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闘人都市編
クサナギとアイギス
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ズガァアアアアアアンッ!!
ダークエルフの放たれた「熱線」が皇宮の天井を貫き、その威力は凄まじく、巨大な穴が形成され、まるでマグマが噴き出したように溶かされている。天井を貫いた張本人の彼女は天井の様子を確認し、熱線を放った玉座に視線を向けると眉を顰める。
「……忌々しい奴だ」
「失礼な奴だね、君も」
そこには片手で丸い円盤のような盾を構える「ホノカ」の姿があり、どうやら先ほど放った熱線を上空に反らしたらしい。盾の中央には赤い宝石が取り付けられ、恐らくは魔石の類だろうが、それにしても大型の「魔物」でさえ消滅させる威力をある熱線を、正面から受けて上空にそらすなど生半可な盾ではない。
間違いなく、伝説級の武具であり、恐らくは「聖剣エクスカリバー」と同時期に造られた防具で間違いないだろう。
「こちらも予想外だったよ……この私に「アイギス」を使わせるなんてね」
「……伝説の盾か」
――「アイギス」英語では「イージス」と呼ばれ、現実世界では「ありとあらゆる邪悪・災厄を払う魔除けの能力を持つ」とされている。この世界では「聖剣エクスカリバー」と同時期に「魔術教会(聖導教会の基)」が開発した「盾」であり、「絶対防御」の異名を持つ。
此方の方は「エクスカリバー」と違い、大昔に「アマラ砂漠」の一盗賊に盗まれて以来、長らく消息不明とされていたが、どうやらたった数年で砂漠を制覇した「ホノカ」の元に行き着いたらしい。
以前にミキが「雷」の聖痕を所持していたゴウとの戦闘の際、「アイギス」という名の「プロテクト(防御魔法陣)」を展開したことがあるが、これはこの「アイギスの盾」を習って作られた高等魔方陣である。
粉々に砕かれた「エクスカリバー」で作られた聖剣の類とは大きく異なり、その力は全く削ぐなわれていない。「絶対防御」の異名は伊達ではなく、先ほどの凄まじい火力を正面から浴びながら、傷どころか焦げ跡1つ残していない。
「全く……気を付けてほしい物だね。この聖具に関しては僕も扱いづらい」
手元に転移魔方陣を展開し、そのまま「アイギス」の盾を魔方陣に触れると、まるで水中に沈み込むように消えていく。そのホノカの行動にダークエルフは首を傾げ、どうしてわざわざ強力な防具を手放したのかは分からず、しばらく様子を確認していると彼女は再び新たな魔方陣を展開させ、
「今度はこちらの番だよ……本当は使いたくないが、致し方ないね」
ホノカの手元には何やら「日本刀」のような形状をした刀剣が出現し、ダークエルフの知識には無い武器だが、彼女がその武器を握りしめた瞬間に凄まじい威圧感が襲い掛かる。間違いなく、先ほどの「アイギス」と同レベルの「聖遺物」であり、ダークエルフは警戒気味に一歩下がると、
「――クサナギまで使わせたのは君が2人目だよ。加減を誤れば僕自身も危ないからね……一撃で終わらせよう」
――「草薙剣(くさなぎのつるぎ)」別名は「天叢雲剣(あまのむらくものつるぎ)」とも呼ばれており、現実世界では有名な神話である「スサノオ」が「ヤマタノオロチ」を倒した際に体内(尻尾)から見つけ出した太刀である。
この世界の「クサナギ」は、現実世界同様に「八つの頭を持った竜」から生み出された武具であり、此方では既に絶滅した種族「ドワーフ」の手によって、竜の体内から発見された超高密度の「魔石」と「牙」を組み合わせて作り出された「宝剣」だった。
偶然にも形状は「日本刀」と酷似しており、その性能は竜殺しで有名な聖剣「アスカロン」と匹敵、あるいはそれ以上の力を誇り、その反面、使い手を選ぶかのように相当な魔力を消費させる。「アイギス」同様に長年の間は行方不明とされていたが、ホノカの元に辿り着いていた事は一部の人間にしか知らされていない。
「まさか伝説の剣をこの目にするとは……面白い」
「面白がるのは……この一撃を受け切ってからにしてくれないか?」
クサナギを握りしめ、ホノカはダークエルフに向けて刀身を向ける。その姿に面白いとばかりに正面から向き合う彼女に対して笑みを浮かべ、
「――取りあえず、東方の果てまで吹き飛んでみるかい?」
ブオッ――!!
ホノカが「クサナギ」を一振りした瞬間、
――ズガァアアアアアアアアンッ……!!
次の瞬間、交易都市の皇宮殿で凄まじい「竜巻」が発生し、そのまま皇宮の半分を崩壊させる事態に陥っていた。この光景を見ていた民衆たちは、慌てふためく者が半数、もう半数は「また盗賊王が何かやらかしたな?」と呆れ果てた。
――実際にこの一撃で身体全身を凄まじい竜巻に飲み込まれた「ダークエルフ」は、そのまま交易都市から遥か遠方に吹き飛ばされ、姿を眩ましたという。生死は不明だが、攻撃を受ける瞬間に彼女の身体が炎で覆われたのをホノカは確認し、恐らく生き残っている可能性が高い。
残されたのは半壊した火竜殿だけであり、皇宮の修理に部下たちから激怒されたり泣きつかれたりされたが、彼等に色々な面倒事を押し付けた事に反省しながらも、
「壊れたなら作り直せばいい。どうせ、外見があんまり気に入っていなかったから、その内改装をする予定だったからね」
と、悪びれもせずに答えたという――
――この数日後に彼女は「バルトロス王国」から「剣乱武闘」の招待状を得ると、すぐに準備を終えて「闘人都市」へと向かう。
後々に「ホノカ」と「レノ」が大きく関わりを持つことになるのだが――それはまだ先の話だった。
ダークエルフの放たれた「熱線」が皇宮の天井を貫き、その威力は凄まじく、巨大な穴が形成され、まるでマグマが噴き出したように溶かされている。天井を貫いた張本人の彼女は天井の様子を確認し、熱線を放った玉座に視線を向けると眉を顰める。
「……忌々しい奴だ」
「失礼な奴だね、君も」
そこには片手で丸い円盤のような盾を構える「ホノカ」の姿があり、どうやら先ほど放った熱線を上空に反らしたらしい。盾の中央には赤い宝石が取り付けられ、恐らくは魔石の類だろうが、それにしても大型の「魔物」でさえ消滅させる威力をある熱線を、正面から受けて上空にそらすなど生半可な盾ではない。
間違いなく、伝説級の武具であり、恐らくは「聖剣エクスカリバー」と同時期に造られた防具で間違いないだろう。
「こちらも予想外だったよ……この私に「アイギス」を使わせるなんてね」
「……伝説の盾か」
――「アイギス」英語では「イージス」と呼ばれ、現実世界では「ありとあらゆる邪悪・災厄を払う魔除けの能力を持つ」とされている。この世界では「聖剣エクスカリバー」と同時期に「魔術教会(聖導教会の基)」が開発した「盾」であり、「絶対防御」の異名を持つ。
此方の方は「エクスカリバー」と違い、大昔に「アマラ砂漠」の一盗賊に盗まれて以来、長らく消息不明とされていたが、どうやらたった数年で砂漠を制覇した「ホノカ」の元に行き着いたらしい。
以前にミキが「雷」の聖痕を所持していたゴウとの戦闘の際、「アイギス」という名の「プロテクト(防御魔法陣)」を展開したことがあるが、これはこの「アイギスの盾」を習って作られた高等魔方陣である。
粉々に砕かれた「エクスカリバー」で作られた聖剣の類とは大きく異なり、その力は全く削ぐなわれていない。「絶対防御」の異名は伊達ではなく、先ほどの凄まじい火力を正面から浴びながら、傷どころか焦げ跡1つ残していない。
「全く……気を付けてほしい物だね。この聖具に関しては僕も扱いづらい」
手元に転移魔方陣を展開し、そのまま「アイギス」の盾を魔方陣に触れると、まるで水中に沈み込むように消えていく。そのホノカの行動にダークエルフは首を傾げ、どうしてわざわざ強力な防具を手放したのかは分からず、しばらく様子を確認していると彼女は再び新たな魔方陣を展開させ、
「今度はこちらの番だよ……本当は使いたくないが、致し方ないね」
ホノカの手元には何やら「日本刀」のような形状をした刀剣が出現し、ダークエルフの知識には無い武器だが、彼女がその武器を握りしめた瞬間に凄まじい威圧感が襲い掛かる。間違いなく、先ほどの「アイギス」と同レベルの「聖遺物」であり、ダークエルフは警戒気味に一歩下がると、
「――クサナギまで使わせたのは君が2人目だよ。加減を誤れば僕自身も危ないからね……一撃で終わらせよう」
――「草薙剣(くさなぎのつるぎ)」別名は「天叢雲剣(あまのむらくものつるぎ)」とも呼ばれており、現実世界では有名な神話である「スサノオ」が「ヤマタノオロチ」を倒した際に体内(尻尾)から見つけ出した太刀である。
この世界の「クサナギ」は、現実世界同様に「八つの頭を持った竜」から生み出された武具であり、此方では既に絶滅した種族「ドワーフ」の手によって、竜の体内から発見された超高密度の「魔石」と「牙」を組み合わせて作り出された「宝剣」だった。
偶然にも形状は「日本刀」と酷似しており、その性能は竜殺しで有名な聖剣「アスカロン」と匹敵、あるいはそれ以上の力を誇り、その反面、使い手を選ぶかのように相当な魔力を消費させる。「アイギス」同様に長年の間は行方不明とされていたが、ホノカの元に辿り着いていた事は一部の人間にしか知らされていない。
「まさか伝説の剣をこの目にするとは……面白い」
「面白がるのは……この一撃を受け切ってからにしてくれないか?」
クサナギを握りしめ、ホノカはダークエルフに向けて刀身を向ける。その姿に面白いとばかりに正面から向き合う彼女に対して笑みを浮かべ、
「――取りあえず、東方の果てまで吹き飛んでみるかい?」
ブオッ――!!
ホノカが「クサナギ」を一振りした瞬間、
――ズガァアアアアアアアアンッ……!!
次の瞬間、交易都市の皇宮殿で凄まじい「竜巻」が発生し、そのまま皇宮の半分を崩壊させる事態に陥っていた。この光景を見ていた民衆たちは、慌てふためく者が半数、もう半数は「また盗賊王が何かやらかしたな?」と呆れ果てた。
――実際にこの一撃で身体全身を凄まじい竜巻に飲み込まれた「ダークエルフ」は、そのまま交易都市から遥か遠方に吹き飛ばされ、姿を眩ましたという。生死は不明だが、攻撃を受ける瞬間に彼女の身体が炎で覆われたのをホノカは確認し、恐らく生き残っている可能性が高い。
残されたのは半壊した火竜殿だけであり、皇宮の修理に部下たちから激怒されたり泣きつかれたりされたが、彼等に色々な面倒事を押し付けた事に反省しながらも、
「壊れたなら作り直せばいい。どうせ、外見があんまり気に入っていなかったから、その内改装をする予定だったからね」
と、悪びれもせずに答えたという――
――この数日後に彼女は「バルトロス王国」から「剣乱武闘」の招待状を得ると、すぐに準備を終えて「闘人都市」へと向かう。
後々に「ホノカ」と「レノ」が大きく関わりを持つことになるのだが――それはまだ先の話だった。
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