173 / 1,095
闘人都市編
甲冑の騎士
しおりを挟む「力ずくで聖剣を使うつもりです!止めて下さいっ!!」
「分かってる!!」
珍しく余裕のないアイリィの声にレノは動き出す。彼女がここまで切羽詰った声を上げるなど、余程の事態であることはすぐに理解できた。
バチィイイイッ!!
レノは右手の聖爪(ネイルリング)を振りかぶり、甲冑の騎士に突撃する。左腕には紋様で強化させた「撃雷」を纏わせ、狙いを定められない様に左右に動き回りながら接近する。
『がああああァアアアアアアアッ!!』
理性を失ったかのように甲冑の騎士は強い苦しみを感じさせる思念を送り込んでくる。聖剣の力に耐え切れないのか、既に精神が可笑しくなり始めている。接近するのは危険だが、かと言って遠距離の攻撃が喰らう相手とは思えない。っここは自分が一番信用している技でで勝負に挑む。
ダァンッ!!
瞬脚を発動させ、高速に移動して甲冑の騎士の右側の側面に立ち、足元に目掛けて撃雷を放つ。
ズドォオオオンッ!!
「うぐっ……!?」
想像以上の硬度が左腕に広がり、見ると鎧に触れた拳に纏われた「風雷」がかき消されている。まるで最初から普通の拳で殴り込んだような形であり、古ぼけている割には頑丈な鎧には損傷を与ええていない。
あくまでも予想に過ぎないが、この鎧の材質にはミキから頂いた「短剣」と同じものが造られている可能性がある。あの短剣も魔法を無効化する能力があったはずであり、普通の魔法攻撃は通用しないのかもしれない。
すぐに左拳を下げると、甲冑の騎士が反撃に出る前に今度は肉体強化で右腕の腕力を強化させ、聖爪を甲冑のガントレットの部分に放つ。聖爪に纏わせた魔力は掻き消えるだろうが、勢いまでは殺すことは出来ない。例え魔力を消されようが、加速した拳までは止められない。
ドスゥウウウッ!!
『グゥウウウッ……!?』
先端の鍵爪が突き刺さり、ガントレットを貫く。その際に聖剣を握りしめる右腕が震えるが、掌を離す様子はない。
(……っ!?)
だが、それよりも先にレノは右腕に広がる感覚に違和感を覚える。確かに眼の前のガントレットを鋭利な鍵爪で貫いたはずだが、
(空っぽ……?)
中身に存在するはずの肉体を貫いた感触は感じられず、レノは肉体を刃物で抉る事は動物や人型の魔獣を相手に何度も体験しているが、明らかに右腕に広がる感覚は「空洞」だと知らせる。
「その鎧さんに肉体はありませんよ!離れてください!」
「それを先に……うわっ!!」
ブゥンッ!!
遂に甲冑の騎士が動き出し、鍵爪を貫かれたまま左腕を振り上げ、そのままレノの身体を浮き上げる。聖爪を引き抜こうとするが、その前に甲冑は恐るべき力で振り回し、勝手にガントレットから外れた。
「くっ……」
ドォオンッ!!
空中で体勢を整え、足裏に嵐を形成させて空中で「瞬脚」を行い、体勢を整える。元々は空中を移動するために開発した技であり、特に問題なく着地する。その後、アイリィの傍まで戻ると、彼女は右手を握りしめ、何らかの植物の種を投擲する。
「間に合うといいですけど……ほっ!」
樹の聖痕を発動させ、植物の種は甲冑の騎士の地面に触れた途端、
ブワァアアアアッ――!!
三本の巨大な蔓が地面から発生し、すぐにも甲冑の黒い鎧に絡みつく。それは拘束ではなく、明らかに押し潰す勢いだが、
『グググッ……!!』
ゴォオオオオオオッ――!!
身体を蔓に拘束されながらも、腰に差した「カラドボルグ」を引き抜こうとする甲冑にアイリィは舌打ちし、
「仕方有りません……レノさん!!あの腕ごと斬り裂いて下さい!!」
「腕ごと?」
「早く!!」
余裕のない声音にレノは頷き、今度はカラドボルグを握りしめている甲冑の両腕のガントレットを狙う。先ほどの攻撃で鉄甲を貫くことは出来たため、恐らくこの聖爪なら鎧に損傷を与えられるのは間違いない。
甲冑の騎士は明らかに暴走しており、近づくことも困難だが、このままあの危険な雰囲気を纏う聖剣を引き抜かせるわけにはいかない。
「はぁああああっ!!」
『ジャマヲ……スルナァッ!!』
接近するレノに向けて、甲冑は引き抜こうとした聖剣から一旦手を離し、左腕の掌を向けてくる。
(っ!?)
すぐにレノは直感でその場から「瞬脚」で跳躍した直後、
ドゴォオオオオンッ!!
先ほどまで彼が立っていた場所の地面が陥没し、円形型の凹みが生じる。すぐに何らかの衝撃系の魔法が送り込まれたのかと考えるが、それが何なのかまでは特定できない。
「その人は重力を操れますよ~!気を付けてくださいね~」
「そう言う事はもっと早く……ええい!!」
『オォオオオオオオオッ!!』
ドゴンッ!!ドゴォオオオンッ!!
次々とレノに重力波が放たれ、それを事前に避けながらも接近するが、その間にも聖剣は残された右腕に引き抜かれようとしている。このままでは近づく前に押し潰されてしまうが、そうなる前に何とか手を打たなければならない。
「分かってる!!」
珍しく余裕のないアイリィの声にレノは動き出す。彼女がここまで切羽詰った声を上げるなど、余程の事態であることはすぐに理解できた。
バチィイイイッ!!
レノは右手の聖爪(ネイルリング)を振りかぶり、甲冑の騎士に突撃する。左腕には紋様で強化させた「撃雷」を纏わせ、狙いを定められない様に左右に動き回りながら接近する。
『がああああァアアアアアアアッ!!』
理性を失ったかのように甲冑の騎士は強い苦しみを感じさせる思念を送り込んでくる。聖剣の力に耐え切れないのか、既に精神が可笑しくなり始めている。接近するのは危険だが、かと言って遠距離の攻撃が喰らう相手とは思えない。っここは自分が一番信用している技でで勝負に挑む。
ダァンッ!!
瞬脚を発動させ、高速に移動して甲冑の騎士の右側の側面に立ち、足元に目掛けて撃雷を放つ。
ズドォオオオンッ!!
「うぐっ……!?」
想像以上の硬度が左腕に広がり、見ると鎧に触れた拳に纏われた「風雷」がかき消されている。まるで最初から普通の拳で殴り込んだような形であり、古ぼけている割には頑丈な鎧には損傷を与ええていない。
あくまでも予想に過ぎないが、この鎧の材質にはミキから頂いた「短剣」と同じものが造られている可能性がある。あの短剣も魔法を無効化する能力があったはずであり、普通の魔法攻撃は通用しないのかもしれない。
すぐに左拳を下げると、甲冑の騎士が反撃に出る前に今度は肉体強化で右腕の腕力を強化させ、聖爪を甲冑のガントレットの部分に放つ。聖爪に纏わせた魔力は掻き消えるだろうが、勢いまでは殺すことは出来ない。例え魔力を消されようが、加速した拳までは止められない。
ドスゥウウウッ!!
『グゥウウウッ……!?』
先端の鍵爪が突き刺さり、ガントレットを貫く。その際に聖剣を握りしめる右腕が震えるが、掌を離す様子はない。
(……っ!?)
だが、それよりも先にレノは右腕に広がる感覚に違和感を覚える。確かに眼の前のガントレットを鋭利な鍵爪で貫いたはずだが、
(空っぽ……?)
中身に存在するはずの肉体を貫いた感触は感じられず、レノは肉体を刃物で抉る事は動物や人型の魔獣を相手に何度も体験しているが、明らかに右腕に広がる感覚は「空洞」だと知らせる。
「その鎧さんに肉体はありませんよ!離れてください!」
「それを先に……うわっ!!」
ブゥンッ!!
遂に甲冑の騎士が動き出し、鍵爪を貫かれたまま左腕を振り上げ、そのままレノの身体を浮き上げる。聖爪を引き抜こうとするが、その前に甲冑は恐るべき力で振り回し、勝手にガントレットから外れた。
「くっ……」
ドォオンッ!!
空中で体勢を整え、足裏に嵐を形成させて空中で「瞬脚」を行い、体勢を整える。元々は空中を移動するために開発した技であり、特に問題なく着地する。その後、アイリィの傍まで戻ると、彼女は右手を握りしめ、何らかの植物の種を投擲する。
「間に合うといいですけど……ほっ!」
樹の聖痕を発動させ、植物の種は甲冑の騎士の地面に触れた途端、
ブワァアアアアッ――!!
三本の巨大な蔓が地面から発生し、すぐにも甲冑の黒い鎧に絡みつく。それは拘束ではなく、明らかに押し潰す勢いだが、
『グググッ……!!』
ゴォオオオオオオッ――!!
身体を蔓に拘束されながらも、腰に差した「カラドボルグ」を引き抜こうとする甲冑にアイリィは舌打ちし、
「仕方有りません……レノさん!!あの腕ごと斬り裂いて下さい!!」
「腕ごと?」
「早く!!」
余裕のない声音にレノは頷き、今度はカラドボルグを握りしめている甲冑の両腕のガントレットを狙う。先ほどの攻撃で鉄甲を貫くことは出来たため、恐らくこの聖爪なら鎧に損傷を与えられるのは間違いない。
甲冑の騎士は明らかに暴走しており、近づくことも困難だが、このままあの危険な雰囲気を纏う聖剣を引き抜かせるわけにはいかない。
「はぁああああっ!!」
『ジャマヲ……スルナァッ!!』
接近するレノに向けて、甲冑は引き抜こうとした聖剣から一旦手を離し、左腕の掌を向けてくる。
(っ!?)
すぐにレノは直感でその場から「瞬脚」で跳躍した直後、
ドゴォオオオオンッ!!
先ほどまで彼が立っていた場所の地面が陥没し、円形型の凹みが生じる。すぐに何らかの衝撃系の魔法が送り込まれたのかと考えるが、それが何なのかまでは特定できない。
「その人は重力を操れますよ~!気を付けてくださいね~」
「そう言う事はもっと早く……ええい!!」
『オォオオオオオオオッ!!』
ドゴンッ!!ドゴォオオオンッ!!
次々とレノに重力波が放たれ、それを事前に避けながらも接近するが、その間にも聖剣は残された右腕に引き抜かれようとしている。このままでは近づく前に押し潰されてしまうが、そうなる前に何とか手を打たなければならない。
0
お気に入りに追加
486
あなたにおすすめの小説
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
転生調理令嬢は諦めることを知らない
eggy
ファンタジー
リュシドール子爵の長女オリアーヌは七歳のとき事故で両親を失い、自分は片足が不自由になった。
それでも残された生まれたばかりの弟ランベールを、一人で立派に育てよう、と決心する。
子爵家跡継ぎのランベールが成人するまで、親戚から暫定爵位継承の夫婦を領地領主邸に迎えることになった。
最初愛想のよかった夫婦は、次第に家乗っ取りに向けた行動を始める。
八歳でオリアーヌは、『調理』の加護を得る。食材に限り刃物なしで切断ができる。細かい調味料などを離れたところに瞬間移動させられる。その他、調理の腕が向上する能力だ。
それを「貴族に相応しくない」と断じて、子爵はオリアーヌを厨房で働かせることにした。
また夫婦は、自分の息子をランベールと入れ替える画策を始めた。
オリアーヌが十三歳になったとき、子爵は隣領の伯爵に加護の実験台としてランベールを売り渡してしまう。
同時にオリアーヌを子爵家から追放する、と宣言した。
それを機に、オリアーヌは弟を取り戻す旅に出る。まず最初に、隣町まで少なくとも二日以上かかる危険な魔獣の出る街道を、杖つきの徒歩で、武器も護衛もなしに、不眠で、歩ききらなければならない。
弟を取り戻すまで絶対諦めない、ド根性令嬢の冒険が始まる。
主人公が酷く虐げられる描写が苦手な方は、回避をお薦めします。そういう意味もあって、R15指定をしています。
追放令嬢ものに分類されるのでしょうが、追放後の展開はあまり類を見ないものになっていると思います。
2章立てになりますが、1章終盤から2章にかけては、「令嬢」のイメージがぶち壊されるかもしれません。不快に思われる方にはご容赦いただければと存じます。
婚約破棄からの断罪カウンター
F.conoe
ファンタジー
冤罪押しつけられたから、それなら、と実現してあげた悪役令嬢。
理論ではなく力押しのカウンター攻撃
効果は抜群か…?
(すでに違う婚約破棄ものも投稿していますが、はじめてなんとか書き上げた婚約破棄ものです)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる