種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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テンペスト騎士団編

これからの選択肢

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「レノ……君の言いたいことは分かった。だが、どうにも僕は納得ができない。本当に君は聖剣に認められたのか?」
「……そんなに聖剣が欲しいのか?」
「違う!!そうじゃない……そうじゃないんだ……」


彼はどう答えたらいいのか分からず、頭を悩ませる。正直に自分の考え抱く「願望」を口にする事は出来るはずがなく、しばらくの間、2人の間に沈黙が訪れる。


「……すまない……頭を冷やしてくる」


アルトはそれだけを告げると、そのままレノの前から立ち去る。そんな彼の後姿を見送り、溜息を吐く。彼が一体何を求めているのかは分からないが、


「……渡せるか……」


この「カラドボルグ」が消え去った「アイリィ」との唯一の繋がりなのだ。彼女が消え去った以上、この聖剣だけが手掛かりなのだ。地下二階層にあの「ダークエルフ」が現れたのは間違いなく、そしてアイリィが消えたのはあの女に関わりがある事は間違いない。



――ダークエルフを倒すためにも、そしてアイリィと約束した他の聖痕を回収するためにも、何よりも「センチュリオン」に対抗するためにも「カラドボルグ」の力は必要なのだ。



「……つうっ……」


ビキィッ……!


右腕に痛みが走り、レノは腕を抑える。カラドボルグをこの短期間で2回も使用した影響であり、前回は完全な発現まではしなかったが、腐敗竜を打ち倒すために「金色の雷」を使用したせいで未だに右腕に若干の痺れがある。

「反魔紋」の雷に対し、カラドボルグの「雷光」は比較にならないほどの力を秘めている。聖剣(カラドボルグ)の雷は破壊力に特化しており、アイリィから地下迷宮に突入する前に延々とカラドボルグの自慢を聞いているので、どのような能力をなのかはよく知っている。


――カラドボルグは全ての聖剣の中で最も「破壊力」に特化しており、クサナギやアイギスなどにも匹敵する聖遺物であり、世界中に眠る全ての武具系の聖遺物の中でも三本指に入るほどの魔力を秘めている。


そんなカラドボルグを所有しながらも、アイリィはあのダークエルフに勝利できなかった。確かに甲冑の騎士との戦闘でアイリィ自身も相当に疲労していただろうが、それでも複数の聖痕を持つ彼女でさえもダークエルフに勝利できなかった事実に変わりはない。


「……どれだけ遠いんだか」


自分とあのダークエルフの差がどれほどあるのかさえも分からない。だが、今の時点では彼女に勝てない事だけは確かであり、カラドボルグの力を完全に使いこなせたとしてもダークエルフの女に勝てる保証は無い。あの地下迷宮にダークエルフが侵入したのは間違いなく、そして目的を終えて迷宮から脱出した痕跡だけが残されていた。


「魔法か……」


今の今までよく考えていなかったが、自分が扱う魔法はどうも「嵐」と「雷」に偏っている。別にその事に関しては大きな問題は無いが、一応はレノは試しに他の属性の魔法を試したことがある。反魔紋の影響もあり、無詠唱魔法にだけ専念して生きてきたが、アイリィのお蔭で反魔紋が解除された以上、他の魔法を問題なく使えるはずである。

今までは「嵐」と「雷」だけに集中してきたが、他の「水属性」や「火属性」もしくは「無属性」も扱えるかもしれな。地下迷宮内では魔法に関する書物も無いため、結局「嵐」と「雷」だけを磨き続けてきたが、今後の事を考えて試す価値はある。


「このままの戦法を続けるか……それとも」


ハーフエルフという身分は知れ渡ってしまったが、バルトロス王国から「S級冒険者」の資格は貰っている。これを見せればあらゆる冒険者ギルドに問題なく入れるし、さらにバルトロス王国の領土内なら自由に移動できる。

ちなみにバルトロス13世と直接対峙した際、アルトの父親(実際の親子関係ではないが)とは思えないほどに豪快な性格であり、彼がハーフエルフと知っても特に態度は変えず、好感の持てる人物だった。


「はっはっはっ!!飲め飲め!!今宵は王国の酒樽を空にするぞ!!」
「あははははっ!!人間の王様、太っ腹~!!」


現在、バルトロス国王は何時の間にか参加していた人魚族の姫君であるアクアと共に騒いでいる。彼女は金魚鉢の容器に身を任せており、空中に浮いている。どういう原理かは不明だが、恐らくは風属性の魔法で動かしているのだろう。

レノは他の方向に視線を向け、ゴンゾウの前に巨人族の中でも巨大な男が歩み寄るのを確認し、すぐに巨人族の王のダンゾウである事が分かる。あまり世情に疎いレノでも名前は聞いており、恐らく今回の戦闘で活躍したゴンゾウを褒め称えようとしているのだろうが、それにしては雰囲気が可笑しかった。


「「…………」」


2人は黙って見つめ合い、周囲の者たちも何事かと視線を向けてくる。やがて、ゆっくりとダンゾウが口を開き、



「――久しぶりだな……息子よ」



一瞬、彼が何を言っているのか理解できなかった。だが、確かに彼はゴンゾウに向けて「息子」と言ったのだ。

すぐにパーティー会場に沈黙が訪れる。特にリノンたちは驚きを隠せず、明らかに動揺していた。長年の付き合いである彼女達さえも知らなかったらしい。まさか巨人族の王である「ダンゾウ」の息子がゴンゾウだったとは誰もが思いもしなかったが、



「……俺の父親は1人だ。お前じゃない」



それだけを告げると、ゴンゾウはその場を立ち上がり、ダンゾウに背を向けて会場を後にした。
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