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テンペスト騎士団編
盗賊王参戦
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「なるほど……つまり今回の相手はそのハーフエルフ君の敵である可能性が高いと」
「もう!!ハーフエルフ君じゃなくてレノたんだよ!!」
「……そのレノたん?という子はあれかい?先の腐敗竜の一件で英雄の一人かい?」
「はいっ!!レノさんはすごい人なんですよ!!」
「俺の戦友だ」
「なるほどなるほど……」
ポチ子とゴンゾウは突如として現れた2人組、盗賊王「ホノカ」と巫女姫「ヨウカ」に現状で知っている情報を全て伝えると、ホノカは興味深そうにレノの話を聞く。
曰く、英雄に相応しいほどの魔力量を持ち、伝説に謳われた「カラドボルグ」の所有者であり、果てにはつい先ほど30人のエルフをなぎ倒した強者との事。
30人の戦士のエルフを倒したという話を聞いた時点でヨウカは目を輝かせ、ホノカも少し驚いた風に吐息を吐く。一流揃いの森人族の戦士たちをたった1人で倒すというのは、伝説に名を刻む英雄ほどの力と技量を持っていなければ出来ない。
想像以上のレノの実力に感心する中、同時に少しだけ厄介な相手だと判断する。間違いなく、彼はホノカの宿している「転移の聖痕」を狙っている節があり、いずれは闘わなければならない相手かもしれない。
(だが……交渉の余地はあるかな?)
彼が何の目的で聖痕を集めているのかは不明だが、話を聞く限りは器は大きいように思える。ならば話し合いで問題を解決できるかもしれず、そうなると彼の印象を良くするためにも今回の一件を手伝いをするのも一計だが、
「相手が面倒だな……」
「また、あの人かなぁ……」
「わぅん?」
「……?」
2人の口振りにポチ子とゴンゾウが首を傾げるが、ホノカが苦笑し、
「さて……その前にあれをどうにかしないとな」
ゴォオオオオオオオッ……!!
路地裏の目の前で吹き荒れる竜巻を確認し、ホノカは片手に握りしめた「クサナギ」を向ける。現在、ホノカたちの周りにはクサナギを中心に特殊な空間が生み出されており、竜巻から放たれる暴風を寄せ付けていない。
クサナギは暴風を司る聖剣であり、あらゆる風属性の魔法を無効化できる。今現在のように一部の空間に暴風が入り込めないようにすることも出来れば、突風を巻き起こす元凶も断つ事も可能である。ホノカは竜巻に向けてクサナギを大きく振り上げ、
「風を断ち切れ、クサナギ!!」
ブォンッ!!
彼女が軽く剣を振り落した瞬間、
――ビュオォオオオオオッ!!
一瞬にして竜巻に一筋の亀裂が走り、暴風が一気に消散する。同時に竜巻に飲み込まれた無数の瓦礫や人間の死体がゆっくりと下降し、地面に着地した。これで竜巻による被害が抑えられ、その光景を見たポチ子たちは驚愕する。
「す、すごいです……」
「まるで、レノのようだな……」
「さっすがホノカちゃん!!」
「はは、そう驚かないでくれ」
手元に転移魔方陣を展開してクサナギを仕舞い込むと、ホノカはすぐに都市の東門がある方向に視線を向け、確かに感じる「聖痕」の力に眉を顰める。間違いなく、あそこにはリュウケンが待ち構えているのだろう。
「さて……どう対処するかな」
正直に言えば、リュウケンは決して彼女にとっての「強敵」とは成りえない。だが、相性が悪い相手である事は否定できない。
彼の持つ「嵐の聖痕」は非常に厄介であり、あろう事か彼女の「クサナギ」ですら役に立たない。強力な「暴風」を生み出すクサナギだが、相手のリュウケンの聖痕は全て「風属性」を吸収、もしくは受け流す能力を持っており、どれほどの規模の嵐を放出しようと彼に致命傷を与えられない。
ならば他の武具で対処すればいいと思われるが、彼に向けて無数の「槍」や「剣」もしくは「矢」を放ったとしても、彼の身体に纏われた「嵐の障壁」が直接衝突を避ける。どれほどの強力な武器だろうと、他の方向に誘導されてしまっては意味はない。
最も、ホノカの秘匿している武具の中にはリノンの「火炎剣」のように火属性の武器も数多く存在するが、出来る事なら使用は避けたい理由があった。
(出来れば殺したくは無いな……同情するわけではないが、彼もあくまでも利用されているに過ぎない)
仮にリュウケンを殺したとしても、間違いなく新しい「嵐の聖痕」の所持者が現れ、再び彼女の元に訪れるだろう。リュウケンに指示を与えている「センチュリオン」の存在はホノカも知っており、彼女はここ数年の間に何度も「センチュリオン」から暗殺者を送り込まれている(全て返り討ちにしたが)。
(どういう方法かは分からないが、恐らく奴等は聖痕の摘出方法を知っている)
強力な魔法増幅装置である「聖痕」を埋め付ける技術を「センチュリオン」は知っている。そして、リュウケンやアルファ達に埋め込んだように複数の種族に「聖痕」の力を操作させ、その力を研究している節がある。
――以前にアイリィが言っていたように「聖痕」の所持者を殺した場合、世界の何処かで新しい「聖痕」の持ち主が現れ、少なくともセンチュリオンは世界の何処かに存在する「聖痕所持者」を発見する能力を持っている。
ここであの「リュウケン」を殺したところで、新しく生まれた「嵐の聖痕」の所持者をセンチュリオンは発見し、再び手中に収めるだろう。だからこそ、ホノカは無闇にリュウケンを殺せず、出来れば捕獲して監禁したい相手でもある。
「センチュリオンか……ふざけた名前だな」
自分と敵対する組織の名前を口にし、同時に笑みを浮かべる。ここまで表だって行動はしてこなかったが、それでも今回ばかりは無関係であるはずの闘人都市の被害に対し、彼女の我慢の限度を越えていた。
盗賊王と呼ばれる彼女ではあるが、それでも人並みに良識は存在していると自覚しており、決して無闇に人を殺すような真似はしない。だが、今回のリュウケンの行動は明らかに快楽殺人であり、彼女も見過ごすことはできない。
「私達の楽しい観光を邪魔するとは……万死に値するな」
「もう!!ハーフエルフ君じゃなくてレノたんだよ!!」
「……そのレノたん?という子はあれかい?先の腐敗竜の一件で英雄の一人かい?」
「はいっ!!レノさんはすごい人なんですよ!!」
「俺の戦友だ」
「なるほどなるほど……」
ポチ子とゴンゾウは突如として現れた2人組、盗賊王「ホノカ」と巫女姫「ヨウカ」に現状で知っている情報を全て伝えると、ホノカは興味深そうにレノの話を聞く。
曰く、英雄に相応しいほどの魔力量を持ち、伝説に謳われた「カラドボルグ」の所有者であり、果てにはつい先ほど30人のエルフをなぎ倒した強者との事。
30人の戦士のエルフを倒したという話を聞いた時点でヨウカは目を輝かせ、ホノカも少し驚いた風に吐息を吐く。一流揃いの森人族の戦士たちをたった1人で倒すというのは、伝説に名を刻む英雄ほどの力と技量を持っていなければ出来ない。
想像以上のレノの実力に感心する中、同時に少しだけ厄介な相手だと判断する。間違いなく、彼はホノカの宿している「転移の聖痕」を狙っている節があり、いずれは闘わなければならない相手かもしれない。
(だが……交渉の余地はあるかな?)
彼が何の目的で聖痕を集めているのかは不明だが、話を聞く限りは器は大きいように思える。ならば話し合いで問題を解決できるかもしれず、そうなると彼の印象を良くするためにも今回の一件を手伝いをするのも一計だが、
「相手が面倒だな……」
「また、あの人かなぁ……」
「わぅん?」
「……?」
2人の口振りにポチ子とゴンゾウが首を傾げるが、ホノカが苦笑し、
「さて……その前にあれをどうにかしないとな」
ゴォオオオオオオオッ……!!
路地裏の目の前で吹き荒れる竜巻を確認し、ホノカは片手に握りしめた「クサナギ」を向ける。現在、ホノカたちの周りにはクサナギを中心に特殊な空間が生み出されており、竜巻から放たれる暴風を寄せ付けていない。
クサナギは暴風を司る聖剣であり、あらゆる風属性の魔法を無効化できる。今現在のように一部の空間に暴風が入り込めないようにすることも出来れば、突風を巻き起こす元凶も断つ事も可能である。ホノカは竜巻に向けてクサナギを大きく振り上げ、
「風を断ち切れ、クサナギ!!」
ブォンッ!!
彼女が軽く剣を振り落した瞬間、
――ビュオォオオオオオッ!!
一瞬にして竜巻に一筋の亀裂が走り、暴風が一気に消散する。同時に竜巻に飲み込まれた無数の瓦礫や人間の死体がゆっくりと下降し、地面に着地した。これで竜巻による被害が抑えられ、その光景を見たポチ子たちは驚愕する。
「す、すごいです……」
「まるで、レノのようだな……」
「さっすがホノカちゃん!!」
「はは、そう驚かないでくれ」
手元に転移魔方陣を展開してクサナギを仕舞い込むと、ホノカはすぐに都市の東門がある方向に視線を向け、確かに感じる「聖痕」の力に眉を顰める。間違いなく、あそこにはリュウケンが待ち構えているのだろう。
「さて……どう対処するかな」
正直に言えば、リュウケンは決して彼女にとっての「強敵」とは成りえない。だが、相性が悪い相手である事は否定できない。
彼の持つ「嵐の聖痕」は非常に厄介であり、あろう事か彼女の「クサナギ」ですら役に立たない。強力な「暴風」を生み出すクサナギだが、相手のリュウケンの聖痕は全て「風属性」を吸収、もしくは受け流す能力を持っており、どれほどの規模の嵐を放出しようと彼に致命傷を与えられない。
ならば他の武具で対処すればいいと思われるが、彼に向けて無数の「槍」や「剣」もしくは「矢」を放ったとしても、彼の身体に纏われた「嵐の障壁」が直接衝突を避ける。どれほどの強力な武器だろうと、他の方向に誘導されてしまっては意味はない。
最も、ホノカの秘匿している武具の中にはリノンの「火炎剣」のように火属性の武器も数多く存在するが、出来る事なら使用は避けたい理由があった。
(出来れば殺したくは無いな……同情するわけではないが、彼もあくまでも利用されているに過ぎない)
仮にリュウケンを殺したとしても、間違いなく新しい「嵐の聖痕」の所持者が現れ、再び彼女の元に訪れるだろう。リュウケンに指示を与えている「センチュリオン」の存在はホノカも知っており、彼女はここ数年の間に何度も「センチュリオン」から暗殺者を送り込まれている(全て返り討ちにしたが)。
(どういう方法かは分からないが、恐らく奴等は聖痕の摘出方法を知っている)
強力な魔法増幅装置である「聖痕」を埋め付ける技術を「センチュリオン」は知っている。そして、リュウケンやアルファ達に埋め込んだように複数の種族に「聖痕」の力を操作させ、その力を研究している節がある。
――以前にアイリィが言っていたように「聖痕」の所持者を殺した場合、世界の何処かで新しい「聖痕」の持ち主が現れ、少なくともセンチュリオンは世界の何処かに存在する「聖痕所持者」を発見する能力を持っている。
ここであの「リュウケン」を殺したところで、新しく生まれた「嵐の聖痕」の所持者をセンチュリオンは発見し、再び手中に収めるだろう。だからこそ、ホノカは無闇にリュウケンを殺せず、出来れば捕獲して監禁したい相手でもある。
「センチュリオンか……ふざけた名前だな」
自分と敵対する組織の名前を口にし、同時に笑みを浮かべる。ここまで表だって行動はしてこなかったが、それでも今回ばかりは無関係であるはずの闘人都市の被害に対し、彼女の我慢の限度を越えていた。
盗賊王と呼ばれる彼女ではあるが、それでも人並みに良識は存在していると自覚しており、決して無闇に人を殺すような真似はしない。だが、今回のリュウケンの行動は明らかに快楽殺人であり、彼女も見過ごすことはできない。
「私達の楽しい観光を邪魔するとは……万死に値するな」
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