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腐敗竜編
剛腕のテン
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「ま、そんな事より本題に入ろうか……」
テンはレノの方に顔を向け、すぐに目つきを変える。先ほどまでの陽気な雰囲気が一変し、一流の戦士として変貌する。すぐにリノン達はが驚いた表情を浮かべるが、他のワルキューレの女騎士達は承知済みなのか、取り乱すことは無い。
「あんた……ハーフエルフだね」
「えっ!?」
「わうっ!?」
「っ……!!」
テンの言葉に3人が驚愕し、すぐにゴンゾウはレノを守るように前に立つ。聖導教会にとって、「ハーフエルフ」とは「第二の魔王」になる可能性がある存在であり、どのような理由だろうと断罪する義務を持ち合わせている。
トウキョウでは巫女姫のヨウカの頼みもあり、雷天のゴウを討伐した功績もあって見逃されたが、本来はハーフエルフであるレノは聖導教会にとっては危険極まりない存在扱いされている。レノは内心舌打ちし、迂闊にジャンヌ達と共に行動したことを反省する。
別れ際のアルトの言葉に無視できず、付いてきたのが仇になったのかと考え、一か八か命乞いでもしてみるべきかと考えると、テン総団長は朗らかな笑みを浮かべながら首を振り、
「ああ……安心しな、別に取って食うつもりはないよ。ミキさんからあんたの事を聞いてるからね」
「ミキから?」
「……その反応、どうやら本当にあの人が言っていた子のようだね」
テンは背中に掲げた白塗りの大剣を握りしめ、すぐにリノンたちがレノを守るために前に出ると、
「ガキは下がってな!!」
「うっ……!?」
「わぅんっ……!?」
「ぐっ……!?」
彼女が一括しただけで空気が震え、リノン達は怯む。だが、3人も退く気は無いのか柄に手を伸ばし、周囲のワルキューレたちも臨戦態勢に入る。
「いいよ皆……退いて」
「だ、だが……」
「き、危険ですよ……」
「レノ……」
一触即発の空気の中、レノは特に緊張した様子も無く3人を後ろに下がらせると、テンの前に立つ。そんな彼の反応にテンは笑みを浮かべ、やはりミキから聞いていた話通りの人物だと納得する。
「いい度胸だね……それとも馬鹿なのかい?」
「あんたよりはマシだよ」
「はっ!!言うじゃないかい!!気に入ったよ!!」
豪快に笑いながらも、大剣を抜き取り、レノに向けて刃を構え、
「来な……本当にミキが認めたほどの男か確かめさせてもらうよ」
「どんな理由だ……まあ、別にいいよ」
「レノ!?」
「あ、相手は剛腕のテンさんですよ!!」
「……頑張れ!!」
訓練場にある大理石で作り出された闘技場に案内され、以前にも地下迷宮で騎士の「死人」同士が闘っていたものと似ている事に気付く。特に関連性はないのだろうが、テンは大剣を構え、レノは無手で大理石に登ると、彼女は訝し気な視線を向け、
「あんた……武道家だったのかい?」
「いや、武器はあるよ」
ジャラララッ!!
「「うわぁっ!?」」
左腕を形成する黒衣から「銀の鎖」を取りだすと、周囲に居た女騎士達が驚愕の声を上げ、テンは感心した風に頷く。
「へえ……左腕に隠し武器かい……まるで暗殺者だね」
「暗殺はやったことはないかな……」
「……その言い分だと、他の悪事には手を染めているように聞こえるね」
「ご飯のつまみ食いぐらいかな……」
「それは私も毎日やってるから責められないね」
一時期は盗賊として生きてきたため、悪事を行っていないのかと問われれば否定はしにくいが、直接的に人殺しのような犯罪を犯したことは無い。レノは左腕に「銀の鎖」を巻き付かせ、以前に鎖の腕を生み出す。聖爪(ネイルリング)が健在ならば掌の部分も構成できるが、ジャンヌに渡したため、存在しない。
「さぁて……本当にミキさんが語るほどの人物かどうか、確かめさせてもらうよ!!」
ズドォンッ!!
大剣を地面に置いただけで轟音が鳴り響き、どれほどの重量なのか気にかかる。すぐにリノンたちは不安そうな表情を浮かべ、ワルキューレの女騎士達は笑みを浮かべる。
「それでは……試合を始めます」
すぐに審判役のつもりなのか、1人のワルキューレの騎士が大理石の闘技場に上がろうとした時、
「邪魔だよ!!」
「げふっ!?」
ドゴォオオンッ!!
裏拳で女騎士を吹き飛ばし、大理石の上から派手に転げ落ちる。慌てて周囲の騎士が彼女を抱えるが、鼻血を吹いて気絶していた。
テンの行動にリノンたちは呆気にとられるが、当のワルキューレの騎士団は手慣れた手つきで応急処置を行い、すぐに女騎士を運び込む。どうやらこのような事態は慣れているらしく、レノは女騎士が運ばれるのを見送るとテンに顔を向け、彼女は鼻を鳴らす。
「喧嘩に審判も何もないよ。私達の勝負に他人が出しゃばるんじゃない!!」
「「は、はい!!」」
すぐに残された騎士達にテンが怒声を散らすと、彼らは軍人のような敬礼を行って返事を返す。何故かリノンたちも同じように敬礼をしており、彼女のカリスマ性(?)に感心する。
「さて……それじゃあ、やろうかい!!」
「はいはい……」
「気の抜ける奴だね……だけど手加減はしないよ!!」
ブンッ!!
大剣で空を斬り、テンは獰猛な目つきで大きく踏み込む。そして、レノの身体に目掛けて刃を振るわせ、
「せいあっ!!」
ズガァアアアアンッ!!
上空からの一撃が地面にめり込み、凄まじい轟音と共に砂煙が闘技場上に舞う――
テンはレノの方に顔を向け、すぐに目つきを変える。先ほどまでの陽気な雰囲気が一変し、一流の戦士として変貌する。すぐにリノン達はが驚いた表情を浮かべるが、他のワルキューレの女騎士達は承知済みなのか、取り乱すことは無い。
「あんた……ハーフエルフだね」
「えっ!?」
「わうっ!?」
「っ……!!」
テンの言葉に3人が驚愕し、すぐにゴンゾウはレノを守るように前に立つ。聖導教会にとって、「ハーフエルフ」とは「第二の魔王」になる可能性がある存在であり、どのような理由だろうと断罪する義務を持ち合わせている。
トウキョウでは巫女姫のヨウカの頼みもあり、雷天のゴウを討伐した功績もあって見逃されたが、本来はハーフエルフであるレノは聖導教会にとっては危険極まりない存在扱いされている。レノは内心舌打ちし、迂闊にジャンヌ達と共に行動したことを反省する。
別れ際のアルトの言葉に無視できず、付いてきたのが仇になったのかと考え、一か八か命乞いでもしてみるべきかと考えると、テン総団長は朗らかな笑みを浮かべながら首を振り、
「ああ……安心しな、別に取って食うつもりはないよ。ミキさんからあんたの事を聞いてるからね」
「ミキから?」
「……その反応、どうやら本当にあの人が言っていた子のようだね」
テンは背中に掲げた白塗りの大剣を握りしめ、すぐにリノンたちがレノを守るために前に出ると、
「ガキは下がってな!!」
「うっ……!?」
「わぅんっ……!?」
「ぐっ……!?」
彼女が一括しただけで空気が震え、リノン達は怯む。だが、3人も退く気は無いのか柄に手を伸ばし、周囲のワルキューレたちも臨戦態勢に入る。
「いいよ皆……退いて」
「だ、だが……」
「き、危険ですよ……」
「レノ……」
一触即発の空気の中、レノは特に緊張した様子も無く3人を後ろに下がらせると、テンの前に立つ。そんな彼の反応にテンは笑みを浮かべ、やはりミキから聞いていた話通りの人物だと納得する。
「いい度胸だね……それとも馬鹿なのかい?」
「あんたよりはマシだよ」
「はっ!!言うじゃないかい!!気に入ったよ!!」
豪快に笑いながらも、大剣を抜き取り、レノに向けて刃を構え、
「来な……本当にミキが認めたほどの男か確かめさせてもらうよ」
「どんな理由だ……まあ、別にいいよ」
「レノ!?」
「あ、相手は剛腕のテンさんですよ!!」
「……頑張れ!!」
訓練場にある大理石で作り出された闘技場に案内され、以前にも地下迷宮で騎士の「死人」同士が闘っていたものと似ている事に気付く。特に関連性はないのだろうが、テンは大剣を構え、レノは無手で大理石に登ると、彼女は訝し気な視線を向け、
「あんた……武道家だったのかい?」
「いや、武器はあるよ」
ジャラララッ!!
「「うわぁっ!?」」
左腕を形成する黒衣から「銀の鎖」を取りだすと、周囲に居た女騎士達が驚愕の声を上げ、テンは感心した風に頷く。
「へえ……左腕に隠し武器かい……まるで暗殺者だね」
「暗殺はやったことはないかな……」
「……その言い分だと、他の悪事には手を染めているように聞こえるね」
「ご飯のつまみ食いぐらいかな……」
「それは私も毎日やってるから責められないね」
一時期は盗賊として生きてきたため、悪事を行っていないのかと問われれば否定はしにくいが、直接的に人殺しのような犯罪を犯したことは無い。レノは左腕に「銀の鎖」を巻き付かせ、以前に鎖の腕を生み出す。聖爪(ネイルリング)が健在ならば掌の部分も構成できるが、ジャンヌに渡したため、存在しない。
「さぁて……本当にミキさんが語るほどの人物かどうか、確かめさせてもらうよ!!」
ズドォンッ!!
大剣を地面に置いただけで轟音が鳴り響き、どれほどの重量なのか気にかかる。すぐにリノンたちは不安そうな表情を浮かべ、ワルキューレの女騎士達は笑みを浮かべる。
「それでは……試合を始めます」
すぐに審判役のつもりなのか、1人のワルキューレの騎士が大理石の闘技場に上がろうとした時、
「邪魔だよ!!」
「げふっ!?」
ドゴォオオンッ!!
裏拳で女騎士を吹き飛ばし、大理石の上から派手に転げ落ちる。慌てて周囲の騎士が彼女を抱えるが、鼻血を吹いて気絶していた。
テンの行動にリノンたちは呆気にとられるが、当のワルキューレの騎士団は手慣れた手つきで応急処置を行い、すぐに女騎士を運び込む。どうやらこのような事態は慣れているらしく、レノは女騎士が運ばれるのを見送るとテンに顔を向け、彼女は鼻を鳴らす。
「喧嘩に審判も何もないよ。私達の勝負に他人が出しゃばるんじゃない!!」
「「は、はい!!」」
すぐに残された騎士達にテンが怒声を散らすと、彼らは軍人のような敬礼を行って返事を返す。何故かリノンたちも同じように敬礼をしており、彼女のカリスマ性(?)に感心する。
「さて……それじゃあ、やろうかい!!」
「はいはい……」
「気の抜ける奴だね……だけど手加減はしないよ!!」
ブンッ!!
大剣で空を斬り、テンは獰猛な目つきで大きく踏み込む。そして、レノの身体に目掛けて刃を振るわせ、
「せいあっ!!」
ズガァアアアアンッ!!
上空からの一撃が地面にめり込み、凄まじい轟音と共に砂煙が闘技場上に舞う――
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