種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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腐敗竜編

皆の力

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「……本気かい?下手をしたら、私達全員が死んじまうよ」
「ですが……このままでは間に合いません。身勝手な願いだとは分かっていますが、お願いします……!!」
「……なるほどね」


ジャンヌが提案割いた作戦を聞き終え、テンは冷や汗を流す一方、レノは頷く。彼女の語る作戦ならばもしかしたら腐敗竜も卵も同時に破壊できる可能性は高い。偶然にも、奴が現在空中に浮揚している場所の真下には破壊を免れた卵が存在する。

彼女の作戦は至ってシンプルであり、ジャンヌが所持していたマナ・ポーションで魔力を回復し、限界まで耐えてレーヴァティンの炎を刃に発現させる。次に「風盾」を解除したレノが嵐の魔力を先ほどのようにジャンヌの刀身に賭け巡らせ、最大火力で上空に浮かぶ腐敗竜を撃ち落とす。テンは2人の身体が吹き飛ばされないように支え、三人の力を合わせた作戦だった。

当然、失敗すれば全員が無数の「骨の槍」によって身体を貫かれ、死んでしまうだろう。運良く生き残ったとしても、腐敗竜に殺されるのは時間の問題だろうが、他に良案は無い。


「だけどさ……魔力を回復させると言っても、あんたも相当に無理してるんだろう?身体が持つのかい?」
「……私の心配は不要です。この戦いに負ければ、大勢の犠牲者が生まれます」
「はっ……いいよ、ここまで来たら死ぬのも生きるのもあんたらに任せるよ」


テンは何とか起き上がり、ジャンヌの後ろに移動して背中を支える。ジャンヌを上手く支えなければ聖剣が放出する「爆炎」の衝撃に耐え切れず、他に問題があるとすればレノの「風盾」を解除した瞬間、無数の「骨の槍」が彼等に降り注ぎ、どれだけの被害が生まれるのかだ。

既に周囲は骨の槍に覆われ、ワルキューレたちを多い囲む「風盾」にも限界がきている。流石にこれだけの規模の風の障壁を発現し続けるのはレノでもかなり負担だった。


「……その作戦、私達にも手伝わせてくれ……」
「うすっ……」
「くぅんっ……」
「えっ……?」


すぐ傍から声を掛けられ、三人は振り返るとそこには気絶していたはずのリノンたちが起き上がる姿があり、全員が疲労困憊の様子だが何とか立ち上がる。そして武器を握りしめ、レノ達の元に集う。


「俺……槍から皆を守る」
「私の魔力も使ってくれ……役に立つかは分からないが」
「わふっ……私も手伝います」


ゴンゾウは棍棒を握りしめ、リノンとポチ子はジャンヌの身体に手をやり、残された魔力を彼女に送り込む。流石にレノほどの魔力供給の技術は無いが、それでも確かにジャンヌの身体に2人の魔力が微量ながらに送り込まれる。最後に全員が顔を見合わせ、何故かこんな状況にも関わらずに笑みが浮かぶ。


「……合図はそっちに任せる」
「分かりました……あと少しだけ待ってください」
「ちゃんと支えてやるから、安心しな!!」
「わぅんっ!私も足を支えます!!」
「なら、私はレノを支えよう」
「俺、頑張る!!」


全員が一か所に集まり、ジャンヌの握りしめるレーヴァティンの刀身に真紅の炎が灯る。徐々に炎は規模を増していき、数十秒後、遂に完全に刃を覆い隠すほどの炎が蓄積された。だが、流石に「風盾」を放出することにも限界が近く、レノの身体には汗が滴り落ちる。そんな彼をリノンが後ろから支え、頃合を見計らって頷く。

ポチ子とテンはジャンヌがレーヴァティンの砲撃に吹き飛ばされない様にしっかりと支えて準備を整え、ゴンゾウだけは「風盾」が解除された瞬間に降りかかる骨の槍に備えて棍棒を構える。



「――今です!!」



ジャンヌの声が響き渡り、レノは右の掌から展開する「風盾」を解除する。その瞬間、複数の骨の槍が彼らの元に降りかかり、


「ふんっ!!」


ブォンッ!!


ゴンゾウが棍棒を振り上げ、


ガキィイイン!!ドォオンッ!!


骨の槍を側面から弾き飛ばし、倒れ込んだワルキューレたちに当たらない様に気を付けながら、全力で守り続ける。その間にもジャンヌは刀身を空中に居る腐敗竜に向けて構え、テンとポチ子が彼女の身体を支えると、レノが右手に嵐属性の魔力の球体を形成させ、刃に翳す。



「「はぁああああああああっ!!」」



――ズドォオオオオオオオンッ!!




2人の声が合わさり、レノの嵐の魔力がを刀身に触れた瞬間、凄まじい「熱線」が空中に浮かぶ腐敗竜に向けて放たれる。



「グァアアアッ……!?」



すぐに異変に気が付いたドラゴンゾンビは回転を中止し、すぐに回避行動を取ろうとしたが、


「右下に修正!!」
「「はい!!」」


刀身に「嵐」を捧げながらレノはジャンヌに指示を与え、全員が瞬時に身体を動かし、刀身から放たれる熱線の方向を変化させる。



ズガァアアアアアンッ!!



「ギィアァアアアアアアアッ!?」



遂にドラゴンゾンビの身体に直撃し、身体全体が真紅の炎で覆われる。そして、そのまま巨体が地面に落下を開始し、



――ドゴォオオオオオオンッ!!



見事に卵がある地点に落下し、そのまま残りの卵を覆う「氷壁」を破壊し、大多数の卵が決壊した。


「ガァアアアアアッ……!!」


しかし、腐敗竜は身体に熱線を浴びせられながらも、背中を向けて堪える。流石に「伝説級」の魔物であり、砲撃が弱まるまで耐えるつもりだ。だが、ジャンヌたちにとってはここで終わらせなければ後は無く、全員が身体を寄り添う。


「くくっ……!!」
「わぅうっ……!!」
「うっ……!!」


ゴォオオオオオッ……!!


刀身から熱線を放ち続けながら、ジャンヌたちは衝撃で吹き飛ばされない様に支え合う。一方で刀身の炎に「嵐」を送り続けるレノも、リノンに支えられながら、


むにぃいいっ……


「……リノン、ブラぐらいしなよ」
「こ、こんな状況で何を言ってるんだ……!?(赤面)」


布越しに彼女の胸を背中に押し当てられながら、レノは腐敗竜の存在を確認する。苦しんでいる様子は分かるが、それでも倒す前にジャンヌの魔力が尽きてしまう。
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