種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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学園編

新たな魔法

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レノが学園に来てからの晩、彼は学生寮の自室(二階)でターゲットである「教員」の資料に目を通す。学生寮は男女別に分かれており、2人部屋が基本となっているが、レノはクズキの計らいで1人で使用しており、部屋の中にはベッドと机の類しか存在しない。

明日からは学園で本格的に授業を受けることになり、レノは「4年生」として入学することになる。


――ちなみにこの学園は「1年生」から「8年生」まで別れており、入学の際の年齢に関わらず、知識量によって学年が変わる。


進級試験が1年に2度行われ、このどちらかに合格した場合のみ、来年の初頭から学年が上がる。また、子供も大人も関係なしに入学するらしく、実際に学園の中には大人の学生もちらほら見かける。それでも子供の方が圧倒的に多いが、少なからず大人も存在するのは意外だった。

留年制度は存在するが、高い学費を払ってまで勉強をやり直す者は少なく、大抵の人間は学園を辞退する。場合によっては学費を免除されて入学する者もいるが、あくまでも少数であり、この学園の生徒の99%が高額の学費を払っている。


「ターゲットは出張中か……」


資料に映し出されている年齢の割には白髪交じりの「男性教員」を見て、レノは晩飯の果物を食しながら、資料に目を通す。「男性教員」の名前は「ゼノ」と言い、この学園に40年以上勤めている人間だ。実年齢は分からないが、少なくとも70代だろう。

彼の専門は「召喚魔法」であり、現在は学園都市を離れて他の都市を回っており、2週間後に戻ってくるらしい。


「2週間も何をしろって言うんだ……」


重要な情報は彼自身しか知らないらしく、一度だけクズキが学園の彼の受け持っている教室や職員室、果てには自宅を調べたらしいが、成果は無かったらしい。

レノたちが欲している情報とは、最近この学園の中で彼が新たな「召喚魔法」を開発したらしく、その「召喚魔法」から現実世界の「物質」をだけを呼び寄せることが出来るという。

何気に「現実世界」と比べ、こちらの世界には存在しない物が多く、特に数年前に偶然「異世界人」が持ってきた「携帯電話」などはなんとアトラス金貨数枚分で買い取られたという。


「召喚魔法で金儲けね……健全な商売とは言い難いな」


レノは窓の外を確認し、男子寮の庭の方を見てみると、何人かの生徒らしき子供たちが魔法の練習を行っている。寮の中は様々な魔法が施されており、防音対策もばっちりのため、彼らが庭で騒ごうと特に大きな問題にはならない。

消灯時間は11時であり、現在は10時半。もう少しで生徒達も眠りにつくだろう。その前に、レノは魔石の効果を試すために窓を開け放つ。


「フレイム・ショット!!」
「アクア・ショット!!」
「サンダー・ショット!!」


ボウッ!!


バシャアアンッ!!


ズドォオオンッ!!



庭のあちこちで、爆炎、水の飛沫、雷が落雷し、騒がしい。レノはそれらを上から見下ろしながら、風の魔力を纏わせてゆっくりと降下する。


「こうか……?」


左腕の紋様が浮かび上がり、自分の身体に異変が起こったことを感じ取る。まるで身体全体が透けているように感じた。ゆっくりと庭に降り立つと、上の階から降りてきた彼に誰も気づいておらず、庭の生徒達は魔法の訓練を行う。別に見られたところで彼等の大半は魔術師であり、特に不思議にも思われないだろう。

レノは彼らの前を素通りしても誰一人気付かず、潜入の際にはかなり有利な魔法だろう。但し、庭の隅まで移動すると身体が元に戻る感覚に陥る。


(だいたい30秒ぐらいか……)


しかも、一度使用した場合はしばらくは使えないのか、左腕の紋様が消え去る。


「よし……気付かれてないな」


庭は相当に広く、先ほどの魔法の訓練を行っていた学生たちとの距離もかなり離れている。ここならば派手な音を出さない限りは気付かれないだろう。


今度は学生寮の天井の部分に視線をやり、再び、左腕に紋様が浮かび上がる。先ほどの「隠密(クズキ命名)」の魔法の時とは違い、紋様が若干変化している。


「転送……!!」


ダンッ!


前方の離れた屋根に視線を集中させながら、レノは空中に飛び上がり、次の瞬間、


ビュンッ!!


「――うわっ……!!」


ダァアンッ!!


まるでジェットコースターのように身体が高速に引きずられる感覚に襲われ、次の瞬間には屋根の上で着地していた。


「すごいな……」


転送の際の浮遊感は驚いたが、それを耐えればかなり便利な魔法だ。だが、左腕に違和感を生じる。見ると、左腕の紋様が熱を発しており、試してみたが次の「転送」は行えない。「隠密」と同じく、連続使用は出来ないようだ。

だが、「隠密」と「転送」は完全に別枠扱いなのか、これら二つを重ねて使用しても問題は無いようだ。


「誰も気づいてないな……」


屋根から庭を見下ろすが、魔法の訓練を行っている学生たちには気づかれていない。それを確認し、下に降りようとした瞬間、



ドゴォオオオオッ!!



「っ!?」


学園の方角から、凄まじい轟音が鳴り響き、レノは振り返ると、暗闇で良く分からないが学園のグラウンドの方から土煙が上がっている。

テロでも起きたのかと驚いたが、どういう訳か庭の方に顔を向けると、学生たちも先ほどの轟音で学園の方角に顔を向けていたが、すぐに練習を再開する。

この学園ではこんな轟音が日常茶飯事なのかと冷汗を搔きながら、気になったレノは学園に向かうことにした。
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