種族統合 ～宝玉編～

腐敗竜編

聖剣の復活

腐敗竜の存在を確認し、すぐにジャンヌたちは撤退を始める。既に村中には腐敗竜の体内からは排出された呪詛が蔓延しており、多くの者が被害に遭う。死体に乗り移ればアンデット化し、生者の場合はウイルスのように体を蝕み、いずれは死に陥らせる恐ろしい能力の前ではどうしようもなかった。

すぐに騎士団は感染した村の報告を行い、バルトロス王国は震撼する。災害の象徴である腐敗竜の誕生は、冗談抜きで全ての生物の「絶滅」の可能性が秘めている。

過去に何度か腐敗竜が出現し、当時の召喚された勇者や腕利きの戦士が「聖剣」を使用して浄化した例は存在する。しかし、腐敗竜の出現の度に数多くの被害者が続出し、その数は最悪の場合は数千万～数億人にまで匹敵する。



――この世界の医療技術は魔法に頼る面が大きく、この腐敗竜の身体から生み出される呪詛は上位の聖属性の魔法でなければ浄化は行えない。


上位の回復魔法が扱える人間など世界的に見てもせいぜい１０００人ほどであり、今後に生まれるであろう呪詛の被害者はその数千倍は予想される。治療など間に合う筈が無く、結果として大勢の「アンデット」が生まれるだろう。

ただ、奇妙なことに「アンデット」に感染するのはあくまでも知的生命体のみであり、魔物が感染する事は滅多にない。単純に呪詛に対する抗体を持っているのか、それとも他に何らかの理由があるのかは不明である。


腐敗竜の出現は、世界各地で勃発した魔物の「活性化」よりも最重要問題であり、時間を掛ければかけるほど、被害は拡大する。下手をしたら、大陸中に感染が広まる危険性も高い。


王国側は立て続けに起きる問題に頭を悩めるが、すぐにも腐敗竜に対処するためにあらゆる聖剣を収集する。だが、伝説の「エクスカリバー」に匹敵する聖剣など存在しなかった。

ジャンヌの「聖斧(ジャイアント・キリング)」では腐敗竜にダメージを与える事は可能でも呪詛を全て浄化させることは不可能。また、肝心の異世界から召喚したはずの勇者達も生憎と「聖属性」の魔法に優れた者はいない。

他の種族達も今回ばかりは惜しみなく協力したが、やはり伝説級の「聖剣」を収集するとなると難しく、聖遺物を所持している事が報告された「盗賊王」に助力を求めるが、



『僕が所持しているのはアイギスとクサナギだけだよ。どちらも浄化の能力は無い。だいたい、僕に頼るよりも王国(君たち)が秘匿しているあの島の宝物を使用したらどうだい？』



ホノカはその言葉を繰り返すだけであり、完全に傍観を決め込む。聖導教会を通して巫女姫である「ヨウカ」にも出向く様に指示を出すが、ホノカは断固として反対し、今回の一件は王国側でどうにかするように伝える。

あまりにも傲慢な盗賊王の態度だが、現在は腐敗竜の問題を先に解決する方が先であり、ついに国王は重い腰を上げて「放浪島」に存在する「聖遺物」の存在を発表する。


――通称は「天獄島」とも呼ばれる空中に浮かび続ける島、恐らくは世界最高峰の監獄であり、ただ一人も囚人の脱走を許したことは無い。しかし、その島の地下には巧妙に隠されてた広大な「迷宮」が広がっており、その迷宮内の奥には幾つもの宝物が隠されている。


１つはエクスカリバーの原型である「カラドボルグ」その力は聖剣の中でも最強であり、聖なる雷を生み出す。この聖剣ならば間違いなく腐敗竜であろうと跡形も無く消し去り、呪詛を浄化する能力はあるだろう。

嘗て「カラドボルグ」が消失際、どういう経緯かは不明だが、地下迷宮にその力を感じ取れるため、カラドボルグが迷宮内に存在する事は間違いない。この聖剣はホノカの所持している「クサナギ」に匹敵どころではなく、最強の聖剣として名高い。



他には海上王国時代に封印された「魔槍(ゲイ・ボルグ)」であり、実質上、この世界の中でも１、２を誇る最強の槍。その力は不明な点が多く、名前だけは有名だが、非常に強い呪詛が刻まれており、使用した者は必ず呪われると伝えられている。

こちらは聖剣とは正反対の方法で生成された武具と考えられ、聖剣は使い手を選ぶが、この魔槍は真逆であり、どのような人間が使用しようとその効力を発揮する。但し、一度でも使用した人間には凄まじい呪いが身体に掛けられ、決して長生きはしないと言われている。

だが、最大の特徴として「魔槍(ゲイ・ボルグ)」は例えどれほど強大な相手であろうと、特殊な能力を所持していようが、一度その力を全て解放した時は必ず「勝利」を導くと言われている。最も、今回の腐敗竜には必要ないと判断され、あくまでも王国の目的は聖剣の回収だった。



――しかし、この２つ以外にも実は地下迷宮内には聖剣の欠片で作り出した無数の剣が存在する。その聖剣の名前は「エクスカリバー」であり、王国側はカラドボルグの回収と、嘗て魔王に破壊された「聖剣エクスカリバー」の復活のために回収任務をテンペスト騎士団に与えた。