種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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テンペスト騎士団編

遊戯の延長線上

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「――どういう事だ貴様!!」
「ひいっ!?」


数分後、会場内にいた無数の種族が郷田を取り囲み、その誰もが憤怒の表情を浮かべて、武器を取り上げられた郷田はびくびくと震えるしかない。既に先ほどまでの傲慢な態度は取れず、自分がこれからどうなるのかと怯えていた。

彼の話を聞き終えた会場の人間達は、そのあまりにも身勝手な話に顔を赤くし、郷田を睨み付ける。既にそこには「勇者」である彼を敬う気持ちなど微塵も存在せず、むしろ侮辱の視線を向けていた。



――それほどまでに郷田が語る話は余りにも身勝手で酷く、自分勝手な言い分であり、彼を含めた全ての「勇者」は腐敗竜がこの大陸で復活する事を事前に知っていたという。さらに言えば腐敗竜以上の化け物が今後も同じように大陸内で目覚める事も予想されるらしい。



郷田曰く、腐敗竜の復活は彼が知っている現実世界の「SMW2」というオンラインゲームの中では一番最初の「イベント」であり、ゲームの中ではプレイヤーが結託して倒す存在だった。

腐敗竜一番最初に出現する「ボス」であり、討伐レベルは120ほどのプレイヤーが数十人単位で倒せるとの事。また、このイベントにはプレイヤーが最初に訪れる都市の防衛がメインであり、時間制限の戦闘で打ち倒さなければならないらしい。

腐敗竜は最初の内は倒しても何度も復活する厄介な敵ではあるが、高レベルプレイヤーにとってはそれほど驚異の相手ではなく、弱点の「聖属性」の武器を使用すれば効果的に倒せる(但し、ソロで糸む場合は最低でもレベル200は必要)。

だが、時期的には随分と遅く復活した事もあり、勇者たちは腐敗竜の存在、さらに言えばどの地域で何処に復活するのかを正確に知りながらもこの世界の人間には知らせなかった。

腐敗竜はMSW2というオンラインゲームの中ではイベント戦の最初の敵であり、今後は「第二の封印」と呼ばれる封印が解かれ、時期的には腐敗竜復活から約一か月後の「闘人都市」の近くに存在する神殿からゴブリンキングと呼ばれる魔物が復活するらしい。

腐敗竜と比べればゴブリンキングは非常に難度が低く、ボス自体はレベル90台のプレイヤーが数人がかりで倒せる。だが、今回の相手は無数のゴブリンを引き攣れるため、大勢のプレイヤーによる「集団戦」が必須となる。

他にも「第三の封印」が解放されることで目覚める「デーモンロード」さらには「第四の封印」が解かれると生み出される「漆黒の巨人」などが存在し、他にも様々なイベントはあるらしいが、少なくとも郷田が詳しく知っているのはその四大イベントだけであり、どれも討伐を成功させればレア素材が入手可能らしく、装備も十分に整うらしいが、彼等はこの世界の住人をただのNPCとしか考えていないため、知らせる必要はないと勝手に判断して黙っていた。



「貴様ら!!それほどの情報を知りながら、何故、今の今まで黙っていた!!」
「わ、我々は何も知らされていません!!」
「ほ、本当です!!」
「お、お前ら……!?」


ダンゾウに一括され、郷田の取り巻き達は震え上がる。彼等の反応に裏切られたような表情を浮かべるが、郷田を同情する者は皆無だ。

事前に勇者たちが腐敗竜の存在を報告していれば大勢の被害が出る前に周辺地域の人間達を避難させ、万全の準備が整えたはず。少なくともあの村にいた数百人の村人や、送り込んだ兵士たち数千人が死亡する事を免れたはず。

どうして勇者たちが腐敗竜の存在を知らせなかったことを問い質すと、郷田は言い訳するように腐敗竜の正確な復活の時期は分からず、勇者召喚されて三年近く経ったにも関わらずに復活の予兆が無かったため、報告したところで意味は無いと勝手に判断したとの事。

それでも「腐敗竜」の封印されている土地を事前に伝えていれば、少なくとも封印系統の魔法に詳しい専門家を送り込むことで封印の強化などもを試える事も出来たが、今となっては後の祭りである。


「ふ、腐敗竜イベントは必要な事なんだよ!!あいつが復活しないと、レアアイテムが手に入らないんだよ!!」
「黙れ!!この屑が!!」
「さいって~」
「ぐへっ!?」


ドゴォンッ!!


逆切れしたように郷田が周囲の人間に怒鳴り散らすと、ダンゾウがその巨大な拳で彼の頭を小突く。5,6メートルはある巨人に殴られ、そのまま彼は地面に顔をめり込ませる。流石に腐っても勇者のため、並の人間では今の一撃で即死だろうが、ぴくぴくと動いているため死んではいない。


「こんな奴等が召喚されたというのか……下種が」
「ねえねえ、バルトロス国王さん。この人たち本当に勇者なの?ただの俗物にしか思えないけど~」
「……全ての勇者が彼と同じではない。中には我々のために命がけで尽くしている者もいる」
「その勇者も腐敗竜の事に関しては伝えていないようだけどね」


渋い顔でバルトロス国王は応えるが、倒れ込んだ勇者である郷田に視線が集まり、あまり彼等に期待出来ない。

レノは彼の装備を見やり、自分だけが身の丈に合っていない豪勢な防具を付けているが、他の取り巻き達は随分とみすぼらしい。さらには誰もが気絶してしまった郷田に対して安堵した表情で見つめるだけで誰も心配していない所を見ると、人望も無かったようだ。


「……それで、これからどうする気だい?この男を締め上げて全ての情報を吐かせるのか?」
「いや、勇者を相手にそのような事は……」
「全く……何時まで彼等に対して遠慮する気だい?さっきの話は聞いただろう、彼らは自分たちが楽しむために世界を救っているんだ。行ってみればただのお遊戯の延長線なんだよ」


ホノカの言葉に誰もが否定できず、深いため息が漏れた。
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