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テンペスト騎士団編
死人化
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「てめっ……ぇっ……!?」
「ああ……その顔、すごく良い。でも……」
ブチュウゥッ……!!
「がぁあああっ!?」
「なっ……」
カトレアは突き出した右腕を引き抜き、胸元に大きな風穴が生まれたリュウケンは跪く。心臓を抉られたにもかかわらず、まだ生きているのは体内に残されていた「嵐の聖痕」の魔力が生命力となっているからだろう。
だが、その肝心の腹部に浮かんでいた聖痕も何時の間にか消失しており、そしてカトレアが掴み取っている彼の心臓には「渦巻き」を想像させる紋様が光り輝いていた。
「これ、返してもらうねぇ」
「て、てめぇらぁっ……!!」
リュウケンは遂に耐え切れず、膝を着いて胸元を抑え込む。既に手遅れだという状況は分かっているが、それでも目の前の女をどうにかしないと気が済まない。カトレアは未だに脈動を続ける心臓を確認し、今までに見たことが無い恍惚な笑みを浮かべ、
「凄い……こんなに力に満ちていてる……これなら魔王様の完全復活も近づけるよぉ」
「……魔王?」
リノンは一体彼女が何を話しているのかは不明だが、今は何としてもこの2人を捕獲しなければならない。最悪の場合、どちらも殺さなければならない相手ではあるが、今の弱りきった彼女には討伐は不可能。
動く事すら出来ない彼女では2人の様子を確認する事が精一杯だが、カトレアは幸いというべきかリノンに気付いていないのか、リュウケンを見下ろして笑みを浮かべる。
「ごめんねぇ……甘い人が仲間になっちゃうと、ご主人様が怒っちゃうから、貴方は不合格だから諦めてね?」
「不合格……だとっ……勝手な事を……!!」
「それともぉ……さっき子供を殺してくれるなら、返してあげてもいいよ?」
カトレアは心臓を見せつけ、リュウケンは唇を噛む。どうやら先ほどの子供を助けた事が彼女の言う不合格と判断されたらしく、自分が見捨てられたと悟る。
リュウケンは何とか身体中の力を振り絞り、立ち上がろうとしたが、既に心臓が抉られた事で全身の血液の供給が停止し、最早意識も混濁している。体内に残った聖痕の魔力が尽きかけているのだ。
(くそが……こんな所で、俺が……!!)
普通の人間ならば体内に聖痕の魔力の残滓が残っていたとしても、心臓を抉られた際に絶命している。だが、半ば巨人族の血も流れている彼は人一倍生命力が強く、即死だけは免れた。それでもこの状態ではどのような治癒魔法や回復薬を施そうが、助からない。
「――殺すっ!!」
ダンッ!!
ならば彼の最後の行動は残る全ての力を振り絞り、目の前で余裕の表情を浮かべるカトレアの首筋に狙いを付け、大きく口を開く。このまま彼女の頸動脈でも食い千切ろうと試みるが、
「諦めが悪いんだよ!!」
ズゥンッ!!
「がはぁっ……!?」
突然、背後から強い衝撃が走り込み、リュウケンの身体が再び地面に叩き付けられる。何とか顔を見上げると、そこには何時の間にか現れたカトレアとは違う黒色のマントで全身を覆う人物が立っていた。
身長は高く、声から察するに男性だろうが、恐ろしい力でリュウケンの肉体を片足のみで抑え付ける。例え、彼が万全の状態だっとしても起き上がる事は難しいかもしれない。
(こいつ……この力、まるで……俺の……?)
巨人族の血が流れているリュウケンですら全く身動きできない「力」恐らくはこの相手も普通の人間ではないのだろう。
「はっ……同族が居るっていうから期待したって言うのによ……この程度かよ」
「あん……ゴウちゃんだめだよ?まだ、この子には用があるんだから」
「その呼び方は辞めてくださいよ……負け犬の事を思い出すんすから」
「ごめんね~……ゴーテンちゃん」
「そっちの方が恥ずかしい……まあいい」
ギシィイイッ……!!
男はリュウケンの背中を踏みつけながら、懐から赤い魔石を取りだす。それを見たカトレアは不思議そうに首を傾げ、リュウケンは目を見開く。
「さてと……あの方からの命令でね。一応はまだ利用価値が在るのなら、惜しみなく使用しろとの事だ」
「そいつは……まさか……!?」
「そうだよ見覚えがあるだろ?安心しろよ、あの腐れ竜に使った物よりはマシな奴だよ」
「て、てめぇらぁああああああああっ!!」
リュウケンは今から自分がされる事に怒り狂い、既に動けない体を必死にもがくが、男は笑い声を上げながら「魔石」を握りしめ、カトレアに貫かれたリュウケンの背中の風穴に向けて差し込む。
「ぐあっ……!?」
次の瞬間、彼の両目が大きく見開かれ、同時に異変が起きる。虚ろな瞳の色が真っ赤に染まり、胸元と背中から噴出していた血液も止まり、瞬時に身体中の血管が浮き上がる。皮膚の色も赤く変色し、筋肉が膨れ上がる。まるでゴンゾウの「鬼人化」を想像させる身体の変化にリノンは目を奪われる。
「――うがぁああああああっ!!」
そして、リュウケンの姿をした化物が立ち上がり、彼はリノンの目の前で死人と化した――
「ああ……その顔、すごく良い。でも……」
ブチュウゥッ……!!
「がぁあああっ!?」
「なっ……」
カトレアは突き出した右腕を引き抜き、胸元に大きな風穴が生まれたリュウケンは跪く。心臓を抉られたにもかかわらず、まだ生きているのは体内に残されていた「嵐の聖痕」の魔力が生命力となっているからだろう。
だが、その肝心の腹部に浮かんでいた聖痕も何時の間にか消失しており、そしてカトレアが掴み取っている彼の心臓には「渦巻き」を想像させる紋様が光り輝いていた。
「これ、返してもらうねぇ」
「て、てめぇらぁっ……!!」
リュウケンは遂に耐え切れず、膝を着いて胸元を抑え込む。既に手遅れだという状況は分かっているが、それでも目の前の女をどうにかしないと気が済まない。カトレアは未だに脈動を続ける心臓を確認し、今までに見たことが無い恍惚な笑みを浮かべ、
「凄い……こんなに力に満ちていてる……これなら魔王様の完全復活も近づけるよぉ」
「……魔王?」
リノンは一体彼女が何を話しているのかは不明だが、今は何としてもこの2人を捕獲しなければならない。最悪の場合、どちらも殺さなければならない相手ではあるが、今の弱りきった彼女には討伐は不可能。
動く事すら出来ない彼女では2人の様子を確認する事が精一杯だが、カトレアは幸いというべきかリノンに気付いていないのか、リュウケンを見下ろして笑みを浮かべる。
「ごめんねぇ……甘い人が仲間になっちゃうと、ご主人様が怒っちゃうから、貴方は不合格だから諦めてね?」
「不合格……だとっ……勝手な事を……!!」
「それともぉ……さっき子供を殺してくれるなら、返してあげてもいいよ?」
カトレアは心臓を見せつけ、リュウケンは唇を噛む。どうやら先ほどの子供を助けた事が彼女の言う不合格と判断されたらしく、自分が見捨てられたと悟る。
リュウケンは何とか身体中の力を振り絞り、立ち上がろうとしたが、既に心臓が抉られた事で全身の血液の供給が停止し、最早意識も混濁している。体内に残った聖痕の魔力が尽きかけているのだ。
(くそが……こんな所で、俺が……!!)
普通の人間ならば体内に聖痕の魔力の残滓が残っていたとしても、心臓を抉られた際に絶命している。だが、半ば巨人族の血も流れている彼は人一倍生命力が強く、即死だけは免れた。それでもこの状態ではどのような治癒魔法や回復薬を施そうが、助からない。
「――殺すっ!!」
ダンッ!!
ならば彼の最後の行動は残る全ての力を振り絞り、目の前で余裕の表情を浮かべるカトレアの首筋に狙いを付け、大きく口を開く。このまま彼女の頸動脈でも食い千切ろうと試みるが、
「諦めが悪いんだよ!!」
ズゥンッ!!
「がはぁっ……!?」
突然、背後から強い衝撃が走り込み、リュウケンの身体が再び地面に叩き付けられる。何とか顔を見上げると、そこには何時の間にか現れたカトレアとは違う黒色のマントで全身を覆う人物が立っていた。
身長は高く、声から察するに男性だろうが、恐ろしい力でリュウケンの肉体を片足のみで抑え付ける。例え、彼が万全の状態だっとしても起き上がる事は難しいかもしれない。
(こいつ……この力、まるで……俺の……?)
巨人族の血が流れているリュウケンですら全く身動きできない「力」恐らくはこの相手も普通の人間ではないのだろう。
「はっ……同族が居るっていうから期待したって言うのによ……この程度かよ」
「あん……ゴウちゃんだめだよ?まだ、この子には用があるんだから」
「その呼び方は辞めてくださいよ……負け犬の事を思い出すんすから」
「ごめんね~……ゴーテンちゃん」
「そっちの方が恥ずかしい……まあいい」
ギシィイイッ……!!
男はリュウケンの背中を踏みつけながら、懐から赤い魔石を取りだす。それを見たカトレアは不思議そうに首を傾げ、リュウケンは目を見開く。
「さてと……あの方からの命令でね。一応はまだ利用価値が在るのなら、惜しみなく使用しろとの事だ」
「そいつは……まさか……!?」
「そうだよ見覚えがあるだろ?安心しろよ、あの腐れ竜に使った物よりはマシな奴だよ」
「て、てめぇらぁああああああああっ!!」
リュウケンは今から自分がされる事に怒り狂い、既に動けない体を必死にもがくが、男は笑い声を上げながら「魔石」を握りしめ、カトレアに貫かれたリュウケンの背中の風穴に向けて差し込む。
「ぐあっ……!?」
次の瞬間、彼の両目が大きく見開かれ、同時に異変が起きる。虚ろな瞳の色が真っ赤に染まり、胸元と背中から噴出していた血液も止まり、瞬時に身体中の血管が浮き上がる。皮膚の色も赤く変色し、筋肉が膨れ上がる。まるでゴンゾウの「鬼人化」を想像させる身体の変化にリノンは目を奪われる。
「――うがぁああああああっ!!」
そして、リュウケンの姿をした化物が立ち上がり、彼はリノンの目の前で死人と化した――
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