123 / 1,095
闘人都市編
クサナギとアイギス
しおりを挟む
ズガァアアアアアアンッ!!
ダークエルフの放たれた「熱線」が皇宮の天井を貫き、その威力は凄まじく、巨大な穴が形成され、まるでマグマが噴き出したように溶かされている。天井を貫いた張本人の彼女は天井の様子を確認し、熱線を放った玉座に視線を向けると眉を顰める。
「……忌々しい奴だ」
「失礼な奴だね、君も」
そこには片手で丸い円盤のような盾を構える「ホノカ」の姿があり、どうやら先ほど放った熱線を上空に反らしたらしい。盾の中央には赤い宝石が取り付けられ、恐らくは魔石の類だろうが、それにしても大型の「魔物」でさえ消滅させる威力をある熱線を、正面から受けて上空にそらすなど生半可な盾ではない。
間違いなく、伝説級の武具であり、恐らくは「聖剣エクスカリバー」と同時期に造られた防具で間違いないだろう。
「こちらも予想外だったよ……この私に「アイギス」を使わせるなんてね」
「……伝説の盾か」
――「アイギス」英語では「イージス」と呼ばれ、現実世界では「ありとあらゆる邪悪・災厄を払う魔除けの能力を持つ」とされている。この世界では「聖剣エクスカリバー」と同時期に「魔術教会(聖導教会の基)」が開発した「盾」であり、「絶対防御」の異名を持つ。
此方の方は「エクスカリバー」と違い、大昔に「アマラ砂漠」の一盗賊に盗まれて以来、長らく消息不明とされていたが、どうやらたった数年で砂漠を制覇した「ホノカ」の元に行き着いたらしい。
以前にミキが「雷」の聖痕を所持していたゴウとの戦闘の際、「アイギス」という名の「プロテクト(防御魔法陣)」を展開したことがあるが、これはこの「アイギスの盾」を習って作られた高等魔方陣である。
粉々に砕かれた「エクスカリバー」で作られた聖剣の類とは大きく異なり、その力は全く削ぐなわれていない。「絶対防御」の異名は伊達ではなく、先ほどの凄まじい火力を正面から浴びながら、傷どころか焦げ跡1つ残していない。
「全く……気を付けてほしい物だね。この聖具に関しては僕も扱いづらい」
手元に転移魔方陣を展開し、そのまま「アイギス」の盾を魔方陣に触れると、まるで水中に沈み込むように消えていく。そのホノカの行動にダークエルフは首を傾げ、どうしてわざわざ強力な防具を手放したのかは分からず、しばらく様子を確認していると彼女は再び新たな魔方陣を展開させ、
「今度はこちらの番だよ……本当は使いたくないが、致し方ないね」
ホノカの手元には何やら「日本刀」のような形状をした刀剣が出現し、ダークエルフの知識には無い武器だが、彼女がその武器を握りしめた瞬間に凄まじい威圧感が襲い掛かる。間違いなく、先ほどの「アイギス」と同レベルの「聖遺物」であり、ダークエルフは警戒気味に一歩下がると、
「――クサナギまで使わせたのは君が2人目だよ。加減を誤れば僕自身も危ないからね……一撃で終わらせよう」
――「草薙剣(くさなぎのつるぎ)」別名は「天叢雲剣(あまのむらくものつるぎ)」とも呼ばれており、現実世界では有名な神話である「スサノオ」が「ヤマタノオロチ」を倒した際に体内(尻尾)から見つけ出した太刀である。
この世界の「クサナギ」は、現実世界同様に「八つの頭を持った竜」から生み出された武具であり、此方では既に絶滅した種族「ドワーフ」の手によって、竜の体内から発見された超高密度の「魔石」と「牙」を組み合わせて作り出された「宝剣」だった。
偶然にも形状は「日本刀」と酷似しており、その性能は竜殺しで有名な聖剣「アスカロン」と匹敵、あるいはそれ以上の力を誇り、その反面、使い手を選ぶかのように相当な魔力を消費させる。「アイギス」同様に長年の間は行方不明とされていたが、ホノカの元に辿り着いていた事は一部の人間にしか知らされていない。
「まさか伝説の剣をこの目にするとは……面白い」
「面白がるのは……この一撃を受け切ってからにしてくれないか?」
クサナギを握りしめ、ホノカはダークエルフに向けて刀身を向ける。その姿に面白いとばかりに正面から向き合う彼女に対して笑みを浮かべ、
「――取りあえず、東方の果てまで吹き飛んでみるかい?」
ブオッ――!!
ホノカが「クサナギ」を一振りした瞬間、
――ズガァアアアアアアアアンッ……!!
次の瞬間、交易都市の皇宮殿で凄まじい「竜巻」が発生し、そのまま皇宮の半分を崩壊させる事態に陥っていた。この光景を見ていた民衆たちは、慌てふためく者が半数、もう半数は「また盗賊王が何かやらかしたな?」と呆れ果てた。
――実際にこの一撃で身体全身を凄まじい竜巻に飲み込まれた「ダークエルフ」は、そのまま交易都市から遥か遠方に吹き飛ばされ、姿を眩ましたという。生死は不明だが、攻撃を受ける瞬間に彼女の身体が炎で覆われたのをホノカは確認し、恐らく生き残っている可能性が高い。
残されたのは半壊した火竜殿だけであり、皇宮の修理に部下たちから激怒されたり泣きつかれたりされたが、彼等に色々な面倒事を押し付けた事に反省しながらも、
「壊れたなら作り直せばいい。どうせ、外見があんまり気に入っていなかったから、その内改装をする予定だったからね」
と、悪びれもせずに答えたという――
――この数日後に彼女は「バルトロス王国」から「剣乱武闘」の招待状を得ると、すぐに準備を終えて「闘人都市」へと向かう。
後々に「ホノカ」と「レノ」が大きく関わりを持つことになるのだが――それはまだ先の話だった。
ダークエルフの放たれた「熱線」が皇宮の天井を貫き、その威力は凄まじく、巨大な穴が形成され、まるでマグマが噴き出したように溶かされている。天井を貫いた張本人の彼女は天井の様子を確認し、熱線を放った玉座に視線を向けると眉を顰める。
「……忌々しい奴だ」
「失礼な奴だね、君も」
そこには片手で丸い円盤のような盾を構える「ホノカ」の姿があり、どうやら先ほど放った熱線を上空に反らしたらしい。盾の中央には赤い宝石が取り付けられ、恐らくは魔石の類だろうが、それにしても大型の「魔物」でさえ消滅させる威力をある熱線を、正面から受けて上空にそらすなど生半可な盾ではない。
間違いなく、伝説級の武具であり、恐らくは「聖剣エクスカリバー」と同時期に造られた防具で間違いないだろう。
「こちらも予想外だったよ……この私に「アイギス」を使わせるなんてね」
「……伝説の盾か」
――「アイギス」英語では「イージス」と呼ばれ、現実世界では「ありとあらゆる邪悪・災厄を払う魔除けの能力を持つ」とされている。この世界では「聖剣エクスカリバー」と同時期に「魔術教会(聖導教会の基)」が開発した「盾」であり、「絶対防御」の異名を持つ。
此方の方は「エクスカリバー」と違い、大昔に「アマラ砂漠」の一盗賊に盗まれて以来、長らく消息不明とされていたが、どうやらたった数年で砂漠を制覇した「ホノカ」の元に行き着いたらしい。
以前にミキが「雷」の聖痕を所持していたゴウとの戦闘の際、「アイギス」という名の「プロテクト(防御魔法陣)」を展開したことがあるが、これはこの「アイギスの盾」を習って作られた高等魔方陣である。
粉々に砕かれた「エクスカリバー」で作られた聖剣の類とは大きく異なり、その力は全く削ぐなわれていない。「絶対防御」の異名は伊達ではなく、先ほどの凄まじい火力を正面から浴びながら、傷どころか焦げ跡1つ残していない。
「全く……気を付けてほしい物だね。この聖具に関しては僕も扱いづらい」
手元に転移魔方陣を展開し、そのまま「アイギス」の盾を魔方陣に触れると、まるで水中に沈み込むように消えていく。そのホノカの行動にダークエルフは首を傾げ、どうしてわざわざ強力な防具を手放したのかは分からず、しばらく様子を確認していると彼女は再び新たな魔方陣を展開させ、
「今度はこちらの番だよ……本当は使いたくないが、致し方ないね」
ホノカの手元には何やら「日本刀」のような形状をした刀剣が出現し、ダークエルフの知識には無い武器だが、彼女がその武器を握りしめた瞬間に凄まじい威圧感が襲い掛かる。間違いなく、先ほどの「アイギス」と同レベルの「聖遺物」であり、ダークエルフは警戒気味に一歩下がると、
「――クサナギまで使わせたのは君が2人目だよ。加減を誤れば僕自身も危ないからね……一撃で終わらせよう」
――「草薙剣(くさなぎのつるぎ)」別名は「天叢雲剣(あまのむらくものつるぎ)」とも呼ばれており、現実世界では有名な神話である「スサノオ」が「ヤマタノオロチ」を倒した際に体内(尻尾)から見つけ出した太刀である。
この世界の「クサナギ」は、現実世界同様に「八つの頭を持った竜」から生み出された武具であり、此方では既に絶滅した種族「ドワーフ」の手によって、竜の体内から発見された超高密度の「魔石」と「牙」を組み合わせて作り出された「宝剣」だった。
偶然にも形状は「日本刀」と酷似しており、その性能は竜殺しで有名な聖剣「アスカロン」と匹敵、あるいはそれ以上の力を誇り、その反面、使い手を選ぶかのように相当な魔力を消費させる。「アイギス」同様に長年の間は行方不明とされていたが、ホノカの元に辿り着いていた事は一部の人間にしか知らされていない。
「まさか伝説の剣をこの目にするとは……面白い」
「面白がるのは……この一撃を受け切ってからにしてくれないか?」
クサナギを握りしめ、ホノカはダークエルフに向けて刀身を向ける。その姿に面白いとばかりに正面から向き合う彼女に対して笑みを浮かべ、
「――取りあえず、東方の果てまで吹き飛んでみるかい?」
ブオッ――!!
ホノカが「クサナギ」を一振りした瞬間、
――ズガァアアアアアアアアンッ……!!
次の瞬間、交易都市の皇宮殿で凄まじい「竜巻」が発生し、そのまま皇宮の半分を崩壊させる事態に陥っていた。この光景を見ていた民衆たちは、慌てふためく者が半数、もう半数は「また盗賊王が何かやらかしたな?」と呆れ果てた。
――実際にこの一撃で身体全身を凄まじい竜巻に飲み込まれた「ダークエルフ」は、そのまま交易都市から遥か遠方に吹き飛ばされ、姿を眩ましたという。生死は不明だが、攻撃を受ける瞬間に彼女の身体が炎で覆われたのをホノカは確認し、恐らく生き残っている可能性が高い。
残されたのは半壊した火竜殿だけであり、皇宮の修理に部下たちから激怒されたり泣きつかれたりされたが、彼等に色々な面倒事を押し付けた事に反省しながらも、
「壊れたなら作り直せばいい。どうせ、外見があんまり気に入っていなかったから、その内改装をする予定だったからね」
と、悪びれもせずに答えたという――
――この数日後に彼女は「バルトロス王国」から「剣乱武闘」の招待状を得ると、すぐに準備を終えて「闘人都市」へと向かう。
後々に「ホノカ」と「レノ」が大きく関わりを持つことになるのだが――それはまだ先の話だった。
0
お気に入りに追加
485
あなたにおすすめの小説
なりゆきで、君の体を調教中
星野しずく
恋愛
教師を目指す真が、ひょんなことからメイド喫茶で働く現役女子高生の優菜の特異体質を治す羽目に。毎夜行われるマッサージに悶える優菜と、自分の理性と戦う真面目な真の葛藤の日々が続く。やがて二人の心境には、徐々に変化が訪れ…。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
【完結】辺境伯令嬢は新聞で婚約破棄を知った
五色ひわ
恋愛
辺境伯令嬢としてのんびり領地で暮らしてきたアメリアは、カフェで見せられた新聞で自身の婚約破棄を知った。真実を確かめるため、アメリアは3年ぶりに王都へと旅立った。
※本編34話、番外編『皇太子殿下の苦悩』31+1話、おまけ4話
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
結婚して5年、初めて口を利きました
宮野 楓
恋愛
―――出会って、結婚して5年。一度も口を聞いたことがない。
ミリエルと旦那様であるロイスの政略結婚が他と違う点を挙げよ、と言えばこれに尽きるだろう。
その二人が5年の月日を経て邂逅するとき
ボロ雑巾な伯爵夫人、やっと『家族』を手に入れました。~旦那様から棄てられて、ギブ&テイクでハートフルな共同生活を始めます2~
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
第二夫人に最愛の旦那様も息子も奪われ、挙句の果てに家から追い出された伯爵夫人・フィーリアは、なけなしの餞別だけを持って大雨の中を歩き続けていたところ、とある男の子たちに出会う。
言葉汚く直情的で、だけど決してフィーリアを無視したりはしない、ディーダ。
喋り方こそ柔らかいが、その実どこか冷めた毒舌家である、ノイン。
12、3歳ほどに見える彼らとひょんな事から共同生活を始めた彼女は、人々の優しさに触れて少しずつ自身の居場所を確立していく。
====
●本作は「ボロ雑巾な伯爵夫人、旦那様から棄てられて、ギブ&テイクでハートフルな共同生活を始めます。」からの続き作品です。
前作では、二人との出会い~同居を描いています。
順番に読んでくださる方は、目次下にリンクを張っておりますので、そちらからお入りください。
※アプリで閲覧くださっている方は、タイトルで検索いただけますと表示されます。
大好きな母と縁を切りました。
むう子
ファンタジー
7歳までは家族円満愛情たっぷりの幸せな家庭で育ったナーシャ。
領地争いで父が戦死。
それを聞いたお母様は寝込み支えてくれたカルノス・シャンドラに親子共々心を開き再婚。
けれど妹が生まれて義父からの虐待を受けることに。
毎日母を想い部屋に閉じこもるナーシャに2年後の政略結婚が決定した。
けれどこの婚約はとても酷いものだった。
そんな時、ナーシャの生まれる前に亡くなった父方のおばあさまと契約していた精霊と出会う。
そこで今までずっと近くに居てくれたメイドの裏切りを知り……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる