種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

文字の大きさ
上 下
293 / 1,095
テンペスト騎士団編

腕力勝負

しおりを挟む
リュウケンとゴンゾウが両手を組み合い、御互いの力を振り絞って押し合いを始める。片方は死人、もう片方は巨人族、異様な光景だが2人に共通しているのは肌が赤黒く、驚異的な腕力を所有している事だ。


「ぐおぉおおおおおおっ!!」
「ぬぐぅううううううっ!!」


ビキィイイイッ!!


両足で踏ん張るだけで地面に亀裂が入り、お互いの額をぶつけ合い、力の限りに押し合う。見ているだけでも気圧される光景だが、完全に力は拮抗しているため、硬直状態に陥る。


「ご、ゴンゾウさっ……わうっ!?」
「邪魔をするな、男同士の戦いに下手に入れば殺されるぞ」
「で、でも……」


助勢に入ろうとしたポチ子をホノカが止め、三人は動けない。リノンは先の戦闘で力を使い果たし、ホノカの攻撃ではゴンゾウを巻き込みかねない。ヨウカに至っては戦力外であり、唯一動けるポチ子も2人の間に割って入れず、彼女の場合は動きが速くても、耐久力が低い。一撃でも受ければ致命傷に成りかねない。


「ふんっ!!」
「ぬあっ……」


先に膠着を解いたのはリュウケンであり、両手を押し付けるのではなく、逆に引き寄せるように彼を招き入れ、そのまま右足の膝を彼の腹部に叩き込む。


ズドォンッ!!


「ぐふっ……ぬおおっ!!」


だが、腹部を撃たれながらもゴンゾウは巨体を利用してそのまま押し倒すように倒れ込み、彼の身体を拘束する。体格差ならば圧倒的にゴンゾウの方が有利だが、


「がぁあああっ!!」
「ぐっ……!!」


ドスッ!!ドスッ!!


押し込まれながらも悪あがきとばかりにリュウケンはゴンゾウの身体に無我夢中に拳を叩き込むが、地面に倒された状態ではたいした威力は出せない。ゴンゾウは全身を殴りつけられながらも、リュウケンの腰をしっかりと鷲掴み、そのまま勢いよく持ち上げると、


「うおぉおおおっ!!」


ズゥウウウンッ!!


「ぐへぇっ……!?」


そのまま全体重を乗せたプロレスで言う所の「パワーボム」を叩き込み、リュウケンの頭部を容赦なく地面に叩き付ける。仮に相手が生者であれば彼も手加減はしただろうが、今回の相手は自分に匹敵するほどの怪力を持つ死人であり、ここで自分が倒さなければ大勢の被害が生まれる。

だが、ゴンゾウに頭部を叩き付けられたにもかかわらず、リュウケンはそのまま背中に両手を回し、両足をゴンゾウの頭に絡みつける。仮に人間ならば脳震盪を起こした一撃だろうが、今のリュウケンは死人であり、身体を八つ裂きにしない限り暴れ続ける。


「がぁああああっ!!」
「ぐおっ……!?」


リュウケンは死人とは思えないほどに見事な動きでゴンゾウの首元を締め付け、格闘技の「三角締め」に近い形となる。今度はこちらが首元を絞められる形となり、そのまま2人は地面に倒れこむ。

体格差や体重はゴンゾウが上だが、単純な腕力はどちらも同程度。さらには動きの速さはリュウケンであり、だからこそゴンゾウは首を絞められるのを防げなかった。強化されたリュウケンの両足に挟まれ、ゴンゾウは意識が失いかけるが、それでも自分も両足を踏ん張り、


「ぐぅうううううっ……!!」
「があっ……!!」


ブワァッ……!!


そのままリュウケンの身体を持ち上げて立ち上がり、ゴンゾウは再び片腕を封じ込められながらも、そのままもう一度彼の身体を振り上げ、


「ふんっ!!」
「ぐはぁっ!?」


ドォオオンッ!!


背中を強かに打ち付けられ、リュウケンの両足の拘束が一瞬だが緩む。その隙を逃さず、ゴンゾウは頭部を抜け出し、逆に拘束していた両足を掴み上げ、


「うおぉおおおおおおおっ!!」



ブンブンブンッ――!!



勢いよくリュウケンの身体を振り回し、プロレス技の「ジャイアントスルー」の要領で旋回する。相当な速度まで加速すると、ゴンゾウは両足を離してリュウケンの身体が吹き飛ぶ。



ズガァアアアアアンッ!!



吹き飛ばされたリュウケンはすぐ傍の瓦礫に頭から突っ込む。最初にこの都市の中に侵入する際に放った竜巻によって周囲には無数の瓦礫が散らばっている。


「うぐぁあああっ……!!」


流石に死人と言えど身体全体を強く叩き付けられ、動きが鈍くなる。鋼鉄以上の硬度と言えど、今のゴンゾウの怪力で生み出された攻撃は身体に影響を与える。ゴンゾウはを好機とばかりに走り出し、この「鬼人化」の状態ならば彼の両足の筋肉も当然強化されており、直線的な移動ならば誰よりも速い。


「ぬんっ!!」



――ドゴォオオオオオオオンッ!!



「ぐばぁあああああああっ!?」


ゴンゾウの巨体が浮き上がり、起き上がろうとしていたリュウケンの身体に叩き込まれる。しかも今度は勢いも付けているため、先ほどよりもダメージは深い。

リュウケンは苦悶の表情を浮かべるが、すぐにゴンゾウの身体を持ち上げようとする。これほどまでに追い詰められながらも、死人である彼には恐怖や怯えなどの感情は無い。動ける限りは戦い続ける状態だが、


「ふんっ!!」
「げふっ!?」


メキィイイイッ!!


ゴンゾウの拳がリュウケンの顔面にめり込み、周囲の地面に亀裂が生まれた。単語ルビ
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

なりゆきで、君の体を調教中

星野しずく
恋愛
教師を目指す真が、ひょんなことからメイド喫茶で働く現役女子高生の優菜の特異体質を治す羽目に。毎夜行われるマッサージに悶える優菜と、自分の理性と戦う真面目な真の葛藤の日々が続く。やがて二人の心境には、徐々に変化が訪れ…。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

【完結】辺境伯令嬢は新聞で婚約破棄を知った

五色ひわ
恋愛
 辺境伯令嬢としてのんびり領地で暮らしてきたアメリアは、カフェで見せられた新聞で自身の婚約破棄を知った。真実を確かめるため、アメリアは3年ぶりに王都へと旅立った。 ※本編34話、番外編『皇太子殿下の苦悩』31+1話、おまけ4話

実家が没落したので、こうなったら落ちるところまで落ちてやります。

黒蜜きな粉
ファンタジー
ある日を境にタニヤの生活は変わってしまった。 実家は爵位を剥奪され、領地を没収された。 父は刑死、それにショックを受けた母は自ら命を絶った。 まだ学生だったタニヤは学費が払えなくなり学校を退学。 そんなタニヤが生活費を稼ぐために始めたのは冒険者だった。 しかし、どこへ行っても元貴族とバレると嫌がらせを受けてしまう。 いい加減にこんな生活はうんざりだと思っていたときに出会ったのは、商人だと名乗る怪しい者たちだった。 騙されていたって構わない。 もう金に困ることなくお腹いっぱい食べられるなら、裏家業だろうがなんでもやってやる。 タニヤは商人の元へ転職することを決意する。

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

私は何人とヤれば解放されるんですか?

ヘロディア
恋愛
初恋の人を探して貴族に仕えることを選んだ主人公。しかし、彼女に与えられた仕事とは、貴族たちの夜中の相手だった…

結婚して5年、初めて口を利きました

宮野 楓
恋愛
―――出会って、結婚して5年。一度も口を聞いたことがない。 ミリエルと旦那様であるロイスの政略結婚が他と違う点を挙げよ、と言えばこれに尽きるだろう。 その二人が5年の月日を経て邂逅するとき

ボロ雑巾な伯爵夫人、やっと『家族』を手に入れました。~旦那様から棄てられて、ギブ&テイクでハートフルな共同生活を始めます2~

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
 第二夫人に最愛の旦那様も息子も奪われ、挙句の果てに家から追い出された伯爵夫人・フィーリアは、なけなしの餞別だけを持って大雨の中を歩き続けていたところ、とある男の子たちに出会う。  言葉汚く直情的で、だけど決してフィーリアを無視したりはしない、ディーダ。  喋り方こそ柔らかいが、その実どこか冷めた毒舌家である、ノイン。    12、3歳ほどに見える彼らとひょんな事から共同生活を始めた彼女は、人々の優しさに触れて少しずつ自身の居場所を確立していく。 ==== ●本作は「ボロ雑巾な伯爵夫人、旦那様から棄てられて、ギブ&テイクでハートフルな共同生活を始めます。」からの続き作品です。  前作では、二人との出会い~同居を描いています。  順番に読んでくださる方は、目次下にリンクを張っておりますので、そちらからお入りください。  ※アプリで閲覧くださっている方は、タイトルで検索いただけますと表示されます。

処理中です...