種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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テンペスト騎士団編

退却

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「……参ったな」
「参りました……」
「参った……」
「……参った?」


森から大きく離れた場所で野営を行うレノ、ポチ子、ゴンゾウは深い溜息を吐き出し、コトミは首を傾げる。あれから何度も森の中に挑み、目的地に向けて進んでいたのだが、その度に侵入者排除用の魔水晶によって強制的に森の出入口にまで引き戻される。

どうやら森の中の至る所に魔水晶が仕込まれているらしく、どの場所を進んでも結界が発動して隔離され、レノがその度に地中に隠れる魔水晶を破壊し、最初の場所に戻る事を何度も繰り返す。

コトミに留守番を願い、レノ達は森の中に進んで魔水晶を破壊すると、彼女の目には唐突に3人が転移したように森の出入口に姿を現したという。魔水晶を破壊しないと結界に閉じ込められ、無数の蔓が襲われるが、その大本である魔水晶を破壊してしまえば強制的に森の外にまで転移される。

ならば森の中の魔水晶を全てを破壊して進めばいいのかと思ったが、何十回も挑んで相当数の魔水晶を破壊したが、幾ら壊してもレノ達はある程度の距離にまで進むだけで新たな魔水晶が出現し、最初の場所にも戻される。このままではレノ達の方の魔力と体力が尽きてしまい、結局一度引き返すしかなかった。


「いっその事、空でも飛べればな……」
「あの……コトミさんは飛行魔法とかは……」
「……無理、あれは最高位の魔導士にしか使えない」
「……聖天魔導士か」


聖天魔導士というと「ミキ」の顔が思い浮かぶが、彼女がここに居れば何とかできたのだろうかと考えてしまうが、既に彼女がこの世にいない以上は考えても仕方がない。

今はどうやって先に進むのかを模索しなければならないが、森の中を何度移動しても魔水晶の罠に引っ掛かり、先に進める方法があるとすればやはり空の上を飛行する事ぐらいしか思いつかない。


「……待てよ、退魔武装なら魔法を弾くから……結界にも」
「……それも無理、退魔武装はあくまでも魔法に対して強い耐性を得るだけ……結界のような空間そのものを閉鎖する魔法は防げない」
「そうか……」
「わふっ……お腹すきました……」


ぐぅ~……


ポチ子のお腹から可愛らしい音がなり、続けてゴンゾウ達の腹部にも空腹の音が鳴る。よくよく考えれば朝食しか食事を取っていない。仕方なく、レノは馬車に積み込んだ食料品を手に取り、今夜はここで過ごすことにする。見張り番はレノが行い、交代制でゴンゾウとポチ子と2時間交代で行う事にする。

ちなみにコトミは何時の間にか馬車の隅で持参した毛布に包まり、まるで猫のように体を丸めて眠っていたため、見張り役は任せられなかった。




――翌日、レノはゴンゾウと後退して仮眠を取り、目を覚ますと何時の間にか馬車の中でポチ子とコトミが抱き付かれていた。、


「んっ……レノ、は……守る」
「くぅんっ……レノ、さん……」
「ちょっ……」


むにむに……


2人の柔らかな肉体が遠慮なく押し付けられ、レノは慌てて離れようとするが、流石にどちらも武人のため、力は強い。


「レノ……」
「レノさぁん……」
「むぐぐっ……」


むにゅううぅっ……


コトミのメロンを思わせる双乳が顔に押し付けられ、ポチ子のたわわに実った果実を想像させる胸元が背中に押し付けられる。男ならば血の涙を流すほどに羨ましい状況だが、幼少時に半分はビルドから「女」として育てられているため、この状況でもあまり性欲は沸き立たない。


「柔らかい……」
「ぁんっ……」


ぐにぃいいいっ……


顔に押し付けられるコトミの胸を鷲摑み、その感触と暖かさに揉みしだく。彼女は現在、黒いスーツの様な物を羽織っているだけで下着の類は着けていない。

普段はビキニアーマーを思わせる装備だが、元からブラジャーの類は着けていない可能性もある。ふにふにと揉みながら、一体どんな素材で出来ているのか気になる。ただの布ではなく、触り心地も滑々としていて心地よい。


「やんっ……んんっ……」
「……起きないな」


両手で胸を弄り回すが、コトミは起きる様子は無く、レノは仕方なく彼女を押しのけると腰に巻き付いたポチ子に視線を向ける。


「あむあむっ……」
「あたたたっ……噛むなっ!」
「わうっ!?」


寝ぼけて耳に噛みつく(冗談抜きで人間とは比べ物にならない咬筋力なので、下手をしたら千切れる)ポチ子に手刀を繰り出すが、それでも眠りは深いのかポチ子はレノの背中を離れて寝転がる。

馬車の中ですやすやと熟睡する2人を見下ろし、レノは外で見張り役を行っているはずのゴンゾウを確認するため、馬車の中から顔を出すと、



「――ふんっ!!」



ブォンッ!!ブォンッ!!



外では上半身裸になったゴンゾウが棍棒を振り回す姿が見え、どうやら鍛錬の真っ最中のようだ。人間離れした巨体が鋼鉄製の棍棒を振り回す姿は、まるで神話に出てくるヘラクレスを想像させる。


「せいっ!!」


ドオオンッ!!


空中に衝撃が生まれるほどに力強く振り落とし、恐らくは「肉体強化」を施さずに純粋な腕力だけで振っているのだろう。彼は並の巨人族よりも力強く、足も速い(巨人族の中では比較的に)。
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