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腐敗竜編
迷宮の最奥
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――1年半前、地下迷宮の地下二階層に閉じ込められ、レノは一度ダークエルフの後を追って迷宮の奥へと進んだ。だが、進む度に地下一階層とは比べ物にならない強さの地上では見たことが無い無数の魔物達が生息していた。
だが、それでもレノは魔物達を掻い潜り、遂に「地下三階層」に通じると思われる階段を発見した。だが、その階段の前にはまるで門番のようにレノが今までに見た事がない人型の魔物が待機していた。
『クォオオオオオッ……』
奇妙な鳴き声を上げながら、得体の知れない生物は階段を陣取るように立ち尽くしており、まるで地上へと続く階段を守護するミノタウロスのように行き先を塞ぐ。
――外見は茶色の体毛に覆われた人型の生物であり、手足は異様に細長く、体長は2メートルほど。脚は人間の物とは大きく違い、猛禽類の類に近い。その割には両手は人間の物に近く、指の数だけが6つもあり、爪の類は見当たらなかった。
何よりもその顔面は異様であり、血のように真っ赤な丸い「瞳」ひょっとこの様に突き出た唇、顔の部分の皮膚は黒く、耳は兎のように長いが垂れている。背中から黒い尻尾が見えており、まるで蛇のように長い。
このような生物などこの世界でも現実世界でも見たことが無い。創作物(ファンタジー)の中に出てくる有名な「魔物」や「妖怪」はだいたい記憶しているが、少なくとも目の前の異形の怪物の正体はレノに心当たりはなかった。
『クォオオッ……?』
怪物はレノに対して視線を向け、不思議そうに首を傾げる。レノはその瞳に見つめられた瞬間、言いようのない恐怖が浮かぶ。
「ダークエルフ」「白狼」「甲冑の騎士」などの様々な人や獣と戦い続けてきたが、眼の前の相手は違う。異形としか言いようがない未知の「怪物」から感じ取れるのは、純粋な恐怖だ。
本当にこの世界の生き物なのかも疑わしい存在にレノは身体が動かず、その間にも「怪物」はう観察を続け、やがてゆっくりと動き出す。原理は不明だが、足音すら立てずにそれは近づくと、ひょっとこのような口を大きく広げ、
『グエェエエエエエッ――!!』
ズドォオオオオッ!!
『がはっ……!?』
腕を振るいあげ、怪物はレノの腹部を貫く。北部山岳仕込みの優れた反射神経を持つはずのレノのの反応速度を遥かに越えた一撃であり、そのまま爪が引き抜かれると同時に倒れこむ。
レノは腹部から感じる激痛により、遅れて自分が攻撃されたことに気が付く。何の反応も出来なかったことに対し、目の前の怪物の攻撃速度は半端ではなく、今まで戦ってきた人や魔物とは一線を引く。
地面に跪き、レノは顔を上げるとそこには無表情で自分を見下ろす「怪物」の姿があり、相手は右腕を振りかぶり、
『グォッ』
ドゴォオオンッ!!
『がはっ……!!』
唐突に背中に衝撃が走り、レノは迷宮の壁際まで吹き飛ばされる。攻撃されたのは分かったが、理解が遅れる。威力はそれほどではないが、尋常じゃない攻撃速度であり、今の状態では回避や防御をする暇も無く、気付いた時には攻撃を受けていた感覚だ。魔法を使おうにも集中する暇も無く、レノは壁際に背を預けながら、顔を前に向くと、
『グェエエエエエエエッ!!』
ドゴォンッ!!
『げふっ!!』
再び腹部に衝撃が走り、足蹴りされたことを理解する。怪我をしている部分を狙う所、相当な知能を持っている。怪物は足を離すと、そのまま後ろに下がり込み、
ゴキゴキィッ……!!
『グァアアアアアアッ……!!』
怪物は小さな口を拡大させ、人の頭が簡単に飲み込めるほどの大きさにまで変えると、そのまま動けないレノに近づく。
(くそっ……こんな所で……)
眼の前の訳の分からない存在に殺されるという事実に、レノは言いようのない感情が湧き上がる。このまま殺されるだけなのは我慢できず、何とか反撃を試みようとした時、
ボウッ……!!
「つっ……!?」
『しょうが……ね……貸し……ます』
右手の紋様が金色に光り輝き、すぐに頭の中に途切れ途切れだが言葉が響く。それは間違いなく、「彼女」の声だった。
――バチィイイイッ!!
「ぐあっ……!!」
右手が焼き付けるような激痛が走り、掌が勝手に突き動かされ、空中に「魔方陣」を生み出す。それは「転移魔方陣」とよく似ており、
ズドォオオオオオオンッ!!
『グギャァアアアァアアッ!?』
魔方陣から金色の雷が周囲に飛び散り、眼の前の「怪物」に向けて解き放たれる。怪物も流石に電流は避けられず、そのまま逃走を開始する。
『……何だ?』
掌から発生した魔方陣に視線を向けると、そこには「刀身」らしきものが飛び出しており、すぐにまた魔方陣の中に引っ込む。
『……うっ……?』
魔方陣が消え去った途端、レノは尋常じゃない魔力を消費し、そのまま気絶してしまう。幸いというべきか、既にあの「怪物」は何処かへと消え去っており、周囲に魔物の姿は無い。
やがて次に眠りから覚めると、門番が居なくなった階段を見下ろし、レノはすぐに引き戻した。今の状態で迷宮に進むほど愚かではなく、彼は大人しく引き返し、時期を待つことにした。どちらにしろ、あまりにも時間を掛け過ぎたため、既にダークエルフは姿を消しただろう。
――それが最初の「カラドボルグ」の発現であり、それ以降、レノは「カラドボルグ」を操作する方法を見つけ出し、遂に1年以上の時を経て完全な発現に成功した。
だが、それでもレノは魔物達を掻い潜り、遂に「地下三階層」に通じると思われる階段を発見した。だが、その階段の前にはまるで門番のようにレノが今までに見た事がない人型の魔物が待機していた。
『クォオオオオオッ……』
奇妙な鳴き声を上げながら、得体の知れない生物は階段を陣取るように立ち尽くしており、まるで地上へと続く階段を守護するミノタウロスのように行き先を塞ぐ。
――外見は茶色の体毛に覆われた人型の生物であり、手足は異様に細長く、体長は2メートルほど。脚は人間の物とは大きく違い、猛禽類の類に近い。その割には両手は人間の物に近く、指の数だけが6つもあり、爪の類は見当たらなかった。
何よりもその顔面は異様であり、血のように真っ赤な丸い「瞳」ひょっとこの様に突き出た唇、顔の部分の皮膚は黒く、耳は兎のように長いが垂れている。背中から黒い尻尾が見えており、まるで蛇のように長い。
このような生物などこの世界でも現実世界でも見たことが無い。創作物(ファンタジー)の中に出てくる有名な「魔物」や「妖怪」はだいたい記憶しているが、少なくとも目の前の異形の怪物の正体はレノに心当たりはなかった。
『クォオオッ……?』
怪物はレノに対して視線を向け、不思議そうに首を傾げる。レノはその瞳に見つめられた瞬間、言いようのない恐怖が浮かぶ。
「ダークエルフ」「白狼」「甲冑の騎士」などの様々な人や獣と戦い続けてきたが、眼の前の相手は違う。異形としか言いようがない未知の「怪物」から感じ取れるのは、純粋な恐怖だ。
本当にこの世界の生き物なのかも疑わしい存在にレノは身体が動かず、その間にも「怪物」はう観察を続け、やがてゆっくりと動き出す。原理は不明だが、足音すら立てずにそれは近づくと、ひょっとこのような口を大きく広げ、
『グエェエエエエエッ――!!』
ズドォオオオオッ!!
『がはっ……!?』
腕を振るいあげ、怪物はレノの腹部を貫く。北部山岳仕込みの優れた反射神経を持つはずのレノのの反応速度を遥かに越えた一撃であり、そのまま爪が引き抜かれると同時に倒れこむ。
レノは腹部から感じる激痛により、遅れて自分が攻撃されたことに気が付く。何の反応も出来なかったことに対し、目の前の怪物の攻撃速度は半端ではなく、今まで戦ってきた人や魔物とは一線を引く。
地面に跪き、レノは顔を上げるとそこには無表情で自分を見下ろす「怪物」の姿があり、相手は右腕を振りかぶり、
『グォッ』
ドゴォオオンッ!!
『がはっ……!!』
唐突に背中に衝撃が走り、レノは迷宮の壁際まで吹き飛ばされる。攻撃されたのは分かったが、理解が遅れる。威力はそれほどではないが、尋常じゃない攻撃速度であり、今の状態では回避や防御をする暇も無く、気付いた時には攻撃を受けていた感覚だ。魔法を使おうにも集中する暇も無く、レノは壁際に背を預けながら、顔を前に向くと、
『グェエエエエエエエッ!!』
ドゴォンッ!!
『げふっ!!』
再び腹部に衝撃が走り、足蹴りされたことを理解する。怪我をしている部分を狙う所、相当な知能を持っている。怪物は足を離すと、そのまま後ろに下がり込み、
ゴキゴキィッ……!!
『グァアアアアアアッ……!!』
怪物は小さな口を拡大させ、人の頭が簡単に飲み込めるほどの大きさにまで変えると、そのまま動けないレノに近づく。
(くそっ……こんな所で……)
眼の前の訳の分からない存在に殺されるという事実に、レノは言いようのない感情が湧き上がる。このまま殺されるだけなのは我慢できず、何とか反撃を試みようとした時、
ボウッ……!!
「つっ……!?」
『しょうが……ね……貸し……ます』
右手の紋様が金色に光り輝き、すぐに頭の中に途切れ途切れだが言葉が響く。それは間違いなく、「彼女」の声だった。
――バチィイイイッ!!
「ぐあっ……!!」
右手が焼き付けるような激痛が走り、掌が勝手に突き動かされ、空中に「魔方陣」を生み出す。それは「転移魔方陣」とよく似ており、
ズドォオオオオオオンッ!!
『グギャァアアアァアアッ!?』
魔方陣から金色の雷が周囲に飛び散り、眼の前の「怪物」に向けて解き放たれる。怪物も流石に電流は避けられず、そのまま逃走を開始する。
『……何だ?』
掌から発生した魔方陣に視線を向けると、そこには「刀身」らしきものが飛び出しており、すぐにまた魔方陣の中に引っ込む。
『……うっ……?』
魔方陣が消え去った途端、レノは尋常じゃない魔力を消費し、そのまま気絶してしまう。幸いというべきか、既にあの「怪物」は何処かへと消え去っており、周囲に魔物の姿は無い。
やがて次に眠りから覚めると、門番が居なくなった階段を見下ろし、レノはすぐに引き戻した。今の状態で迷宮に進むほど愚かではなく、彼は大人しく引き返し、時期を待つことにした。どちらにしろ、あまりにも時間を掛け過ぎたため、既にダークエルフは姿を消しただろう。
――それが最初の「カラドボルグ」の発現であり、それ以降、レノは「カラドボルグ」を操作する方法を見つけ出し、遂に1年以上の時を経て完全な発現に成功した。
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