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テンペスト騎士団編
増援
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「……死霊使い……!?」
リノンは眼の前に広がる光景に信じられず、それでも確かにリュウケンは死人と変化した事に驚愕する。すぐに彼女はリュウケンを死人へと変化させたと思われる人物に視線を向け、死霊使いの類かと疑う。
通常、死人を生み出すのに必要な物は死体と特殊な魔道具であり、後は死霊使い自身の魔力を必要とする。しかし、目の前で見た限りはリュウケンは命を完全に落とす前に魔道具と思われる魔石を心臓部が存在した場所に埋め込まれ、死人と変貌したようにしか思えない。
普通に考えれば有り得ない光景であり、死にかけていたとはいえ、まだ生者であったリュウケンを死人に変化させるなど並の資料使いであろうと真似はできない。考えられるのは突然現れた黒色のマントの人物が特殊な死霊使い(ネクロマンサー)であり、特別な方法でリュウケンを死人へと変えたとしか考えられないが、
「ぐるあぁああああああっ!!」
未だに黒色のマントで全身を覆い隠す人物に抑えられ、死人と変貌したリュウケンはもがき苦しみ、彼が足を退けた瞬間、
「うがぁああああっ!!」
「お?」
そのまま立ち上がると同時にカトレアに向かって飛びかかる。死人というよりはアンデットに近い状態なのか、理性を完全に無くしている。
ガシィッ!!
「がうっ……!?」
「大人しくしろや」
だが、後方から黒いフードの人物が彼の頭を掴み取り、そのまま勢いよく地面に向けて叩き付ける。
「ぐぎぃいいいっ!!」
「ちっ……まだ完全に馴染んでないな」
「大人しくしてね~」
死人と化したリュウケンを容易く抑え込む人物に驚きながらも、リノンは彼らが何をしようとしているのかを観察し、何とか増援が来るまでここで足止めできないかと考えるが、
「……それよりも目的の方は達成したのか?」
「そうだねぇ……聖痕は回収したし、お姉ちゃんもいないみたいだし、帰ろっかな~?」
「腐敗竜殺しのメンバーがまだ居るんじゃないのか?」
「あの人たちにはあんまり関わるなってご主人様からの命令だし~……それにハーフエルフ君を相手にするのは面倒でしょ?」
「ま、そうだな……あれはあの女よりもやばい……正面から戦って勝てる気はしないな」
ハーフエルフという言葉にレノの事を指しているのは間違いないが、今の彼は無理な肉体強化で弱体化している事は知られていない事にリノンは安堵する。
「それよりもエルフどもがやたらと騒ぎを起こしてるみたいだぞ。どうする?」
「あの人たちは私達とは別の部隊だからどうでもいいかな~……面倒事に巻き込まれる前に逃げようか?」
「そうだな」
カトレアが豊かな胸元から透明の水晶を取り出し、リノンの記憶通りなら勇者達がよく扱う転移結晶と呼ばれる魔道具である。男はリュウケンをそのまま振り払い、転移結晶を握りつぶす。
バリィィイインッ!!
「ばいば~い」
「あばよ」
「うがぁあああああああああっ!!」
ブォンッ――!!
2人の姿が光の奔流に飲み込まれ、そのまま姿を消すと、リュウケンは2人が居た場所に虚しく空振りし、何度も2人が消えた空間に拳を振り回すが意味はない。一通り暴れ狂ったと思うと、今度は倒れ伏しているリノンに視線を向け、
「ぐぅううううっ……!!あぁああああああっ!!」
「くっ……!?」
まるでムササビのように跳躍し、そのまま上空から鋭利に尖った爪先を向けたが、
「――ふんっ!!」
「ぐはっ!?」
ドォオオオンッ!!
寸前で巨大な鋼鉄の棍棒がリノンの前に姿を現し、そのまま飛びかかったリュウケンの腹部に激突すると、彼の身体を殴り飛ばす。すぐにリノンは顔を見上げると、
「リノンさん!!」
「ポチ子……それにゴンゾウも……!!」
「……待たせた」
そこにはようやく到着したポチ子とゴンゾウの姿があり、さらに二人の後方には見知らぬ二人組も立っていた。
「……やれやれ、一体どういう状況だ?」
「あ、あの人……確かレノたんの知り合いの人と同じ……!?」
「……そちらの2人は?」
「巫女姫様です!!」
「みこっ……えっ!?」
ポチ子の発言にリノンは大きく目を見開き、もう1人の方に視線を向けると、彼女は笑みを浮かべ、
「君、昔の僕と若干キャラ被っているね」
「は?」
「いや、何でもない。それよりもあれをどうにかするか……」
――ぐおぉおおおおおおっ!!
5人の前には真面にゴンゾウの棍棒を受けて吹き飛ばされたはずのリュウケンが立ち上がり、並の人間ならば全身の骨が粉砕しても可笑しくは無い威力の攻撃を受けながらも、特に負傷をした様子は見せない。
リュウケンの肌の色がどんどんと赤く染まり、ゴンゾウは首を傾げる。まるで自分の「鬼人化」を発動させた時と同じような変化に不審に思い、先ほどの棍棒の感触にも違和感を覚えていた。まるで空中に放り出された鋼鉄の塊を叩き付けたような感じだった。
「気を付けろ……あれはもう、人間じゃない」
「だろうな……」
ホノカは眼の前のリュウケンに対し、どのように対処するかを考える。どういうわけか以前に感じた聖痕の力が既に彼の身体から感じられないのは気にかかるが、
「とりあえず、動かないでいてもらおうか」
「がぁあっ!?」
リュウケンの上空に複数の「転移魔方陣」が生み出され、
――ズドドドドッ!!
無数の槍、剣が放たれ、そのままリュウケンの身体に向けて放たれる。
リノンは眼の前に広がる光景に信じられず、それでも確かにリュウケンは死人と変化した事に驚愕する。すぐに彼女はリュウケンを死人へと変化させたと思われる人物に視線を向け、死霊使いの類かと疑う。
通常、死人を生み出すのに必要な物は死体と特殊な魔道具であり、後は死霊使い自身の魔力を必要とする。しかし、目の前で見た限りはリュウケンは命を完全に落とす前に魔道具と思われる魔石を心臓部が存在した場所に埋め込まれ、死人と変貌したようにしか思えない。
普通に考えれば有り得ない光景であり、死にかけていたとはいえ、まだ生者であったリュウケンを死人に変化させるなど並の資料使いであろうと真似はできない。考えられるのは突然現れた黒色のマントの人物が特殊な死霊使い(ネクロマンサー)であり、特別な方法でリュウケンを死人へと変えたとしか考えられないが、
「ぐるあぁああああああっ!!」
未だに黒色のマントで全身を覆い隠す人物に抑えられ、死人と変貌したリュウケンはもがき苦しみ、彼が足を退けた瞬間、
「うがぁああああっ!!」
「お?」
そのまま立ち上がると同時にカトレアに向かって飛びかかる。死人というよりはアンデットに近い状態なのか、理性を完全に無くしている。
ガシィッ!!
「がうっ……!?」
「大人しくしろや」
だが、後方から黒いフードの人物が彼の頭を掴み取り、そのまま勢いよく地面に向けて叩き付ける。
「ぐぎぃいいいっ!!」
「ちっ……まだ完全に馴染んでないな」
「大人しくしてね~」
死人と化したリュウケンを容易く抑え込む人物に驚きながらも、リノンは彼らが何をしようとしているのかを観察し、何とか増援が来るまでここで足止めできないかと考えるが、
「……それよりも目的の方は達成したのか?」
「そうだねぇ……聖痕は回収したし、お姉ちゃんもいないみたいだし、帰ろっかな~?」
「腐敗竜殺しのメンバーがまだ居るんじゃないのか?」
「あの人たちにはあんまり関わるなってご主人様からの命令だし~……それにハーフエルフ君を相手にするのは面倒でしょ?」
「ま、そうだな……あれはあの女よりもやばい……正面から戦って勝てる気はしないな」
ハーフエルフという言葉にレノの事を指しているのは間違いないが、今の彼は無理な肉体強化で弱体化している事は知られていない事にリノンは安堵する。
「それよりもエルフどもがやたらと騒ぎを起こしてるみたいだぞ。どうする?」
「あの人たちは私達とは別の部隊だからどうでもいいかな~……面倒事に巻き込まれる前に逃げようか?」
「そうだな」
カトレアが豊かな胸元から透明の水晶を取り出し、リノンの記憶通りなら勇者達がよく扱う転移結晶と呼ばれる魔道具である。男はリュウケンをそのまま振り払い、転移結晶を握りつぶす。
バリィィイインッ!!
「ばいば~い」
「あばよ」
「うがぁあああああああああっ!!」
ブォンッ――!!
2人の姿が光の奔流に飲み込まれ、そのまま姿を消すと、リュウケンは2人が居た場所に虚しく空振りし、何度も2人が消えた空間に拳を振り回すが意味はない。一通り暴れ狂ったと思うと、今度は倒れ伏しているリノンに視線を向け、
「ぐぅううううっ……!!あぁああああああっ!!」
「くっ……!?」
まるでムササビのように跳躍し、そのまま上空から鋭利に尖った爪先を向けたが、
「――ふんっ!!」
「ぐはっ!?」
ドォオオオンッ!!
寸前で巨大な鋼鉄の棍棒がリノンの前に姿を現し、そのまま飛びかかったリュウケンの腹部に激突すると、彼の身体を殴り飛ばす。すぐにリノンは顔を見上げると、
「リノンさん!!」
「ポチ子……それにゴンゾウも……!!」
「……待たせた」
そこにはようやく到着したポチ子とゴンゾウの姿があり、さらに二人の後方には見知らぬ二人組も立っていた。
「……やれやれ、一体どういう状況だ?」
「あ、あの人……確かレノたんの知り合いの人と同じ……!?」
「……そちらの2人は?」
「巫女姫様です!!」
「みこっ……えっ!?」
ポチ子の発言にリノンは大きく目を見開き、もう1人の方に視線を向けると、彼女は笑みを浮かべ、
「君、昔の僕と若干キャラ被っているね」
「は?」
「いや、何でもない。それよりもあれをどうにかするか……」
――ぐおぉおおおおおおっ!!
5人の前には真面にゴンゾウの棍棒を受けて吹き飛ばされたはずのリュウケンが立ち上がり、並の人間ならば全身の骨が粉砕しても可笑しくは無い威力の攻撃を受けながらも、特に負傷をした様子は見せない。
リュウケンの肌の色がどんどんと赤く染まり、ゴンゾウは首を傾げる。まるで自分の「鬼人化」を発動させた時と同じような変化に不審に思い、先ほどの棍棒の感触にも違和感を覚えていた。まるで空中に放り出された鋼鉄の塊を叩き付けたような感じだった。
「気を付けろ……あれはもう、人間じゃない」
「だろうな……」
ホノカは眼の前のリュウケンに対し、どのように対処するかを考える。どういうわけか以前に感じた聖痕の力が既に彼の身体から感じられないのは気にかかるが、
「とりあえず、動かないでいてもらおうか」
「がぁあっ!?」
リュウケンの上空に複数の「転移魔方陣」が生み出され、
――ズドドドドッ!!
無数の槍、剣が放たれ、そのままリュウケンの身体に向けて放たれる。
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