種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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腐敗竜編

爆破後

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村を覆う黒煙が薄まり、焦土と化した村が姿を現す。レーヴァティンの「浄化の炎」と腐敗竜の「黒炎」が交わり、凄まじい爆炎と衝撃によって村を跡形も無く破壊したのだ。


「くっ……!!」
「ううっ……!!」
「……何とか持ちこたえたな」


村の中央部には倒れ込んだワルキューレ騎士団とリノンたちの姿があり、レノだけが片膝を着いて耐え切った。

先ほどの爆炎が辺りを覆う瞬間、咄嗟にリノンたちはワルキューレ達が盾になったのだ。ワルキューレの「退魔武装」の加護のお蔭で強い魔法耐性を誇るが、レノ達が真面に喰らっていた場合は死は免れなかっただろう。


「この腐れドラゴン……うぐっ……」
「こ、これが……伝説の魔物……」


だが、退魔武装の加護を得ているワルキューレ騎士団のほとんどが先ほどの爆炎の衝撃で気絶しており、魔法耐性を越えた強力な攻撃に大多数が戦闘不能の状態に陥る。今の攻撃で死傷者が出なかったことが奇跡に近い。その中でもレノとジャンヌは比較的に軽傷であり、レーヴァティンのお蔭で身を守られたが、



「グォオオオオオオッ……!!」



黒煙の中から腐敗竜の巨体が姿を現し、あの至近距離から爆炎を受けたにも関わらず、その身体には火傷すら負っていない。外見に反して非常に頑丈な皮膚なのか、それとも何らかの仕掛けがあるのかは不明だが、状況は最悪と言える。

戦力となるはずのワルキューレ騎士団の大部分は完全に気絶しており、生きている事は確かだが助勢は期待できない。何とか意識が残っていたテンだけが悪態を吐けるが、戦闘に参加できそうではない。


「……文字通り、腐っても伝説に名を刻んだ竜ですね……」
「……平気か?」
「大丈夫、とは言えませんね……」


レノの傍でレーヴァティンを構えるジャンヌの顔色は悪く、当然と言えば当然の事だろう。先ほどから伝説級の聖剣を何度も使用し、それ相応の疲労も蓄積されている。一方で、レノは腐敗竜の様子を確認し、すぐに巨体の傍にある無数の卵に視線をやる。不思議なことに先ほど生じた爆炎に飲み込まれたように見えたが、卵自体は無傷だった。

全ての卵の殻には罅すら入っておらず、心なしか揺れ動いているようにも見える。まもなく完全な孵化を迎えようとしているのだろうが、気になるのはどうやってワルキューレの退魔武装でも完全に防ぎきれない先ほどの爆炎を受けて平気なのか。


(……あれは氷か?)


注意深く観察すると、卵の一つ一つに薄いドーム状に覆われた透明な膜のような確認され、表面には水滴が流れているため、非常に透明度が高い「氷壁」が覆われている事に気が付く。あの爆炎も防ぐ辺り、どうやら魔法で形成された氷なのだろう。


「グァアアアアアアアッ!!」


ビュオォオオオオッ……!!


「二撃目……!?」


再度、腐敗竜が大きく口を開き、黒色の球体を形成する。今度こそ目の前のレノ達を一掃する気であり、ジャンヌはすぐにレーヴァティンを発動させようとするが、度重なる使用で身体が思うように動けない。、


「閉じてろ!!」


ドガァアアアアアンッ!!


「グボォオオオッ……!?」
「えっ!?」



――だが、何時の間にか腐敗竜の顎下に接近していたレノが、そのまま大きく足を蹴りあげて力ずくで腐敗竜の口を閉じる。純粋な肉体強化だけで小さな山を思わせる巨体の口を塞ぐなど、相当な脚力だ。



ボフンッ!!


腐敗竜の鼻と口から黒い煙が吹き出し、どうやら口内で爆発したらしい。最も、腐敗竜は顔を歪めるだけで致命的な損傷を与えた様子は見えない。


「ガァアアアアッ!!」
「危なっ……!?」


ブオッ!!


腐敗竜は右腕を振り上げ、そのまま横方向からレノを殴り飛ばそうとしたが、慌ててジャンヌが飛び出そうとした瞬間、



ダァアンッ!!



勢いよく地面を踏み込む音が響き渡り、それは最早爆音という表現が相応しい。そして、レノは自分の身体を引き裂くであろう腐敗竜の巨大な右腕の掌に対し、足の裏、膝、股関節、腹部、胸、肩、肘、腕、拳といった順番で全身を「回転」させながら左拳を振り上げ、


「撃雷っ!!」


バチィイイイイッ!!


左腕全体に螺旋状の「風雷」を形成し、小規模の竜巻と電流を迸らせ、向い来る腐敗竜の爪先に撃ち放つ。



ズドォオオオオンッ!!



「グギィイイイイイイッ!?」



腐敗竜の悲鳴が響き渡り、そのまま左腕は吹き飛ばされ、巨体も同時に卵がある方向に傾き、



ズズゥウウウンッッ!!



倒れかかった腐敗竜の肉体が卵を踏みつぶし、半数が無残に押し潰される。いくら「氷壁」で外部からの攻撃に備えていようと、流石に腐敗竜の体重までは耐え切れなかったらしい。強い魔法耐性は誇っても、もしかしたら物理的な攻撃には弱いのかもしれない。


「すごい……!!」
「本当の化け物だね……!!あいつなら、マジで魔王級のガキを生みそうだよ……」


ジャンヌとテンはその光景に目を見開き、一体、目の前の少年がどれほどの実力者なのかが気にかかる。
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