種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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闘人都市編

強化術

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「まさか……」
「何をぼけっとしてるんだ!!行くよ!!」


ダァンッ!!


首筋に「樹」の聖痕を輝かせながら、フレイは刀の柄を強く握りしめ、刀身の「竜巻」がさらに規模を拡大させる。恐らくは「聖痕」の力を刀に流し込んで強化させたのだろうが、一体どのような原理で刃の竜巻が強まるのが気になる。以前のアルファとの戦闘では彼は聖痕を使って「植物」を操るだけだったが、明らかに植物ではないはずの刀身の部分の魔力が強まっていた。

予想に過ぎないが、彼女が握っている柄の部分は「木材」であり、その柄を通して刀身に纏わりついた嵐を強化しているのかもしれない。まさか、聖痕にそんな利用法があるとは知らなかったが、よくよく考えればレノもアイリィから刻まれた「紋様」を使用して魔法の威力を強めており、もしかしたらフレイも同じ原理で強化しているのかもしれない。


「嵐弾!!」


ドゴォオオオンッ!!


フレイは刀身を振るい、偶然にもレノが開発した「嵐弾」と同じ名前、同じ系統の攻撃を行い、更にその威力は彼よりも上回っている。純粋な「森人族」でない以上、レノも風属性の魔法を受けるのは危ない。正面から受け止めるのは危険だが、相性が悪い「雷」で対処する事は難しく、ならば残された手段は、


「らあっ!!」


ドォオオンッ!!


敢えて先ほど発現させた撃雷を纏わせた右腕を振るい、正面からではなく、斜め下横から「嵐弾」を弾く。


ズガァアアアンッ!!


フレイの魔弾はそのまま上空へと吹き飛び、それを見たフレイは新たな「竜巻」を刀身に展開させ、


「おらおら!!」


ドォンッ!!ドォオンッ!!


「くっ……撃雷!!」


続けて剣を振るう事で魔弾を連発し、レノはボクサーの要領でフットワークを生かしながら、両腕に「撃雷」を発動させる。最も魔力消費が激しい魔法だが、今は躊躇している暇はない。左手の紋様は発動させず、向いくる二つの嵐の弾丸に向けて拳を振りかぶり、


「だぁっ!!」


ズガァンッ!!ズドォオオッ!!


一撃目を正面から撃ちぬき、二撃目をアッパーの要領で弾く。当たる度に拳がじんじんとするが、破壊できることは先ほどのやり取りで分かっている。


「レノ!!」


フレイは遠距離からの攻撃が無駄だと悟り、今度は直接斬るために向かってくる。本気で殺しにかかっていると判断し、レノは覚悟を決める。


「あぁああああああっ!!」
「なにっ!?」


ドォンッ!!


脚に嵐を解放させ、一気に「瞬脚」で彼女に接近戦を挑む。武器無しで自分に挑みに来るレノにフレイは訝しげな表情を浮かべるが、


「はっ!!」


ビュンッ!!


凄まじい速度の斬撃を放ち、レノはそれを両手で交差した「撃雷」で受け止める。フレイの刀身の「竜巻」と、レノの両腕に螺旋状に渦巻く「嵐」と「電流」が纏った魔力同士が衝突する。



ズガァアアアアンッ――!!



「はあぁあああああっ!!」
「ぐぅうっ……!!」


全力で刀に力を入れるフレイに対し、レノは魔力を強めて防ぐ。刀身が螺旋状の風雷に塞がれ、轟音が鳴り響くが、フレイの握りしめる方の刀身が刃毀れ1つ起こさないところを見ると相当な技物だろう。しばらくはその場で拮抗していたが、焦らしたフレイが足を振り上げ、


「このっ!!」
「ぐっ……」


ズドォオンッ!!


何の魔力で強化されていない蹴りだが、レノはそのまま派手に吹っ飛ぶ。肉体強化が施された肉体を吹き飛ばすあたり、やはり本物の歴戦練磨の戦士の一撃は身体に響く。更にフレイは距離があるにも関わらず、そのまま刀を突きの構えで振り抜き、


「突!!」


ビュンッ!!


「っ!?」


ズドォンッ!!


瞬間、レノの頬に何かが通り過ぎ、一筋の血が流れる。直後に後方から衝突音が響き渡り、後ろを振り帰ると、そこには遥か後方の煉瓦製の家に小さい穴のような傷跡が生まれていた。先ほどの「嵐弾」を高密度に凝縮したと思われる魔法であり、規模は縮まったが威力は比べ物にならない。もしも頭を撃ちぬかれていたとしたら、確実に死んでいただろう。


「突!!」


ビュンッ!!


新たな弾丸が刀身の先端から放たれ、今度は避けようとするが、回避する暇も無く脇腹の辺りを通過し、バルから買ってもらったばかりの服が斬り裂かれる。


「くっ……!!」
「突!!」


ビュンッ!!


続けて三撃目が放たれるが、目が慣れたのか今度はどの方向に向かってくるのかを視界に捉え、真っ直ぐに右足に向けて向かってくる風の弾丸を最小限の動きで避ける。


ドオンッ!!


右足の傍の地面にクレーターが生まれ、今度は完全い回避したレノに対してフレイが驚きの表情を浮かべ、笑みを浮かべてくる。


「へえっ……眼だけは一級品だね……だけど、次は……」
「……何がしたい?」
「ん?」
「何がしたいんだよ……あんたは」


先ほどから敢えてぎりぎりの距離で嵐の弾丸を放つフレイに視線をやると、彼女は何か言いたげな表情を浮かべる。その顔は見覚えがあり、何度かエルフの集落にいた頃に見せた顔だ。その気になれば、フレイは何度もレノを殺せる機会はあったはず。何故、このような真似をするのかは分からないが、


「……これもあんたのためなんだよ……」
「っ……!!」


ドゴォオオオオオオオオッ!!


フレイは刀身の「竜巻」を一気に何倍にも膨れ上がらせる。それは「鳳凰学園」で初めてレノが「嵐」と「雷」の魔力を組み合わせたときに発生した竜巻よりも強力であり、避ける事は不可能だと悟る。


(はっ……)


レノは唇を噛み締め、目前に迫ってくる竜巻をどうにかできる術は「1つ」だけであり、出来る事ならば使いたくなかった「奥の手」を発動させる。



「――ソフィア」



一瞬にして自分の姿を変え、フレイの前には青髪の少女が現れる。その光景に彼女は眉を顰めるが、すぐに剣を振り下ろす。


「嵐武!!」


ドゴォオオオオオオンッ!!


刀身から竜巻が放たれ、そのままソフィアの姿に変身した彼女に向かう。しかし、既にソフィアは放浪島の「白狼」との戦闘に追い詰められた際、偶然にも生み出した「強化術」を発動させる。


――自分の力を何十倍にも膨れ上がらせ、反面に理性そのものを吹き飛ばし、使用した直後は筋肉痛で真面に動けなくなるため、使いどころを間違えれば命すら危うい禁術だった。
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