がさせない!!」
「そうですよ!!」
「レノは、俺が守る」
「……けど、その封印の遺跡というのも気にかかるね」
話を聞く限り、深淵の森に潜むという「魔物」は相当に危険な存在らしい。しかし、勇者達から話を聞いたゴブリンキングという存在が封印されているとは到底思えない。
確かにこの世界のゴブリンキングとは非常に兇悪な魔物であり、無数のゴブリンを率いて行進するため、ある意味では腐敗竜同様に厄介な存在である。だが、捕縛したエルフの話を聞く限り、封印された「魔物」というのは非常に長い期間の「休眠期」を必要とする存在らしいが、この世界のゴブリンキングと呼ばれる存在にはそのような特徴は存在しない。
「ゴブリンキングが数百年も眠り続けるなんて聞いたことが無いね……」
「それに普通のゴブリンは山に住む生物でござる……決して、平原などには生息しないはずでござるが……」
「私も絵本でしか知らないけど……ゴブリンキングって、大昔に絶滅したんじゃなかったっけ?」
「私もそう聞いているが……」
全員の反応からすると、どうにも深淵の森に封印されている「魔物」とやらが勇者達が語るゴブリンキングの事とは思えない。元々、勇者達の情報も色々と当てにならない事もあり、もしかしたら全く別の存在が封印されている可能性が高い。
「こいつらも何が封印されているのか知らないようだし……」
「そのムメイ、という人が全てを知っているようだな。どうにか会いたいものだが……」
「……人じゃなくて、エルフ」
「おっと、これは一本取られたな」
即座に訂正するコトミにホノカはさり気なく頭を撫でようとするが、コトミはソフィアの後ろに隠れる。まるで人見知りの猫のように警戒する彼女に特に気分も害した風は無く、ホノカは笑みを浮かべ、ソフィアに鋭い視線を向ける。
「さて……これからどうする気だい?」
「……どうする気と言われてもね……当初の目的は変わらないよ」
あくまでも今回の目的は深淵の森に封印されている存在の討伐であり、深淵の森に存在する遺跡にの封印を解除する方法は判明したが、生憎とソフィアは自殺する気はない。
「フレイを探す。というより、早く見つけないと危険だし……」
「まあ、それが妥当だろうね……」
「わふっ!!もしかしたら、そのフレイさんなら何か知っているかもしれません!!」
「しかし……その御方は何処にいるでござるが?」
エルフ達がこの1年半の間に捜索を続けたが、手がかり1つも掴めない辺り、やはり彼女は未だに放浪島に残っている可能性が高い。
「……なんなんすかそれ!!」
「そんな……」
「くそがっ……!!」
「わざわざ殺すために、育てていたというでござるか!!」
「わぅんっ!!ひどすぎますよ!!」
「許せん!!」
「これが……エルフのする事か!!」
「……私が守る」
「こんなのって……レノたんが可哀想だよ」
「ふむっ……流石の僕も、このやり方は気に喰わないな」
酒場内の者たちが全員激怒し、すぐに拘束したエルフ達に視線を向けるが、カゲマルの痺れ薬とコトミの洗脳魔法が強すぎたのか、未だに意識が戻っていない。今の状態の彼等を責めても仕方がないが、それでも怒りを抑えることはできない。あまりにもソフィアの生まれ、そしてムメイのやり方が酷過ぎる。
「それにしてもレノ殿が封印の一族とは……しかし、少しだけ納得したでござる」
「……何か知っているのかい?」
「拙者の里にも似たような家系の物が居るでござる……というか、拙者もその1人でござるよ」
「何だって!?まさか、そのござる口調に何か大きな秘密が……」
「拙者のはただの口癖でござる!!」
「口癖なんだ……」
「そんな事より、これからどうするかが問題だろ?」
「そんな事って……レノたん……あ、今はソフィアちゃんは怒っていないの?」
ヨウカの発言にソフィアは考え込み、確かに色々と思う所はあるが、
「別にどうでもいい」
「「「はっ!?」」」
「生まれなんかどうでもいい……本当に」
――前世の自分の事を思い出し、現実世界でも「同じ境遇」だった。だからこそ、今更自分がどういう存在か知った所でどうでもいい。
(……あの世界と比べたら、こっちの方が自由だしな)
現実世界では常に監視され、スケジュール通りの行動を行う毎日だった。娯楽だけは事欠かないが、あの世界で自由などなかった。この世界でも辛い事や痛い事はあったが、それでも現実世界には無い自由だけは常にあった。それだけで、この世界に生まれ変わった意味はある。
「生まれ何てどうてもいい。ただ、このまま生贄にされる気は無い」
「当たり前だ!!そんな事、私達がさせない!!」
「そうですよ!!」
「レノは、俺が守る」
「……けど、その封印の遺跡というのも気にかかるね」
話を聞く限り、深淵の森に潜むという「魔物」は相当に危険な存在らしい。しかし、勇者達から話を聞いたゴブリンキングという存在が封印されているとは到底思えない。
確かにこの世界のゴブリンキングとは非常に兇悪な魔物であり、無数のゴブリンを率いて行進するため、ある意味では腐敗竜同様に厄介な存在である。だが、捕縛したエルフの話を聞く限り、封印された「魔物」というのは非常に長い期間の「休眠期」を必要とする存在らしいが、この世界のゴブリンキングと呼ばれる存在にはそのような特徴は存在しない。
「ゴブリンキングが数百年も眠り続けるなんて聞いたことが無いね……」
「それに普通のゴブリンは山に住む生物でござる……決して、平原などには生息しないはずでござるが……」
「私も絵本でしか知らないけど……ゴブリンキングって、大昔に絶滅したんじゃなかったっけ?」
「私もそう聞いているが……」
全員の反応からすると、どうにも深淵の森に封印されている「魔物」とやらが勇者達が語るゴブリンキングの事とは思えない。元々、勇者達の情報も色々と当てにならない事もあり、もしかしたら全く別の存在が封印されている可能性が高い。
「こいつらも何が封印されているのか知らないようだし……」
「そのムメイ、という人が全てを知っているようだな。どうにか会いたいものだが……」
「……人じゃなくて、エルフ」
「おっと、これは一本取られたな」
即座に訂正するコトミにホノカはさり気なく頭を撫でようとするが、コトミはソフィアの後ろに隠れる。まるで人見知りの猫のように警戒する彼女に特に気分も害した風は無く、ホノカは笑みを浮かべ、ソフィアに鋭い視線を向ける。
「さて……これからどうする気だい?」
「……どうする気と言われてもね……当初の目的は変わらないよ」
あくまでも今回の目的は深淵の森に封印されている存在の討伐であり、深淵の森に存在する遺跡にの封印を解除する方法は判明したが、生憎とソフィアは自殺する気はない。
「フレイを探す。というより、早く見つけないと危険だし……」
「まあ、それが妥当だろうね……」
「わふっ!!もしかしたら、そのフレイさんなら何か知っているかもしれません!!」
「しかし……その御方は何処にいるでござるが?」
エルフ達がこの1年半の間に捜索を続けたが、手がかり1つも掴めない辺り、やはり彼女は未だに放浪島に残っている可能性が高い。
0
お気に入りに追加
485
あなたにおすすめの小説
なりゆきで、君の体を調教中
星野しずく
恋愛
教師を目指す真が、ひょんなことからメイド喫茶で働く現役女子高生の優菜の特異体質を治す羽目に。毎夜行われるマッサージに悶える優菜と、自分の理性と戦う真面目な真の葛藤の日々が続く。やがて二人の心境には、徐々に変化が訪れ…。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
【完結】辺境伯令嬢は新聞で婚約破棄を知った
五色ひわ
恋愛
辺境伯令嬢としてのんびり領地で暮らしてきたアメリアは、カフェで見せられた新聞で自身の婚約破棄を知った。真実を確かめるため、アメリアは3年ぶりに王都へと旅立った。
※本編34話、番外編『皇太子殿下の苦悩』31+1話、おまけ4話
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
結婚して5年、初めて口を利きました
宮野 楓
恋愛
―――出会って、結婚して5年。一度も口を聞いたことがない。
ミリエルと旦那様であるロイスの政略結婚が他と違う点を挙げよ、と言えばこれに尽きるだろう。
その二人が5年の月日を経て邂逅するとき
ボロ雑巾な伯爵夫人、やっと『家族』を手に入れました。~旦那様から棄てられて、ギブ&テイクでハートフルな共同生活を始めます2~
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
第二夫人に最愛の旦那様も息子も奪われ、挙句の果てに家から追い出された伯爵夫人・フィーリアは、なけなしの餞別だけを持って大雨の中を歩き続けていたところ、とある男の子たちに出会う。
言葉汚く直情的で、だけど決してフィーリアを無視したりはしない、ディーダ。
喋り方こそ柔らかいが、その実どこか冷めた毒舌家である、ノイン。
12、3歳ほどに見える彼らとひょんな事から共同生活を始めた彼女は、人々の優しさに触れて少しずつ自身の居場所を確立していく。
====
●本作は「ボロ雑巾な伯爵夫人、旦那様から棄てられて、ギブ&テイクでハートフルな共同生活を始めます。」からの続き作品です。
前作では、二人との出会い~同居を描いています。
順番に読んでくださる方は、目次下にリンクを張っておりますので、そちらからお入りください。
※アプリで閲覧くださっている方は、タイトルで検索いただけますと表示されます。
大好きな母と縁を切りました。
むう子
ファンタジー
7歳までは家族円満愛情たっぷりの幸せな家庭で育ったナーシャ。
領地争いで父が戦死。
それを聞いたお母様は寝込み支えてくれたカルノス・シャンドラに親子共々心を開き再婚。
けれど妹が生まれて義父からの虐待を受けることに。
毎日母を想い部屋に閉じこもるナーシャに2年後の政略結婚が決定した。
けれどこの婚約はとても酷いものだった。
そんな時、ナーシャの生まれる前に亡くなった父方のおばあさまと契約していた精霊と出会う。
そこで今までずっと近くに居てくれたメイドの裏切りを知り……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる