222 / 1,095
腐敗竜編
魔力供給
しおりを挟む
レノは騎士団全員の視線を浴びながら、聖導教会の魔術師の1人に握手を行い、彼は何をする気なのかと不思議そうな表情を浮かべるが、
ボウッ……!!
「うおぉおおおおっ!?」
「うっさい、耳元で騒ぐな」
「す、すいません……」
魔術師は急速に自分の魔力が回復していく感覚に陥り、まるで高級品である「マナ・ポーション(魔力を回復させる液体)」を使用した時と似ている。だが、此方の方が遥かに魔力が回復し、僅か数秒ほどで彼は身体に魔力が満ち溢れている事に気が付く。
「はい、終わり」
「す、すごい……本当に回復した」
「魔力供給……!?上級スキルじゃないですか!?」
今まで空気と化していたミカが驚きの声を上げる。彼女は野営地に着いて早々にテントに直行し、着替えとシャワーを終えて戻ってきたところだ。アルトが既に居なくなっていた事に衝撃を受けたが、これ以上の面倒事は御免なのかこの場を離れるつもりはないらしい。
レノは次の魔術師を呼び出し、彼の前にすぐ魔術師の列ができる。中には魔術師ではないにも関わらず、彼の「魔力供給」を味わいたい人間もいた。レノの行為が遊戯ではない事にジャンヌは眉を顰めるが、特に彼等を咎めず、レノの技術に感心する。
(……地下で私に行ったものですね)
最初に会った時にレノはジャンヌの額に触れ、彼女の「聖痕」をさり気なく回収した。その際に彼女は一度根こそぎ魔力を奪い取られたはずだが、すぐにレノから魔力を送り込まれて事なきを得た。ゴウのように老化しなかったのは彼の処置が速かったからだと思われる。
「聖属性」の聖痕を失ったとしても、彼女はテンペスト騎士団一の武芸者であり、人間にしては相当な魔力容量を誇る事に変わりはない。だが、レノは彼女の10倍以上の魔力を所持しており、次々と魔術師たちの魔力を回復させていく。
1人につき数秒ほどの魔力供給を行い、次々と回復させていく姿に全員が驚愕する。一体、どれほどの魔力を有しているのか想像できない。
――遂には魔術師どころか、野営地に居る者全ての魔力を回復させ、レノは軽く首を動かして一息を吐く。これほどの人数の魔力を回復させたにも関わらず、彼自身に特に異変は無い。
「すごい……流石はエルフだな!!」
「身体に魔力が満ち溢れてやがる……これなら闘える!!」
「しかし……本当に何者なんだ?普通じゃねえよあいつ……」
「どうでもいいだろ。今は頼りになんだからよ……」
殆どが感動する中、数人の人間がレノに対して疑惑の視線を向ける。迷宮に突入した際には見ない顔であり、一体何処から来たのかと疑問が浮かぶのは当然だ。だが、ジャンヌ達が慌ててレノの隣に立ち、
「えっと……か、彼は私の友人であり、私と共に聖天魔導士であるミキの下で修練を共にしました。今回は私達の危機を聞きつけ、既に地下迷宮内に出向いていたのです」
「そ、そうだぞ。それに彼は私の弟みたいなものだからな!!心配しないでくれ!!」
「わ、わぅんっ!!私のご主人様的な存在です!!」
「俺の、親友」
「「「おぉおおおおおおっ!!」」」
4人の説明に驚嘆の声が上がる。特に「聖天魔導士」のミキの元でジャンヌと共に修練を受けたという事は彼女にとって姉弟弟子にあたり、それならば先ほどの一連の行為も納得できなくはない。
さらにはリノンの「弟」ポチ子の「ご主人様」ゴンゾウの「親友」発言に彼が只者でないことがはっきりと分かるが、何人かが妬みと疑惑の視線を向けてくる。
「私達のポチ子ちゃんにご主人様だなんて……」
「許せん……が、下手に手を出せない」
「機会を待て……好機を見逃すな」
「……やれるものならやってみろ。但し、覚悟しろよ?」
「「っ!?」」
不審な声がレノの耳に入ってくるが、一睨みすると彼らは慌てて他の者たちの陰に隠れる。ハーフエルフの聴力を舐めていたようであり、彼らの反応に溜息を吐きながらも、魔術師たちの方に視線を向ける。
「早く転移魔方陣を展開したら?」
「そ、それが……これだけの規模になると時間がかかるのです」
「5人ほどならすぐにでも送り込めますが……」
「なら、メンバーは決まったな」
レノは振り返ると、すぐにジャンヌたちが頷く。レノ、ジャンヌ、リノン、ポチ子、ゴンゾウの5人組が集まり、転移魔方陣の上に移動する。
「す、すいませ~ん……私はここに残りますよ?もう、足がぱんぱんで……」
「分かりました……ここまでお疲れ様でした」
「わふっ……お元気で」
「迷宮内では色々とあったが……まあ、頑張った方でしたよ」
「……さらば」
「じゃあね~」
彼女にそれぞれが適当な返事を軽く返すと、すぐに魔方陣が発光し、
「――では、参りましょう……聖導教会総本部へ」
次の瞬間、身体が浮き上がる感覚が広がり、視界が光の奔流に覆われた――
ボウッ……!!
「うおぉおおおおっ!?」
「うっさい、耳元で騒ぐな」
「す、すいません……」
魔術師は急速に自分の魔力が回復していく感覚に陥り、まるで高級品である「マナ・ポーション(魔力を回復させる液体)」を使用した時と似ている。だが、此方の方が遥かに魔力が回復し、僅か数秒ほどで彼は身体に魔力が満ち溢れている事に気が付く。
「はい、終わり」
「す、すごい……本当に回復した」
「魔力供給……!?上級スキルじゃないですか!?」
今まで空気と化していたミカが驚きの声を上げる。彼女は野営地に着いて早々にテントに直行し、着替えとシャワーを終えて戻ってきたところだ。アルトが既に居なくなっていた事に衝撃を受けたが、これ以上の面倒事は御免なのかこの場を離れるつもりはないらしい。
レノは次の魔術師を呼び出し、彼の前にすぐ魔術師の列ができる。中には魔術師ではないにも関わらず、彼の「魔力供給」を味わいたい人間もいた。レノの行為が遊戯ではない事にジャンヌは眉を顰めるが、特に彼等を咎めず、レノの技術に感心する。
(……地下で私に行ったものですね)
最初に会った時にレノはジャンヌの額に触れ、彼女の「聖痕」をさり気なく回収した。その際に彼女は一度根こそぎ魔力を奪い取られたはずだが、すぐにレノから魔力を送り込まれて事なきを得た。ゴウのように老化しなかったのは彼の処置が速かったからだと思われる。
「聖属性」の聖痕を失ったとしても、彼女はテンペスト騎士団一の武芸者であり、人間にしては相当な魔力容量を誇る事に変わりはない。だが、レノは彼女の10倍以上の魔力を所持しており、次々と魔術師たちの魔力を回復させていく。
1人につき数秒ほどの魔力供給を行い、次々と回復させていく姿に全員が驚愕する。一体、どれほどの魔力を有しているのか想像できない。
――遂には魔術師どころか、野営地に居る者全ての魔力を回復させ、レノは軽く首を動かして一息を吐く。これほどの人数の魔力を回復させたにも関わらず、彼自身に特に異変は無い。
「すごい……流石はエルフだな!!」
「身体に魔力が満ち溢れてやがる……これなら闘える!!」
「しかし……本当に何者なんだ?普通じゃねえよあいつ……」
「どうでもいいだろ。今は頼りになんだからよ……」
殆どが感動する中、数人の人間がレノに対して疑惑の視線を向ける。迷宮に突入した際には見ない顔であり、一体何処から来たのかと疑問が浮かぶのは当然だ。だが、ジャンヌ達が慌ててレノの隣に立ち、
「えっと……か、彼は私の友人であり、私と共に聖天魔導士であるミキの下で修練を共にしました。今回は私達の危機を聞きつけ、既に地下迷宮内に出向いていたのです」
「そ、そうだぞ。それに彼は私の弟みたいなものだからな!!心配しないでくれ!!」
「わ、わぅんっ!!私のご主人様的な存在です!!」
「俺の、親友」
「「「おぉおおおおおおっ!!」」」
4人の説明に驚嘆の声が上がる。特に「聖天魔導士」のミキの元でジャンヌと共に修練を受けたという事は彼女にとって姉弟弟子にあたり、それならば先ほどの一連の行為も納得できなくはない。
さらにはリノンの「弟」ポチ子の「ご主人様」ゴンゾウの「親友」発言に彼が只者でないことがはっきりと分かるが、何人かが妬みと疑惑の視線を向けてくる。
「私達のポチ子ちゃんにご主人様だなんて……」
「許せん……が、下手に手を出せない」
「機会を待て……好機を見逃すな」
「……やれるものならやってみろ。但し、覚悟しろよ?」
「「っ!?」」
不審な声がレノの耳に入ってくるが、一睨みすると彼らは慌てて他の者たちの陰に隠れる。ハーフエルフの聴力を舐めていたようであり、彼らの反応に溜息を吐きながらも、魔術師たちの方に視線を向ける。
「早く転移魔方陣を展開したら?」
「そ、それが……これだけの規模になると時間がかかるのです」
「5人ほどならすぐにでも送り込めますが……」
「なら、メンバーは決まったな」
レノは振り返ると、すぐにジャンヌたちが頷く。レノ、ジャンヌ、リノン、ポチ子、ゴンゾウの5人組が集まり、転移魔方陣の上に移動する。
「す、すいませ~ん……私はここに残りますよ?もう、足がぱんぱんで……」
「分かりました……ここまでお疲れ様でした」
「わふっ……お元気で」
「迷宮内では色々とあったが……まあ、頑張った方でしたよ」
「……さらば」
「じゃあね~」
彼女にそれぞれが適当な返事を軽く返すと、すぐに魔方陣が発光し、
「――では、参りましょう……聖導教会総本部へ」
次の瞬間、身体が浮き上がる感覚が広がり、視界が光の奔流に覆われた――
0
お気に入りに追加
485
あなたにおすすめの小説
〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。
だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。
十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。
ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。
元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。
そして更に二年、とうとうその日が来た……
なりゆきで、君の体を調教中
星野しずく
恋愛
教師を目指す真が、ひょんなことからメイド喫茶で働く現役女子高生の優菜の特異体質を治す羽目に。毎夜行われるマッサージに悶える優菜と、自分の理性と戦う真面目な真の葛藤の日々が続く。やがて二人の心境には、徐々に変化が訪れ…。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
【完結】辺境伯令嬢は新聞で婚約破棄を知った
五色ひわ
恋愛
辺境伯令嬢としてのんびり領地で暮らしてきたアメリアは、カフェで見せられた新聞で自身の婚約破棄を知った。真実を確かめるため、アメリアは3年ぶりに王都へと旅立った。
※本編34話、番外編『皇太子殿下の苦悩』31+1話、おまけ4話
結婚して5年、初めて口を利きました
宮野 楓
恋愛
―――出会って、結婚して5年。一度も口を聞いたことがない。
ミリエルと旦那様であるロイスの政略結婚が他と違う点を挙げよ、と言えばこれに尽きるだろう。
その二人が5年の月日を経て邂逅するとき
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる