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放浪島編
魔力付与
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「はあっ!!」
ズドォオンッ!!
こちらに向かってくる狼男に向けて「嵐弾」を打ち込むが、簡単に狼男はそれを避け、再び周囲の芝生の中に身を隠す。
ガサササッ……!!
「くっ……ちょこまかと……」
またもや周囲の芝生を駆け回る音が聞こえ、どうにかできないかと思案するが、打開策をそう簡単には思いつかない。いっその事、「ソフィア」の姿に変身して魔力を高めた状態で「嵐弾」を連発するかと考えたが、下手に魔法を使用するとコントロールできずに自分が自爆してしまうかもしれない。
ならば、この周囲の視界を阻む芝生を抜け出し、先ほどのモーヒが居た場所まで逃げるのが得策だろうと考え、レノは足に風の魔力を纏わせ、
ダァアンッ!!
「ぐぅっ……!!」
大きく跳躍すると、瞬時に魔石を発動させる。地上にいた場合は周囲の芝生が視界を阻害して転送できないが、空中に飛び上がれば関係ない。まだ歩いて数分ほどしか経っていないため、すぐに先ほどまで居た芝生の外に視界が映し出され、転送魔法を発動しようとした時、
「ガァアアアァアアッ!!」
――ズドォンッ!!
「がはっ!?」
発動の直前、突如として背中に強い衝撃が走り、転送が発動される。
ゴォオオオオッ!!
ドォオンッ!!
「ぐあっ……!?」
着地に失敗したが、レノは芝生の外に出ることに成功する。幸い、柔らかい草原の上でそれほど衝撃は無い。だが、背中と腹部に違和感があり、見ると、
「……槍?」
レノの背中に異様に長い「牙」が突き刺さっており、牙の後ろには木の枝が蔓で括りつけられている。槍というにはかなりお粗末な物だろう。内臓が傷つけられてないことを祈り、牙を何とか背中から引き抜くと、
ぶしゅうぅうううっ……!!
「くっ……」
すぐに背中と腹部から血液が放出され、以前にダークエルフに薙刀で指された時のように魔力で止血を試みる。だが、あの時と違って時間的な余裕はなく、すぐに傷口を塞ぐため、レノはあえて反魔紋が発動させ、
バチバチィッ……!!
「ぐうぅっ……」
身体に流れる電流を両手に集中させ、スタンガンの要領で掌に放出させる。そして腹部と背中の傷口を同時に塞ぎ、電流を傷口に当てる。
バチィイイイッ!!
「があああっ!!」
傷口が熱を持ち、気絶しそうなほどに激痛が走るが、火傷で傷口の穴を塞ぐことに成功した。両手を離すと、焦げ臭いにおいが辺りを漂うが、一命だけはとりとめたようだ。レノは顔を見上げると、すぐに視界に芝生の光景が入り、
「……嘘だろ?」
――グルルルッ……
――ガァアアアアッッ……
――ウオォオオオオンッ!!
無数の狼男が芝生から姿を現し、後方を振り返ると、何時の間にか既に自分が囲まれている事に気付く。数えきれないほどの狼男の数に、レノは苦い笑みを浮かべるしかない。魔石は既に一度使っているため、すぐには使用できない。また、嵐弾の連発と反魔紋の反動により、身体が動かない。
「……最悪だな……」
ゆっくりと警戒気味にこちらに近づいてくる狼男の群れに、レノはすぐ傍の地面に落ちている槍を掴む。どうやら狼男が作成したもので間違いなく、現に目の前で同じ武器を掲げている者も多い。レノは何とか杖代わりに槍を手に握りしめると、狼男の群れは彼がまともに動けないと判断し、笑みのような表情を浮かべる。
だが、レノはあることに気付く。嘗てエルフの集落での修行中に、弓矢に風の魔力を送り込んで強化を試みたことを。
あの時は魔力をコントロールできずに失敗してしまったが、今ならば適量の「嵐」を纏わせることが可能ではないのか。
(上手くいってくれよ……)
掌に嵐を形成させ、すぐに周囲の狼男達が警戒するが、レノは「嵐」を槍に纏わせる。昔は風の魔力を送り込んで「矢」を破壊してしまったが、3年以上も魔力だけで形成した無詠唱魔法を扱ってきたのだ。
ゴォオオオオッ――!!
「ぐぐっ……」
槍全体に魔力を送り込むのではなく、先端の部分にだけ嵐を纏わせると、昔は数秒も持たずに壊したが、今回は上手く成功した。
ビュオォオオオッ……!!
槍の先端に螺旋状の嵐が形成され、レノは何とか両手で支える。思えば、ナイフや弓等は扱ったことはあるが、このような長物は使ったことは無い。
「「ガァアアアアアアアッ!!」」
レノは槍を構えると、すぐに周囲を取り囲んだ狼男たちが一斉に飛びかかる。彼は瞬時に風の魔力を足元に送り込み、
ダァアンッ!!
「っと……!!」
上空に跳躍し、すぐに足元に狼男たちが集まり、一斉に下から槍を投擲してくる。だが、先ほどの時と違い、レノは向かってくる槍の群に掌を向け、一発だけ嵐弾を放つ。
「はっ!」
ズドォオンッ!!
嵐の弾丸は無数の槍を吹き飛ばし、レノはソフィアで行ったようにそのまま地面に衝突した嵐弾の突風に乗り、より高く上昇する。
「いっ……けぇっ!!」
嵐を纏わせた槍を、地面の狼男の群れに向けて放つ。予想外の速度で槍は落下し、先端に纏わせた螺旋状の嵐が解き放たれ、
ズガァアアアンッ!!
「ガァアアアアアアアッ!?」
「ギャゥンッ!?」
地面に衝突した瞬間に先端がかまいたちへと化し、無数の牙の欠片を周囲に飛び散らせながら狼男を数匹吹き飛ばす。
ズドォオンッ!!
こちらに向かってくる狼男に向けて「嵐弾」を打ち込むが、簡単に狼男はそれを避け、再び周囲の芝生の中に身を隠す。
ガサササッ……!!
「くっ……ちょこまかと……」
またもや周囲の芝生を駆け回る音が聞こえ、どうにかできないかと思案するが、打開策をそう簡単には思いつかない。いっその事、「ソフィア」の姿に変身して魔力を高めた状態で「嵐弾」を連発するかと考えたが、下手に魔法を使用するとコントロールできずに自分が自爆してしまうかもしれない。
ならば、この周囲の視界を阻む芝生を抜け出し、先ほどのモーヒが居た場所まで逃げるのが得策だろうと考え、レノは足に風の魔力を纏わせ、
ダァアンッ!!
「ぐぅっ……!!」
大きく跳躍すると、瞬時に魔石を発動させる。地上にいた場合は周囲の芝生が視界を阻害して転送できないが、空中に飛び上がれば関係ない。まだ歩いて数分ほどしか経っていないため、すぐに先ほどまで居た芝生の外に視界が映し出され、転送魔法を発動しようとした時、
「ガァアアアァアアッ!!」
――ズドォンッ!!
「がはっ!?」
発動の直前、突如として背中に強い衝撃が走り、転送が発動される。
ゴォオオオオッ!!
ドォオンッ!!
「ぐあっ……!?」
着地に失敗したが、レノは芝生の外に出ることに成功する。幸い、柔らかい草原の上でそれほど衝撃は無い。だが、背中と腹部に違和感があり、見ると、
「……槍?」
レノの背中に異様に長い「牙」が突き刺さっており、牙の後ろには木の枝が蔓で括りつけられている。槍というにはかなりお粗末な物だろう。内臓が傷つけられてないことを祈り、牙を何とか背中から引き抜くと、
ぶしゅうぅうううっ……!!
「くっ……」
すぐに背中と腹部から血液が放出され、以前にダークエルフに薙刀で指された時のように魔力で止血を試みる。だが、あの時と違って時間的な余裕はなく、すぐに傷口を塞ぐため、レノはあえて反魔紋が発動させ、
バチバチィッ……!!
「ぐうぅっ……」
身体に流れる電流を両手に集中させ、スタンガンの要領で掌に放出させる。そして腹部と背中の傷口を同時に塞ぎ、電流を傷口に当てる。
バチィイイイッ!!
「があああっ!!」
傷口が熱を持ち、気絶しそうなほどに激痛が走るが、火傷で傷口の穴を塞ぐことに成功した。両手を離すと、焦げ臭いにおいが辺りを漂うが、一命だけはとりとめたようだ。レノは顔を見上げると、すぐに視界に芝生の光景が入り、
「……嘘だろ?」
――グルルルッ……
――ガァアアアアッッ……
――ウオォオオオオンッ!!
無数の狼男が芝生から姿を現し、後方を振り返ると、何時の間にか既に自分が囲まれている事に気付く。数えきれないほどの狼男の数に、レノは苦い笑みを浮かべるしかない。魔石は既に一度使っているため、すぐには使用できない。また、嵐弾の連発と反魔紋の反動により、身体が動かない。
「……最悪だな……」
ゆっくりと警戒気味にこちらに近づいてくる狼男の群れに、レノはすぐ傍の地面に落ちている槍を掴む。どうやら狼男が作成したもので間違いなく、現に目の前で同じ武器を掲げている者も多い。レノは何とか杖代わりに槍を手に握りしめると、狼男の群れは彼がまともに動けないと判断し、笑みのような表情を浮かべる。
だが、レノはあることに気付く。嘗てエルフの集落での修行中に、弓矢に風の魔力を送り込んで強化を試みたことを。
あの時は魔力をコントロールできずに失敗してしまったが、今ならば適量の「嵐」を纏わせることが可能ではないのか。
(上手くいってくれよ……)
掌に嵐を形成させ、すぐに周囲の狼男達が警戒するが、レノは「嵐」を槍に纏わせる。昔は風の魔力を送り込んで「矢」を破壊してしまったが、3年以上も魔力だけで形成した無詠唱魔法を扱ってきたのだ。
ゴォオオオオッ――!!
「ぐぐっ……」
槍全体に魔力を送り込むのではなく、先端の部分にだけ嵐を纏わせると、昔は数秒も持たずに壊したが、今回は上手く成功した。
ビュオォオオオッ……!!
槍の先端に螺旋状の嵐が形成され、レノは何とか両手で支える。思えば、ナイフや弓等は扱ったことはあるが、このような長物は使ったことは無い。
「「ガァアアアアアアアッ!!」」
レノは槍を構えると、すぐに周囲を取り囲んだ狼男たちが一斉に飛びかかる。彼は瞬時に風の魔力を足元に送り込み、
ダァアンッ!!
「っと……!!」
上空に跳躍し、すぐに足元に狼男たちが集まり、一斉に下から槍を投擲してくる。だが、先ほどの時と違い、レノは向かってくる槍の群に掌を向け、一発だけ嵐弾を放つ。
「はっ!」
ズドォオンッ!!
嵐の弾丸は無数の槍を吹き飛ばし、レノはソフィアで行ったようにそのまま地面に衝突した嵐弾の突風に乗り、より高く上昇する。
「いっ……けぇっ!!」
嵐を纏わせた槍を、地面の狼男の群れに向けて放つ。予想外の速度で槍は落下し、先端に纏わせた螺旋状の嵐が解き放たれ、
ズガァアアアンッ!!
「ガァアアアアアアアッ!?」
「ギャゥンッ!?」
地面に衝突した瞬間に先端がかまいたちへと化し、無数の牙の欠片を周囲に飛び散らせながら狼男を数匹吹き飛ばす。
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