種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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テンペスト騎士団編

囚人との邂逅

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「大丈夫ですかリノンさん!!」
「ああ、私に気にせず移動してくれ!!」


リノンたちは酒場から外を出た瞬間、全員が肉体強化の魔法で身体能力を上昇させ、闘人都市の東門に向けて疾走する。獣人であるポチ子が最も早く、人波を潜り抜けながら器用に走り抜ける。その後方から建物の屋根を移動してリノンが後を追いかけ、ゴンゾウだけは一番後ろで2人の後を追う。巨体であるために無数の人々を避けて走るのは苦手であり、どうしても二人から遅れてしまう。


「ゴンゾウ!!私達は先に行く!!出来るだけ頑張ってくれ!!」
「分かった……!!」
「わふっ!!」


ポチ子は二足歩行から本物の犬のように四足歩行に切り替わり、一気に速度が倍増する。獣人である彼女はこちらの方が動きやすく、一気に駆け抜ける。


「流石だな……私も」


リノンは懐から白い魔石を取り出し、テンペスト騎士団の副団長だけに許される貴重な魔法を使用する事を決める。


「スカイ!!」


バキィイイッ!!


魔石を握り潰した途端、リノンの身体に「風」の魔力が送り込まれ、彼女の身体が浮き上がる。この魔法は勇者が扱う魔法であり、彼等の協力で精製した魔石であり、一時的にリノンの身体に竜巻を纏う。

そのまま身にまとう竜巻によって彼女の身体が浮かび上がり、リノンの意思で自由自在に身体が移動できる。だが、貴重な魔石のため、さらには発動時間も低い。


「金貨50枚分……無駄にならないことを祈ろう」


ゴォオオオオッ――!!


まるで背中に羽根が生えたような感覚に襲われ、リノンは建物の上空を飛行しながら東門に向かう。すぐにも地上で移動するポチ子の姿を追い越し、彼女より先に東門に移動する。速度は時速100キロほどではあるが、彼女の身体には微量に風の障壁が纏われているため、特に息苦しさは無い。それでも発動時間は非常に短く、どんどんと高度と速度が落ちていく。


「間に合ったか……」


前方に見える都市の城門を確認し、魔法の効果が切れる寸前で目的地に辿り着けたことに安堵し、リノンはゆっくりと地面に着地する。もう移動用の魔石の予備も少なく、出来ればポチ子とゴンゾウが到着するまでは戦闘を避けたいが、


「……これは……」



――目の前の光景にリノンは顔を歪ませる。そこには粉々に砕かれた門の扉らしき木片と、無数に倒れる人々の姿に。



「ううっ……!!」
「助けっ……!?」
「いてぇっ……いてぇえよぉおおおっ……!!」
「お母さん……何処ぉ……?」


地面にはこの都市の住民達が何百人も倒れており、警備兵やテンペスト騎士団の団員の姿もあれば、一般人も含まれている。その中には子供の姿もあり、すぐに救助を行わなければ危険な状態の者も存在する。リノンは周囲を見渡し、敵の姿に気を付けながら治療用の回復薬を持っていなかったか確認しようとした時、


「――よおっ……お嬢ちゃん?」
「っ……!?」


唐突に後方から不気味な男の声音が聞こえ、すぐに振り向くとそこには何時の間にか接近していた「囚人服」を纏った大柄な男の姿があり、彼女は距離を取る。男は特に何も行わず、面白そうにリノンに笑みを浮かべながら観察を行い、そんな彼に異様な不快感を抱きながらも、


(……こいつは……間違いない)


リノンの記憶通りならば、目の前の男はバルトロス王国指定の第一級の犯罪者であり、剣乱武闘の際に王国側のある貴族が放浪島から彼を買収し、大会に出場するように強要したらしいが、それに反抗して、あろう事かたった1人で貴族とその護衛兵を皆殺しにして王国の領土から脱走した囚人で間違いない。


――名前は「リュウケン」彼が犯した犯罪は二つ「殺人」と「器物破損」生まれながらに人間でありながら驚異的な腕力を誇り、最初に殺人を犯したのは「11歳」の時と言われている。彼は自分を追跡する兵士たちを惨殺し、そこから様々な監獄に送られては問題を起こし、遂には放浪島に収監された。


捕まる前からリュウケンの危険性は王国側も危惧しており、彼が最初の殺人を犯してからすぐに全領土に指名手配を行うが、彼はそれでも逃げ延び続け、闇ギルドを通して流れ者の傭兵として身分を偽り、各地の戦場を渡り歩いて功績を上げ、王国の兵士に入隊したが、上官の命令を無視して投降した敵兵を皆殺しにした事から収監される事になった。。

その後は放浪島に収監されていたが、剣乱武闘の時期に自分を買収した王国の貴族である「ハナムラ侯爵」を裏切り、そのまま彼等を殺戮して今に至るまで王国側の追跡から逃れ続けた男だ。


「……リュウケンか……」
「はっ……俺の事を知っているんだな?なら、あとは分かるな」


ドオオンッ!!


リュウケンは両拳を叩き付けた動作だけで、轟音が周囲一帯に響き渡る。恐るべき腕力であり、とても人間とは思えない。

彼は純粋な「肉体強化」の魔術だけで戦場を生き残り、その腕力は巨人族すら上回る。現に彼を捕まえるために協力を仰いだ巨人族が複数殺害され、当時は王国最強の騎士団であるストームナイツ騎士団が数十人を犠牲を生み出しながらも何とか捕獲したほどだ。


「……テンペスト騎士団副団長リノンだ。大人しく投稿すれば、怪我はさせない」
「はっ……噂には聞いていたが、こんな小娘が副団長とはな……笑わせるぜ」
「……どうやら交渉決裂のようだな」


リノンは剣を引き抜き、リュウケンはボクサーのようにフットワークを行いながら、拳を構える。
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