種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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聖女護衛編

魔除けの儀式

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――翌日、街の中央に存在する噴水広場では聖導教会主催による「魔除け儀式」が行われていた。早朝にも関わらず、街中の人間が殺到し、人混みが出来ていた。


噴水広場にはいつもとは違う白い礼装を纏った修道院の人間が集まり、その中に一際に豪勢な礼装を纏い、青い水晶のペンダントを付けたヨウカも立っていた。彼女の傍には晴れてヨウカの護衛役に昇進したポチ子と、いつも通りの服装のマザーも控えている。

また、広場の周りには聖導教会の直属の騎士団である「ワルキューレ騎士団」と呼ばれる女性だけで編成された護衛騎士が警護しており、彼女たちはやたらと露出度の高い鎧(ビキニ・アーマーと酷似)を纏っている。但し、魔術師と思われる者は「紅い礼装」を纏っているが。

ワルキューレはこの「大陸」内でも3本指に入るほどの騎士団であり、彼女達は生まれながらに「退魔武装」という特殊な魔法の加護を受ける。この「退魔武装」はあらゆる魔法に対して強い耐性を持ち、通常の攻撃魔法を受け付けない。彼女達が軽装なのは魔法耐性に対する絶対の自信であり、武芸も優れている。

周囲の人間は「ワルキューレ」に阻まれながらも、ヨウカに視線を集中させ、彼女は今までにない神妙な顔つきで、


「――これより、儀式を行います」


決して大きい声ではない、だが、不思議と辺りのに響く声音であり、周囲の人間達の声が収まる。この街の噴水には、水が噴き出す噴水の上空に青白く光り輝く菱形の「水晶体」が浮かんでおり、階段を模して造られた脚立を登りあがり、ヨウカは水晶体の前に立つ。

誰もが心配そうに見つめる中、性別変化の能力で「ソフィア」の姿としても衆人に紛れて見守る。念のために全身をフードで覆い隠し、彼女が成功する事を祈る。


――彼女は昨日の内に修道院から抜け出し、内密にヨウカの儀式を見守っていた。ミキからはああ言われたが、このまま立ち去るわけには行かない。センチュリオンの手掛かりを得られるまではヨウカの傍に居なければならない。


現在の彼女はより女性的な肉体に育っており、胸はより膨らみ、一切無駄がない体つきである。また、髪の毛と瞳の色も若干変色しており、白色から青みがかった銀髪に戻りつつある。この数年で徐々にだが、以前のような姿に戻りつつあるが、本人にとっては外見などどうでもいいのだが。


「……ふうっ……」


ヨウカは周囲からの視線に緊張しながらも、覚悟を決める様に長い息を吐き、ゆっくりと両手を伸ばす。ミキの言う通りなら、彼女は魔力のコントロールを修得したというが、果たして本当なのか、ソフィアは周囲を警戒しながら黙って見つめると、


「……はあっ……!!」


ゴウッ……!!


掌を水晶体に向けた瞬間、彼女の全身が白い靄のような魔力に覆われ、恐らくは彼女が着こんでいる礼装とペンダントは魔力を強化させる「魔道具(アイテム)」の一種なのだろう。

見る間に彼女の全身から強い魔力が放出され、やがて掌からゆっくりと靄のような魔力が水晶体に送り込まれる。


ボウッ――!!


「おおっ……!!」
「やった……」
「こ、これが……!!」


水晶体の内部に青色の火が浮かび上がり、やがて火は水晶体の内部で膨れ上がり、ついには外に溢れんばかりの炎と化す。この炎こそ、魔物を寄せ付けない「ブルー・フラム」と呼ばれる「聖火」であり、炎が燃え盛る限りはあらゆる魔物を寄せ付けないという。水晶玉に聖火が誕生した以上、儀式は成功したことを意味し、観衆が歓喜の声を上げる。


「やった!!」
「これで魔物の脅威に恐れずに済む!!」
「聖女様万歳!!万歳!!」


観衆が喜びの声を上げる中、噴水広場の護衛団や修道女たちも同様にヨウカを称賛する声を上げ、あのミキでさえも儀式が成功したことに涙ぐんでいる。肝心のヨウカの方はかなり疲れたのか、観衆に向けて笑みを浮かべてはいるが、その身体はふらついている。

昨日覚えたばかりの魔力のコントロールで大分無理をしたのだろう。脚立を降りた瞬間、倒れそうになったところをマザーが抱え込む。

ヨウカは彼女に肩を貸してもらいながら、すぐに周囲を見渡す。まるで、誰かを探しているような様子だ。恐らく、レノを探しているのだろうが、生憎と今の彼はソフィアの姿であり、気付かれるはずがないが、


「あっ……」


ソフィアは不意にヨウカと視線が合い、彼女はじっとこちらを見つめてくる。そして、ヨウカは微笑みかける。すぐにレノの周囲の人間が「俺に微笑んでくれた!!」「いや、私よ!!」と騒ぐが、まさか自分の正体に気付いたのかと内心驚く。流石は「聖女」と言ったところか。

そのまま彼女はマザーに連れられ、広場に用意された「馬車」に乗り込もうと近づいた瞬間、


ボウッ――!!


「ぐぅっ……!?」


突然、ソフィアの左手の甲の「紋様」が浮かび上がり、強く光り輝くと共に発熱する。堪らずに右手で抑えると、すぐに周囲に違和感を抱く。


「おい、あんたどうした?大丈夫か?」
「気分でも悪いのかしら……」


ソフィアの傍の人間達が彼女を気遣うが、今はそんな事を気にして要られない。彼女は上空の異変に気付いたのだ。


(嘘だろう……)


先ほどまで青空が広がっていた上空に、「黒雲」が作り出されていく――
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