種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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腐敗竜編

聖剣の塊

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「……あなたは……何者ですか?」
「ただのスライムだよ。少しばかり話せたり、人肉を好むスライムさ」
「人肉……」


確かにスライムは他の生物を好んで襲いかかる傾向はあるが、はっきりと目の前の人型の形をしたスライムは「人肉を好む」と告げる。武器を所持していないポチ子を庇いながら、ジャンヌは聖斧を構える。

ジャンヌが得意とするのは「聖属性」であり、一応は「火属性」も少々扱える。普通のスライムならば火属性の魔法を放てば勝手に逃走を開始するが、先ほどの「レッドスライム」の事をを思い出し、下手に攻撃はできない。

長い間、世界各地を渡り歩いて様々な魔物と遭遇してきたが、銀色に光り輝く「人型」の姿に変形するスライムなど聞いたことがなく、ジャンヌは相手の正体を考察しながら距離を取る。


「僕を殺そうと考えてるね?分かるよ……君の考えが伝わってくる」
「戯れ言を……」
「くぅうんっ……」


まるで人間のように軽口を叩く人型のスライムに眉をしかめながら、一度だけポチ子の方を見やる。ジャンヌが彼女を発見出来たのはあくまで偶然であり、ポチ子がトロールに浚われた際、すぐにジャンヌ達は危険を承知の上で複数の通路を手分けして捜索を始め、他の者たち今も別々の通路で彷徨っているのは間違いない。

得体のしれない相手ではあるが、聖斧を構えて何時でも魔法を放つ準備を始める。この距離なら先手が打てると判断して構えていると、スライムが彼女の武器を見て何かに気付いたように眉を顰める。


「ジャイアント・キリング?まだ残っていたのか」
「……?」


まるで自分の聖斧を知っているような銀髪の少年の口振りに眉を顰めるが、彼女は構わずに詠唱を始める。使用するのは彼女が「巨人族」との戦いの際に習得した「ワルキューレ」に伝わる「魔技」であり、武器の性能を引き上げるだけの単純な「砲撃魔法」だ。

だが、彼女が装備しているのはエクスカリバーの力を引き継いだ「ジャイアント・キリング」この武器を強化した場合、凄まじい力を発揮する。恐らくは一時的にとは言え「エクスカリバー」の10分の1ほどは出力は引き出せるだろう。


ゴォオオオオッ……!!


「へえっ……」
「す、すごいです……!?」


ジャイアント・キリングから白い魔力が放出し、周囲に風が発生する。


ボウッ……!!


ジャンヌの「額」に白い紋様が浮かび上がり、十字架の形をしている。それを見たスライムは顔を歪ませ、


「聖痕……?君、まさか……」
「……?」


彼女自身は額の存在に気付いていないのか、スライムの反応に疑問を浮かべる。が、すぐに聖斧に集中し、


カッ!!


「ジャイアント・キリング!!」



――ズガァアアアアアンッ!!



斧を一気に前方に振り落し、地面に白光の亀裂が走る。その光の奔流はアルトの「ディバインスラッシュ」の比ではなく、通路を覆いつくさんばかりの勢いだ。魔力の斬撃は真っ直ぐに銀色の少年に向かって放たれ、彼は直撃の瞬間に口元を異様な角度まで開き、


「馬鹿だね」


ドロォッ……!!


瞬時に身体を変形させ、最初の楕円形の状態に戻ると、


ドゴォオオオオオッ……!!


正面から凄まじい光の奔流を受け止め、ポチ子とジャンヌはその光景に目を疑う。


ビュオォオオオオオッ……!!


「……吸収、している……?」
「そんな……有り得ない!?」


眼の前の銀色の液状は明らかに光を体内に飲み込み、徐々にジャイアント・キリングから放たれる光の放出は弱まり、やがては完全に消失する。通路に残されたのは肥大化した「銀色」のスライムだけであり、体長は6メートルにまで変化していた。


「ウプッ……サスガニ、クイスギタカナ……」
「……貴方は……一体……」


ズルッ……ズルッ……!!


巨体がゆっくりと2人に向けて近づき、ジャンヌはポチ子を庇って後退し、明らかに目の前の異形は異常過ぎる。魔物にも関わらず、人語を話したりと人間に変化するなど、普通ではない。

これでは魔物というよりは「魔人族(デーモン)」に等しい。しかし、何故このような場所に「魔人族」が住んでいるのか気にかかるがが、今はそれよりも重要なのは逃走手段である。この眼の前の「化け物」はジャンヌ達には手に負えない相手なのは間違いない。



しかし、1つ気がかりな事がある。それは――



(……これは……)


ビィイイイインッ……!!


ジャンヌの握りしめている「聖斧(ジャイアント・キリング)」の刀身が振動し、この反応は以前にも覚えがある。それは1年半前に「闘人都市」で「ソフィア」に尾行された際、彼女が持っているミキの「聖剣」に反応し、あの時も聖斧が同じように震えだしたのだ。そのお蔭でソフィアの尾行に気付けたのだが、


ギィイイイイィンッ……!!


刀身の振動はあの時よりも強く、今にも刃そのものが壊れてしまいかねない。周囲に間違いなく「聖剣」しかも、エクスカリバーの欠片が使用された武器が存在するはずだ。

この刀身の反応は他の「エクスカリバー」の欠片で生み出された「聖剣」に対する共鳴であり、エクスカリバーの欠片同士が元の形に戻ろうとしている。だが、視界の中に武器らしきものは見当たらない。彼女は何度も辺りを見渡すが、そんなジャンヌの行動に銀色のスライムは笑い声のような音を上げ、


「イッタイ何をサガシテルンだい…?キミタチのモクテキの「モノ」ハ目の前にあるじゃないか……」
「……まさかっ……そんな……!?」
「……じゃ、ジャンヌさん……?」


徐々に口調が戻ってきた銀色のスライムに対し、彼女はその姿を見てある最悪の予測が頭に思い浮かぶ。しかし、普通に勘がれば有り得るはずがない。だが、そんな彼女の考えた最悪の予想を肯定する返事が「銀色」のスライムから告げられた。



「――撲の身体は、迷宮内で掻き集めた「エクスカリバー」の欠片で構成されている。言い換えれば僕こそが聖剣そのものなんだよ」
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