種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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放浪島編

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「上手く行ってくれ……」


1年前に行った時は暴走してしまい、両手に深い火傷を負ってしまったが、今回は失敗するわけには行かない。


「ソフィア……!!」


ゴウッ……!!


全身から青い魔力が迸り、レノの身体に異変が起きる。胸元が膨らみ、髪の毛も瞳も白く変色した。思った通り、レノの状態よりも魔力が大幅に増えており、これならば上手く行くかもしれない。


――ガルルルッ!?


「気付かれたかな……でも、時間はある」


掌に「嵐」を形成しようとするが、やはりこの状態では有り余る魔力のコントロールが難しく、すぐに四散してしまう。失敗している間にも10匹以上の狼男がこちらに向かっており、その速度から考えるに恐らく数秒で到達してしまう。レノは最後のチャンスと思い、掌に嵐を形成させ、


「頼む……!!」


孤児院で習った魔法の呪文を口にし、反魔紋を発動させる。



バチィイイイイイッ!!



「っ――――!?」


男の姿の比ではないほどに反魔紋から電流が流され、危うく掌の「嵐」を四散させそうになるが、


「あぁあああああああっ!!」


電流に耐えながら掌の嵐を再度形にし、左手に集中させると電流をスタンガンの要領で迸らせる。


「ガルゥッ!?」
「ウオオオンッ……!?」


ソフィアの異変に気付いたのか、狼男たちは歩み寄るのを止め、こちらを見つめてくる。一方で、彼女の身体から風と電流が迸り、両手から魔力の球体が生み出される。


「……っ……?」


だが、以前の時と違い、両手が焼け焦げる感覚ではなく、人肌のような温かさが掌を覆う。そして、ついに1年前と同じ風と雷が混じり合った「球体」が生み出される。


「出来た……」


掌に「合成魔術」を生み出し、反魔紋の電流がぴたりと止まる。必要な分の電流は掌に収めたため、ソフィアは呆然と立ち止まる狼男たちに、



「喰らえぇえええええええええっ!!」



掌を向け、



ズガァアアアアアンッ!!



電流を迸らせる竜巻に姿を変え、狼男たちに放たれる。



「ギャウゥウウウッ!?」
「ウオォオオオオンッ!?」



バチィィイイイッ!!



竜巻に身体ごと吹き飛ばされ、さらに全身を感電させる狼男たちの姿に、ソフィアは呆然と見つめるしかない。ついには一匹残らず狼男たちが竜巻の餌食となり、



ゴォオオオオッ……!



竜巻は十数秒ほど草原の上を疾走じ、地面に焼けこげた跡を残しながら縮小し、やがて辺り一面に突風と共に四散する。



「うっ……」



ソフィアは片膝をつき、魔力切れで地面に倒れこむ。もはや、一歩も動けない。いつしか意識も遠くなり、瞼を閉じた――





「――あらら……まさか生き残るなんて」



草原の上で気絶したソフィアの前に、1人の少女が姿を現した。まるで、最初からそこに居た様に何事もなく、気絶しているソフィアの前に現れ、


「予想外でしたね……まさか、狼の群れを蹴散らせるほどの実力はあったんですね。それにその姿……どうやら訳ありのようですね」


辺り一面に広がる狼男たちの死体を見渡し、妙齢の女性「アイリィ」は倒れているレノの身体を調べ始める。性別が変わっている事に特に驚きもせず、彼女の腹部の学生服が破れて、火傷を負っている事に気付く。


「ふむっ……これは使えるかもしれませんね」


彼女は服の中から「小瓶」を取り出し、気絶しているレノの腹部に中身の液体を垂らす。


「うっ……」


液体が触れた個所に白い煙が上がり、瞬く間に火傷の跡が元の白い肌に変わり果てる。アイリィは背中にも同じように小瓶を垂らすと、すぐに同じように傷が消える。心なしかソフィアの顔が見る見ると良くなり、穏やかな顔で寝息を立てている。そんな彼女にアイリィは笑みを浮かべ、


「あらあら……あどけない寝顔を晒しちゃって……自分がどんな目に遭うのかも知らないで」


アイリィはソフィアの左腕の袖を拭い、すぐに体内の異変に気付く。彼女の左腕に仕込まれている魔石に気が付き、納得したように頷く。


「これは……なるほど、ここに着たのは事故だったのは本当みたいですね。なら、手助けぐらいはしてあげましょうかね」


彼女はソフィアから距離を取り、口元で呪文を呟くと、



ボウッ――!



草原で寝込んでいるソフィアの地面に「魔方陣」が浮き上がり、徐々に発光が強くなり、



「今度会うときは……そうですね、ちゃんと「相手」をしてあげますよ。私に見合った実力を手に入れるまでは見守らせていただきますよ」



彼女の言葉が言い終えた瞬間、魔方陣が光り輝き、ソフィアの姿が消え去った――
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