種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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聖痕回収編

尾行

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「やめろ!!これは一体何の騒ぎだ!?」
「ゴンダワラ!!大丈夫か!?」


人混みを掻き分けてやっとアルトたちが現れ、アルトはジャンヌの前に立ち、リノンは倒れこむ大男(ゴンダワラという名前から察するに「異世界人」関係の人間の可能性が高まった)を抱える。ポチ子は未だに人混みの中で紛れており、遠くから「わふぅ~っ!?」という悲鳴が聞こえる。が、そんな事も気にしていられずにソフィアは隠れて様子を見る。

ジャンヌはアルトに視線を向け、まるで「誰だこいつは?」という顔を浮かべるが、すぐに彼が「紋章」のペンダントを見せつけると、


「僕は王国騎士団「ストームナイツ」の副団長アルトだ。貴公は鮮血のジャンヌとお見受けしたが?」
「その名で呼ぶな!!」


「鮮血のジャンヌ」と呼ばれた事に彼女は激高し、その気迫にアルトは一瞬怯むが、すぐに口元に血を流して倒れ込んだ「ゴンダワラ」を見ると、真剣な表情で彼女と向き合う。


「……一体何が起きたのか説明してくれますか?こちらとしても、団員を傷つけられた理由を問いたい」
「……その男が私に対して因縁を付け、決闘を挑んできました。だから仕方なく対応したまでの事」
「……これが仕方なく?」


全身に軽い切り傷があり、大剣の刀身は見るも無残に粉々、さらに吐血して一向に意識を取り戻さないゴンダワラに視線が集中するが、彼女は一切悪びれず、


「嘘だとお思いなら、周りの方々に尋ねてみてください。私はあくまでも襲い掛かってきた彼の相手をしただけです」
「しかし……彼は「異世界人」だ。魔法が使えない人間を相手にここまでいたぶることが騎士道なのか?」


アルトの言葉にジャンヌは一度だけゴンダワラに視線をやり、すぐに首を振って、


「私も魔法の類は使っていません。純粋な武の競い合いで、私は勝利しました……証拠はありませんが、我が「聖斧」に誓って嘘はついていません」
「……しかし!!」
「アルト、やめろっ」


まだ何か言いたげな彼にリノンが声を掛け、すぐに首を振る。この場の状況では彼女が正しいかどうかを判断する手段は無い。仕方なく、彼は倒れているゴンダワラに肩を貸し、何とか2人がかりで持ち上げると、


「……この借りはいずれ僕が返します。決して、お忘れなきように」
「はあっ……」


見当違いな言葉を離すアルトにジャンヌは溜息を吐き、


「……いいでしょう。私は「剣乱武闘」に参加するためにやってきました。お互いに試合で決着をつけましょう」
「……約束しましたよ」


睨み付けるようにアルトはジャンヌに顔を向けると、すぐにゴンダワラをリノンと共にこの都市に存在する聖導教会に向けて運び込む。慌てて人混みは彼らから距離を取り、やっと抜け出したポチ子も「くぅんっ……」と鳴き声を挙げながら彼らの後を追う。

残されたジャンヌは視線を向けただけで人混みが割れ、そのまま気にした風もなく歩き出す。ソフィアはその後姿を見送り、どうも彼女が以前に遭った「ヴァンパイア」とは全く違う性格に違和感を覚える。

前回に会った時は何というか、変態的な思考の持ち主だったが、眼の前の彼女は口調も丁寧であり、アルトが「異名」を告げたときは激怒したが、すぐに冷静さを取り戻した。まるで全く同じ顔の別人に思えるが、確証は持てない。ソフィアは意を決して後を追いかけることを決意した――





――ジャンヌは中心街から離れ、都市の東側に向けて歩みを進める。彼女の姿を見て慌てて人垣が避け、ジャンヌは歩き続ける。


ソフィアは敢えて変身せずに尾行を続けている。ある程度の距離を保って追いかけているが、もしかしたら既に気付かれている可能性も高い。

この姿は男の時よりも魔力が非常に高く、その代わりに上手く「魔法」は操れない。身体能力は特に変わりはないため、追いかけるだけなら見失うことは無いがいざという時は恰好を気にせずに男の姿に戻らなければならない。


「……ふむ」


ジャンヌは一度立ち止まり、ソフィアもすぐ傍の建物の陰に隠れると、彼女は人気の無い路地裏に向けて歩き出す。こちらに気付いて誘き出す罠の可能性も高いが、このまま見失うわけには行かない。ソフィアは追いかけるべきか一瞬迷ったが、すぐに路地裏に駆け込む。

幸い、彼女は待ち構えていたわけではなく、路地裏を抜けて他の道に出ると、大きな建物を発見する。看板には「三毛猫」の絵が書かれており、どうやら酒場らしいが、まだ営業時間ではないのか店は閉まっているが、ジャンヌはお構いなしに扉を通って行く。


「……これは……」


以前にも似たような店にソフィアもバルに連れられて入ったことがあり、すぐに追いかけるように中に入ると、


「……いらっしゃい」


店の中は薄暗く、カウンターには化粧が濃い1人の女性が座っており、ジャンヌの姿は既に見えない。彼女はソフィアを見て訝しげな表情を浮かべるが、すぐにバルから頂いた銀貨を一枚女に差し出すと、


「……ある人間の情報が欲しい」
「はっ……なるほど、素人じゃないね」


ソフィアが差し出した「賄賂」を受け取り、


「ようこそ……闇ギルド「クラヤミ」へ」
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